厚生労働省の平成28年簡易生命表によると、65歳の平均余命は男性が19.55年、女性が24.38年。仮に60歳で退職すると、多くの人が20年〜25 年以上の余生を送ることになる。退職時にまとまった退職金が支払われ、65歳から年金を受給したとして、果たしてそれで20年以上生活できるのだろうか?

老後に必要な金額が3000万円といわれる理由

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(画像=PIXTA)

老後に必要な金額は、一般的に約3000万円と言われている。その根拠は何だろうか?65歳からの平均余命(男性84歳、女性89歳)を元に老後の必要額を計算していこう。

総務省が行った2017年の家計調査報告(家計収支編)では、老後の夫婦の1か月あたりの消費支出が平均283,027円になるので、この金額で60歳以降の収支を試算すると、60歳から84歳までの24年間で8151万円の支出。夫84歳で死亡後の妻の生活費を5割とし、その後妻が平均寿命の89歳まで生きるとして、5年間の生活費は849万円。ゆえに、退職後約30年間の生活費合計は9000万円となる。

一方、夫婦2人の年金受取額をみてみよう。厚生労働省のデータによると、平成28年度の年金の平均受給額は、国民年金が月5万5373円、厚生年金が月14万5638円である。国民年金の最多月額受給帯が6万円から7万円のため、妻の年金受取額を月6.5万円とすると、夫の厚生年金14.5万円の合計額で、夫婦2人の年金受給額は月21万円となる。

月21万円を65歳から84歳までの20年間受け取ると5040万円。夫死亡後の妻の遺族年金は5年間で977.5万円。合計すると65歳から24年間で6017.5万円の年金を受給できる。

年金6017.5万円から先述の生活費合計9000万円を差し引くと2982.5万円のマイナスになる。これが老後に必要な金額は3000万円と言われているゆえんである。

退職金はいくらくらい?

厚生労働省の調査によると、退職給付制度がある企業は75.5%(「平成25年就労条件総合調査結果の概況」)。実に4社に1社は退職金がないのである。

また経団連の調査によると、高校や大学などを卒業後ただちに入社し、その後標準的に昇進・昇格した人(管理・事務・技術労働者総合職)が60歳で定年退職した場合の退職金は、大学卒2374.2 万円 高校卒2047.7万円である。

勤め先に退職給付制度がある場合は、試算した老後の必要額3354.5万円のうち、退職金2374.2 万円(大学卒の場合)を差し引いて残りの不足分が980.3万円になる。

仮に、現在40歳だとすると60歳の定年まで残り20年で、この額を埋めるには毎年50万円増やす必要がある。

すでに1000万円の貯蓄がある人は、老後に関してのみ言えば特段、問題はないかもしれない。しかし、これはあくまで予期せぬ事態、アクシデントがなかった場合である。40代といえば、今後、子供の教育費が最もかかる時期でもあり、住宅ローンを抱えている人も多いことだろう。すでに1000万円の貯蓄があったとしても、40代は懐から出ていくお金が多い。

40代から資産運用を始めた場合と貯蓄しただけの場合にどれだけ差が生じる?

平均的な40代が持っている資産はいくらくらいなのだろうか。金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2016年)によると、40代の平均金融資産保有額は939万円である(中央値は602万円)。

実態により近い中央値から、40代の多くが約600万円程度の貯蓄を持っているということがわかった。この貯蓄を20年間運用した場合としなかった場合に、一体どれくらいの差がでるのだろうか?比較してみよう。

【前提条件】現在40歳、貯蓄600万円

40歳時 貯蓄額600万円+毎年100万円10年間積立
50歳時 子供の大学資金 400万円(私大文系の4年間にかかる費用)を払い出し 
その後、毎年100万円を10年間、60歳まで積立

(1) メガバンク 10年スーパー定期×2回 計20年間 600万円を年利0.01%にて運用、積立は、定額貯金で10年間 同じく年利0.01%にて運用

600万円を年利0.01%で10年間運用した場合、10年後の50歳時に600.6万円になる。また毎年100万円を積立し、年利0.01%で運用した場合は、10年後の50歳時に1000万5500円となる。

ゆえに50歳時の貯蓄額と積立額の合計は1601万1500円である。そして、50歳時に子供の大学資金で400万円を払い出し、残高は1201万1500円となる。残高1201万1500円を再度0.01%で運用した場合、10年後の60歳時には1202万3512円となる。

また50歳から60歳までの10年間、年100万円の積立を0.01%で運用した結果、1000万5500円となり、60歳時の金融資産は、貯蓄額と積立額合計で2202万9012円となる。

もちろんこれらは金利が現状のまま続くという前提のもとである。

(2)年利3%の金融商品にて運用

600万円を年利3%で10年間運用した場合、10年後の50歳時に806万円になる。また、毎年100万円を積立し、年利3%で運用した場合は、10年後の50歳時に1182万円となる。

ゆえに50歳時の貯蓄額と積立額の合計は1988万円である。そして50歳時に子供の大学資金で400万円を払い出し、残高は1588万円となる。残高1588万円を再度3%で運用した場合、10年後の60歳時には2134万円となる。

また50歳から60歳までの10年間、年100万円の積立を3%で運用した結果、1182万円となり、60歳時の金融資産は貯蓄額と積立額合計で3316万円となる。

20年間という長期運用では複利効果が生かされ、20年後には1113万円もの差が生まれるのだ。

初心者は「積立」「iDeCo」を考えたい

20年という期間を考えて初心者が考えたいのは「積立」商品である。積立と一口に言っても様々な商品があるが、一般的には投資信託、株などだろう。

投資信託とは、投資家から資金を預かり、プロが運用、その分配金を投資家に還元する商品。投資先としては、日本株や債券をはじめ、全世界の株や債券、金など様々な投資先がある。投資先、投資対象が異なるものをいくつか持てば、リスクも分散できる。

積立は手間がかからず投資信託の価格や株価を常に気にする必要がない。時間を分散させて買うので高値づかみになるリスクを軽減できる。

最近では、SBI証券などで100円から購入できるため、気軽に始められるのも特徴である。

また老後資金を貯める目的であれば、「iDeCo」(イデコ)も考えておきたい。iDeCoとは、個人型確定拠出年金の愛称で、銀行や証券会社で毎月積立し、60歳から年金を受け取るシステムのことである。

普通の積立と異なる点は2つある。1点目は掛け金全額をまるまる所得から引くことができるので、節税になる点。2点目は、通常、定期預金の利子や投資信託の運用益には20.315%の税金が課税されるが、それが60歳の受け取り時まですべて非課税になる点である。

デメリットとしては、60歳時まで引き出せないので、あくまで老後資金を貯めることを目的に利用しよう。

経験者なら個別株やFXも

投資信託など初心者向けの商品を買ったことがある経験者が考えたいのは日本株、外国株、FXなどだろう。なかでも、外貨はリスクを分散する意味でも検討の余地はあるだろう。

外国株は日本株同様に証券会社で購入可能だ。米国株は2018年2月現在、日本株に比べると利回りが高い株が多い。そして比較的少額から始められる。たとえば2018年2月21日0:20(日本時間)現在、ディズニーの株は1万1428円(106.69ドル)から購入できる。

同様に、FXも外貨保有という点でリスク分散ができる。FXはリスクが高いと思われがちだが、レバレッジを1倍にして外貨を購入すれば、銀行などで外貨を購入するよりもはるかに安い手数料で購入でき、その上、高金利の通貨なら保有しているだけで、「スワップポイント」という利息のようなものまでついてくる。

またその都度購入するよりも多少手数料は高くなるが、最近ではFXでも積立サービスがある。たとえば1ヵ月間の合計で「1000ドル購入」と設定し、「毎日購入」を選択したとしよう。仮に1ヵ月の営業日数が22日だった場合、1000ドルを22日間で割った45.45ドルずつを毎日11:30の時点の為替で自動で買い付けられる。投資信託積立と同様、時間を分散させて高値掴みを防ぎ、購入の手間が省ける。

一歩進んで不動産投資は?

さらに上級者としては、不動産投資を考えたいところだろう。頭金ゼロで不動産投資をする方法ももちろんあるが、ある程度の手元資金を用意しておいたほうが安心だろう。万が一、空室が長期間続いた場合、毎月の持ち出しに耐えられるかどうかもポイントになる。

不動産投資は一般的にはミドルリスクミドルリターンといわれる。株のように値動きが激しくなく、相対取引のため株でいう機関投資家のようなプロを相手に戦う必要もないからだ。「不労所得が得られる」ともいわれるが、実際には不動産経営という立派なビジネスであるため、向き不向き、得手不得手は往々にしてある。

相対取引という点では、アンティークコインやワイン投資という方法もある。両者とも欧米の富裕層では一般的で、需要と供給によって価格が決まり、物によっては「1点もの」という希少性によって価値が上がる。税金面でも市場に出回っている価格よりも低く評価されることがあるため、節税対策として所有している富裕層もいる。

定年までのあと20年。どのように過ごすかはあなた次第である。しかし投資や資産運用は少しでも長く時間をかけたほうがリスクは下げられる。「やらなければ」「いつかやろう」と思っているなら、早速検討を始めてみてはいかがだろうか。(ZUU online編集部)