経営者と呼ばれる人たちはみな、戦闘服であるスーツの着こなしについては並々ならぬ気を遣っている。中小企業になればなるほど経営者は「会社の顔」であり、できる限り第一印象をポジティブで好感度の高い方へコントロールする必要があるからだ。

ポイントは着たい服を着ることではなく、回りからどのように見られたいか。顔のつくりや体型はすぐに変えられないが、スーツの着こなしはちょっとコツを押さえるだけで見違えるように変えられる。

経営者専門オーダースーツテーラーとして、大阪・淀屋橋と東京・代官山にサロンを展開し、現役プロ野球選手、有名ミュージシャンから上場企業まで2,000名を超える経営者をクライアントに持つ「イルサルト」社長、末廣徳司氏はスーツを着こなすポイントとして以下の5点を挙げている。経営者のみならず多くのビジネスマンにとっても参考になるはずだ。

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(画像= antondanilenko / Shutterstock)

(1)肩幅を合わせる

スーツのシルエットの99.9%は肩で決まる。スーツを羽織ってみて、肩の部分が少しでも余っていれば、それはスーツが大きく、ジャストサイズではない証拠だ。まずは肩幅をきちんと合わせよう。なぜシルエットが大事かというと、経営者は去り際の後ろ姿の印象が大切だから。肩がずり落ちていると、なんだか頼りなく見えてしまうからだ。商談において大事な決断を抱えた相手方をシルエットひとつで不安にさせてしまうこともあることを知っておこう。

(2)ネクタイはベルトにかかるくらいの長さで結ぶ

スーツと言えば、グレーやネイビーなど暗めの色を選ぶことが多いが、そのなかで違いを生み出せるのがネクタイだ。個性や人柄が最も出てしまう場所なだけに、ブランドや色柄に悩む人は多いだろう。しかし、最も重要なのはそれよりもネクタイの長さだ。長すぎたり短すぎたりすると、だらしない印象を与えてしまうことになる。長剣の下端がベルトにかかるくらいがベストポジションだ。

(3)ジャストサイズのシャツを着る

欧米ではシャツは「下着」との感覚が強く、ビジネスの場面で脱ぐことはほとんどない。一方、日本は高温多湿のためジャケットを脱ぐ機会が多い。このため、ジャケットを脱いだ後のシャツ姿にも気を遣おう。昨今はクールビズが普及し、5~10月はシャツにノーネクタイというスタイルが増えてきたため、1年の半分はジャケットなしという人もいる。シャツのジャストサイズは小さめだ。ダボダボでは、相手は「トホホ」となってしまう。

(4)靴、カバン、ベルトの素材感、色を合わせる

「なんかこの人まとまっているなあ。なぜなのだろう」という印象の人の着こなしをよく見ると、靴やカバン、ベルトの色や素材感を統一していることに気がつく。これはオシャレの基本とも言えるもので、オフの日も使えるテクニックだ。黒い靴を選んだ日はベルトや鞄、手袋、帽子を黒に。茶色のベルトを使いたい日には、靴や腕時計を茶色にする。単純なテクニックなのに、着こなしがものすごく上手い印象を与えられる。できるビジネスマンは商談の場で相手の人となりを把握するため、持ち物もよく観察しているものだ。「神は細部に宿る」と言われるが、小物選びも油断しないようにしたい。

(5)ヒモが付いている靴をはく

靴紐がない靴をスーツに合わせるのはルール違反ということを知っていただろうか。脱ぎ履きが楽なスリッポンを好む人もいるかもしれないが、欧米ではスリッポンは「逃げ足の速い人」というネガティブなイメージがあるという。ローファーは、やや幼いイメージが持たれるうえ、欧米では「怠け者」という意味もあるのだ。「オシャレは足元から」などとよくいわれるし、靴の汚れた人は偏見をもたれがちだ。まずは、上質な靴に投資し、大事な場面にはきちんと磨いて臨むことで、文字通り、足元を見られることもなくなる。(フリーライター 飛鳥一咲)