中国の「Alibaba」や「Tencent」で展開が進んでいる信用スコア。特にAlibabaが展開する「芝麻信用」は、中国社会で大きな存在感を示しつつある。

ITの進化によって、決済など消費者のあらゆる行動をオンラインで記録して管理できるようになってきた。そのため、中国での成功をきっかけに、信用スコアが世界で普及する可能性も考えられる。将来、日本でも信用スコアをもとにした社会が構築されるのだろうか。中国を例にしつつ、日本でも普及するのか分析する。

「芝麻信用」中国で広まる信用スコアの実情とは

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(写真=hfzimages/Shutterstock.com)

芝麻信用とは、Alibabaグループが展開する信用スコアサービスだ。Alibabaが展開する電子決済サービス「Alipay」と連携し、その決済情報をもとに利用者の与信を管理することができる。

芝麻信用のもとになっているAlipayは、すでに中国国内で5億2,000万人(2018年1月時点)のユーザーを抱えている。この利用者のほとんどが芝麻信用に紐付けられていることを考えると、芝麻信用の影響力の大きさをイメージできるのではないだろうか。

後述するが、芝麻信用はすでに中国社会で大きな存在感を誇っている。また、メッセンジャーアプリで有名な「WeChat」を展開しているTencentも「騰訊征信(テンセントクレジット)」という信用スコアを展開しており、一定のシェアを握っている。

そもそも、なぜ中国でこのような信用スコアサービスが展開されるようになったのか。それは、政府主導で進められている政策「社会信用体系建设规划纲要(社会信用システム構築計画綱要)」が大きく関係している。この政策は2014年から2020年までの7ヵ年計画で、信用レベルを意識させることにより発生する不正取引を減らし、健全な社会システムを築こうという取り組みだ。これにより、取引コストを削減し、経済活動をより活発にしようという狙いがあると見られる。実現すれば、中国社会に対する世界の見方が大きく変わる可能性があるだろう。

芝麻信用で中国社会はどのように変化したか

2014年から進められてきた政策の効果もあり、信用スコアは中国社会に大きな影響を与えている。芝麻信用のスコアによって、その人が社会的な恩恵を受けられるか、もしくは制約を受けるかが決まってくるのだ。

たとえば、芝麻信用スコアが高いと、シェアサービスなどのデポジット(保証金)を免除されたり、出国手続きが一部簡素化できるメリットがある。一方で芝麻信用のスコアが低いと、公共交通機関による移動に制限が出たり、企業の採用に不利になることもある。また、結婚においても、相手の信用スコアによってウソをついていないか判断することが可能だという。

芝麻信用は法人にも用いられている。企業の取引状況など5項目を踏まえ、1,000~2,000点のスコアが付けられる。この点数は公開されており、未上場企業の与信も簡単に確認することができるのだ。

芝麻信用の算出に用いられるのは、Alibabaが所有するデータだけではない。政府がオープンにしている「失信被執行人(契約不履行者)リスト」なども活用され、高度なAI技術とクラウドコンピューティング環境で計算される。これにより、多くの場面で芝麻信用を活用することが可能となる。

普及が進む芝麻信用だが、その一方で課題も残る

このように、中国社会で普及が進む信用スコアの活用。しかし、信用スコアにも課題がないわけではない。

たとえば、芝麻信用の影響力が大きくなったため、そのスコアを上げるという詐欺サービスも出てきているという。融資の返済により信用スコアが上がるといって、詐欺事業者のQRコード(口座)に振り込みをさせたり、車などの高額商品を購入したと偽装してスコアを不正に上げようとする詐欺サービスも出てきている。

また、購買履歴などが管理されることに対する抵抗もあるだろう。国民がナーバスになっていることも考えられる。信用スコアも決して良いことばかりではないのだ。

世界で広まりつつある信用スコア、日本社会に根付いていくのか

信用スコアの考え方は、すでに米国でも広まりつつある。また、日本でもスコアレンディングサービスの展開などが始まっており、今後、社会に根付く可能性もある。

もし、信用スコアが日本に広がるなら、経済活動に一定の効果をもたらすだろう。今後、支払いを受ける側の信用が担保されるようになれば新たな取引が可能になることも考えられる。日本では、すでに金融機関などでクレジットスコア(個人の信用力)をもとに与信を審査しているが、今後は信用スコアのように購買履歴まで審査の内容が拡張される余地もあるだろう。

ただ、日本が中国のように信用スコアサービスを機能させるには、AlibabaやTencentのように統一されたプラットフォームをもとに展開する必要もある。そう考えたとき、日本でどこまで信用スコアを根付かせることができるかは疑問が残る。特にプライバシー保護については、大きな反発が生まれることが予想される。信用スコアの導入は、そのメリットとデメリットを見極めて、慎重に進める必要があるのではないだろうか。(提供:MUFG Innovation Hub

執筆者:山田雄一朗


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