2001年に日本で導入された「確定拠出年金」は、個人で積み立てを行う年金制度だ。2017年には確定拠出年金法が一部改正されて加入資格が大幅に広がったことで、専業主婦(主夫)や企業年金を導入している企業の会社員なども加入して利用できることになった。この記事では、確定拠出年金の基礎的な知識やノウハウなどを紹介する。

■まずは日本の年金制度をおさらい

確定拠出年金について説明する前に、まず「3階建て」と呼ばれる日本の年金制度についておさらいしていきたい。

1階部分に相当するのが20歳以上の日本国民全員に加入する義務がある「国民年金」だ。国民年金では、加入してきた期間の長さによって将来的に給付される年金の額が変わる。2018年度の国民年金保険料は月額1万6340円で、まとめて前払いすると割引が適用される。20〜60歳まで全期間納めた人は、月額6万4941円(2017年度)を受け取ることができる。

2階部分は「厚生年金保険」と「国民年金基金」の2種類だ。厚生年金保険は一般企業の会社員や公務員などが加入する保険で、国民年金基金は自営業者や、企業に所属しないフリーランスの人が加入する保険制度だ。厚生年金は必ず加入しなければいけない一方で、国民年金基金への加入は任意となっている。そのため、自営業者やフリーランスの人は、1階部分の国民年金にのみ加入している人もいる。

最後に3階部分。3階部分は企業側がそれぞれ独自に運営を行っている「確定給付企業年金」だ。企業年金は生命保険会社や信託銀行などによって運用されている。

確定拠出年金の基礎知識や枠組みとは?

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(画像=PIXTA)

確定拠出年金は、これらの1〜3階部分の年金制度に加えて存在する仕組みで、基本的には個人で定期預金や投資信託などの金融商品を選び、運用していくものだ。確定拠出年金には「個人型」と「企業型」の2タイプがある。

個人型の確定拠出年金はイデコ(iDeCo)とも呼ばれる。個人型の場合は、個人でそれぞれ掛金の金額を決定し、自ら掛金を拠出する。この掛金として払った掛金はすべて所得控除の対象となるというメリットがある。

企業型の確定拠出年金では、それぞれの企業が決めた独自のルールに従って、掛金が拠出される。掛金は通常会社の損金として処理されるが、企業によっては掛金の一部を従業員が負担するケースもある。

確定拠出年金に加入すると、原則として3種類の給付金が60歳から受け取れる。年金や一時金として受け取ることができる「老齢給付金」や一定基準を超えた障害を負った場合に支給される「障害給付金」、加入者が死亡したときに一時金として支払われる「死亡一時金」がある。例外的には、60歳前に一時金として受け取れる「脱退一時金」というものもある。

個人型確定拠出年金(イデコ)に加入できる人は?

個人型の確定拠出年金であるイデコに加入できる人は、2017年1月の法改正によって大幅に広がった。

これまでは、個人型に加入できる人は自営業者(第1号被保険者)のほか、所属している会社に企業年金がないサラリーマン(第2号被保険者)に限定されていた。2017年1月の法改正では、勤務している企業に厚生年金基金や確定給付企業年金があるサラリーマンや企業型確定拠出年金の制度を導入している会社員のほか、公務員や専業主婦などの第3号被保険者も、個人型の確定拠出年金の制度を利用できるようになった。原則的に、すべての現役世代が利用可能となったのだ。

ちなみにこの法改正で会社員は、国民年金、厚生年金、企業年金、企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金の最大5種類の年金に加入することができることになった。

また、既に60歳を超えている人や、国民年金を滞納していたり免除申請が認められていたりする人は、個人型の確定拠出年金には加入することはできないので注意が必要だ。さらに、会社の規約により、個人型の確定拠出年金を利用できないケースもあるので、まず所属している企業に確認をする必要もある。

加入のメリットや拠出額と控除額の上限は?

確定拠出年金に加入するメリットは、税制優遇制度が充実していることのほか、運用に関する管理費用が安く抑えられている投資信託商品などを利用できることにある。また、企業型の場合、仮に所属する企業が倒産した場合でも、これまで拠出してきた額が保護されるというメリットがある。

税制優遇としては、拠出額の上限の範囲内で全額所得控除を受けられるという大きなメリットがある。個人型の拠出上限額は次のようになる。自営業者は月額6万8000円(年間81万6000円)まで。民間企業に所属する会社員で、会社に企業型確定拠出年金や厚生年金基金といった制度がない場合は月額2万3000円(年間27万6000円)まで、企業型確定拠出のみ実施している場合は月額2万円(年間24万円)まで、厚生年金基金などの確定給付型の年金を実施している場合や公務員は月額1万2000円(年間14万4000円)まで。専業主婦(夫)などの場合は月額2万3000円(年間27万6000円)までだ。

専業主婦(夫)や公務員などの場合は確定拠出年金に拠出できる額が低くなっているので、多額の資産の運用というより、長期間の資産運用・形成を目的として利用するのに向いていると言える。

また企業型の場合は、一部掛金を拠出したケースについても、同様に所得控除の対象となるほか、運用益が非課税となるのも大きなメリットの一つだ。

確定拠出年金の運用方法とは?

確定拠出年金の場合、個人で積立金の運用を行う。運用によって将来的に受け取ることができる年金の額が変わってくるという特徴があるので、確定拠出年金の加入者は運用方法を慎重に考えていきたいところだ。

基本的には主に「定期預金」と「投資信託」の2つの選択肢から運用方法を考えていく。投資信託の場合、購入時の必要経費が一般的な金融商品としての投資信託よりも低く抑えられている傾向にある。具体的には、購入時の手数料が無料とされていたり、運用管理費用も一般向けファンドの半分以下に抑えられていたりすることが多い。

投資信託では一般的に、日本国内や国外の株式のほか、国内外の債権、REIT(不動産投資信託)などで運用を行うことになるが、資産を分配して運用するファンドを選ぶか、一つに絞って運用するファンドを選ぶかを考えることなどがポイントだ。それぞれの投資信託の内容を理解し、メリットやデメリットを考慮した上で検討することが肝心となる。

個人型確定拠出年金(イデコ)に加入するには?

この項では具体的に個人型確定拠出年金(イデコ)に加入する方法について説明する。

個人型確定拠出年金への加入は、銀行などの金融機関で積立口座を開設するところから始まる。加入する本人がその銀行に預金口座を持っていない場合でも申し込むことができる。その場合、確定拠出年金の毎月の掛金は、本人が指定した別の銀行の口座から引き落とされる形となる。

金融機関の窓口で開設手続きを行うほか、コールセンターに電話をしたり、インターネットを使ったりする方法でも、申込資料を取り寄せることができる。また申し込みには、基礎年金番号のほか運転免許証や健康保険証などの本人確認書類のコピーが必要となる場合がある。掛金も先ほど説明した範囲内であらかじめ決めておかなければならない。

申込書類が手元に届いた後は、記入が必要な項目を埋めて添付書類とともに金融機関に返送する。ここで注意しなければいけないのは、加入を希望する本人が第2号被保険者(会社員)の場合は、申込者本人が加入対象者であることを証明する用紙を勤務先で記入してもらい、提出しなければならないことだ。この用紙は申込書類とともに送られてくる。

申し込み後、積み立てが開始されるまで通常1〜2ヵ月以上かかる。開始前には個人型確定拠出年金の口座番号やパスワードが知らされ、インターネットなどを通じて年金残高の確認や運用手続きなどを行うことができるようになる。

個人型と企業型の加入者は増えている?

個人型確定拠出年金と企業型確定拠出年金の加入者数は年々増えている。特に法改正によって加入対象者が大幅に広がったことにより、個人型は2017年に急増した。

個人型確定拠出年金では、導入が始まった2001年以降の数字をみてみると、2002年度末が1万4000人で翌年には2万8000人と加入者が倍増。その後も加入者は増え、2006年度末から2015年度末までの期間は毎年9〜27%ずつ加入者を増やし続けてきた。2016年度末には加入者は43万1000人に上り、法改正の影響もあって前年から17万3000人(+67%)増を記録している。

企業型確定拠出年金の加入者も年々増えている。ここ数年は年間10%弱ほどの伸び率で推移している。2017年12月末現在では、644万2000人が加入しており、実施事業主数は2万9132社に上っている。

確定拠出年金の「運営管理機関」にあたる銀行や信用金庫、保険会社などは2018年2月14日現在で211社に上る。

確定拠出年金のデメリットは?

最後に確定拠出年金のデメリットにも触れたい。

個人型であれ企業型であれ、確定拠出年金の場合は投資リスクを加入者本人が負う。運用方法によっては年金支給額が少なくなることも考えられ、運用にはある程度の知識が必要となる。また、原則的には60歳までに拠出額の引き出しをすることはできず、将来的に受け取る年金の額もある程度流動的で、少なくなる可能性があることも挙げられる。

加入者が増え続けている確定拠出年金だが、活用にはしっかりと知識をつけてから臨みたい。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)