確定申告の際には医療費控除額を計算して税務署に提出する必要がある。一方で、医療費控除の対象となる医療費の種類や対象期間を正しく理解していないと、申請漏れがあったり、修正申告などの手間が発生したりすることになる。

医療費控除の期間はいつからいつまで?確定申告前年の1~12月が対象

医療費控除,確定申告
(画像=PIXTA)

医療費控除の対象期間は前年の1月1日から12月31日までだ。

原則的には毎年2月16日から3月15日までの確定申告時期に、医療費控除額を計算して所得税や住民税を加味し税務署に提出するが、計上した控除対象金額や対象となる期間以外の医療費を計上するなどのミスをしてしまった場合や納税額が多すぎた場合などは「更正の請求」、逆に納税額が少なすぎた場合には「修正申告」の手続きをする必要があり、二度手間になってしまうので注意が必要だ。

一方、確定申告時期には前年の医療費について計算せず控除申告をしない場合においても、医療費控除では過去5年間に遡って医療費の還付申告をすることができる仕組みだ。例えば2017年の医療費については、2022年12月31日まで還付申告をすることが可能。その結果、還付金という形で払いすぎた税金が払い戻しされる。

医療費控除では、納税者となる本人と「生計を同一にする」配偶や親族のために支払った医療費も対象となる。「生計を同一にする」とは、納税者である本人が生活費や学費などを支払っている家族のこと。同居していることが必ず条件になるとは限らない。そのため、別居しているが仕送りをしている大学生の息子・娘などにかかった医療費も、計算して計上すれば控除対象に含まれる。

医療費の控除として認められる出費はどこまで?通院における交通費も控除対象

医療費控除の対象となる医療費は、国税庁のWebサイトで12種類に分類されて紹介されている。

「医師または、歯科医師による診療または治療の対価」が最も一般的な医療費控除の対象となる医療費と言えるが、健康診断や人間ドックなどを受けたときに支払う費用のほか、退院の際に医師や看護師へ渡した御礼金などは医療費控除の対象とならないため、誤って確定申告や還付申告のときにこれを含めて計算してしまわないよう注意が必要だ。

「治療または、療養に必要な医薬品の購入の対価」では、風邪薬などを購入した代金は控除対象となる一方で、健康増進などを目的に購入した栄養ドリンクやビタミン剤などは対象とならないことが多い。もちろん、医師から処方箋を受けて診療のために必要な医薬品を購入したケースは、医療費控除の対象となる。

病院への通院に掛かった交通費については、一部は医療費控除の対象だ。例えば、バスや電車などの交通機関を使って病院へ行った場合には医療費控除の対象となるが、タクシーを使った場合では、出産間際の緊急時などを除いては基本的には医療費控除の対象とならない。マイカーで通院した場合のガソリン代も対象外だ。一方、1人で通院できない小さい子供に付き添ったときに支払ったバスや電車などの交通費は医療費控除の対象となるので、計算して計上できるようにしておこう。

診療を受けるために必要な費用なども控除? 医療器具の購入・レンタルも対象に

通院費を含めて、医師などが診察を行う際に必要なものに支払われる対価は医療費控除の対象となる。例えば、部屋代や食事代などを含む入院代や医療器具などの購入・レンタル費用、義手や義足などの購入費用なども含まれる。

そのほか、介護保険制度下において老人介護施設や自宅で介護サービスなどを受けた場合も、一部を除いて医療費控除の範囲内だ。

また医療用から一般用に切り替えられた「スイッチOTC医薬品」をドラッグストアや薬局の店頭で購入した費用は、2017年1月から導入された「セルフメディケーション税制」により、医療費控除の特例として所得控除の対象となっている。

医療費控除の計算はどうやって行う?上限額は年間200万円

続いて医療費控除の対象となる金額や計算方法についてだが、医療費控除の対象となる金額の上限は200万円で、「実際に支払った医療費の合計額」から「保険金などで補てんされる金額」と「10万円」を差し引いた額だ。

この場合、医療費が1月1日~12月31日までの1年間で最低10万円以上支払ったケースでなければ、医療費控除の対象とならないようにも見えるが、この医療費合計額から差し引かれる「10万円」については、総所得金額などが200万円に満たない納税者については、その金額が変動する。その額は「総所得金額などの5%」と決められており、例えば総所得金額が180万円の納税者の場合は「180万円×5%=9万円」で9万円が差し引かれる計算となる。

ちなみに、この「保険金などで補てんされる金額」とは、健康保険などで受け取ることができる出産育児一時金や家族療養費のほか、生命保険などに加入していた場合に受け取ることができる入院費給付金などのことを指す。

国税庁発行の書式をダウンロードしてエクセルで楽々計上

実際に医療費控除を受けるための準備の第一歩は、パソコンなどが使える環境がある納税者の場合は、国税庁が運営するWebサイトから「医療費集計フォーム」をダウンロードすることだ。

この医療費集計フォームはエクセル形式のファイルフォーマットとなっている。このフォームに入力したデータは、国税庁ホームページ内の「確定申告書等作成コーナー」における医療費控除の入力画面で読み込んで反映することが可能で、最終的に必要になる「医療費控除の明細書」作成の手間を少なくすることができる。

実際に医療費集計フォームを開くと、「医療を受けた人」「病院・薬局などの名称」「医療費の区分」「支払った医療費の金額」「左(支払った医療費の金額)のうち補填される金額」の入力欄があり、医療費の領収書などを見ながら入力していくと合計額が自動で計算される。

パソコンを使える環境にいない場合などでは、紙に印刷された「医療費控除の明細書」をどこの税務署でも無料で受け取ることができる。税務署によっては郵送で対応をしてくれる場合もあるため、自宅近くの税務署などに問い合わせてみるのも良いだろう。

医療費控除に必要な書類は? 明細や領収書以外にも薬局レシートもしっかり保存

医療費控除を受ける場合、2016年分の確定申告までは医療費の領収書を提出する必要があるが、2017年分の確定申告からは領収書の提出をする必要がなくなった。そのため、「医療費控除の明細書」を提出すれば、それで必要書類の要件を満たすことになる。

一方で、医療費の領収書は確定申告期限から5年間は自宅などで保存する義務ができた。そのため、場合によっては国税庁が確認のため提出を求められることもあり、捨てずに保管しておく必要がある。

また、提出書類の簡略化に伴う経過措置として、2019年分の確定申告までにおいては従来の医療費における領収書の提出などにより確定申告を行うことも可能となっている。

医療費控除の特例であるセルフメディケーション制度で医療費控除を申請する場合には、薬局やドラッグストアで購入した「スイッチOTC医薬品」の金額も計上できるため、レシートを捨てずに保管しておくことが肝心だ。

単身で生計を営んでいる単身者向けの医療費控除シミュレーション

では実際に具体例を用いながら、医療費の控除金額の計算例を世帯状況別に紹介しよう。

記事の前半で医療費控除の上限額は200万円で、「実際に支払った医療費の合計額」から「保険金などで補てんされる金額」と「10万円」を差し引いて計算された額が医療費控除の対象になることを説明した。加えて、年間所得が200万円に満たない場合は計算で差し引かれる額が「総所得金額などの5%」となることも解説した。

例えば生計を同一にする家族がいない単身者で年間所得が500万円、実際に支払った医療費控除の対象となる医療費の合計が30万円のケースでは、30万円から10万円を差し引いて計算された20万円が医療費控除の対象となる。

一方で、同じく単身者でだが、年間所得が150万円で支払った医療費が30万円の場合、差し引かれる額が「150万円×5%=7万5000円」となるため、医療費控除額は30万円から7万5000円を引いて、22万5000円となる。つまり、年間所得が低い人の方が医療費控除額は多くなる仕組みということだ。

さらに、生命保険などで医療費の一部が補填された場合は、その金額を医療費控除額から差し引く。最初に例に挙げた年間所得500万円の単身者のケースで言えば、生命保険によると補填額が5万円あった場合、先ほど控除額として計算された20万円から5万円が引かれ、最終的な医療費控除額は15万円となる。

扶養家族のある世帯主向けの医療費控除シミュレーション

扶養家族がいる納税者の医療費控除額の計算について具体例を見てみよう。年間所得が700万円の納税者で、配偶者である妻が前年に第1子を出産したケースにて考えてみる。

控除対象となる医療費は本人分の骨折治療費20万円と妻の出産費用70万円。その場合、健康保険から出産育児一時金として42万円が支給される。この場合は、実際に支払った医療費の90万円(20万円+70万円)から、出産育児一時金42万円と10万円を差し引くので、最終的な医療費控除額は38万円だ。

医療費控除では生計を同一にする配偶者や親族の医療費も対象となるため、上述のように妻の出産費用や補填された金額も含めて計算することになる。一方で、前述の年間所得700万円の納税者が、配偶者の妻がいるが出産などで医療費が掛からなかった場合、本人分の骨折治療費20万円から10万円を差し引き、医療費控除額は10万円となる。

このように、単身世帯の場合や家族と住んでいる場合、生命保険や健康保険で補填を受けた場合とそうでない場合で、年間所得から差し引く項目や金額が変わってくる。「生計を同一にする」範囲によっても医療費控除の対象は変わってくるため、計算漏れがないよう注意する必要がある。岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)