株式や為替の価格は証券会社のホームページですぐに確認できますが、不動産だとそうはいきません。土地や建物の価格は、不動産業者や不動産鑑定士など不動産のプロが、大きく分けて3つの計算方法を査定します。計算式はそれほど難しくないので、予想程度のおおまかなものであれば一般人でもできるでしょう。

不動産投資において物件の適正な価格を知ることは購入する際の判断に不可欠です。融資の審査にも重要となりますし、相場感がわかれば出口戦略も立てやすくなるでしょう。本稿では、簡単な例とともに不動産評価の方法について紹介します。

価格の評価には3種類の方法がある

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(写真=maxsattana/Shutterstock.com)

不動産投資の物件は多種多様ですが、まったく同じ物件はありません。小売店にあるような定価はついていませんし、株式のように同じ性質のものを繰り返し取引するものではないので、価格を知る手掛かりは、かなり限られています。最終的に購入価格を決めるのは売り主と買い主による交渉です。しかし、交渉のベースとなる価格がなければ買い主は名乗りをあげることはできません。

なぜなら、判断材料がほとんどないからです。そこで、まず売り主側の不動産会社は価格査定をもとに売り出し価格を決めて告知します。査定するための方法は主に3種類です。このうち2~3種類を用いて計算し、個別事情を勘案して調整が必要になります。最初に市場へ提示する売り出し価格は、最終的に売り主と相談して決めるのが一般的です。

複数の査定方法を併用する理由は、どれかひとつの方法だけに頼ると極端に相場から外れるリスクがあるからです。取引価格は次にように決まります。

1.不動産会社が数種類の方法で査定
2.それらを勘案し、調整して査定書を作る
3.売り主と話し合って売り出し価格を決定する
4.買い主を募集する
5.買い主が申し込みをする
6.価格交渉(しない場合もある)
7.価格の決定

また、本稿でお伝えする計算方法はローンの査定をする金融機関が担保価値を算出するためにも使われます。特に積算法で評価する金融機関は多い傾向です。

積算法

積算法は、土地と建物を別々に評価します。評価する物件によっては、用途地域ごとに0.8や1.3など一定割合をかける「掛け目」が必要な場合もあるのです。

・土地
後述の相続税路線価によって評価します。

・建物
構造ごとに一定の建築価格を建築面積にかけ合わせて、新築時の価格(再調達現価)を求めます。そして、経年劣化分を差し引いたのが計算方法としては似ているのが固定資産税評価額です。

・土地の詳細
まず基本として、土地の価格には一物四価といわれるように、さまざまな尺度があります。

(1)実勢価格
実際に売買されている価格です。

(2)公示価格
通常取引が成立するであろうと思われる価格です。複数名の不動産鑑定士で構成される国土交通省土地鑑定委員会が鑑定します。詳細は下記の国土交通省の標準地・基準地検索システムで調べられます。
http://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0

(3)相続税評価額
相続税を計算する際に使われます。公示地価をもとに作られ、80%程度となることが多い傾向です。どの道路に面しているかで路線価が決まり、間口の広さや土地の形状に合わせて調整します。道路がない場合には固定資産税評価額に地目(「宅地」や「畑」など)と地区(〇〇町◯丁目など)で決められた倍率を掛け合わせる評価倍率を使って計算しなければなりません。

相続税の路線価と評価倍率は、国税庁ホームページ(http://www.rosenka.nta.go.jp/)で調べられます。また、一般財団法人資産評価システム研究センターの全国地価マップも便利です。
https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

(4)固定資産税評価額
固定資産税を計算する際に使われる価格で、市町村役場の人が評価します。固定資産税評価額×税率がその年の固定資産税(および都市計画税)です。公示価格の70%程度が一般的といえます。毎年所有者に連絡されますが、一部を路線価のような形で公開している自治体もあるので確認してみましょう。

相続税評価額と固定資産税評価額は、固定資産税や相続税などの計算基準に用います。例えば、固定資産税評価額は3年に1回のペースの更新です。3年の間に不動産価格の変動で所有者が不利益にならないようにするため、公示価格よりも少なめになっているといわれています。

また、固定資産税評価額は基本的に所有者でなければ確認できません。プライベート性が強いので、路線価を使うことが多い傾向です。金融機関がローンの査定で使うことも関係しています。物件を高く評価しすぎると、担保価値が低いはずの物件に多額の融資をしてしまいかねません。そのため、保守的に公示地価よりも低くなりやすい路線価を使うと考えられています。

固定資産税評価額
出典:国税庁ホームページより一部改変

例えば、上図にある■印が評価する対象の土地の場合、接面している道路の路線価は38万円です。仮に■印の面積が100平方メートルだとすると、路線価は38万円×100平方メートル=3,800万円が相続税路線価となります。(土地の形状によって調整が必要ですが、今回は複雑なので割愛します)

路線価は実勢価格よりも低めに見積もられるので、購入価格よりも路線価が高ければ、売却益が出る可能性が高いといえます。ただし、地方では路線価のほうが実勢価格を上回ることも多いので注意が必要です。

・建物の詳細
建築価格の単価は、金融機関や業者によって変わります。参考までに、所得税の計算で利用される建築価額表を見てみましょう。

建築価額表
出典:国税庁「平成28年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし」

例えば、2001年(平成13年)築のSRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)の単価は18万6,100円です。建築面積が100平方メートルの場合、新築時の価格は18万6,100円×100平方メートル=1,861万円となります。

ここから経年劣化分を差し引くのですが考え方は減価償却と同じです。耐用年数を木造住宅22年、SRC・RC(鉄筋コンクリート造)住宅47年、重量鉄骨34年として均等割りします。評価時点が2016年なら、計算は以下のとおりです。

1,861万円-(1,861万円÷47年(法定耐用年数))×13年(経過年数)≒1,346万円

路線価が3,800万円の土地にこのアパートが建っていたら、土地付き建物としての評価は次のようになります。

3,800万円+1,346万円=5,146万円

金融機関によって70~80%の掛け目を考慮することがあります。積算法は計算に使う建築価額や掛け目などの定数が評価する主体によって変わるのですが、その定数さえわかれば誰にでも計算できます。そのため、ある程度自分で計算できることがメリットです。

収益還元法

収益還元法には直接還元法とDCF法の2種類があります。収益に着目した投資用不動産ならではの価格査定方法です。売却価格の査定などで主に使われるのは直接還元法です。金融機関は積算法だけでなく直接還元法も使うケースもあります。

・直接還元法
還元利回り(キャップレート)を家賃収入で割り戻して求めます。例えば、年間の還元利回りが6%、年間想定家賃収入が300万円の場合は300万円÷6%=5,000万円が査定価格です。還元利回りとは、似たような性質を持つ物件の純利益率で、ある地域の平均的な利回りに、物件の個別性を配慮して想定します。

また、住居なのか事務所なのかといった用途、構造などによっても差が出る傾向です。一般財団法人 日本不動産研究所の不動産投資家調査の「取引利回り」だとおおまかな地域の期待利回りや取引利回りがわかります。
http://www.reinet.or.jp/chine/pdf/2017/Survey-May2017.pdf#page=12

また、HOMES不動産投資の「見える!賃貸経営」でも還元利回りに近い「想定利回り」を知ることができます。あくまでも実測値ではなく、「投資家が期待する利回り」なので、若干差があります。
http://toushi.homes.co.jp/owner/

ただ、細かい地域性や個別性を考慮した、より正確な還元利回りを知りたいのであれば、不動産業者に査定してもらったほうがよいでしょう。想定家賃収入もまた、実際に取引されている家賃をもとに想定します。賃貸不動産の情報サイトで間取りや立地などが近い物件の募集家賃を見てみましょう。

しかし、どんなに細かく調べたとしても、あくまで想定ベースの賃料です。やはり、実際の売買事例の経験値が高い不動産業者へ確認することがおすすめといえるでしょう。特に仲介・販売と管理の両方をしている会社は、実際の利回りや家賃の情報をたくさん持っている傾向です。例えば、ざっくりと収益不動産情報サイトで見た物件の価格が適正なのかを知りたいという場合、次の事例で考えてみましょう。

【事例】
物件は福岡市天神地区にある築15年の2LDK×6戸アパートです。不動産投資家調査を見ると天神地区の取引利回りは5.1%でした。家賃は築年数や間取りが似ているところを賃貸物件検索サイトで調べると9万円前後で募集しています。

想定家賃収入は9万円×6戸×12ヵ月=648万円です。直接還元法で計算すると648万円÷5.1%≒1億2,705万円が適正な価格ということになります。(※この事例は物件の個別性はまったく考慮していないので、詳しくは信頼できる不動産会社に聞いたほうが賢明です)

・DCF法
DCF法はディスカウント・キャッシュ・フロー法の略です。今後、物件を稼働することで得られる可能性がある純収入を、現在の価値に割り戻して計算します。複雑なので、あまり不動産投資家が机上で計算することはありません。また、不動産業者でも売り出し価格を決めるのに使うことはあまりないでしょう。

どちらかというと、ファンドのような資産運用のプロが物件の収益性と他の資産を比較するときに使います。投資の考え方としては参考になるので、知っておくと多方面から不動産価値を精査することが可能です。

「現在の価値に割り戻す」という表現はわかりにくいかもしれません。金融商品や不動産などの投資商品は、時間と引き換えにお金を増やすようなものです。現在と将来では本質的な価値は違います。そのため、将来の収益は一定の時期にそろえないと比較できません。そこで、現在の価値に換算するのが「割り戻す」ということです。

少し不動産を離れて考えてみましょう。例えば、1年後に101万円をもらえるとします。この場合、「現在価値はいくらか」ということを考えてみましょう。仮にA銀行の普通預金金利が1%だとします。これはリスクをほとんどとらない運用で増やせる額です。つまり、100万円を今もらって1年預けるのと、1年後に100万円もらうことの価値は同じといえるのです。

1年後の100万円を現在の価値に換算するには、利率+100(%)で割り101万円÷101%=100万円が現在価値です。これに対して、1年後の101万円は将来価値といいます。この割引率は、リスクやかかる費用を考慮して決めなければなりません。普通預金と同じ利率を使うというわけにはいかないのです。

不動産投資は空室や修繕のリスクが伴いますから、還元利回りのように地域性や構造などが似ているものを参考に設定します。ただ、目的はこの不動産への投資にどれだけ価値があるかということを見定めることです。似たようなリスク、収益性などであれば割引率の参考にするのは金融商品でも構いません。

同じような物件を扱うREITの配当率とする方法もあります。例えば、3年後の売却を考えている物件の各年度のキャッシュフロー現在価値は次のとおりです。(実際には、まったく同じような物件だけを扱うREITはないのですが、イメージとしてとらえてください)

・想定キャッシュフロー(家賃収入-ローン返済-経費)
年間300万円

・想定売却価格
1億円

・割引率
換金性や変動性(リスク)、価格変動性が似ている某ファンドのリターン5%

・各年度の現在価値
1年目……300万円÷105%≒286万円
2年目……300万円÷105%÷105%≒272万円
3年目……(300万円+1億円)÷105%÷105%÷105%≒8,898万円

・DCF法による価格
286万円+272万円+8,898万円=約9,456万円です。

計算式自体はそれほど複雑ではありませんが、割引率を求める場合、一般人では手に負えません。投資の基本的な考え方として、知っておく程度でいいでしょう。株式などの金融商品や、事業の設備購入などにも使える概念です。

・難しいが役に立つ
収益還元法は計算方法が難しく、そもそもの前提となる還元利回りや割引率を知ることも一筋縄ではいきません。ただ、収益に注目した評価方法なので不動産投資では重視すべきです。自分でやるとかなり難しいので、購入や売却を考える際には経験豊富な投資用の不動産会社に依頼するのが賢明といえます。

売買事例比較法

最もわかりやすいのは売買事例比較法でしょう。文字どおり、「似たような地域」「似たような物件」の売買事例を参考にして個別性を考慮して調整します。売買事例比較法も豊富に売買経験を有している不動産業者のほうがより正確に計算できます。

売買事例比較法は自宅の売却にはよく使われるのですが、収益不動産でメインとなるのは直接還元法と積算法です。なぜなら、収益不動産は担保性と収益性に注目して価格を考えるべきだからです。区分マンションや戸建てなら、空室であれば実需として売却することもあるので、売買事例比較法の金額も参考になるでしょう。

売買事例を検索できるサイトにはレインズ(不動産流通機構)の不動産取引情報サイトがあります。しかし、業者でない一般人は、あまり細かい内容を調べることができません。
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do

国土交通省の土地総合情報システムの中にある「不動産取引価格情報検索」は、駅からの徒歩分数、面積、用途地域など、わりと詳細に表示されています。
http://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet

売買事例も多くの情報を持っているのは業者です。一般人が調べられるのはごく一部だけといえます。信頼できる不動産業者に聞くというのはとても大事です。

不動産の評価方法を知って、相場感を養う

収益不動産の価格査定に使われる方法を大きく分けて3つ紹介しました。積算法は計算しやすいことがメリットですが、収益性という点は見ていません。収益性を重視したいなら収益還元法です。見積もりには不動産業者の判断がいるのですが、収益不動産においては重要でしょう。実需で売却が望めるようなものは、売買事例比較法もわかりやすくておすすめです。餅は餅屋といいます。購入候補を絞るためにざっくりと計算するのはいいですが、最終的には経験豊かな不動産業者に聞くのがよいでしょう。(提供:Nowstate

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