個人型確定拠出年金は、加入者が自ら掛金を出して商品を選ぶ。あらかじめ制度の仕組みから加入対象者、掛金、運用、給付に至るまで一連の知識を蓄えておくことも、準備の1つとして重要である。

個人型確定拠出年金とは何か

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(画像=PIXTA)

年金といえば、国民年金や厚生年金などの公的年金もあるが、確定拠出年金は私的年金だ。同じ私的年金である企業年金制度、例えば確定給付型の厚生年金基金などが指摘された問題に対処すべく、2001年より導入された。

問題となったのは、中小零細企業や自営業者への企業年金制度の普及不足や、転職及び退職時の年金資産の移動が困難である点だ。確定拠出年金はそれを解決するための制度としてより柔軟に設計されており、加入対象者の範囲は広く、年金資産の持ち運びも一定の範囲で認められている。

確定拠出年金は基本的に、自分で支払って(拠出)積み立てたお金で商品を運用し、その掛金の合計額と運用成績によって受給額が決まる仕組みだ。

そして確定拠出年金には企業型と、iDeCo(イデコ)と呼ばれる個人型の2種類が存在する。

加入者が掛金を運用し、その結果次第で年金額が決まる点は、企業型と個人型で共通だが、大きな違いは企業型が企業主体、個人型が加入者主体で進行するという点だ。

企業型では掛金の拠出や運用の仕方において、企業側にある程度の主導権がある。加入者の指図を受けて専門的な業務を行う金融機関など運営管理機関の選定、委託や掛金の拠出は一般的に企業側が行い、規約によっては受給権の取得にも制限が設けられる。

一方、個人型では加入者に主導権があり、拠出する掛金や運営管理機関などは加入者自身が決めることができ、また受給権は拠出時より得られる。

個人型確定拠出年金の対象者と資産の流動性

個人型確定拠出年金の加入対象となる人は、基本的に20歳から60歳未満の人すべてと、非常に幅広い。自営業者に加え、会社員および公務員とその配偶者も対象だ。年金制度の基礎である国民年金とほぼ同じように、自営業者や中小零細規模企業の従業員も含む人々に広く適用される制度となっている。

だが農業者年金の被保険者や、国民年金の保険料免除を受けている人は通常加入できない。すでに企業型確定拠出年金の加入者である人は、その規約で個人型確定拠出年金に加入しても良いと定められている場合のみ加入できる。

なお個人型確定拠出年金に加入している会社員が転職した際、転職先に企業型確定拠出年金があるなら年金資産を移換することができる。また規約で認められていれば企業型確定拠出年金との同時加入が可能で、確定給付企業年金への移換も場合によってはできる。

転職先企業に他年金制度による制限がなければ、引き続き個人型確定拠出年金のみを続けることもできる。退職して立場が変わる場合、自営業者や専業主婦などになる時も、そのまま加入し続けることは可能だ。ただし、国民年金被保険者の種別変更手続きなどを行う必要はある。

反対に企業型確定拠出年金や厚生年金基金、確定給付企業年金から個人型確定拠出年金へも、一定の要件を満たせば資産を移換できる。

個人型確定拠出年金の掛金額 5000円から1000円単位で

個人型確定拠出年金の加入者は、毎月掛け金を専用の口座に拠出し、積み立てた資産をもって商品を運用する。掛金額は最少額となる5,000円をベースに、そこから規定の上限額まで1,000円単位で自由に設定できる。金額の変更は年1回可能だ。また掛金は月単位でなく年単位で拠出することもでき、その場合は任意に決めた月にまとめて出すことになる。

最も拠出額が多いのは自営業者など、国民年金における第1号被保険者で、月額6万8,000円が上限額となっている。これは国民年金基金もしくは国民年金付加保険料との合算枠であり、それらの拠出額が合わせて6万8,000円以内でなくてはならない。

会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者には、他年金制度への加入状況などによって月額2万3,000円、2万円、1万2,000円の上限額のどれかが適用される。

会社に企業年金がない会社員なら2万3,000円、企業型確定拠出年金のみに加入している会社員は2万円だ。確定給付型の企業年金などへの加入者と、それに加えて企業型確定拠出年金にも入っている人、そして公務員などは1万2,000円が上限である。会社員や公務員の配偶者で国民年金第3号被保険者に分類される人は、2万3,000円が上限となる。

上限額を年額で表すと、自営業者などは81万6,000円、企業年金なしの会社員と専業主婦(夫)は27万6,000円だ。企業型確定拠出年金加入の会社員は24万円、確定給付型の企業年金加入の会社員と公務員などは14万4,000円である。

この掛金上限額の差は、実際に拠出される掛金額にも影響しているとみられ、国民年金基金連合会の資料「加入等の概況」(2018年3月時点)にそれが示されている。

資料によると第1号被保険者の掛金月額平均は2万7,270円、第3号被保険者は1万6,170円で企業年金なしの第2号被保険者が1万6,210円だ。企業年金がある第2号被保険者は1万620円、一般的に公務員が加入する共済組合員 は1万1,117円となっている。

個人型確定拠出年金の運用 自分で選ぶ必要あり

積み立てた掛金の運用は、定期預金や国内外に投資する投資信託など様々な商品を組み合わせて行うことになる。商品は基本的に運営管理機関が選定したものの中から選び、機関より説明を受けたうえで運用する。ただ機関がするのは説明だけで、特定の運用商品の推奨はしない。

加入者は自らで考えて運用商品を選定し、そしてどの商品をどれだけ買うか、つまり掛金の何%をどの商品に割り振るかといった配分比率を決める必要がある。主な商品としては定期預金や投資信託などが挙げられる。

とはいえ一切の支援なく、加入者がすべてをやらなければいけないわけではない。多すぎる商品数に頭を悩ますなど、自ら運用商品を選ぶことが難しい人に対しては、制度改正により支援策が設けられた。

運営管理機関により提示される商品数には制限がかけられ、通常3から35の範囲となった。ただし2023年4月末までは35を超える場合がある。また加入者が商品を選ばない場合は、一定期間後に指定の運用商品を選択したとみなす指定運用方法も導入され、特定の運営管理機関で取り扱われている。

個人型確定拠出年金の給付 加入10年以上で60歳から受け取れる

確定拠出年金において、基本となるのは老齢給付金である。主に有期の年金として、または一時金として、あるいは両方を組み合わせた形で受け取れる。

加入期間が10年以上あるなら原則60歳から受給できるが、加入期間などによっては受給開始年齢が繰り下げられる場合もある。8年以上10年未満なら61歳から、6年以上8年未満なら62歳からと、年数によって60歳以降に後ろ倒しされる。1月以上2年未満の加入期間があれば、65歳から受給できる。

一時金としての受給を選んだ時は、70歳になるまでの間に一括で受け取ることになる。有期年金としての場合は5年以上20年以下の期間、運営管理機関が定めた形で支給される。両者を組み合わせる場合は一部を一時金で、残りを年金で受け取ることになる。

老齢給付金以外の給付には、加入者が一定の障害状態になるなどの要件を満たした際に受け取れる障害給付金、加入者の死亡時に遺族が資産残高を受け取る死亡一時金、加入資格を失った人が一定の要件を満たす場合に支給される脱退一時金がある。

個人型確定拠出年金加入者の具体例

老齢給付金の原資は年金資産だが、その金額は掛金額と運用成績に左右される。では具体的に掛け金をどれくらい出してどのように運用したらどんな結果になるのか、企業年金のない企業に勤める男性従業員A氏の例を挙げて計算する。

まずA氏の場合、掛金額の上限は2万3,000円である。加入時の年齢は40歳で、以後60歳まで20年間加入し続けた。掛金は毎月2万円の年間24万円で運用利率は1%、年収は600万円、控除分を差し引いた課税所得額は298万円とする。

すると60歳になった時に掛金合計額は480万円、運用益は51万1,225円になり、その合計額531万1,225円が年金資産額となる。A氏は10年以上加入しているので、60歳からこの年金資産をもとに給付を受けることができる。なお計算結果は概算であり、手数料などは考慮していない。

税制面におけるメリット 通常の株式投資などにかかる税がかからない

個人型確定拠出年金は、加入者の運用能力が試される年金制度であり、上手く運用できれば多額の年金を受け取れるようになる。これは1つのメリットだ。

加えて、個人型確定拠出年金における大きなメリットは税制面にある。掛金は全額控除され、実質的に税負担が軽減される。A氏の例でいえば、本来1年の掛金積立額24万円には所得税と住民税、仮にそれぞれ10%とすれば合計20%分、4万8,000円の税がかかるが、その税負担がなくなる。

また運用益についても同様で、通常金融商品の運用益にかかる源泉分離課税は、個人型確定拠出年金の場合課されない。A氏の51万1,225円の運用益にかかるはずの税金20.315%、金額にして約11万8,349円が非課税となる。

さらに受給時には、年金で受け取るなら公的年金等控除、一時金として受け取るなら退職所得控除の対象になり、一定額までは税金が課せられない。(ZUU online編集部)