少額投資非課税制度(NISA)は2014年からスタートし、2017年末時点では1000万以上も口座開設されるなど、かなり普及した制度といえる。NISA制度をきっかけに株式や投資信託への投資を開始した投資家も多い。NISAには制度の改善も加えられてきたが、まだ投資家にとって注意したい点もある。特に長期保有の目的の投資家はNISAの口座開設する前に検討してほしい。

これからNISAの口座開設を検討するなら

NISA,株初心者
(画像=PIXTA)

2014年からスタートしたNISAは、上場株式などの配当所得及び譲渡所得などにかかる税金が一定の投資額まで非課税となる制度だ。税率が10%(軽減税率)から20%との引き上げられると同時に導入されたこともあり、非常に注目を集め普及した制度である。

ここではNISAの口座開設をこれから検討する投資に向けて、NISAがどのように改善され使いやすくなってきたのかを考える。そのうえで、依然として使いにくい点や注意しておきたい点を紹介したい。特に、長期での投資を検討している投資家は留意したい。

開始から5年目を迎えた制度であるが、まだ、これからNISAを始めようと考えている投資家も大勢いる。NISAが自身の想定する投資スタイルに適しているのかどうか、NISAの開始前に確認してほしい。

NISAは年を重ねるごとに進化してきた

NISAは制度開始後、毎年のように改善が加えられて来ており、投資家にとってますます使いやすい制度となってきている。

2015年からはNISA口座の再開設が認められるようになった。それまでは、NISAの口座を一度閉鎖してしまうと、同一金融機関であれ別の金融機関であれ再開設するのは認められていなかった。

また、NISAを一度開設すると金融機関を変更することは不可能であったが、金融機関の変更が年単位で可能となった。NISAを利用する金融機関を変更できるようになり、投資家の利便性は向上したと言える。例えば、ある投資家が銀行窓口でNISAの口座を開設し、投資信託の購入をしたが、手数料が高いと気づいたとする。この場合、翌年から手数料の安いインターネット証券などにNISA口座を変更することも可能となった。

2016年からは年間の非課税投資枠が100万円から120万円へと引き上げられた。これにより、NISAを最大限使って積み立て投資をしたい投資家にとっては、毎月キリよく10万円と使いやすくなった。また個別株式に投資したい投資家にとっては個別株式の選択肢も広がった。

さらに、マイナンバー制度の導入により手続きが簡素化された。それまでは、NISA口座の開設には基準日における住所を証明する書類として、「住民票の写し」などを用意してNISAの申し込みをする必要があった。転居などがあった場合は、「住民票の除票の写し」や「戸籍の附票の写し」といった書類を取り寄せなければならないケースも発生するなど、余計に手間がかかっていた。2018年以降のNISA口座の申し込みでは、これら基準日の住所を証明する書類は提出不要となっている。

このように、NISAは年を重ねるごとに進化してきた。だが投資家が見過ごしやすい注意点もある。

NISAの口座開設にはマイナンバーの提出が求められる

NISA開設にはマイナンバー(個人番号)の提出が必須となった。上述の通り、マイナンバー(個人番号)により手続きが簡素化されたのは事実だが、現在も可能な限り金融機関への提出を控えたいと感じている投資家にとっては難点である。

2016年以降、証券取引口座を開設するにはマイナンバー(個人番号)の提出が必要となった。しかしながら、2015年末までに開設した口座については、提出までに猶予期間が設けられている。現在はこの猶予期間にあるため、マインナンバー制度の安全性や行政での使われ方を確認できるまで提出を先延ばししようと考えている投資家もいるだろう。

だがその場合はNISAを開設できないことになる。金融機関にすでに口座(一般口座や特定口座)を保有していたとしても、NISAの利用を開始するには、その金融機関へのマイナンバー(個人番号)の提出は必須となる。

NISAは無くなる?終了予定の制度

現状ではNISAは恒久的なものではなく、期間限定の制度である点も理解しておきたい。NISAの非課税投資枠を設定できるのは10年間であり、2014年から2023年までとされている。2024年になるとNISAの非課税投資枠は設定されない。

投資リスク軽減のためには、しばしば一度に全額投資するのではなく投資時期を何回かに分ける「時間の分散」が提案される。このため、毎月決まった金額で投資信託を買付ける(定額積立)サービスなどを検討する投資家も少なくない。しかし、定額積立サービスをNISAで利用することができるのは2023年までだ。

中長期保有が推奨されるけれども

価格変動のリスク軽減や複利効果を得るために「中長期保有」が推奨されることも多い。しかし、NISAの非課税期間は“最長5年”である。

“最長5年”と表現されるは、NISAの非課税投資枠は年ごとに管理されているからである。例えば、NISAを利用してある年の1月最初に株式や投資信託を取得した場合は非課税で保有する期間は5年となるが、年末に取得した場合は、“約4年”しか保有できない。つまり4〜5年の間しかNISAでは株式や投資信託を保有し続けることはできない。

もちろん、どれほどの期間保有し続けるかは、市場の動向や投資家の投資スタイルや状況にもよる。この4、5年の期間が長いか短いかを一概には言えない。だが、少なくともリスクの軽減や複利効果を得るための長期の保有には十分な期間とは言いがたい。

なお、NISAの非課税期間については、非課税期間が終了する翌年の非課税投資枠にロールオーバーすることにより、この非課税期間を実質的に5年間延長することができる。

だが、NISAでの購入は2023年に終了する予定であるため、ロールオーバーができるのは2018年に購入したものが最後となる。すなわち、2019年にNISAで購入した株式や投資信託は、5年後にロールオーバーをすることができない。なぜなら、5年後の2024年にはロールオーバーする先の非課税枠が存在しないからだ。

中長期保有を目指す場合は、5年を超える長期保有をNISAで実現するのは難しい点は要注意だ。

突然の海外赴任には対応できない?非居住者になるとどうなる?

経済のクローバル化が進み、世界を飛び回る会社員も少なくない時代だ。自分や家族が、海外を勤務先として転職したり、突然の海外赴任を命じられたりで、日本を離れ海外で生活を送ることになる可能性もあるだろう。このように、海外に居住して、日本の居住者ではなくなる場合も要注意だ。出国して非居住者となる場合、出国の日の前日までにNISAを開設している金融機関に「出国届出書」を提出しなければならないと定められている。(非居住者となる条件や具体的なNISAの手続きについては、取引先の金融機関や税務署に事前に確認したい。)

出国し非居住者となった時点で、NISA口座を保有している投資家は、残念ながらNISA口座は廃止され取引ができなくなる。また、すでにNISAで購入し保有中の株式や投資信託であっても、NISAで保有し続けることはできず、課税口座に払い出されることになる。つまり出国の時点でNISAの非課税のメリットはすべて終了するのである。

2015年1月1日以降は、海外勤務などを終えて日本に帰国した場合は、再びNISA口座を開設することが可能となっている。しかし、出国時にNISAから払い出された株式や投資信託を再びNISA口座に移して非課税の対象とすることはできない。

このように、海外居住となる場合、思わぬタイミングでNISAでの投資が強制終了させられてしまう可能性があるのだ。

対象外の金融商品もある?国債、公社債投資信託もダメ!

NISAの対象商品にも注目したい。NISAの対象となる金融商品には、預貯金、国債、公社債投資信託は含まれておらず、これらに非課税で投資することはできない。分散投資をNISAのみで行うのは限界がある。例としては、株式投資信託を売却して公社債投資信託を購入することは、NISAでは不可能だ。公社債投資信託はNISAの対象商品ではないため、課税口座(一般口座、特定口座)で購入する必要がある。

投資の基本として様々な種類の金融商品に分散して投資すればリスクも分散できると、しばしば説明されるが、NISAのみでは実現できない。そのため、幅広い金融商品に投資し資産形成をしていこうと検討している場合には、NISAの枠内ですべてできると考えるべきではないだろう。NISAはあくまで一部の金融商品に対してのみ非課税となる制度であるととらえたい。

長期投資を目指すならNISAは限定的

NISAの口座開設前に知っておきたい点をいくつか取り上げた。とりわけ、投資期間が最長5年である点や制度自体が終了する予定になっていることは、場合によっては長期投資に不向きだという点も考えた。長期間投資することや分散投資は、投資の基本としてNISAのパンフレットなどにもよく掲載される。だが、それらをNISAの制度内で実践するには限界がある。

NISAは改善も加えられてきて、投資家にとってメリットが多い制度の一つと言える。しかし、これからNISAの利用することを考えているならば、自身の投資スタイルとNISA制度が合致しているか事前に考慮したい。NISAの制度に縛られた投資を行うよりも、本来、自身が行いたい投資を実現できることのほうが重要だろう。

長期投資なら「iDeCo」や「つみたてNISA」のほうが適しているかも

長期保有や分散投資を重視するのであれば、2018年からスタートした「つみたてNISA」を検討できるかもしれない。「つみたてNISA」は、NISAに比べて対象商品は大幅に絞られ、一部の投資信託しか購入することができない。また、積み立て投資しか行うことができない。しかし、非課税での保有期間が最長20年であることや、2037年までは利用できることを考えると、より長期投資に適していると言えるだろう。

比較的若い世代であれば、確定拠出年金も積極的に検討できる制度の一つだ。NISAほどの普及は見られないが、2017年1月からは個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象が専業主婦や公務員にまで拡大され、より多くの人に利用されつつある。

確定拠出年金は原則60歳までは引き出せないという制限はあるが、老後のために長期に渡って自身で運用する制度であり、税制上のメリットも多い。(潮見孝幸、金融ライター)