9月16日に引退を迎える安室奈美恵さん。6月3日には「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」の最終公演を東京ドームにて行った。バブル崩壊後の1990年代、景気が急速に冷え込む中、彼女の歌がどれだけ多くの人を勇気づけたことだろう。日本テレビ系列の「THE夜もヒッパレ」でSUPER MONKEY’Sのメンバーとして活動していた頃から応援していた筆者にとって、今回の東京ドーム公演は娘が嫁ぐのを見守るような想いだった。

ところで、最初に述べた通り彼女が引退するのは今年9月16日。残すところ約3カ月であるが、発表済みのスケジュールでは先の東京ドーム公演が最後となる。ただ、一部メディアやファンの間ではサプライズイベントを期待する声も聞かれ、筆者の周りでも彼女の「引退特需」の恩恵を受けそうな銘柄を予想するアナリストもいるほどだ。あらためて安室奈美恵さんの影響力の大きさを感じずにはいられないが、今回は日本のエンターテインメント史に大きな軌跡を残した彼女の25年を振り返りながら関連銘柄を見てみよう。

ベストアルバム『Finally』は238万枚のメガヒット!

エイベックスグループ,株価
「namie amuro Final Tour 2018 Finally ~ in Asia」台北松山空港にて(画像=VCG/VCG via Getty Images)

安室さんが公式サイトで電撃引退を発表したのは昨年9月20日、「25周年沖縄ライブ」を終えたばかりのことだった。11月8日にはベストアルバム『Finally』をリリース、売上は今年3月末現在で238万枚を記録するメガヒットとなった。

今年2月に名古屋ドームからスタートした「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」は6月の東京ドームまで17公演を展開、さらに中国、香港、台湾のアジアツアーを合わせると国内外23公演で「約80万人」を動員した。チケットの応募数は510万人に達し、再販・高騰を防ぐために顔写真付きの身分証明書がないと入場できないという厳しい措置がとられた。ちなみに、1ツアーの動員数「約80万人」は、小田和正さんの約74万人を抜き日本エンターテイメント史上最高を更新している。

しかし、安室さんがエンターテインメント史に残した軌跡はそれだけではない。彼女のファッションやメイクを真似た「アムラー」は1990年代を象徴するトレンドとなった。1997年発売の『CAN YOU CELEBRATE?』は約230万枚の売上となり女性ソロアーティストのシングルとして歴代1位を記録している。また、彼女は10代、20代、30代とそれぞれの年代でミリオンを達成するという記録も保持しているのだ。

「引退特需」は200億円を軽く超えるか?

ちなみに、約238万枚の売上を記録したベストアルバム『Finally』はCDのみならず、ブルーレイディスクやDVDを付けた仕様など数種類が販売されており、平均4000円と見積もったとしても100億円に迫る計算になる。ただし、この数字は今年3月末現在で試算したものであり、最終的にはさらなる伸びが予想される。

ファイナル・ツアー「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」のチケット代を約1万円で計算すると、約80万人を動員しているのでざっと80億円となる。その他にも「引退特需」によるグッズや過去のアルバムなどの売上がかなり増えていることも考えられよう。

今年2月には通販大手のジャパネットたかたが動画投稿サイトのユーチューブで安室奈美恵さんの通販動画サイトを公開した。元社長で「通販のカリスマ」である高田明氏が退任後2年ぶりにMCとして登場したことで話題になった。高田氏のMCが公式HPのグッズ売上を後押ししたことは想像に難くない。

さらに、今後期待されるのがファイナル・ツアーのブルーレイディスク&DVDだ。今回のファイナル・ツアーを収録した映像は8月29日に発売される予定である。この映像は3部構成からなり、6月3日の「東京ドーム最終公演」及び2017年の「25周年沖縄ライブ」のほか、5大ドーム公演の中から1公演を選べるように5バージョンが発売されるという。価格は8800円の予定。こちらも安室奈美恵さんが引退を迎える9月16日に向けて盛り上がることが予想される。実際、20周年記念時のブルーレイディスク&DVDは最初の週に約15万枚を売り上げ、女性アーティストのライブとしては過去最高を記録した。このライブの動員数は50万人であり、今回は80万人ということを考えると20万枚は売れるかもしれない。少なくとも20億円の売上は見込めそうだ。以上を考え合わせると、安室奈美恵さんの「引退特需」は200億円を軽く超える見通しである。

「引退特需」の恩恵を受ける銘柄とは?

ところで、株式市場で彼女の「引退特需」の恩恵を受ける銘柄にはどのようなものがあるのだろうか。まず、思い浮かぶのがエイベックスグループ <7860> だ。1988年設立の同社はダンスミュージックを世に広め、安室奈美恵さんや浜崎あゆみさん、TRFのブレークで急成長、1999年には東証1部に上場した。

エイベックスグループの前2018年3月期決算は売上が1.1%増の1633億円、本業の利益である営業利益が21.1%増の69億円だった。アルバムCDでは安室さんの『Finally』が238万枚を売り上げ、Kis-My-Ft2の『MUSIC COLOSSEUM』の28万枚、GENERATIONS from EXILE TRIBEの『BEST GENERATION』の22万5000枚を大きく上回り業績にもっとも貢献した。今2019年3月期は営業利益予想だけしか公開しておらず、0.9%増の70億円を計画している。ライブ収入は安室さんの公演で高水準が続く見込みであるが、反動で音楽パッケージが減少することも加味しているようだ。

エイベックスグループの株価は、安室さんが引退を表明した2017年9月20日の翌日に「特需期待」とみられる買いで1.8%高の1488円を記録、その後11月1日の高値1588円まで約9%上昇した。11月2日に2018年4〜9月期の業績を赤字に下方修正したことで一時的に大きく売られる場面も見られたが、11月8日発売の『Finally』の販売好調が伝えられると、株価も切り返し12月15日に1704円の高値を付けている。今年5月10日には前述の2018年3月期決算で今期業績が伸び悩むことが示されたため、翌11日には1374円と年初来安値を更新した。エイベックスグループの株価は、安室さんの「引退特需」期待と「引退後の売上低下」懸念のせめぎ合いとなっているようだ。

サプライズイベントはあるのか?

このほか注目される銘柄にWOWOW <4839> がある。というのも、WOWOWは安室さんのコンサートを独占放映するからだ。6月16日には昨年の「25周年沖縄ライブ」、17日には今年の「ファイナルツアー 福岡ヤフオク!ドーム公演」を放映する。同社はBSでスポーツや音楽を中心に有料コンテンツを提供しているが、月額税込み2484円を支払えば短期契約で視聴することも可能である。筆者も2015年のサザンオールスターズの10年ぶりのライブ「葡萄」を観るために短期契約した経験がある。

ちなみに、WOWOWは昨年10月22日にも安室さんの「25周年沖縄ライブ」を独占放映しているが、9月20日の引退宣言の後に問い合わせが急増したという。8月時点のWOWOWの新規加入者は4万3007件、解約3万9598件でネット3409件増であったが、9月には新規加入者4万9265件、解約4万3724件、ネット5541件増と拡大した。ただし、「25周年沖縄ライブ」の放送が終わった10月には新規加入者4万8520件、解約5万1970件とネットで3450件の減少となっている。今年の安室さんの「引退特需」への期待も大きいが、一方で反動の下げも警戒する必要がありそうだ。

また、米国のWeb動画配信サービスのHuluも安室さんのコンテンツを扱っている。昨年の「25周年沖縄ライブ」の密着取材を皮切りに安室さんの独占取材、インタビューなどのドキュメンタリー映像を毎月配信している。米企業のHuluは2011年に日本上陸を果たした。その後2014年にHuluの日本事業は日本テレビホールディングス <9404> に売却され、同社の完全子会社であるHJホールディングスが同事業を承継している。

冒頭でも述べた通り、安室奈美恵さんの引退まで残すところ約3カ月。一部メディアやファンの間ではサプライズイベントを期待する声も聞かれるが、株式市場でも文字通り「引退特需」のサプライズ銘柄が登場する可能性もないとはいえない。安室さん関連のニュースから引き続き目が離せない。

平田和生(ひらたかずお)
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。