個人事業主などの国民年金第1号被保険者は、公務員や会社員(第2号被保険者)が厚生年金保険に加入しているのに比べ、将来受け取れる公的年金の金額が少ないことが懸念される。しかし、個人事業主は、第2号被保険者が加入できない制度や、第1号被保険者の方が大きく活用できる制度などが幾つかある。本稿では、個人事業主ならば是非利用を検討したい資産形成手段を4つ紹介する。

個人事業主が利用したい年金制度(1)国民年金の付加保険料

chess
(写真=Olena Yakobchuk/Shutterstock.com)

国民年金第1号被保険者(ならびに任意加入被保険者)は、国民年金の定額保険料に上乗せして「付加保険料」を納めることで、年金額を増やすことができる。

付加保険料は月額で400円と少額だが、納付1ヵ月ごとに付加年金額が200円ずつ増えていく、非常にリターンが高い制度となっている。

たとえば、30歳から60歳までの30年間付加保険料を納めていた場合、付加年金額は「200円×付加保険料納付月数」なので、200円 × 360ヵ月(30年)で7万2,000円となり、この額が毎年国民年金の給付に加算される。

30年間で納めた付加保険料が、400円 × 360ヵ月 = 14万4,000円なので、2年間で元が取れ、20年間受給すると、納付額の10倍の金額が受け取れる計算になる。

このように、付加保険料は非常にリターンの大きい制度だが、申し込んだ月分からしか納付できない。つまり、過去の分に遡って納付する追納ができないので、利用する場合は早めに市区役所または町役場の窓口に申し込む必要がある。

また、付加保険料を納めている場合、次に紹介する国民年金基金に加入することができない。申し込む際には、国民年金基金のメリット・デメリットとよく比較して選択することが大切だ。

個人事業主が利用したい年金制度(2)国民年金基金

国民年金基金は国民年金と混同されやすいが、会社員・公務員と自営業者の年金額の格差を解消するために創設された、第1号被保険者のための年金制度である。

国民年金基金には、「地域型」と「職能型」の2種類ある。地域型は、全国の47都道府県に設立されているので、その都道府県に住所を有する第1号被保険者であれば、誰でも加入できる。対して職能型とは、弁護士や歯科医師、あるいは個人タクシーというように、特定の有資格者や業種の人向けに25基金が設置されている。加入する場合は、地域型・職能型どちらか一つの基金にしか加入できないが、それぞれの基金が行う事業内容は同じである。

(※)平成31(2019)年4月に、地域型47基金と職能型22基金が合併し「全国国民年金基金」に改組する予定である。

国民年金基金の特徴は、まず「終身年金」が基本であることだ。加入は口数制となっており、年金額や給付の型は自分で選ぶことができるが、1口目は必ず終身年金を選ぶ必要がある。2口目からは、終身型だけでなく、5年 ~15年の確定年金を選ぶこともできる。

2つめの特徴は、給付金が確定している「確定給付型」の年金であることだ。年金制度は、確定給付型と確定拠出型に大きく分けられるが、確定給付型は加入の時点で将来受給できる年金額がほぼ決まっており、将来のライフプランを立てやすいことがメリットである。

特に、ある程度年齢がいってから老後の資金を形成しようとすると、リスクのある資産での運用は損失を出した場合に老後の生活を脅かすことになる。その点、給付額が決まっている確定給付型年金は非常に安心できる。

3つめの特徴として、税制面で有利なことがあげられる。国民年金基金の掛金は、公的年金と同様に負担した全額が「社会保険料控除」の適用を受けることができる。また、給付時も「公的年金等控除」が適用されるなど、税制上のメリットが大きい。

たとえば、年間30万円の掛金を払っている人なら、所得税と住民税で約9万円が軽減される。所得が高ければ高いほど、この軽減される税金の額も大きくなるのだ。

一般の個人年金保険が最大で年額4万円(2012年1月以降に契約したもの)しか所得控除されないことと比べても、社会保険料控除がいかに税制メリットが大きいかがわかるだろう。

国民年金基金に拠出できる掛金は、月額最大6万8,000円である。ただし、これは次に述べる個人型確定拠出年金(iDeCo)との合計額の上限であるので、たとえばiDeCoに月々3万円拠出している場合は国民年金基金に拠出できるのは最大3万8,000円までとなる。

また、前述したように、国民年金の付加保険料を納付している場合は、国民年金基金には加入できないので、注意が必要だ。

個人事業主が利用したい年金制度(3) 個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は、国民年金基金と同様、国民年金と組み合わせることで個人事業主の老後資産形成を後押しするための制度である。

国民年金基金と大きく違うところは、国民年金基金が確定給付型であるのに対し、iDeCoは自分で掛金を拠出し、その掛金の運用方法を自分で選ぶことで最終的に掛金とその運用益が給付額となる「確定拠出型」の制度である点だ。

資産運用はあくまで自己責任となるので、失敗すれば自分が払った掛金より将来の受給額が下がる恐れはあるが、資産運用が上手くいけば将来の年金額を大きく増やせる可能性もある。

また、iDeCoの運用商品には預金や保険などの元本確保型商品もあるが、リスクをとる代わりにリターンも狙える投資信託などもある。これらの商品で資産運用する場合、運用益が全額非課税になるメリットも見逃せない特徴である。

本来、資産運用を行って利益が出た場合、その利益の20.315%が税金として引かれるのだが、iDeCoの掛金を運用して利益が出た場合は、この税金が「0」になる。

たとえば100万円の掛金を運用した結果、150万円になったとする。通常の金融機関の口座であれば、利益の50万円に20.315%の税金がかかるので、10万1,575円引かれ、受け取れるのは39万8,425円となるが、iDeCoで運用した場合はこの税金が非課税になり、運用益50万円が丸ごと受け取れる。

特に、長期で運用する場合、この利益がさらなる利益を生む元金にもなるので、高い複利効果が期待できるのだ。

大雑把な分け方をすると、国民年金基金は少ないが安定した利益を求めることができ、iDeCoはリスクをとってリターンを狙う投資とみなせるが、iDeCoにも元本確保型の商品はある。どうしても元本を割るのが嫌だという人は、iDeCoですべて元本確保型の商品を買うよりは、国民年金基金を選ぶのも賢い選択かもしれない。

なぜなら、iDeCoの制度を利用するには、年間2,000円から7,000円程度の管理手数料がかかるからである。国民年金基金に手数料はかからない。もちろんiDeCoには所得控除があり、利用するだけで税金が減額されるが、国民年金基金も所得控除の対象なので、同じ元本確保であればiDeCoのほうが手数料分だけ不利という見方もできるのだ。

なお、国民年金基金とは異なり、iDeCoは付加保険料と併用できる。したがって、これら3つの組み合わせとしては、いずれも単体で利用する以外では、「付加保険料+iDeCo」または「国民年金基金+iDeCo」の2パターンとなる。

iDeCoと付加保険料を併用する場合、iDeCoの掛金は1,000円単位での変更となるので、上限金額は6万8,000円 - 400円 = 6万7,600円から1,000円未満を切り捨て、6万7,000円となる。

個人事業主が利用したい年金制度(4) 小規模企業共済

小規模企業共済は、国の機関である中小機構(中小企業基盤整備機構)が運営する制度で、小規模の企業の役員や個人事業主のための退職金制度である。

この制度は、将来の年金というより「経営者の退職金」という色合いが強いので、国民年金基金やiDeCoとは少し特徴が異なる。

1つめの特徴は、掛金の増減の自由度が高い点である。小規模企業共済では、月々の掛金が1,000円から7万円まで、500円単位で自由に設定が可能であり、支払方法も月払い、半年払い、年払いから選択できる。前納も可能であり、前納すると一定割合の前納減額金を受け取ることもできる。

掛金は全額を小規模企業共済等掛金控除として所得控除できるうえ、1年以内の前納掛金も同様に控除できる。

特徴の2つめは、受け取りのタイミングが年齢ではなく「退職」や「廃業」であり、満期や満額がないことだ。国民年金基金やiDeCoの場合、原則として60歳まで受け取ることができないので、個人事業主などで事業がうまく行かない場合などに、お金を引き出すことができないというデメリットがある。

一方、小規模企業共済は退職金制度なので、個人事業を廃業した場合は、給付を受け取ることができる。廃業時にまとまったお金を受け取れるというのは、ここで紹介している他の制度にはない大きなメリットだろう。ただし、240ヵ月(20年)以内に解約すると、共済金の額が掛金合計額を下回るので、注意は必要だ。

3つめの特徴は、掛金の範囲内で低金利の貸付制度を利用できることだ。小規模企業共済の契約者は、事業資金を低金利で借りることができる。即日貸付けも可能で、貸付理由も一般貸付けから緊急経営安定貸付、福祉対応貸付、事業承継貸付などさまざまある。

このように、小規模企業共済制度は他の制度と特徴が異なるため、うまく組み合わせて利用することで、老後と経営のリスクをどちらも減らすことができるのである。

課税所得と税金の比較

では一例として、課税所得が500万円の人の場合を見てみよう。ここではわかりやすくするために、今回紹介している制度以外の控除は考えないものとする。

まず、現状の所得税を計算してみる。課税所得500万円は、330万円を超え695万円以下の区分に該当するので、この場合の所得税は、500万円 × 20% - 42万7,500円で52万2,500円となる。

この人が、iDeCoに毎月3万円、国民年金基金に毎月3万8,000円(2つの制度の合計で6万8,000円)、小規模企業共済7万円に加入したとする。

3つの制度を合わせると、毎月13万8,000円、年間で165万6,000円の所得控除が受けられる。よって、課税所得は500万円 - 165万6,000円で、334万4,000円となる。

この場合の所得税は、同じく330万円を超え695万円以下の区分に該当するので、334万4,000円 × 20% - 42万7,500円で24万1,300円となる。

つまり、このケースであれば、年間165万6,000円を老後あるいは廃業のために拠出できるうえ、52万2,500円と24万1,300円の差額である28万1,200円の所得税を減額することができることになる。

老後の豊かな生活のために今からできることをはじめよう

自営業者などで老後の心配をしている人は多いが、今回紹介したように将来の年金を増額するための制度は幾つかある。これらはすべて自ら加入手続きをしなければならないが、加入や掛金の額を自分で決められる分、自分の事業規模に応じて柔軟に老後に備えることもできるのだ。収める税金も減額できるので、これらの制度をうまく組み合わせて利用することで、老後や事業に備えることを考えたい。(提供:確定拠出年金スタートクラブ

【オススメ記事 確定拠出年金スタートクラブ】
主婦はiDeCo(個人型確定拠出年金)で節税できるの?
転職したとき! 退職したとき! 個人型確定拠出年金(iDeCo)はどうすればいい?
2018年は「つみたて元年」 積立投資のメリットを知ろう!
外貨での資産運用! 「円高」と「円安」ですべき事
つみたてNISA制度の開始はいつから?どうやって使えばいいの?