「へえ、こんな商品があるんだ!」「これ欲しい!」テレビ番組を見て思わずそう感じたことはないだろうか? 自分がそう感じるということは、他にも同じように感じている視聴者がたくさんいるかもしれない。そんなとき、筆者はその商品を提供している企業の業績や株価を調べるようにしている。その番組で紹介された企業の株価が上昇することも珍しくないからだ。

ちなみに、筆者の経験から言わせて頂くと、(1)知名度が低い、(2)思わず「欲しい!」と叫びたくなるような商品を提供している……企業の株価ほど敏感に反応しやすい。誰でも知っている大企業の情報はすでに株価に織り込まれていることが多いからだ。逆に知名度の低い企業の株価ほどヒット商品等の好材料が見落とされていることがある。

たとえば、小売業のOlympicグループ(以下、オリンピック) <8289> がそうだ。6月18日、オリンピックの株価は買い気配で始まりストップ高(16.1%高)の721円に急上昇、翌19日もストップ高(20.8%高)の871円まで値を飛ばす展開となった。17日(日曜日)早朝のテレビ番組で『大発明! 電気を使わずに坂道スイスイ! 謎のペダルとは?』と題して同社の自転車パーツが紹介されたことが買い手掛かりとなったようだ。筆者もテレビの前で思わず「欲しい!」と叫んでしまったが、やはり同じようにオリンピックの株価を調べた投資家もたくさんいたようである。今回はオリンピックについて見てみよう。

電気を使わず坂道をスイスイ走る「フリーパワー」

オリンピック,株価
(画像=ZUU online 編集部)

オリンピックはスーパーマーケットやホームセンター、ペット専門店、自転車専門ショップ等をチェーン展開する独立系の小売業者だ。出店のほとんどを東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の首都圏に置くドミナント戦略をとっている。このため首都圏以外の人には知名度は低いかもしれない。

今回話題を呼んだのはその自転車専門ショップ「サイクルOlympic」が販売した新商品「FREE POWER(フリーパワー)」である。前述の番組では自転車業界の新テクノロジーがいくつか取り上げられ、その一つとして電動アシストを使わなくても坂道をスイスイ走ることのできるペダル「フリーパワー」が紹介されたのだ。

フリーパワーは自転車ギアのクランク部にシリコーンを組み込んだペダルである。「ペダルを踏み込む力」だけでシリコーンを圧縮し、その反発力でギアを回し推進力に変えるシステムだ。開発期間に10年を要した電気を使わない自転車ペダルなのだが、筆者は「自転車の歴史」を変えるほどの大発明になるかもしれないと考えている。

「自転車の歴史」を変えるほどの大発明?

自転車好きの人には分かると思うが、ペダルが「12時6時方向」のデッドゾーンにあるとき、脚からのパワーが一瞬伝わらなくなることがある。これは自転車の歴史の中でギア効率を上げるための「永遠の課題」とされてきた。フリーパワーはギアの中の5つの歯車にシリコーンを内蔵し、その反発力でチェーンを引っ張りながらロスを低減することで、上記「永遠の課題」を解決したのだ。走行テストでは通常のギアと比較して加速性が20%も優れているという。同社は「こぎ出しが軽い」「膝や足首に優しい」「スピードを持続させる」「長距離・坂道に強い」「筋肉痛になりにくい」と5つの効果をうたっている。

サイクルOlympicではフリーパワーを搭載した自転車を2種類、4万5800円で販売している。一般の自転車に比べると倍以上となるが、電動アシスト自転車の10万円前後に比べるとかなり割安だ。見逃せないのは、フリーパワーは既存の自転車に組み込むアシストギアとしても販売していることだ。こちらはサイズにより何種類かあり、新車時の取り付け代で1万円程度、持ち込みの自転車に取り付ける場合は1万3000円程度となっている。

筆者は直感的に「自転車の歴史」を変えるほどの大発明になると感じたのであるが、同じことを考えていた投資家もたくさんいたようでオリンピックの株価は18、19日に連日のストップ高を記録している。ただ、オリンピックは約2カ月前の4月16日の決算短信(2018年2月期)で「サイクルOlympicでは、『電池のいらないアシスト自転車』を実現する画期的なギア『FREE POWER』の取り扱いを開始しました」と発表しており、筆者としてはなぜもっと早く気づかなかったのかと悔やまれるところでもある。上場企業のIR等を小まめにチェックすることの大切さをあらためて痛感した出来事であった。

平田和生(ひらたかずお)
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。