後継者が親族内で決まっていて、大きな体制変更なく事業承継できる場合にはあまり話に出ませんが、第三者への事業承継の場合や事業特性が大きく異なる事業を一つの会社で保有している場合には、M&Aが検討されます。そこで、組織再編の種類や適している場合などをわかりやすくご紹介します。

事業承継においてM&Aが有効な場合

M&A
(写真=Atstock Productions/Shutterstock.com)

事業承継には、次に挙げる3パターンの後継者候補が考えられます。

1つめは親族内です。中小企業の場合、経営理念など意思疎通が図りやすい現経営者の子どもなどに承継する場合が多いですし、事業が順調な場合は、親心として子どもに継がせたい、継いで欲しいと希望する方もいるようです。

2つめは従業員です。親族内にふさわしい後継者がいない場合、事業内容を理解している会社内の役員や従業員が考えられます。

3つめは、親族内や従業員どちらにも該当する後継者がいない場合、第三者への承継が候補になります。第三者に譲渡することはM&Aと呼ばれます。

その際、注意したいことは、合併・会社分割・株式交換・株式移転などによる組織再編には、会社法309 条2 項などにより、株主総会での特別決議が必要になります。普通決議は2分の1以上の賛成で可決できますが、特別決議は3分の2以上の賛成が必要となるので、経営者もしくは親族・役員などの株主で安定多数の議決権割合を確保しておかなければなりません。株式が分散している場合は、事前に株式を買い取るなどの準備が必要です。

中小企業のM&A増加の背景

中小企業のM&Aは親族内などの後継者不在に直面した会社の事業承継問題を解決するための有?な選択肢として、近年は増加しています。中小企業庁から出された2018年版中小企業白書によると、中小企業のM&Aを手掛ける東証一部上場3社による成約件数は、2017年が526件で前年の387件から139件の増加(増加率35.9%)でした。また2012年は成約件数157件で増加件数が369件(同235%)と、5年前に比べても大幅に増加しています。

また、譲渡をしようとする企業(譲渡元企業=企業の売り手)がこの機会を利用して環境変化に応じた事業転換を試みたり、新規事業をゼロから立ち上げるよりも、時間やリスクが圧倒的に少ないM&Aを活用しようと買収を希望する企業(譲渡先企業=企業の買い手)が増えてきていることもM&A増加の背景となっているようです。

M&Aの実際

M&Aの内容を理解するため、図1を見てください。

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図1 組織再編の概念図

株式譲渡とは、譲渡元企業の経営者が保有している株式を譲渡先企業へ譲渡することにより、譲渡先企業の子会社となる方法です。譲渡企業の株主が変わるだけで、基本的に従業員の雇用条件、取引の債権債務、第三者との契約、許認可などは保たれるため、従業員や取引先などにとっての影響や手続きが他の方法に比べて、簡便といえます。

事業譲渡とは、譲渡元企業の事業の全部、もしくは一部を譲渡先企業へ譲渡する方法です。メリットとしては、譲渡する資産を事業ごとや、債権債務、契約関係、従業員の雇用関係などを一つひとつ確認するため、譲渡先企業にとって、必要な資産のみを引き継げることです。デメリットは、その裏返しで、譲渡元企業と譲渡先企業による上記内容確認及び、同意が必要なことから、手続きが煩雑になるといえます。

その他の方法としては、合併と会社分割などです。

合併は、2つ以上の会社を1つの会社に統合することです。譲渡元企業の全資産・負債と従業員などを譲渡先企業に移転します。譲渡元企業の株式は、譲渡先企業の株式に一定の割合で交換され、譲渡元企業は消滅します。メリットは、譲渡先企業と一体となるため、結びつきが強くなります。デメリットは、組織や従業員も結合することから、組織の権限や役職ごとの職務の責任範囲、雇用条件の調整などは難航が予想されます。

また、会社分割は、複数の事業を行っている譲渡元企業が、ある事業部門のみを子会社もしくは、兄弟会社として切り出し、譲渡先企業に株式譲渡もしくは合併することです。会社分割は労働契約承継法によって、分割事業の雇用が保障されることや特定事業のみを譲渡できるメリットがあります。

M&Aを活用して事業承継を乗り切る

中小企業の後継者不足を背景に、M&Aの件数が増加しています。後継者がいないからと、事業承継計画の策定を遅らせてしまうと、将来取引先や従業員など多くの関係者に迷惑をかけてしまうかもしれません。

後継者がいない場合に加え、子ども2人に事業を引き継がせたい場合や事業を成長させる意欲のある経営者に事業を譲渡したい場合などには組織再編が活用できます。株式譲渡や合併・分割など現在の会社の状態や譲渡先企業の状況に応じた対応が検討できますので、金融機関などの専門家に早めに相談してみてはいかがでしょうか。(提供:プレミアサロン

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