先週も暑い一週間だった。災害レベルの猛暑が日本列島を襲い、埼玉県熊谷市では23日、最高気温41.1度と観測史上最高を記録した。ところで、株式市場に長年携わる筆者は猛暑になると「どの銘柄が上がるの?」との質問を多く受けるが、残念でならないのはセブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン)が17日、一部の店舗で試験的に開始する予定であった100円生ビール「ちょい生」の中止を発表したことだ。もし、この猛暑で「ちょい生」の販売を続けていたらセブン&アイ・ホールディングス <3382> の株価はストップ高を記録していたかもしれない。実際、筆者の周りでは「ちょい生」の再開を望む市場関係者の声は多い。

今回はセブンで「ちょい生」が中止になった経緯を振り返りながら、ヒット商品とその「関連銘柄」を探すプロセスを紹介したい。

なぜ、セブンの「ちょい生」は中止になったのか?

セブン&アイ,株価
(画像=Quality Stock Arts / Shutterstock.com)

筆者はセブンカフェ(100円いれたてコーヒー)の愛飲者だ。なんといっても本格的なコーヒーを100円で味わえるのが魅力である。セブンカフェとの出会いで、缶コーヒーを買ったり他のカフェに行く機会が減少したのは筆者だけではないはず。セブンカフェの登場は、多くの人の消費行動に影響を及ぼしたのではないだろうか。

そのセブンが新たに打ち出したのが生ビールの「ちょい飲み」だった。こちらもSサイズ100円という価格設定である。生ビール好きの筆者はワクワク感が止まらない想いだった。ちなみに、セブンの「ちょい生」が明らかになったのは7月14日のこと、17日の首都圏の複数店舗の試験販売に向けて「ちょい生」サーバーの設置が始まり、ツイッター等のSNSで拡散されはじめた。SNSに投稿された画像から推察するとその生ビールはキリンの一番搾りのようだ。100円のSか190円のMを選んで「ちょい生」用のカップをレジで購入、セルフサービスのサーバーで注ぐ仕組みと見られる。SNSでは筆者と同様にワクワク感の止まらないユーザーも多かったようで、全国販売もそう遠くないうちに実現するように思われた。

ところが、SNSの反応はポジティブなものだけではなかった。セブンは中止の理由について「販売体制を整えることが難しい」として詳細を公表していない。だが、未成年やドライバーへの対策、酔っ払い客等によるトラブルに関する不安等もSNSで見られたことから、レピュテーションリスクを考慮しての中止ではないか、との憶測もある。

10分でリフレッシュできる「幻の黄金セット」

筆者としては本当に残念でならないが、それにしてもコンビニで生ビールを販売するのは、そんなに危険なことなのだろうか? 実はコンビニで生ビールを販売するのはセブンが初めてではない。東日本旅客鉄道(JR東日本) <9020> の子会社が運営する「NEWDAYS」は2016年からアサヒスーパードライの生ビールの販売を開始している。NEWDAYSは駅ナカを中心に出店しており、JR東日本管内の46店舗で旅行や出張の合間の「一杯需要」に対応しているようだ。また、台湾のセブンではサントリーのプレミアムモルツの生ビールを販売している。

恐らく、コンビニで生ビールを提供すること自体に問題はないように思うのだが、いかがだろうか? 暑い日にセブンの100円生ビールと123円のからあげ棒のセットは、筆者にとって10分でリフレッシュできる「黄金セット」と期待していただけに残念でならない。

生ビール参入が明らかになった17日、セブン&アイ・ホールディングスの株価は一時2.4%高と大きく買われる場面も見られた。それだけ市場の期待も大きかったということなのだろう。販売中止がどれほどの消費者、投資家を落胆させたことだろうか。

ヒット商品とその「関連銘柄」を探すプロセス

ところで、最近の日本株は夏枯れの様相を呈しているが、そんな局面では「猛暑関連銘柄」が物色されることも珍しくない。筆者は猛暑関連の大本命として「ちょい生」を想定していた。実際、株式市場ではヒット商品を生み出した企業を中心に複数の「関連銘柄」へと波及するように上昇するパターンが良く見られる。今後、同じようにヒット商品が誕生したときの「関連銘柄探し」のヒントになるかもしれないので、以下に「ちょい生・幻の関連銘柄」を連想するプロセス紹介しておきたい。

まずはセブン&アイ・ホールディングスだ。「ちょい生」は伸び悩みが目立ち始めたセブンの集客、売上の起爆剤になる可能性を秘めていた。キリンの一番搾りが「ちょい生」に採用されていればキリンホールディングス <2503> の株価にも影響を及ぼしていたことだろう。

ちなみに、セブンカフェは2013年に販売を開始、2018年2月期には約10億杯に達し、売上で1000億円を超えている。「ちょい生」が同じようにヒットした場合、キリンがビール市場で念願のトップシェアを奪回する可能性もあったのではないだろうか。

ちょい生のヒットは「ちょいつまみ」に波及?

セブンカフェのケースではコーヒー豆、コーヒーマシン、コーヒー容器などの関連銘柄も注目された。「ちょい生」関連としては、サーバー、ビール用プラスチックカップ、おつまみ、イートインスペース関連機器などが連想される。

サーバーとカップはビール会社(キリン)から提供された可能性がある。 筆者が調べた限りではニットクという企業がキリンにサーバーを提供しているようだが未上場だ。このほか、四季報でセブンに関するコメントがある会社を検索すると業務用厨房機器のホシザキ <6465> 、冷凍ケース等を取り扱う中野冷機 <6411> などがあり、関連銘柄として注目されたかもしれない。

さらに「ちょい生」で販売増加が期待されるのが「ちょいつまみ」だろう。からあげ、からあげ棒、焼き鳥、おでん、総菜などの売上が連動して拡大した可能性が高い。四季報にセブンのコメントがある会社ではハム大手のプリマハム <2281> 、セブン向けに弁当やサンドイッチ、惣菜等を製造・販売するわらべや日洋ホールディングス <2918> の業績拡大に波及したことだろう。加えてイートインスペース関連の需要も拡大した可能性もある。

ともあれ、セブンの「ちょい生」販売中止は大ヒットのチャンスを逃してしまった印象は否めない。未練がましいと思われるかもしれないが、何とか再開を検討してもらえないだろうか。筆者はお行儀良く、あくまでも爽やかにサクっと「ちょい生」を楽しむつもりだ。

平田和生(ひらたかずお)
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。