7月26日、米国株式市場に激震が走った。SNS大手フェイスブックの株価が1日で19%も下落、時価総額13兆円が吹き飛んだのだ。その余波は「FANG株」をはじめとする他のテクノロジー銘柄にまで及び、「フェイスブック・ショック」と呼ぶべき現象を引き起こした。株式市場に長年携わる筆者は、それまでの大きなトレンドを一変させる「象徴的な異変」に何度も遭遇したことがあるが、今回のフェイスブック・ショックも例外ではなく「FANG株」時代の終焉を示唆しているのかもしれない。同時に日米の株式市場ではFANGに代わる「新たな主役」が頭角を現している。詳しく見てみよう。

たった1日で「時価総額13兆円」が吹き飛ぶ

フェイスブック,株価
(画像= tanuha2001 / Shutterstock.com)

フェイスブックはアマゾン、ネットフリックス、グーグル(アルファベット傘下)とともに米国株式市場のシンボルストック的な存在であり、それぞれの頭文字をつないで「FANG株」と呼ばれている。実際、7月25日にナスダック総合指数が過去最高値を更新したのは「FANG株」の貢献が大きいと見られている。NYダウ(工業株30種平均)が今年1月の過去最高値を抜けずにいるのとは対照的であった。

異変が起きたのはその7月25日だった。フェイスブックが同日発表した2018年4〜6月期決算は売上成長率が41.9%、EPSは1.74ドルとアナリストのコンセンサスを上回る好決算だった。しかし、7〜12月期の売上成長率については26%前後に低下し、営業利益率も現在の40%台から30%台半ばに落ち込むとの見通しを示した。好決算を期待して同日のフェイスブック株は過去最高値を付けていたのであるが、市場は7〜12月期の見通しに失望し、翌26日には一転して19%安と急落、たった1日で時価総額13兆円を吹き飛ばす結果となった。株式市場に長年携わる筆者も、1日でこれほど巨額の時価総額消失は記憶にない。

冒頭で述べた通り、その余波は「FANG株」をはじめとする他のテクノロジー銘柄にまで及び、ナスダック総合指数は26日から3日連続安を余儀なくされたのである。

「FANG株」に代わって相場をけん引するのは?

注目されるのは「フェイスブックショック」でナスダック総合指数が下落した26日、NYダウが0.4%高と5カ月ぶりの高値を付けたことである。その後の動きを見ても、ナスダック総合指数が26日からの3日間で3.8%下げたのに対し、NYダウは0.4%安にとどまるなど底堅く推移していた。

NYダウの下値を支えたのは、銀行株の上昇だった。米大手JPモルガン・チェース銀行の株価は直近安値である7月6日の102.20ドルから7月30日には117.61ドルまで15%も上昇している。米国では「FANG株から銀行株へ主役が代わったのでは?」との観測も浮上しているが、筆者もそれまでの大きなトレンドを一変させる「象徴的な異変」ではないかと感じている。

銀行株の上昇は米国に限った話ではない。日本最大の金融グループで傘下に三菱UFJ銀行を擁する三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> の株価は6月22日の直近安値607円60銭から8月1日の706円まで16%上昇した。この間の上昇率はJPモルガン・チェース銀行とほぼ同じだ。メガバンクの株価は業績よりも国の金融政策や景気、金利動向などのマクロ環境に左右される側面がある。したがって、世界の大手銀行の株価はシンクロして動くケースも珍しくない。

売買高ランキング上位の常連で個人投資家の人気も高い、みずほフィナンシャルグループ <8411> も6月22日の直近安値183円90銭から8月1日には199円80銭まで9%上昇している。さらに地方銀行株の上昇も顕著だ。ふくおかフィナンシャルグループ <8354> は7月5日の532円から8月1日には660円まで24%上昇、岩手銀行 <8345> と十八銀行 <8396> は8月1日に年初来高値を更新している。

世界的に金利が上昇傾向にある中で

このように銀行株が上昇している理由として「世界的な金利上昇」を挙げることができる。銀行の本業は、顧客から集めた預金を運用して利ザヤを稼ぐことである。そして、低いリスクで大きな資金が運用できるのが国債市場だ。基本的には長期債利回りが上昇すれば利ザヤが拡大し、収益拡大が見込める。

リーマンショックによる世界的なの経済危機を回避すべく、各国の中央銀行は未曾有の量的質的金融緩和で対処した。あれから10年、現在は世界的に景気が回復したことで、デフレを招きかねないその低金利状態を正常化するプロセスに移行しつつある。たとえば、米国が進めている利上げがそうであり、欧州も緩和の出口を意識する局面を迎えている。

日本も例外ではない。7月31日、日銀は金融政策決定会合で長期金利の誘導レートを「柔軟に調節」することを決めた。すなわち、これまで0〜0.1%程度に誘導していたレートの変動幅を広げるのである。金融緩和は続けながらも「長期緩和の副作用」を考え、事実上は「金利の上昇を容認する」スタンスだ。日銀の決定を受けて8月1日の10年債利回りは0.115%に上昇し、2017年2月以来1年半ぶりの高水準を付けている。

「資産株」から「成長株」へ?

8月1日の米長期債利回りは一時3.01%と2018年6月以来の3%台乗せとなった。米長期債利回りが2月に急騰して3%に迫った時に株式市場はショック安を演じたが、米4〜6月のGDP(国内総生産)は前期比4.1%増と4年ぶりの高成長で米経済の強さは際立っており、今回の金利上昇は大きな懸念材料となっていないようだ。

長期にわたる金融緩和・マイナス金利という収益環境下、三菱UFJフィナンシャル・グループ株はPER10倍、PBR0.6倍、利回り2.8%で推移していた。他のメガバンク株とともに配当狙いの「資産株」と位置づけられていたが、このまま好調な景気を背景に利ザヤの改善が継続するようであれば、銀行株への評価が「資産株」から「成長株」へと変化し、世界の株式市場の主役になる可能性を秘めているのではないか。筆者はそう考えている。

平田和生(ひらたかずお)
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。