亡くなった人が書き残したものに、「遺書」と「遺言書」があります。一般には混同して使われることも多い二つの言葉ですが、実は大きな違いがあります。「遺書」には故人の気持ちやメッセージなどが様々に、また自由に綴られますが、たとえお願いなどが書いてあっても受け取った人に対して法的な拘束力はありません。一方「遺言書」は、民法に基づいて書き方や内容、効力等が細かく規定されており、法的拘束力を持ちます。

遺言書とは

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(写真=Lemon Tree Images/Shutterstock.com)

遺産分割においては、民法で法定相続分が定められています。しかし、故人の最後の遺志を示す遺言書は、法定相続分よりも優先されます(但し、「遺留分」という法定相続人が持つ最低限の権利は、その相続人の請求があれば侵害できません)。遺言書は、満15歳以上で判断能力に問題がない人なら誰でも書くことができます。しかし、偽造や変造を防ぐために、遺言書の作成方法には規則が定められています。緊急時などの特別な場合に使うものを除いて、作成方法には3つの形式があります。以下で順番に見ていきます。

遺言書の種類と特徴、注意点

1. 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、文字通り自筆で書く遺言書です。ペンと紙さえあれば自分一人でいつでも作成できることが利点ですが、実は書き方には細かい要件があります。それをすべて満たしていないと遺言自体が無効となるので注意が必要です。要件は5つあります。

① 全文を自分で書くこと(今年の法改正により、一部が手書きでなくても良くなりました。詳細は後述します。)
パソコン等で作成したものは認められません。また字が下手だからという理由等で他人に代筆してもらったものも認められません。
② 日付を入れる
「年月日」で書きます。西暦でも和暦でも構いませんが、「吉日」などは認められません。時間を書く必要はありませんが、1日の間に2通以上書く場合には、順番を特定できるように時間も書いておきます。
③ 自分の名前を手書きで書く
スタンプ等は認められません。
④ 印鑑を押す
実印でなくても良いとされますが、偽造を疑われる等といった後々のトラブルを避けるため、実印がベターです。
⑤ 書き間違えた部分は、定められた方法で修正する
書き間違えた部分に2重線を引き、修正印を押して終わり、ではありません。どこをどのように修正したのかを空白欄に記載し、署名押印する必要もあります。この修正方法が正しくないと、修正した部分が無効になってしまうので注意が必要です。

書き上げた遺言書は封筒に入れ、封印します。これらはしなくても遺言が無効とはなりませんが、変造を避けるためにはしておくほうが無難です。

手軽に思える自筆証書遺言ですが、デメリットとしては、変造や破棄される恐れのあることや、そもそも見つけてもらえないという可能性が挙げられます。少なくとも、親族の誰かには遺言書の存在を告げておいた方が良いでしょう。また、上記の要件を満たしていない場合、無効と判断される可能性があることも注意点です。

2.公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。公証人に作成してもらうため、無効とされる可能性がほぼ無いことがメリットです。また遺言書は公証役場で保管されるため、変造や紛失の心配もありません。公正証書遺言には証人二人が必要となります。この証人には、未成年や、推定相続人やその家族といった利害関係者はなることができません。適当な人が自分で見つけられない場合は、公証役場から有料で紹介してもらうこともできます。

デメリットとしては、まずコストがかかることです。公証役場での手数料は、遺言に記載する財産の額によって異なります。紹介を受けた場合は、証人への報酬も必要です。また、証人には遺言の内容が知られてしまうことも覚えておきましょう。

3.秘密証書遺言
自分で作った遺言書を封筒に入れて封印し、公証役場でその存在のみを証明してもらうものです。自筆証書遺言と違って、パソコンで作成しても代筆であっても構いませんが、署名だけは自筆でなければなりません。また封印は、遺言書内に押印したものと同じものでなければ無効となります。利害関係者でない証人が二人必要ですが、公正証書遺言と違って、証人に遺言の内容を知られることがないのがメリットと言えます。遺言書は自分で保管することになりますが、相続発生後証人が遺言書の存在を相続人に知らせてくれることが期待できます。

デメリットは、こちらもコストがかかることです。公証役場の手数料は一律11,000円です。証人の紹介を受けた場合は、その報酬も支払います。また、公証役場は遺言書の中身は確認しないので、内容に不備があり、無効となってしまうこともあり得ます。さらに遺言書は自身で保管するので、紛失や隠匿、変造の可能性は残ります。このように秘密証書遺言は手間のかかる割には確実性に欠けるので、利用者は多くないのが現状です

相続法改正で自筆証書遺言は使いやすくなる

2018年に民法改正があり、自筆証書遺言の要件が一部緩和されました。具体的には、財産目録については自筆でなく、パソコン等で作成したものも認められるようになりました。銀行通帳のコピー等も添付資料として認められます。但し、自筆でない書類には署名押印が必要です。先述の通り、書き間違えたときの修正は非常に厄介であるため、今回の改正で遺言者の負担はかなり軽減されるでしょう。この法律は2019年1月13日より施行されます。

また、法務局が自筆証書遺言を保管してくれる制度も始まります。これにより紛失や隠匿、変造の可能性がなくなります。また、これまでの自筆証書遺言や秘密証書遺言で必要だった「検認」という家庭裁判所による手続きも必要なくなります。遺言者自身が法務局で手続きをしますが、利便性は高くなると思われます。保管を申請した後に、保管の撤回を申請することも可能です。この法律は、2020年7月13日までに施行される予定です。

最後となりましたが、遺言書には「付言事項」として、遺言者の思いを自由に書き込むことができます。財産の処分や子供の認知などといった事項と違い、付言事項には法的拘束力はありません。しかし、遺言書の内容に対する遺言者の思いや、残される人たちへの感謝の気持ちを書き記すことによって、より円満な相続となる可能性が高まります。遺言書の要件ではありませんが、付言事項として最後に優しいメッセージを伝えることも大事だと思います。

北垣 愛
国内外の金融機関で、グローバルマーケットに関わる仕事に長らく従事。証券アナリストとしてマーケットの動向を追う一方、ファイナンシャルプランニング1級技能士として身近なお金の話も発信中。ブログでも情報発信中。


(提供:Wealth Window



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