2015年の改正相続税法の施行により、相続税と贈与税の税率が変更されました。また、贈与税には2パターンの税率体系が設けられました。この変更の背景には、国としての政策的な意図があります。

おさらい!相続税の税率と贈与税の税率

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(写真=beeboys/Shutterstock.com)

現在の相続税と贈与税の税率は、それぞれ次のようになっています。

●相続税の税率(2015年1月1日以降)

法定相続分に応じる取得価額 税率
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%
5,000万円以下20%
1億円以下30%
2億円以下40%
3億円以下45%
6億円以下50%
6億円超55%

●贈与税の税率(直系尊属からその年の1月1日において20歳以上の子や孫への贈与)

基礎控除後の課税価格税率(特例贈与財産※1)税率(一般贈与財産※2)
200万円以下10%10%
300万円以下10%15%
400万円以下15%20%
600万円以下20%30%
1,000万円以下30%40%
1,500万円以下40%45%
3,000万円以下45%50%
3,000万円超4,500万円以下50%55%
4,500万円超55%55%

※1特例贈与財産とは、直系尊属(祖父母や父母など)からその年の1月1日において20歳以上である子や孫などへの贈与した財産のこと
※2一般贈与財産とは、特例贈与財産以外の贈与のこと

相続により受け継ぐ財産や贈与により取得した財産の価額と、相続税・贈与税の税率、さらには特例贈与財産と一般贈与財産の税率の比較から、国が何を意図しているかが読み取れます。

意図1:贈与税の税率が高いのは税金逃れの防止のため

贈与税の税率は相続税よりも高く設定されています。なぜこのようになったのでしょうか。結論から言うと「相続による資産移転は贈与による資産移転よりも把握しやすいから」です。

相続税は資産を持っている人が亡くなったときに課される税金です。人間の死というのは隠しようがなく、いったん発生すれば戸籍や住民税、登記や口座名義の変更などすべてに反映されます。そのため、相続税逃れがあれば、人の死が確認できるのに税金の無申告や未納という事実ですぐに把握できてしまうのです。

しかし贈与税は生きている人間同士の資産のやりとりです。贈与自体はあくまでも当事者同士のやりとりなので、周囲は贈与の事実があったかどうかを疑うきっかけを得られません。不動産の贈与ならば登記変更などから把握することは不可能ではありませんが、現金や金、絵画といった登記や登録の必要のない財産は持ち主の変更の把握が難しいため、課税逃れが発生しやすいのです。

課税逃れを防ぐには、把握の難しい贈与よりも把握しやすい相続を選択してもらうようにシステムを設計をすればいいわけです。そのため、贈与税は相続税よりも税率が高くなっています。

国の意図2:お金を消費しやすい現役世代に資産を移させたい

しかし、バブルがはじけ、消費が伸び悩み、税収が6割を切る現状になって以降は考えを一転し、「高齢世代から現役世代にどんどん資産を移させよう」という政策に切り替わりました。贈与税の枠内での税率の区別をつけたのも、その一環であるとみられています。

2015年に改正相続税法が施行されたわけですが、これ以前から存在していた贈与税の税率が一般贈与財産に当たります。直系の血族間でお互いが20歳以上であれば特例贈与財産としての税率が適用されるわけです。上記の税率を比較するとわかりますが、特例贈与財産を贈与した場合の税率のほうが低くなっています。4,500万円以下の贈与ならばおおよそ5%の差ですが、400万円超1,000万円以下の資産の贈与については10%もの差がつきます。900万円の資産を他人同士や兄弟間で贈与するよりも、祖父母や父母から成人した子や孫に贈与するほうが90万円も贈与税が安くなるわけです。

この税率の差の背景には、高齢世代が保有する資産を現役世代に移転させたいという意図があります。一般に高齢世代になると日常の生活費は減少し、消費活動も活発ではありません。一方、現役世代には、結婚・出産・育児そして住宅ローンといったお金のかかるイベントが待ち受けています。しかしバブル以前のような好況は望めず、給料も頭打ちです。そのままでは結婚も子どもも諦めざるを得ません。その結果、日本の経済が冷え込むことになります。

この状況を改善すべく、高齢世代から現役世代への資産移転を促すように、直系尊属から成人した直系卑属への贈与税の税率が低く設定されたわけです。なお、同様の意図は、結婚・育児や教育、住宅取得等資金などの贈与税の非課税措置などにもみられます。また、上記税率は暦年課税制度のものですが、2003年に始まった相続時精算課税制度にも資産移転を促進する意図があります。

以上のような国としての意図が税率の違いに表れています。これをどのように活用するかは、納税者側の工夫次第です。 (提供:WEALTH WINDOW


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