はじめに――モバイル決済キーパーソンの考えを知る

モバイル決済,LINE Pay,長福久弘
(画像=MMD研究所)

2018年に入り、目まぐるしいスピードで変化を続けているモバイル決済市場。様々な企業が参入を表明する中、圧倒的なユーザー数を誇るコミュニケーションツールLINEを母体とした決済サービスLINE Payは、独自の取り組みで注目を集めている。QR/バーコード決済、カード決済、さらに今秋には開始予定の非接触決済も含めて三方向からキャッシュレス化を推進するLINE Pay。そのサービス内容やキャッシュレス化に対する思いを、長福久弘COOに聞いた。

LINE Payの強み――サービスの特性やユーザー属性について

――2014年にLINE Payのサービスを開始した経緯を教えてください。

我々の母体となるLINEは2011年6月にローンチし、それ以来コミュニケーションツールとして拡大を続けています。生活のすべての入り口にLINEがあり、LINEを通じてスマートフォン上ですべてが完結するという「スマートポータル構想」を2016年から掲げています。LINEがライフプラットフォーム化していく中で、お金・支払いに関する需要が必然であったためLINE Payは生まれました。

――LINE Payのサービスの強みや特長を教えていただけますか。

やはり我々の強みは、LINEというプラットフォーム上で利用することができるサービスである点ですね。LINEのおよそ7,600万ユーザーのうち、3,000万ユーザーがLINE Payを利用しています。他の決済サービスでは別途会員登録やアプリのダウンロード等が必要になりますが、LINE PayはLINE上でいつでも手軽に始めることができます。

――先日実施された10円ピンポンキャンペーンを経て、更にユーザー数が増加されたそうですね。こちらのキャンペーンの反響はいかがでしたか。

サービスの認知は非常に拡大したと認識しています。全ユーザーの合計送金回数が46万回に達したら限定動画を公開するという特典を設けていたのですが、キャンペーン開始から3週間程で46万回送金をこえました。また、最終的には約70万回送金を達成しました。ユーザー間の送金が認知を拡大するキーになっていると感じます。

――10円ピンポン後、ユーザーの属性には変化がありましたか。

もともとLINE Payは20代~30代のユーザーが多いサービスです。今回のキャンペーンを経てもその傾向は変わらず、引き続きその年代が伸びたという印象ですね。LINE Payは、LINEアプリ内で提供しているということと、クレジットカードとの連携が必要なく、銀行口座との連携やATM、コンビニのレジなどでチャージした金額の範囲内で利用できるということもあり、他のモバイル決済サービスとは異なるユーザー属性になっているだろうと思っています。

――提携しているJCBのカードもプリペイド式ですよね。QR決済とカード決済は、どのくらいの割合になっているのでしょうか。

LINE Payカードはサービスとして歴史が長く、また、JCBの加盟店が多い関係で、今現在はカード決済の方が割合としては高い状況です。しかし、伸び率で言うとQR/バーコード決済が非常に高くなっています。

モバイル決済,LINE Pay,長福久弘
LINE上から手軽に始められるLINE Pay。スマートフォンで決済のすべてを完結させられる。(画像=MMD研究所)

QUICPay対応、手数料0円、オリジナル端末――新たな取り組みの狙い

――今秋からLINE PayがQUICPayに対応するというニュースを拝見しました。QUICPay導入の狙いについて、お伺いできますか。

QRコード決済は店舗への導入コストが低いため、近い将来、爆発的に伸びるだろうと考えています。その一方で、ユーザー体験ということを考えると、NFCと呼ばれる非接触型決済は非常に便利です。カード決済、QR/バーコード決済、非接触型決済という三つのラインナップを揃えたいというビジョンはもともとありました。ユーザーには、利用シーンや店舗に応じて、この三つの決済方法を使い分けてほしいと思っています。とはいえ、ユーザー側のメリットと店舗側のメリットは異なります。そのため、初期投資のかからないQRコード決済の方が爆発的に伸びるのではないかと我々は考えています。

――今お話に出た対店舗に向けたお取り組みについても伺いたいのですが、その前にもう一点、ユーザー向けのお取り組みについて教えてください。8月に改定されたマイカラー制度の狙いをお話しいただけますか。

LINE Payのサービスはすべて、ユーザーからの声をもとに作っています。6月に発表したマイカラ―制度について、評価の基準が明確な方が良いという声や、上限金額を上げて欲しいという声が多数届きました。そういったユーザーの意見をもとに、今回マイカラー制度をリニューアルしました。ポイントの付与率を決めるカラーを相対評価から絶対評価へ変更し、ポイントを付与する上限金額も10万から100万に引き上げたことで、ポジティブな評価をいただいています。

――LINE Payでは、初期費用0円の店舗向けアプリをリリースしたり、アプリ利用の加盟店の決済手数料を最大3年間0円にしたりするなど、対店舗向けのサービスにも注力されている印象です。その中で、スタンドアローンの自社端末・LINE Pay ORIGINAL DEVICEの開発に踏み切った狙いを教えていただけますか。

アプリに関しては、オーナーが常に現場に立っているなど、店員がごく少数の店舗で利用されることを想定しています。アプリをダウンロードする端末が必要になるので、どうしてもそのような形になるんですね。 一方、オリジナル端末の方は、一台で決済が完結するため、オーナーや店員の端末を使用する必要がなく、かつお店側が金額入力するこれまでの決済処理と同じような感覚で利用できます。したがって、どちらかといえばもう少し店員数の多い、中規模店舗にも利用されることを考えています。店舗の規模や業態によって、Printedと呼んでいるQR掲示型、店舗用アプリと端末で使い分けてもらうイメージです。

――初期費用、手数料をはじめとしたコストがほとんどかからないという点に加え、LINE Payの強みは、LINEの他サービスとの連携にあると感じます。その観点から、店舗側がLINE Payを導入するメリットについて、具体的にお話しいただけますでしょうか。

日本でキャッシュレス化が進まない理由の一つに、加盟店の手数料があります。これまでは決済手数料=コストでしかありませんでした。しかし、LINE Payの場合は店舗がもつLINEの法人向けアカウントサービスと連携することにより、LINE Payで決済する度に店舗のアカウントとユーザーのLINEアカウントが友だちとしてつながることができるようになります。そのため、店舗からユーザーさんへメッセージやクーポンを送るなど、販促のアプローチが可能になります。これは店舗側にとって非常なメリットです。決済手数料=コストという考え方から、決済=資産を生み出すものに、大きく価値が変わります。

モバイル決済,LINE Pay,長福久弘
(画像=MMD研究所)

キャッシュレス化は人手不足を解消する切り札――少子高齢化を見据えて

――日本のキャッシュレス化について、お話を聞かせてください。国は2025年までにキャッシュレス化40%という目標を掲げていますが、現時点での日本のキャッシュレス化は順調に進んでいると思われますか?

順調に進んでいると認識しています。業界内でも度々話題になっているのですが、キャッシュレス化は非常に速いスピードで進んでいます。その中でユーザーにとって一番のネックは、心理的ハードルです。未知のものに不安を覚えるのが日本人らしさ。その心理的ハードルを越える答えは便利さを体感してもらうことだと考えています。心理的ハードルを越えれば、キャッシュレスは一気に広まるはずです。現在は、関連企業各社がそのハードルを越えるためのチャレンジをしているところです。

――業界内の他社の取り組みについては、いかがでしょうか。

現在20数社程度のモバイル決済関連企業がありますが、今後は中国の二強のように企業が選択されていくと思います。しかし現時点では、マーケットそのものを広げるために、各社が手を取り合っていくべきだと考えています。

――キャッシュレス化を進めるため、国への要望などがあれば教えてください。

一緒に本気でキャッシュレス化を推進していきたいですね。もちろん、現在でも国はチャレンジをしているし、我々もコミュニケーションを取ってやっていますが、2020年のオリンピック・パラリンピックを見据え、チームジャパンとして、民間と国が一丸となって取り組む必要があります。海外からの旅行者に、日本はスムーズに買い物できて、過ごしやすい良い国だと思っていただきたいですね。

――ちょうど海外のお話が出たところで、海外と日本の決済環境の違いについて、ご意見をお伺いしたいと思います。特に、モバイル決済先進国とも言える中国と日本では、一体何が違うのでしょうか。

中国でモバイル決済が普及した理由としては、やはり偽札の問題が挙げられると思います。中国では、現金への信頼が低い。日本のように現金が24時間いつでもおろせる国というのは世界を見渡しても珍しく、それが他国とは圧倒的に違うポイントになります。

――では、現金への信頼が強い日本において、キャッシュレス化を推し進める意義はどこにあるのでしょうか。

キャッシュレス化は、人手不足・労働力不足を解消する切り札になるからです。日本は少子高齢化が進行し、これからどんどん人口が減っていきます。そうなれば当然、労働者も減っていく。今と同じお金の管理をしているだけでは、いつか立ち行かなくなるでしょう。 たとえば現金に頼っていると、お釣りに使う釣り銭をわざわざ両替に行ったり、レジ締めの作業だったり、時間に多大なコストがかかるだけでなく、ミスが出る可能性もあります。けれどもキャッシュレス化が進めば、それらの問題を一挙に解決できます。キャッシュレス化は、あくまでも手段にすぎません。目的は、少子高齢化にともなう人手不足の解消です。

モバイル決済,LINE Pay,長福久弘
(画像=MMD研究所)

今後の戦略――LINEプラットフォームの強化

――少子高齢化が進行する日本で、人手不足を解消するためにキャッシュレス化は必要不可欠な手段ということですね。これから社会全体にキャッシュレス化を広めていく上で、LINE Payが果たすべき役割や、今後の戦略について教えてください。

ユーザーと店舗、両方を伸ばしていくことが重要だと考えています。ユーザーが多くても、使える店舗が少ないとユーザーは当然不満を抱きます。また、使える店舗が多くても、ユーザーが少ないと、店舗も不満です。そのバランスを保ちながら、利用シーンを拡大していきたいと思っています。また、ユーザーがキャッシュレスにしない理由として、現金でないとお金を使いすぎてしまうのではという不安がよく挙げられるのですが、家計簿アプリ等との連携をすれば、キャッシュレスにした方が現金よりもお金の管理はしやすくなる。そういった点をアピールすることも含めて、キャッシュレス、ウォレットレスな社会を実現させていきたいと考えています。

――先日、「LINE家計簿」というアプリが今秋ローンチされるというニュースを拝見しました。こちらも含めて、LINE上の他のサービスとの連携も視野に入れられているのでしょうか。

もちろん考えています。LINE Pay上で既に外部の家計簿アプリとは連携をしていますが、それらのサービスとは引き続きパートナーシップを結んでいきつつ、内部のプラットフォームの結びつきも強化していきたいと思っています。モバイクの支払いもLINE Payで可能になるなど、今後も様々なサービスに実装されていきます。

――「LINE家計簿」は個人ユーザー向けのサービスだと思いますが、今後、事業者向けの経理業務を支援するようなサービス等を開発するご予定はありますか?

現時点では発表は難しいのですが、いずれは何かしらのサービスを開始したいという考えはあります。個人向けだけでなく、事業者向けサービスも一貫して担うことで、キャッシュレス化の推進に貢献したいと思っています。

モバイル決済,LINE Pay,長福久弘
(画像=MMD研究所)

【編集後記】
長福COOはLINEへ入社する前に実店舗の運営に携わっていた経験があるとのこと。中小規模店舗のリアルな実情を理解しているからこそ、ユーザーだけでなく、店舗に寄り添った施策を展開しているようだ。

執筆者:坂本 有珠

(提供:MMD研究所