会社名 ソレイジア・ファーマ株式会社

会社概要
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証券コード / 4597
市場 / 東証マザーズ
業種 / 医薬品(製造業)
代表取締役社長 / 荒井 好裕
所在地 / 東京都港区芝公園2-11-1 住友不動産芝公園タワー4F
事業内容 / アジアにおける、がん治療薬、がん支持療法医薬品等の開発及び販売
     (がん領域特化のスペシャリティ・ファーマ)
決算月 / 12月末日
HP / https://www.solasia.co.jp/

株式情報
(画像=インベストメントブリッジ)

- 株式情報 -
株価 / 発行済株式数 / 時価総額 / ROE(実)/ 売買単位
245円 / 88,376,650株 / 21,652百万円 / - / 100株
DPS(予)/ 配当利回り(予)/ EPS(予)/ PER(予)/ BPS(実)/ PBR(実)
0.00円 / - / -36.47円 / - / 60.01円 / 4.1倍
*株価は9/5終値。発行済株式数、ROE、BPSは前期実績。EPSは予想レンジの下限。

業績推移
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- 業績推移 - (単位:百万円)
決算期 / 売上高 / 営業利益 / 税引前利益 / 当期利益 / EPS _ DPS
2014年12月(実)/ 11 / -702 / -701 / -677 / -26.90 / 0.00
2015年12月(実)/ 229 / -702 / -710 / -643 / -24.83 / 0.00
2016年12月(実)/ 501 / -462 / -494 / -474 / -18.46 / 0.00
2017年12月(実)/ 410 / -1,009 / -1,016 / -1,007 / -12.24 / 0.00
2018年12月(予)/ 100~600 / -3,200~-3,000 / -3,200~-3,000 / -3,200~-3,000 / -36.47~-34.19 / 0.00
*予想は会社側予想。IFRS適用。当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。以下同様。

ソレイジア・ファーマの2018年12月期第2四半期決算概要などをご紹介します。

今回のポイント

・がん領域に特化したスペシャリティファーマ(※)として、有望市場である日本、中国を中心としたアジア地域においてがん治療薬、がんサポーティブケア(がん支持療法医薬品等)などの開発及び販売を行う。荒井社長率いる実務経験豊富な開発スタッフ、開発成功確率の高さ、安定した事業基盤、事業の早期実現可能性などが強み・特長。

・前回のレポートで紹介した「SP-03:エピシル® 口腔用液」の国内販売開始、「SP-04:PledOx®」の第Ⅲ相国際共同臨床試験参画決定に続き、「SP-01:サンキューソ」が18年7月に中国当局の承認を取得した。
また、18年8月には「SP-02:ダリナパルシン」についてコロンビア共和国のHB Human BioScience SAS社と南米地域での販売等の独占的権利を導出したほか、同じく8月、「SP-03」の導入元であるCamurus AB社と韓国での独占開発販売権利を導入する契約を締結するなど、事業は着実に進捗している。
加えて、18年9月および10月には新株発行(公募・第三者割当)により手取上限約37億円の「SP-04」開発資金を調達予定。財務基盤を強化するとともに開発を更に加速させる体制が整った。

・上場後の同社事業の進捗を振り返ってみると、ほぼ会社側想定通りに順調に進んでいる。また、SP-03の日本国内での保険収載及び販売開始により「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載を解消したほか、総額51億円の間接金融に加え、約37億円(OA含む手取上限想定)の直接金融による資金調達にも成功しており、事業展開および事業基盤の強化は着実に進んでいる。
だがそうした一方で直近の株価は、2017年3月上場時の初値234円とほぼ変わらない水準にとどまっており、株式市場は「同社の実態は上場時とほぼ変わらない」と評価している。
確かに同社の今期当期利益は30億円以上の損失予想であるが、バイオベンチャーにおいては単年度PL(損益計算書)を用いた株価評価が合理的ではない点は自明であり、バイオベンチャーを対象とする場合には、新薬の開発段階ごとの成功確率も将来収入に対する割引率として考慮されるべきである。この場合、承認取得実績が最大のポイントとなるが、4つの開発品のうち、「SP-01」と「SP-03」は既に開発が終了し販売ステージに入っている同社の新薬開発に関する割引率は、市場平均よりも低く想定されてしかるべきであろう。決して派手さはないが着実に開発実績を積み上げる一方、財務基盤の強化を進め安全性も飛躍的に高まっている同社について市場の評価がどう変化していくのかを注目したい。

1.会社概要

がん領域に特化したスペシャリティ・ファーマ(※)として、有望市場である日本、中国を中心としたアジア地域においてがん治療薬、がんサポーティブケア(がん支持療法医薬品等)などの開発及び販売を行う。

荒井社長率いる実務経験豊富な開発スタッフ、開発成功確率の高さ、安定した事業基盤、事業の早期実現可能性などが大きな強み・特長。

(※)スペシャリティ・ファーマ:得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業のこと。

【1-1 沿革】

沿革
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2006年
12月 伊藤忠商事とバイオビジネスに特化した米国のVCであるMPMキャピタルが共同で医薬品開発事業の準備拠点として、JapanBridge Inc.を米国に設立

2008年
5月 第1号の開発品「SP-01」の日本、台湾、シンガポール、マレーシア、中国(香港、マカオ含む)での独占的開発販売権をStrakan International Ltd.(英国)より導入
(なお、日本権利は2011年1月にStrakan International Ltd.に返還)
9月 ソレイジア・ファーマ株式会社に商号を変更

2010年
2月 開発品「SP-01」の台湾、香港、シンガポール、マレーシアでの独占的開発販売権を協和発酵キリン株式会社に導出

2011年
3月 開発品「SP-02」のアジア太平洋地域での独占的開発販売権をZIOPHARM Oncology, Inc.(米国)より導入
12月 中国での開発活動を目的として北京に代表事務所を開設

2013年
1月 中国での販売活動準備を目的として上海に事務所を開設

2014年
6月 開発品「SP-01」の中国における新薬承認を申請
7月 開発品「SP-02」の米国、欧州諸国の独占的開発販売権をZIOPHARM Oncology, Inc.(米国)より導入
12月 中国上海に、同社製品の医薬情報提供を行うための子会社(Solasia Medical Information Consulting (Shanghai) Co. Ltd.)を設立

2015年
1月 開発品「SP-02」の日本での独占的開発販売権をMeiji Seika ファルマ株式会社に導出
3月 開発品「SP-03」の日本、中国での独占的開発販売権をCamurus AB(スウェーデン)より導入
11月 開発品「SP-01」の中国(北京、上海、広州、香港、マカオを除く)での独占的販売権をLee's Pharmaceutical (HK) Limitedに導出

2016年
5月 開発品「SP-03」の中国における医療機器製造販売承認を申請
10月 開発品「SP-03」の日本における医療機器製造販売承認を申請
11月 開発品「SP-03」の日本での独占的販売権をMeiji Seika ファルマ株式会社に導出

2017年
2月 開発製品「SP-03」の中国(北京、上海、広州を除く)での独占的販売権をLee’s Pharma(HK)Limitedに導出
3月 東京証券取引所マザーズに上場
7月 開発品「SP-03」が日本における医療機器製造販売承認を取得
9月 伊藤忠商事と、SP-01およびSP-03の中国販売代理店契約を締結
11月 開発品「SP-04」の日本、中国、韓国、台湾、香港及びマカオでの独占的開発販売権をPledPharma AB(スウェーデン)より導入

2018年
5月 開発品「SP-03:エピシル® 口腔用液」の国内販売が開始
7月 開発品「SP-01:サンキューソ」が中国当局の承認を取得
8月 開発品「SP-03」の韓国での独占的開発販売権をCamurus ABより導入
8月 開発品「SP-02」の南米8カ国での独占的販売権をHB Human BioScience SAS(コロンビア)に導出

【1-2 企業理念・経営理念】

社名のソレイジア(SOLASIA)は、Sol(ラテン語で太陽)+Asia(アジア地域)からなるもので、「日本・アジアにおいて、がんと向き合うさまざまな人たちの未来を照らす希望の太陽でありたい。」という想いを表している。

以下のような、『経営理念:ミッション、ビジョン、バリュー』を掲げている。

経営理念:ミッション、ビジョン、バリュー
(画像=インベストメントブリッジ)

果たすべき役割 (Mission)
・患者さんの明るい未来のためによりよい医薬品を提供する。

在るべき姿 (Vision)
・国内外で認知され、全てのステークホルダーから高い信頼を得る。
・全員が、情熱と志、倫理観を持ち、現状を是とせず、高い専門性を保ち、常に未来志向で新しい価値・創造に努め、革新的医薬品を開発するス・ペシャリティ・ファーマとして認められる存在となる。
・当社の製品を必要とする人々(医療従事者及び患者さん)の要望に応え貢献する。

共有される価値観 (Value)
・患者さんのための価値を創造する。
・高い倫理観を持つ。
・互いに信頼し尊敬する。
・チームで活動する。

また、経営方針として以下の2点を示している。

1.当面、大手製薬企業が業績重視の観点から着手しないがん領域、希少疾病領域での新規製品の導入開発を進め、未だ治療薬がないような患者さんへの貢献を果たす。
2.4製品の事業化を通じて、経営理念の実現を図るための財務基盤を早期に完成させ、企業として自立する。

ニッチではあるが困っている患者が多数いるアンメット・メディカル・ニーズ(いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ)解決のための新薬開発に注力していく。また、現在は研究開発が先行しているため財務CFに頼らざるを得ない現状であるが、早期に営業CF黒字化を実現し、持続的成長が可能な基盤を構築する。

【1-3 同社を取り巻く環境】

厚生労働省「平成27年(2015)人口動態統計」によれば、2015年の死因別順位は悪性新生物(がん)が、死亡数370,346人で全死亡者数1,290,444人の28.7%を占め第1位であった。

総人口の変化を加味した「死亡率(人口10万人に対し何人が死亡したか)」の推移を見ても、1981年に死亡率142.0人で、同134.3人の脳血管疾患に代わり第1位となって以来30年以上にわたり連続して第1位であり、その数値も年を追って上昇、2015年は295.5人となっている。

高齢化、また食生活を含めたライフスタイルの変化等によりがん発症率は上昇していると言われているが、中国においてもがんの発症者数及び死亡者数は増加傾向にある。

現在の国別医薬品市場規模は第1位が米国、中国は日本を抜き第2位となった。今後、中国市場は米国市場と1位を分け合う規模まで拡大するとも言われている。

日本の死因
中国の死亡者数
(画像=同社資料より)

こうしたがんによる死亡率の上昇に伴い、「新規抗がん剤」および「がんサポーティブケア」への期待が高まっている。

(新規抗がん剤)

抗がん剤を用いたがん治療においては、一つの抗がん剤のみを用いる単剤治療よりも、複数の抗がん剤を用いる併用療法のほうが主流である。

加えて、がんは種類によって異なるが、再発の可能性が高く、加えて難治の場合は、一種類の治療での治癒は困難であるため、一つの治療薬が絶対的な存在とはならず、他の治療薬が直接的な「競合」とはなり難いという特性がある。また、近年では、分子標的薬や免疫療法が注目されてはいるが、まだ多くのがん種に対する治療において化学療法剤が重用されている。殺細胞性抗がん剤を含むレジメンは標準治療として位置づけられ、今後も高い医療ニーズが期待される。

(がんサポーティブケア)

抗がん剤はがん細胞を攻撃するなどの強力な医薬品であり副作用が避けられない。

患者に負担がかかる副作用をコントロールできなければ、抗がん剤の減量やがん治療そのものを中止せざるを得ず、結果的には病状が進行してしまうリスクがある。

こうした事態を避け、がん治療を完遂するためには、副作用のコントロールを行うための医薬品や医療機器への期待が高まっている。 また、がんの治療薬はがんの種類ごとに承認を得なければならないが、サポーティブケアはがんの種類を問わず、幅広いがん患者への処方が可能であり、大きなニーズ、市場が見込まれる。

以上のように、日本・中国におけるがん治療ニーズの増大とそれに対応した新規抗がん剤およびがんサポーティブケアへの期待は大きく、同社はこうしたニーズを取り込み、収益を拡大させるためのビジネスモデル、事業戦略を構築している。

【1-4 事業内容】

ビジネスモデル

新しい医薬品が上市されるまでには、「基礎研究」から始まり、「製剤研究」、「非臨床開発(動物を用いて薬効薬理作用、生体内での動態、有害な作用などを調べる試験)」、「臨床開発(医薬品や治療技術などの人間への影響を調べる科学的試験)」を経て、当局の承認を得たのち、「製造」、「販売・マーケティング・製造販売後調査」といったプロセスを経るのが一般的である。

大手製薬会社は、巨額な研究開発費を変動費化することなどを目的にCROを利用した臨床開発段階のアウトソーシングを進めてはいるが、基本的には上記の工程全てを自社内に保有している。

これまではこうした体制が製薬会社の高収益体制を支えてきたが、近年の生命科学分野の急速な進歩や複雑化、多様化により、自社固有の創薬技術が陳腐化してしまう可能性が高まっている。

また、多額の費用と時間をかけて基礎研究から進めても臨床開発に入るまでに実用化を断念し、創薬技術を確立できないケースも多く、医薬品開発には常に高いリスクがついてまわる。

そこで同社では、失敗の確率の高い基礎研究から非臨床開発の工程を自社では行わず、まだ開発段階にある将来有望な医薬品を外部から導入して臨床開発から開発に着手。それ以降の事業活動に経営資源を集約することで自社の強みを発揮するとともにリスクの低減を図っている。

現時点ではコスト負担の大きい製造工程も保有しない計画である。

ビジネスモデル
(画像=同社資料より)

販売工程については、高収益確保とリスクコントロールのバランスを考慮した仕組みを構築している。 一般的に製薬企業の売上高総利益率は高水準であるが、これは、製造および販売活動を内製化することによって実現できると考えられる。

製薬企業の売上高総利益率
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  / 売上収益 / 売上総利益 / 売上総利益率
武田薬品工業 / 1,770,531 / 1,274,610 / 72.0%
アステラス製薬 / 1,300,316 / 1,006,066 / 77.4%
第一三共 / 960,195 / 614,173 / 64.0%
*18年3月期実績。

一方医薬品は販売地域の網羅性(例:日本全国をカバー)が要求され、自社販売網を構築しようとすれば、固定費が増大する。そこで同社では、臨床開発を終えた医薬品について、「自販モデル」と、販売権を他社に導出する「導出モデル」を併用している。

導出モデル
(画像=同社資料より)

(自販モデル)

中国の3大都市「北京・上海・広州」においては自社販売体制を構築し自販モデルを展開する。

この3都市の人口合計は中国全人口の約5%に過ぎないが、抗がん剤を取り扱うのは最先端かつ大病院であるため、大病院が集中するこの3都市は中国の抗がん剤市場の3割を占める巨大マーケットである。

また、新しい医薬品の使用・普及にあたっては影響力のある医師の判断や決定がその結果を大きく左右する。こうした影響力のある医師の在籍する大病院への営業活動は極めて重要なポイントとなる。

加えて、中国全土ではなくあくまでもそれぞれの都市における営業であり、少人数の販売組織でも十分に活動は可能である。現在約50-60の大病院を対象とした営業スタッフ増強に動いている。

(導出モデル) 現在の主な導出先パートナーは以下の2社である。

Meiji seika ファルマ株式会社
◇明治グループの医薬品会社。がん、感染症、中枢神経系領域におけるスペシャリティ・ファーマ。多数のがん領域製品の販売実績を有している。
◇ソレイジア・ファーマ株主(保有比率4.3%:2018年6月)
◇SP-02 日本権利パートナー
◇SP-03 日本権利パートナー

Lee’s Pharmaceutical Limited
◇香港市場上場の中国系製薬会社。中国全土約30拠点を通じ、がん領域をはじめ、多数の医薬品の販売を行っている。
◇ソレイジア・ファーマ株主(保有比率2.6%:2018年6月)
◇SP-01 中国権利パートナー(北京・上海・広州以外の中国)
◇SP-03 中国権利パートナー(北京・上海・広州以外の中国)

今後も共同歩調が取りやすくWIN-WINの関係を構築できる中堅製薬メーカーを中心に導出先パートナーとして確保していく考えだ。

(2)製品・開発パイプライン

現在、前述の経営方針に沿って以下4つの製品・開発パイプラインを有している。

パイプラインの開発・事業化の経緯、現状、今後の計画は以下のとおりである。(2018年8月末時点)

パイプラインの開発・事業化の経緯、現状、今後の計画
(画像=同社資料より)

「SP-01:経皮吸収型制吐剤 Sancuso®(サンキューソ)」(中国販売名:善可舒®)

SP-01:経皮吸収型制吐剤 Sancuso®(サンキューソ)
(画像=インベストメントブリッジ)

対象症状
・がん化学療法による悪心・嘔吐

特徴・競合薬比較
・世界で唯一の経皮吸収型5HT3受容体拮抗剤
・1回の投与(貼付)で5日間効果が持続することから、通常の化学療法(1~5日投与)の投与期間をカバーすることができる。外来使用も可能。
・臨床現場で参照される癌治療に対するNCCN(※)ガイドライン及び中国版NCCNガイドラインにおいて、既に悪心嘔吐の標準治療の一つとして推奨されている。
(※)NCCN:National Comprehensive Cancer Network。がん診療に関するガイドライン策定組織。

(対象疾病の概要)

抗がん剤の代表的な副作用として悪心や嘔吐はよく知られている。

抗がん剤を投与すると、小腸にあるクロム親和性細胞と呼ばれる細胞がダメージを受ける。

ダメージを受けたクロム親和性細胞はセロトニンという神経伝達物質を放出。これが末梢の迷走神経上にある5-HT3受容体に取りこまれ、その刺激が末梢の迷走神経に沿って、脳の第4脳室最後野にある化学受容器引金帯(CTZ)を介して延髄に入り、悪心・嘔吐の命令を生体に出す嘔吐中枢を刺激し、悪心や嘔吐が発現する。

悪心・嘔吐を抑制するためにはセロトニンによる5-HT3受容体への刺激を遮断することが必要であり、そのために用いられる薬剤「5-HT3受容体拮抗薬」としては様々なものがあるが、代表的な薬剤がグラニセトロンである。

(「SP-01」概要)

「SP-01」は、このグラニセトロンを含んだ5-HT3受容体拮抗薬の経皮吸収型製剤(貼付剤)で、貼り薬としては世界唯一。

SP-01」
(画像=同社資料より)

抗がん剤は5日間にわたり投与するケースが多いが、注射や経口による制吐剤は概ね1~2日間しか効果がなく、抗がん剤投与期間内に複数回注射しなければならない。これに対し「SP-01」は5日間にわたって安定的に血中のグラニセトロン濃度を維持することができるため、1回貼り付ければ制吐剤を追加する必要がなく、入院ではなく外来によるがん治療を可能とするため、患者のQOL向上にも大きく貢献する。

悪心・嘔吐、口内炎などが原因で、薬剤の服用が困難な状態にある場合でも、経皮吸収型製剤は使用可能である点も大きなメリットであり、以上のような点を評価され、米国NCCN診療ガイドライン、中国治療ガイドラインで処方推奨を得ている。

(開発および販売状況)

現在上市済の地域は、米国、英国、ドイツ、イタリア、オランダ、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、クウェート、レバノン、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、韓国、フィリピン、(以上、導入元等が販売)、台湾、香港、シンガポール、マカオ(以上、同社サブライセンス先の協和発酵キリンが販売)など多数にわたっている。今後は、がん化学療法だけでなく放射線療法による悪心・嘔吐抑制への適応拡大を見込んでいる。

中国では2014年6月の承認申請完了を経て、18年7月に承認および市販用製剤の輸入許可を取得した。

SP-01の承認取得を契機に、利益最大化を企図するための体制、すなわち北京、上海、広州の大都市における合計30名前後のMRによる自販体制構築に向け、既に販売責任者の採用を行い、販売マーケティング体制整備を進めている。

上記の特徴や競合薬に対する優位性を武器に、Key Opinion Leaderと呼ばれるトップクラスの医師へのアプローチと、医療現場の臨床医への知見提供という上流・下流2方向の営業活動により約750~800億円といわれる中国制吐剤市場でのシェア獲得を目指す。

「SP-02:新規化学療法剤 darinaparsin(ダリナパルシン)」

SP-02:新規化学療法剤 darinaparsin(ダリナパルシン)
(画像=インベストメントブリッジ)

対象疾病
・再発・難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)

特徴・競合薬比較
・欧州では未だPTCL適応での承認薬はない(日・米は3種承認済)
・日・米で承認されている製品と比較して、重い副作用(骨髄抑制、口内炎)が報告されておらず、安全性が高く長期間投与或いは併用投与も期待できる

(対象疾病の概要)

悪性リンパ腫は、血液がんの1つで、白血球の中のリンパ球ががん化したもの。

リンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞等の種類があり、これらががん化して無制限に増殖することで発症する。

末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:Peripheral T-cell lymphoma)とは、悪性リンパ腫の種類の1つ。リンパ球の中のT細胞から発生するもので、月単位で病気が進行する「中悪性度」に分類され、中悪性度リンパ腫の10~15%を占めるといわれている。

B細胞リンパ腫などに比べ、5年生存率は低く、25%前後である。

(開発および販売状況)

「SP-02」は、この再発・難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)への適応で開発をスタートさせた。

2015年10月までに米国や日本、韓国等にて187名の被験者に投与される実績を有する。

米国における前期第Ⅱ相臨床試験は2012年4月に完了し、白人種における一定の有効性を確認した。

2015年4月に完了した日本および韓国における第Ⅰ相臨床試験では、PTCL患者において安全性及び忍容性が確認され、アジア人種における一定の有効性が示唆された。

日本、韓国、台湾、香港で2016年にスタートした最終試験として位置づけられる第Ⅱ相国際共同臨床試験は末梢性T細胞リンパ腫患者65名(計画ベース)を対象に進行中で、2018年末までの終了、2019年の試験成績公表を予定しており、試験成績が良好な場合には、引き続いて当局への承認申請を行う計画である。

中国においては最終試験である第Ⅱ相臨床試験の準備中である。

悪性リンパ腫はしばしば再発することが知られており、作用機序の異なる複数の治療薬が必要でマーケットは大きいと同社は考えている。

末梢性T細胞リンパ腫のみでなく、その他血液がん(リンパ腫、白血病)や固形がんへの適応拡大を目指している。

日本での開発販売権はMeiji Seika ファルマ株式会社に導出済で、欧米及び中国では導出先を選定中である。

2018年8月には、コロンビア共和国のHB Human BioScience SAS社と、コロンビア、ペルー、エクアドル、ベネズエラ、チリ、パナマ、コスタリカ及びグアテマラでの販売等の独占的権利を導出した。

「SP-03:医療機器 エピシル® 口腔用液」

SP-03:医療機器 エピシル® 口腔用液
(画像=インベストメントブリッジ)

使用目的
・化学療法や放射線療法に伴う口内炎で生じる口腔内疼痛の管理及び緩和を物理的作用により行う。カテゴリーは医療機器。

特徴・競合薬比較
・がん等の化学療法や放射線療法による口内炎に対する標準的対処法はなく、各病院ごとでの対症療法に頼っており、新しい対処法が強く求められている。
・薬効成分を含まないため副作用がなく、抗がん剤との相互作用もない。

(対象疾病の概要)

抗がん剤による悪心・嘔吐と並んで、癌化学療法又は放射線療法による口腔粘膜障害の副作用も患者にとっては大きな困難である。

口内炎は、「化学療法が口腔粘膜へ直接作用して障害が生じるもの」や「放射線照射により唾液腺組織に障害が生じ、唾液の分泌低下により口腔内の自浄作用が低下し局所感染が起こることで発生するもの」である一次口内炎と、「白血球減少などに伴う骨髄抑制により起こる口腔内感染が原因となるもの」である二次口内炎がある。

抗がん剤治療に伴う口内炎の発生頻度は30~40%、抗がん剤と頭頸部への放射線治療併用時の口内炎発生頻度は約100%となっている。

癌化学療法又は放射線療法による口内炎は、300~500もの多数の炎症が発生するものもある。その疼痛により患者は食事や水分の経口摂取が困難になり体力低下を招き、重症化すると本来のがん治療の継続にも悪影響を及ぼしてしまう。これまでは確立した標準治療はなく、病院ごとでの対症療法が主流であった。

(「SP-03」概要)

「SP-03」は、脂質ベースの液体を口腔粘膜に滴下塗布するものであり、同社ではカテゴリーとしては医療機器として開発を進めてきた。

SP-03
(画像=同社資料より)

口腔粘膜に適量を適用すると、数分以内に液体が口腔内の水分を吸収し生体接着ゲル化し、物理的なバリヤーを形成するもので、8時間程度の口内炎の疼痛緩和効果が臨床的に示されている。

(開発および販売状況)

2016年に日本における承認申請を完了していたが、2017年7月6日付けで、厚生労働省より、日本国内における医療機器製造販売承認を取得した。2018年1月には第388回中央社会保険医療協議会総会において18年4月からの保険適用が承認され、保険収載を経て、18年5月、日本における独占販売権の導出先であるMeiji Seika ファルマ株式会社による販売が開始された。

中国においても2016年5月に医療機器製造販売承認申請を当局に行っており、2018年中の承認取得を想定、その後の販売開始を計画している。

北京、上海、広州では自社販売を、その他の中国地域についてはLee’s Pharma社へ販売権を導出している。

2018年8月には導入元であるCamurus AB社と韓国での独占開発販売権利を導入する契約を締結した。

日本以外では、米国、英国、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランスなどで他社及び導入元により販売されている。

「SP-04:細胞内スーパーオキシド除去剤 PledOx®(プレドックス)」

SP-04:細胞内スーパーオキシド除去剤 PledOx®(プレドックス)
(画像=インベストメントブリッジ)

対象疾病
がん化学療法に伴う末梢神経障害

特徴・競合薬比較*
がん化学療法に伴う末梢神経障害に対する承認医薬品は存在しない。*
生体に悪影響を及ぼす細胞内活性酸素の一種スーパーオキシドを分解する酵素スーパーオキシド・ジスムターゼ様の作用を持つ新規に化学合成された金属複合体(キレート)。

先行する3つの開発がおおむね順調に進む中、4つ目のパイプライン導入を上場時から検討していた同社は、「がん領域である。」、「臨床試験が一定程度進んでいる。」、「日本及び中国での開発権利を獲得できる。」という3つの条件を満たす新薬を探していた。そして、2017年11月にスウェーデンのPledPharma AB(以下、「Pled 社」)から、がん化学療法に伴う末梢神経障害薬「PledOx®」の日本、中国、韓国、台湾、香港及びマカオでの開発事業化の独占的権利を獲得した。早期の承認取得を実現するため、まず大腸がん治療における代表的な抗がん剤「オキサリプラチン」投与による末梢神経障害に適応を絞り、日本や中国など東アジア地域での臨床開発を進めていく。

(対象疾病の概要)

がん化学療法は、悪心・嘔吐や口内炎発症等の副作用が生じるが、末梢神経障害も重篤な副作用の一つ。

末梢神経障害は、プラチナ製剤やタキサン製剤等のがん化学療法の主要薬剤において、顕著に発現することが知られている。

大腸がんのうち手術による治癒が難しい進行・再発がん(ステージⅢ、Ⅳ)に対する化学療法及び術後補助化学療法における代表的な治療法であるFOLFOX療法は、フルオロウラシル・フォリン酸・オキサリプラチンの 3 剤を併用するものだが、このうちオキサリプラチンの処方は、患者の約9割で「手、足や口唇周囲部等の異常感覚」、「呼吸困難や嚥下障害を伴う咽頭喉頭の絞扼感(しめつけ)」、「手足先のしびれ」、「感覚低下」、「感覚性運動失調」などの症状を伴う末梢神経障害を生じさせる。

このような副作用が発現した場合には、薬剤中止により、80%の症例では一部症状の改善がみられ、40%の症例では 6~8 ヵ月後には完全に回復するが、薬剤中止はがん化学療法の中止や方針変更となる可能性があり、末梢神経障害の治療は医療上の重要な課題である。ただ、がん化学療法の副作用としての末梢神経障害を適応として当局に承認された医薬品は現時点では存在していない。

(「SP-04」概要)

「SP-04:PledOx®」の導入元Pled社はストックホルム証券取引所に上場しており、酸化ストレス関連の疾患に対する医薬品開発に強みを持つ。「PledOx®」(一般名:Calmangafodipir)は欧米で販売実績を有するMRI造影剤「Mangafodipir」を基に創生された新有効成分である。

後述のように「SP-04:PledOx®」は後期第Ⅱ相臨床試験を終了し、今後、第Ⅲ相国際共同臨床試験が開始される予定で、末梢神経障害薬の開発トップランナー。開発成功は大きな先行者利益獲得につながるだけでなく、がん患者のQOL向上など社会的貢献度も高い。

*市場性*
ソレイジア・ファーマによれば、FOLFOX療法の対象となる大腸がん患者数は年間で日本6~10万人、中国20万人程度と推定している。*
FOLFOX療法は、「3日間の治療、11日間の休薬期間」の計14日間が1サイクルであり、それを12サイクル行う治療法である。対象疾患はオキサリプラチン投与を含むがん化学療法の対象となる大腸がんであるが、オキサリプラチン以外のプラチナ製剤やタキサン製剤等のがん化学療法の主要薬剤においても末梢神経障害が顕著に発現することがしられており、乳がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がんなど大腸がん以外の固形がんも追加対象疾患となれば、市場性は更に広がると同社は想定している。

(開発および販売状況)

Pled社は、これまで末梢神経障害を適応として PledOx®の研究開発を欧米で行ってきており、後期第Ⅱ相臨床試験までの結果、FOLFOX療法を受けている進行性大腸がん患者において、有効性と安全性、つまり末梢神経障害を改善する効果およびFOLFOX 療法によるがん治療そのものへの影響を生じさせないこと等についての効果が示唆されている。Pled 社は、日本への導出を検討した際、日本人を対象とした臨床試験が必要と判断したため米国で日本人を被験者とするPledOx®の第Ⅰ相臨床試験を実施してきたが、18年2月、この第Ⅰ相臨床試験は終了し、SP-04の日本人における良好な安全性及び忍容性が確認された。

ソレイジア・ファーマはそれ以降の臨床開発をPled 社の行ってきた他の研究開発結果とともに引き継ぐこととなっているため、この第Ⅰ相臨床試験の結果に基づき、ソレイジア・ファーマは今期中に次相臨床試験に着手する。

一方、Pled 社は、FDA(米国食品医薬品局)及び EMA(欧州医薬品庁)との協議を経た第Ⅲ相国際共同臨床試験への被験者登録を2018年下半期(7-12月)に開始する予定であると発表している。

日本人を被験者とする第Ⅰ相臨床試験が終了したソレイジア・ファーマは日本当局と協議の上、この第Ⅲ相国際共同臨床試験に参画したいと考えていたが、2018年6月、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議を経て、ソレイジア・ファーマの権利地域である日本、韓国、台湾、香港の参画が認められた。

試験の概要は以下の通り。

試験の概要
(画像=インベストメントブリッジ)

試験相等
第Ⅲ相・国際共同試験、多施設共同・二重盲検・無作為化・プラセボ対照試験(※)

試験目的
SP-04投与による、オキサリプラチン投与に伴う末梢神経障害の発現抑制効果を、プラセボと比較して検証する。

試験構成
(POLAR-M試験)
FOLFOX療法を実施する遠隔転移を有する大腸がん(結腸がん・直腸がん)患者を対象とする。
(POLAR-A試験)
術後補助化学療法としてFOLFOX療法を実施する大腸がん(結腸がん・直腸がん)患者を対象とする。

主要評価項目
POLAR-M試験及びPOLAR-A試験共に、SP-04の初回投与(FOLFOX療法の第1サイクル1日目)から9か月後における、中等度以上の慢性末梢神経障害を有する被験者の割合を評価する。

目標症例数
(POLAR-M試験)
420症例。うち当社地域120症例。
(POLAR-A試験)
280症例。うち当社地域80症例。

※プラセボ対照試験
薬の臨床試験において、被験者を対照群と治療群とに分け、対照群にはプラセボを割り付ける試験。 プラセボとは色、重さ、味及び匂いなどを可能な限り被験薬に似せ、かつ薬効成分を含まない「偽薬」。

第Ⅲ相国際共同臨床試験への参画が認められたことで、「SP-04」の事業化はソレイジア・ファーマ単独で臨床試験を実施する場合と比べ、時間、金額とも大幅に短縮されることが見込まれる。ソレイジア・ファーマでは、今後中国においても臨床試験を予定している。

【1-5 バイオベンチャーとしての6つの特徴】

バイオベンチャーとしての同社を特徴づけるのは主に以下の6点である。

1) 創業の経緯
同社のスタートは、伊藤忠商事と米国のバイオに特化したVCであるMPMキャピタルによって設立された「JapanBridge (Ireland) Limited」。数社のバイオベンチャーから新薬の権利を導入し、開発を進めた。
当初はExitとして製薬会社への売却を中心に考えていたが、4-5年ほど前からは事業の将来性、有望性から企業として永続的に事業を展開する方向にシフトし、研究開発に向けた資金調達も必要なため株式公開の道を選択した。
もともと他社への売却を念頭に置いていたことから、保有する開発品は開発段階ではあっても他社に売却して現金化可能な優良な資産で構成されており、創業時より既に強固な事業基盤を構築している。

2) 実務経験豊富な臨床開発陣
研究部門や前臨床部門を持たず、新薬開発の権利導入を活用し、臨床開発以降の医薬品創造プロセスに特化している。医薬品事業化への研究開発過程において最も大切なのは最終的に当局の承認を取得することであるが、そのためには臨床開発、特に第Ⅱ相以降の後期臨床段階におけるスキルやノウハウが最も重要である。
数多い日本のバイオベンチャーの中でも、社長が臨床開発をコアスキルとして身に付け、強力な武器としているのは同社荒井社長以外には見当たらない。
荒井社長率いる実務経験豊富な臨床開発スタッフは同社の強力な差別化要因、競争優位性である。

3) 開発成功確率の高さ
昨年導入した「SP-04」に先立ち、「SP-01」、「SP-02」、「SP-03」という3つの開発品を導入しているが、開発中止や失敗実績はなく、3つの開発品全てが事業化に至る最終段階(1つは日本で販売開始、1つは中国で承認取得、1つは最終臨床試験実施中)にある。 この高い開発成功確率を可能にしているのは2つの要因である。
1つ目は、失敗のリスクの低いものを選定し導入するビジネスモデル。
2つ目は、臨床開発のすべてを担うことのできるチームが社内にあること。前述のように、承認を取るためには何が必要かを熟知した開発陣は、導入品が承認をとれるか否かについてのスクリーニングをかけることができる。
1つ目、2つ目を合わせた、いわば「目利き力」が、開発断念に至るリスクを引き下げ、3打数3安打という高打率の源泉となっている。
新薬のキャッシュインフローをDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)モデルから分析してみると、将来にわたるトータルのキャッシュインフローの大部分を構成するのは契約金やマイルストンではなくロイヤルティであるが、言うまでもなくロイヤリティは最終的に開発が成功し、販売が拡大しないと獲得することはできない
Pled社への提案に際し、多くの競合に比べ、契約金を始めとした金額面では決して有利ではなかったにもかかわらず今回「SP-04」を導入できたのも、明確な臨床開発設計を構築できるチーム力、先行3製品の開発実績、日本・中国を含めたアジアでの実績などをPled社が評価し、ソレイジア・ファーマがアジアにおける「PledOx®」成功のためのベストパートナーと判断したものであろう。

4) 安定した事業基盤
前述のように開発品3つ全てにおいて、製薬企業への販売権導出を達成しており、自社販売と組み合わせたリスクヘッジのためのポートフォリオを構築済である。

5) 高利益確保のための自販体制
製薬会社が高い収益性を実現できているのは、自社で製造・販売双方を手掛けているためだ。
同社は現在のところ製造設備は保有していないが、収益性を高めるためにマーケットが大きくかつ効率的に営業活動が展開できる中国の三大都市(北京、上海、広州)に自社販売体制を構築中である。

6) 事業の早期実現
バイオベンチャーの場合、新薬開発段階では損失を計上しているのが一般的であるため、株価や事業価値の算定において損益計算書を使用することは合理的ではなく、DCFモデルを使用することとなるが、バイオベンチャーを対象とする場合、通常のDCFで使用される「時間」を基にした割引率以外に、新薬の臨床段階ごとの成功確率が割引率として考慮される。この場合、承認をいつ得ることができるかが最大のポイントとなるが、4つの開発品のうち、「SP-01」は中国で承認を取得し、「SP-03」は国内販売が開始されており、同社の新薬開発に関する割引率は、他のバイオベンチャーよりも低く想定されてしかるべきであろう。

以上6点以外に中国市場での成長ポテンシャルの高さを挙げることができる。

世界のメガファーマも当然中国をはじめとしたアジア各国に拠点を設けているが、同社が開発の対象とするのは経営方針にあるように、大手製薬企業が業績重視の観点から着手しないがん領域や希少疾病領域での新規製品である。近年医薬品市場で注目を浴びるこうした製品はバイオベンチャー発のものであるが、大手は取り扱わないため、同社は、北京・上海・広州の自社販売網を含め、世界中のバイオベンチャーにとって急成長するアジア市場へのアクセスを提供できる貴重な存在となろう。加えて、中国ビジネスに強みを持ち筆頭株主でもある伊藤忠商事と中国全土(香港、マカオを除く)における販売代理店契約を締結し、そのネットワークを活用できる点も同社の大きなアドバンテージである。

2.2018年12月期第2四半期決算概要

(1)連結業績概要

連結業績概要
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  17/12期 2Q / 18/12期 2Q / 前期比
売上収益 / 5 / 84 / +79
売上総利益 / 5 / 12 / +7
研究開発費 / 285 / 483 / +198
販管費 / 272 / 452 / +180
営業利益 / -553 / -923 / -370
税引前利益 / -558 / -926 / -368
当期利益 / -545 / -916 / -371
*当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

売上収益は84百万円。内容は、開発品SP-03のMeiji Seikaファルマによる日本でのサンプル製品を含めた販売82百万円、開発品SP-01の協和発酵キリン向け純収入 2百万円。

研究開発費は、SP-02の第Ⅱ相臨床試験(最終試験)費用、SP-04の第Ⅲ相臨床試験(最終試験)費用など。

販管費は、SP-01およびSP-03の上市準備やマーケティング体制整備など中国マーケティング費用のほか、SP-03の日本におけるサンプル品販売開始を契機として始まった無形資産等の償却費13百万円など。

(2)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

主要BS
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  / 17年12月末 / 18年6月末
流動資産 / 3,525 / 2,360
現金等 / 3,370 / 2,070
 営業債権等 / 18 / 59
 棚卸資産 / 93 / 189
非流動資産 / 3,129 / 3,316
 有形固定資産 / 0 / 41
 無形資産 / 3,085 / 3,231
資産合計 / 6,655 / 5,676

流動負債 / 411 / 338
 営業債務等 / 372 / 299
非流動負債 / 34 / 35
負債合計 / 446 / 373
資本合計 / 6,208 / 5,303
 利益剰余金 / -5,553 / -6,470
負債純資産合計 / 6,655 / 5,676
銀行融資枠 / 2,600 / 5,100
*現金等は現金及び現金同等物。営業債権等は、営業債権及びその他の債権。営業債務等は営業債務及びその他の債務。

棚卸資産の増加はSP-01の上市に備えた中国向け製品。無形資産はSP-01およびSP-03の開発累計額、SP-01、SP-02、SP-03、SP-04の導入契約金およびマイルストン支払累計額。

資産合計は前期末に比べ9億79百万円減少し、56億76百万円となった。

銀行融資枠51億円の内訳は、当座貸越契約26億円、コミットメントライン25億円。

自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は93.4%。

◎キャッシュ・フロー

キャッシュ・フロー
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  / 17/12期 2Q / 18/12期 2Q / 増減
営業CF / -628 / -1,157 / -529
投資CF / -125 / -150 / -25
フリーCF / -753 / -1,307 / -554
財務CF / 3,780 / 11 / -3,769
現金同等物残高 / 4,062 / 2,070 / -1,992

前年同期にあった新株発行による収入が減少し、キャッシュポジションは前年同期に比べ19億円低下した。

(3)トピックス

◎開発品 SP-01が中国で新薬承認を取得

2018年7月、SP-01が中国当局から新薬承認を取得した。中国本土での承認取得第1号となる。

◎開発品 SP-02 の南米権利導出契約を締結

2018年8月、コロンビア共和国のHB Human BioScience SAS(以下、「HB 社」)と、開発品SP-02の、コロンビア、ペルー、エクアドル、ベネズエラ、チリ、パナマ、コスタリカ及びグアテマラでの販売等の独占的権利に関するライセンス契約を締結した。 SP-02の収益化については、日本地域では、既に Meiji Seika ファルマ株式会社と独占的開発販売契約を締結しており、今回の契約は収益化に向けた 2 つめの導出契約。

今後は、現在進行中の第Ⅱ相アジア国際共同臨床試験(最終試験)の結果等を鑑み、欧州、米国等の地域を対象とした権利導出を積極的に展開する計画だ。

今回の契約により、HB 社は、ソレイジア・ファーマによる日本の製造販売承認取得を契機に南米地域各国当局の承認を得るために必要な諸活動を実施し、当局承認以後にはSP-02の販売を行う。

上記地域内の末梢性T細胞リンパ腫患者数は日本とほぼ同数程度とのことで、薬価の設定も日本と同程度となれば一定の市場性を見込むことができるとソレイジア・ファーマは考えている。

収益という観点ではソレイジア・ファーマは、HB 社より契約一時金、開発進捗に応じたマイルストンに加え、SP-02の事業化以降の HB 社の営業利益の一部(プロフィットシェア)を受領することとなる。

医薬品事業による価値創出の多くは、医薬品販売開始以降に実現するものであるため、ソレイジア・ファーマでは、販売開始前の契約一時金や開発マイルストンに比べ、HB 社の販売開始後に受領するプロフィットシェアに重点を置いた経済条件を今回の契約では設定した。 そのため、今回の契約締結によるソレイジア・ファーマの業績への主要な影響について同社では販売開始以降、中長期に渡り及ぶものと想定している。

◎開発品 SP- 03の韓国権利導入契約を締結

2018年8月、開発品SP-03の導入元であるCamurus AB(以下、「Camurus社」) とSP-03の韓国での独占開発販売権利を導入する契約を締結した。

前述の通り、SP-03は2018年5月より日本国内販売が開始され、中国でも既に当局に申請を行っており、現在承認審査を受けている。 ソレイジア・ファーマは、日本での承認実績を踏まえ、韓国の抗がん剤治療に伴う口内炎の状況や承認取得可能性を含む事業性の検討を行った結果、韓国権利の導入、開発事業化を決定した。

この契約において、ソレイジア・ファーマはCamurus社に対し、契約一時金の支払は発生せず、今後の開発進捗に応じたマイルストンを支払うこととなる。今回の契約締結によるソレイジア・ファーマの業績への主要な影響について同社では開発完了を経た事業化以降に、中長期に渡り及ぶものと期待している。

◎新株式発行及び株式の売出しを決議

2018年8月28日、取締役会で新株式発行による資金調達を行うことを決議した。

(資金調達の概要)
発行する新株式数は、公募による14,782,700株、SMBC日興証券株式会社を割当先とした第三者割当による2,217,300株の合計1,700万株で、18年7月末の発行式株式総数の約19%に相当する。
発行価格は237.0円/株(払込婚額は222.3円/株)、調達資金は上限約37億円(2018年9月5日訂正届出書より)と見込んでいる。

(資金調達の目的)
今回の調達資金は、2017年11月に独占的開発販売権を取得し開発を開始した SP-04 の、主に第Ⅲ相臨床試験を中心とする承認申請に至るまでに必要な開発への投資、そして権利導入元へのマイルストン費用支払に充当する。

同社の4つの製品・開発品パイプラインのうちSP-01 と SP-03 は既に開発が完了している。今後のSP-04への開発投資を除いた場合、SP-01とSP-03の事業収入および現在の手元流動性約72億円(2018年6月30日現在、現金及び現金同等物残高 20億70百万円、銀行当座貸越及びコミットメントライン未使用残高 51億円)により新たな資金調達を行わなくとも一定程度の成長を伴った事業運営を図ることは充分に可能であるが、中長期のより高い事業成長及び企業価値最大化に加え、同社の社会的存在意義という観点からSP-04に対する期待に応えることは極めて重要であると考え、そのためにはSP-04 の開発進行は必須と判断。最終試験となる第Ⅲ相臨床試験実施に向けて長期安定的な財源を確保するため今回の資金調達実施を決定した。

(調達資金の使途)
調達資金上限 約37億円の使途は以下の通り。

調達資金の使途
(画像=2018年9月5日訂正届出書より)

使途 / 金額 / 支出予定時期
SP-04 開発投資(2021年まで)/ 31.51億円 / 2018年から2021年まで
SP-04 マイルストン費用支払 / 6億円 / 2021年まで
(2018年9月5日訂正届出書より)

日本等において行う第Ⅲ相国際共同臨床試験(最終試験)および中国において別途行う計画の臨床試験を中心とした2018年より2021年までの期間における開発費 42億円の一部に充当する。
Pled 社へのマイルストン費用の支払は、同社との契約規定のとおり開発進捗を契機として生じ、2021年までの期間の日本等での支払契機に対して6億円を充当する。

3.2018年12月期業績予想

(1)連結業績予想

連結業績予想
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  / 17/12期 / 18/12月期(予)/ 前期比
売上収益 / 410 / 100~600 / -75.60%~+46.3%
売上総利益 / 410 / 50~200 / -87.8%~-51.2%
研究開発費 / 773 / 1,300~1,450 / +68.2%~+87.6%
販管費 / 647 / 1,800~1,900 / +178.2%~+193.7%
営業利益 / -1,009 / -3,200~-3,000 / -
税引前利益 / -1,016 / -3,200~-3,000 / -
当期利益 / -1,007 / -3,200~-3,000 / -
*当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

業績予想に変更無し。SP-01、SP-03の販売開始で売上収益拡大も、開発費用増加で損失幅も拡大。

業績予想に変更は無い。売上においては販売開始時期、コストにおいては臨床試験などの開始及び終了時期には不確実性があり、現時点で特定することは困難であるため業績予想はレンジ形式によって発表している。

(売上収益)
前期未達だったSP-01の中国承認マイルストン23百万円および製品販売、SP-03の日本における製品販売や中国での導出先Lee’s Pharmaからの承認マイルストンなどを見込んでいる。

(研究開発費)
SP-02のアジアにおける最終試験となる第Ⅱ相国際共同試験終了までの費用、SP-04の日本及び中国における次相臨床試験費用が主な項目。その他に、SP-01の市販後調査費用、SP-03の中国承認審査の対応費用などがある。

(販管費)
SP-01およびSP-03の中国マーケティング活動費、中国におけるセールス体制構築費用および全社体制の維持費用、SP-01およびSP-03の無形資産償却費用が中心。無形資産償却は販売開始年度から特許期限までの期間按分の均等償却で、現在の知財ポートフォリオにおいては、SP-01は2024年まで、SP-03は2025年までである。

4.今後の事業目標

開発品毎の進捗状況および今後の見通し・目標などをまとめると以下のとおりである。

(SP-01)

2018年7月に中国での承認を取得した。6か月以内に患者の手元へ届くよう上市する予定で、その場合は今期売上に一部が計上される。 開発は終了し、今後は北京、上海、広州で自社マーケティング体制を構築し、販売額の増大を図る。

(SP-02)

日本などアジア第Ⅱ相臨床試験(最終試験)の結果公表が2019年と想定しており、その後承認申請を行う。

同時期以降に中国での臨床開発を開始する。

また、上記結果公表の後、適応症拡大への開発に着手するほか、欧米や中国での導出にも取り組む。その場合は導出契約締結による一時金である契約金受領も期待できる。

(SP-03)

日本及び中国における開発は終了し、2018年5月、日本における独占販売権の導出先であるMeiji Seika ファルマ株式会社による販売が開始された。今上期実績82百万円が初年度どこまで拡大するか注目される。

中国においては2018年中の承認取得を想定、その後の販売開始を計画している。

また、2018年8月に独占開発販売権利を導入した韓国においては、今後、承認申請を行う。

(SP-04)

現時点で最新のパイプラインではあるが日本など第Ⅲ相国際共同臨床試験が2018年下期に開始予定。順調にいけば2020年終了の予定。 早期に中国でも臨床試験を開始する。

(新規開発品)

2019年に想定されるSP-02の結果発表、それに引き続く承認申請による開発完了を目処に、新たな開発品への着手を図る。

SP-01、SP-03と相次いで承認を取得し着実に開発を進めている同社に対する評価は製薬業界において日に日に高まっており、国内外を問わず多くの案件が持ち込まれているとのことで、有望なパイプラインを継続的に創出する能力は一段と高まっている。

(企業としての目標)

2020年までの研究開発費を除く営業利益の黒字化達成を目標としている。

2018年12月期の費用は研究開発費15億円、販管費15億円の合計30億円を見込んでいることから、売上総利益を15億円上げることが必要となる。

現在開発が終了し販売段階に入ったSP-01とSP-03の粗利益、SP-02の試験成功による導出契約等による収入確保等をもって目標をカバーしてゆくことが計画されている。

5.今後の注目点

上場後の同社の事業の進捗を振り返ってみると、

▷上場前からの開発品SP-01とSP-03は既に開発を終了して販売ステージに入り、SP-03については売上実績が立ち始めた。
▷SP-02についても開発終了が視野に入ってきた。
▷上場後新たに導入したSP-04は第Ⅲ相国際共同臨床試験に参画することが決定し、開発期間及び開発コストの大幅な縮小を実現した。

など、2017年12月にSP-01の中国承認見込時期を変更した以外は会社側想定通りに極めて順調に進んでいる。

また、SP-03の販売開始等により「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載を解消したほか、総額51億円の間接金融に加え、今回、上限約37億円(18年9月5日時点)の直接金融による資金調達にも成功しており、事業展開および事業基盤の強化は着実に進んでいる。

だがそうした一方で直近の株価は245円(18年9月5日終値)と、2017年3月上場時の初値は234円(3月24日始値)とほぼ変わらない水準にとどまっており、株式市場は「同社の実態は上場時とほぼ変わらない」と評価していることとなる。

確かに同社の今期当期利益は約30億円の損失を予想している。目標としている研究開発費を除く営業利益の黒字化達成のためには15億円程度以上の売上総利益確保が必要であり、SP-01及びSP-03の順調な販売高逓増やSP-02の開発成功等を要件とすることから、短期での達成は容易ではないだろう。

ただ、【1-5 バイオベンチャーとしての6つの特徴】で触れたように、バイオベンチャーにおいては単年度PL(損益計算書)を用いた株価評価が合理的ではない点は自明であり、バイオベンチャーを対象とする場合には、通常のDCFで使用される「時間」を基にした割引率以外に、新薬の臨床段階ごとの成功確率が割引率として考慮されるべきである。

この場合、承認取得時期が最大のポイントとなるが、4つの開発品のうち、「SP-01」は中国で承認を取得し、「SP-03」は既に国内販売が開始されている同社の新薬開発に関する割引率は、市場平均よりも低く想定されてしかるべきであろう。

決して派手さはないが着実に開発実績を積み上げる一方、財務基盤の強化を進め安全性も飛躍的に高まっている同社について市場の評価がどう変化していくのかを注目したい。

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態:監査役会設置会社
取締役:6名、うち社外4名
監査役:3名、うち社外3名

◎コーポレートガバナンス報告書 最終更新日:2018年4月2日

<実施しない主な原則とその理由>

「当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しています。」と記載している。

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

(提供:インベストメントブリッジ