貧困問題の解決や国家間格差の解消などを目指す「持続可能な開発目標」(SDGs=Sustainable Development Goals)に参画する動きが世界中で広がっている。UNEP(国連環境計画)は、国が持続可能な発展を保ちながら、貧困問題などを解消するために、フィンテックを中心としたテクノロジーが鍵を握ると指摘。

フィンテックは競争市場の拡大、効率化と高速化および自動化によるコスト削減、経済システムの分散システム化を促すことで、貧困に瀕する国や地域を救い、人々に手を差し伸べる存在になり得ると考えられる。

SDGsが誕生した背景

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(写真=wk1003mike/Shutterstock.com)

SDGsは、経済格差や貧困、地球温暖化など深刻化する地球環境の問題などを解決に導くため、2015年に国連が採択したもの。持続可能な開発のための目標を掲げ、2030年までに全世界が目指す17の目標とターゲットと呼ばれる169の項目を定義している。経済、社会、環境の3分野を対象にしており、世界中の国や企業が実現のための施策を打ち始めている。

フィンテックによる社会問題解決への取り組み

UNEPは持続可能な開発を実現するために、フィンテックを活用することに関する報告書を2016年12月に発行した。そこで「金融業界でテクノロジーを使うことは新しいことではないが、ブロックチェーン、IoT、人工知能(AI)といった技術を組み合わせ、これまでにないアプリケーションを構築することで、次のステップがやってくる。こうした技術をうまく導入することで、持続可能な開発の拡大が可能になる」と明言している。

仮想通貨分野の中核技術であるブロックチェーンは、情報の改ざんが実質的に不可能という特性があり、政府の情報基盤にその技術を取り入れることにより、結果として不正や腐敗を排除するといった狙いがあるという。また、アフリカのガーナでは、ブロックチェーンで土地登記を実施するという取り組みが始まっている。衛星写真、GPS情報、登記文書などをブロックチェーンと結びつけることで、土地の所有者を特定して記録し、公共的な情報として誰もが見られるようにした。土地所有をめぐった争いや不正取引が絶えないことが問題になっている現地で、解決手段として期待されている。

「金融包摂」の前進に挑む

持続可能な開発を目指す取り組みが世界的に盛り上がる中で、「金融包摂」(きんゆうほうせつ、Financial Inclusion)の観点からフィンテックにかけられる期待は大きい。金融包摂とは、金融サービスにアクセスできなかった人々や事業者に対して、金融サービスを普及させることを意味する。世界で銀行口座を持たない人、金融機関にアクセスできない人の数は17億人に上るという。

根底には「本人確認書類」の問題がある。日本では出生時に戸籍がつくられ、住民登録される。パスポートも申請に基づいて発行されるが、世界的にみるとこれは当たり前ではない。身分を証明する手段を持たず、医療や教育、金融など基本的なサービスを受けられない人が途上国や紛争地域には数多くいる。SDGsも目標の一つに「2030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する」ことを掲げており、本人確認書類の必要性を強調している。

日本の取り組み

日本政府や民間企業も、フィンテックを活用した社会課題の解決への取り組みを進めている。政府は内閣にSDGs推進本部を設け、8分野の優先課題を編成し直し、目標達成を目指している。本部長は首相だ。具体的には、すべての人が負担可能な費用で利用できる保健サービスの構築や、国際防災協力の取り組みや会議の開催などを通じて、持続可能な社会作りをめざすという。

経済産業省が開催したフィンテック検討部会でも、フィンテックによって日本の社会課題を解決することの重要性が議論された。少子高齢化や労働人口が減り、中小企業による人の確保が難しくなるという変化は明確であるため、この課題にフィンテックで対応する仕組みを作ることが生産性向上という点からも重要との意見が挙がった。社会課題の解決に向けた取り組みが、世界でも日本でも様々な形で進んでいる。(提供:MUFG Innovation Hub

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