会社名 栄研化学株式会社

ブリッジレポート,栄研化学
(画像=インベストメントブリッジ)

証券コード / 4549
市場 / 東証1部
業種 / 医薬品(製造販売業)
代表執行役社長 / 和田 守史
所在地 / 〒110-8408 東京都台東区台東4-19-9 山口ビル7
事業内容 / 臨床検査薬大手。便潜血検査用試薬は国内シェア6割超、海外にも積極的に展開。遺伝子検査強化中。アライアンスに積極的。
決算月 / 3月末日
HP / http://www.eiken.co.jp/

株式情報
(画像=インベストメントブリッジ)

- 株式情報 -
株価 / 発行済株式数(自己株式を控除)/ 時価総額 / ROE(実)/ 売買単位
2,443円 / 36,881,959株 / 90,102百万円 / 8.3% / 100株
DPS(予)/ 配当利回り(予)/ EPS(予)/ PER(予)/ BPS(実)/ PBR(実)
27.00円 / 1.1% / 82.43円 / 29.6倍 / 914.57円 / 2.7倍
*株価は11/19終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。BPSは直近期決算短信より。
ROEは前期末実績。

業績推移
(画像=インベストメントブリッジ)

- 業績推移 -
(単位:百万円、円)
決算期 / 売上高 / 営業利益 / 経常利益 / 当期純利益 / EPS / DPS
2011年3月(実) / 27,562 / 2,709 / 2,775 / 1,672 / 46.03 / 15.00
2012年3月(実) / 27,702 / 2,363 / 2,543 / 1,460 / 40.19 / 15.00
2013年3月(実) / 28,645 / 2,548 / 2,812 / 2,453 / 67.49 / 17.50
2014年3月(実) / 30,027 / 3,008 / 3,095 / 1,984 / 54.57 / 17.50
2015年3月(実) / 31,014 / 2,826 / 3,013 / 2,100 / 57.57 / 17.50
2016年3月(実) / 32,163 / 3,536 / 3,570 / 2,429 / 66.43 / 20.00
2017年3月(実) / 33,274 / 3,976 / 4,112 / 2,918 / 79.69 / 25.00
2018年3月(実) / 34,991 / 3,478 / 3,549 / 2,608 / 71.21 / 25.00
2019年3月(予) / 36,760 / 4,200 / 4,230 / 3,040 / 82.43 / 27.00
*2019年3月期は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
*2018年4月1日付で1:2の株式分割を実施。EPS、DPSは遡及して調整。

栄研化学株式会社の2019年3月期第2四半期決算概要等についてご紹介致します。

今回のポイント

・19年3月期第2四半期(累計)の売上高は前年同期比1.0%増の176億円。国内は便潜血検査用及び尿検査用試薬が増加したが、AIAの減少により微減となり、海外は豪州・欧州・米国における便潜血検査用試薬の売上が増加した。営業利益は同14.8%増の25億円。プロダクトミックスの変化で粗利率が2%改善し、粗利額も同5.9%増加した一方、販管費の伸びは同2.1%にとどまった。海外向けの便潜血検査用試薬の入札遅延および国内の東ソー導入品AIAの減少により売上は計画未達だったが、利益は計画を上回った。

・業績予想に変更は無い。中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)最終年度となる今期の売上高は前期比5.1%増収の367億円の予想。国内は横這いながら、海外は米国、欧州で便潜血検査用試薬が引き続き堅調。
営業利益は同20.7%増の42億円を見込む。配当は、年間合計27円/株の予定。株式分割考慮後で2円/株の増配。予想配当性向は32.5%。

・同社の今後の成長を支えていくのが海外市場であることは明らかだ。今上期は海外向けの便潜血検査用試薬の入札遅延が売上未達の要因の一つであったが、対前年同期比では欧州、北米ともに2桁の増加であり、着実に市場開拓は進んでいる。会社側は通期で約3割弱、下期では4割を超す伸長を見込んでいるが、なかでも北米は前下期比約7割という高成長を計画している。ACS(American Cancer Society)ガイドライン変更(対象年齢引き下げ)を追い風に確実に需要を取り込み、この数値が達成されるかを注目したい。

1.会社概要

臨床検査の内、免疫血清検査、微生物検査、生化学検査、尿検査、遺伝子検査など、人体から採取した試料(検体)を調べる臨床検査薬の総合メーカー。検査機器の開発・販売も行っている。

国内シェア60%以上の便潜血検査を始め、尿検査や微生物検査など他社にはない独自技術・ノウハウを利用した高シェア製品多数。また独自開発の遺伝子増幅技術「LAMP法」は世界的に高い評価を得ている。便潜血検査、尿検査とLAMP法などの独自技術を武器にグローバル企業への成長を目指している。

【沿革】

1939年 興亜化学工業(株)として創立し、家畜臓器を原料とした栄養食品および医薬品の製造販売開始
1949年 日本で初めて細菌検査用粉末培地(SS寒天培地)の製品化に成功
1961年 臨床検査部門を開設し、臨床検査薬の研究開発開始
1969年 創立30周年にあたり、栄研化学(株)と社名変更
1972年 尿試験紙「ウロペーパー‘栄研’」発売
1987年 便潜血検査用試薬「OC-ヘモディア」(目視判定法)発売
1989年 便潜血測定装置「OCセンサー」発売
1990年 東京証券取引所市場第二部に株式を上場
1992年 尿自動分析装置「US-2100」発売
1998年 新規遺伝子増幅技術LAMP法を開発、特許出願
2001年4月 臨床検査薬・装置の自社販売を開始
2002年3月 東京証券取引所市場第一部に株式を上場
2002年3月 LAMP法が米国で特許成立
2002年3月 LAMP法を用いた第1号製品の「Loopamp牛胚性判別試薬キット」及び専用装置を発売
2002年5月 LAMP法が日本で特許成立
2003年12月 LAMP法を用いた体外診断用医薬品「Loopamp SARSコロナウイルス検出試薬キット」発売
2004年11月 便潜血検査用試薬及び装置の米国(FDA)での承認取得、発売
2005年7月 FINDとLAMP法を利用した結核の遺伝子迅速検査法の共同開発契約を締結
2008年2月 LAMP法に用いる超簡易前処理法(PURE法)の開発に成功
2008年10月 FINDと新たにマラリア、アフリカ睡眠病、HIVの共同開発の契約を締結
2009年3月 新経営構想『EIKEN WAY ・ EIKEN ROAD MAP 2009』策定
2011年6月 「Loopamp 結核菌群検出試薬キット」及び「Loopamp PURE DNA抽出キット」を日本で発売
2011年6月 オランダ・アムステルダムに欧州事務所開設(現・欧州支店)
2011年12月 FINDとリーシュマニア症の共同開発の契約を締結
2012年11月 イムノクロマト法による「イムノキャッチ-ノロ」発売
2013年3月~7月 BLEIA-1200専用試薬である「BLEIA'栄研'HCV抗体」、「BLEIA'栄研'HCV抗原」、「BLEIA'栄研'HBs抗原」発売
2014年1月 FINDとシャーガス病の共同開発の契約を締結
2014年11月 便潜血測定装置「OCセンサーPLEDIA」発売
2015年1月 LAMP法を利用した次世代の小型全自動遺伝子検査装置及び多項目検査チップを開発
2015年2月 全自動尿分析装置「US-3500」発売
2016年1月 シスメックス株式会社と海外市場の尿検査事業において業務提携
2016年8月 TB-LAMPがWHO(世界保健機構)の推奨を取得、HUMAN社とTB-LAMP、マラリア検査のグローバル販売提携
2016年10月 尿試験紙の新製造棟竣工
*LAMP法、FINDについては「2.特徴と強み④LAMP法の優位性」を参照

【経営理念】

*経営理念:「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」

*経営ビジョン:「EIKENグループは、人々の健康を守るために、検査のパイオニアとしてお客様に信頼される製品・サービスを提供し、企業価値の向上を図ります。」

*モットー:「品質で信頼され、技術で発展する“EIKEN”」

これらを中心に各ステークホルダーへの考え方として、EIKEN WAYを策定している。

EIKEN WAY
(画像=同社資料より)

【市場環境】

<国内市場>

臨床検査薬市場は、2017年度で約3,600億円、研究用試薬と検査用機器を含めると約5,929億円(一般社団法人日本臨床検査薬協会調査)となっている。

行政は増大している医療費を抑制するために特定健診(メタボ健診)やがん検診の受診率向上やOTC検査薬(薬局で購入できる検査薬)の規制緩和といった予防医療に力を入れており、今後、高齢化の進展と共に臨床検査数(検体数)の増加が見込まれる。

一方でマイナス面としては、価格競争による単価の低下、診療報酬改定(引き下げ)及び長期的には少子化による人口減少がある。ただ、診療報酬改定の対象である保険(検体検査実施料)の推移を見ると、1997年から2006年までの期間に約4割引き下げられたものの、その後はほぼ横ばいないし微減となっている(2018年度検体検査実施料 -0.4%)。これは同社の含めた業界全体として予防、検査の重要性を働きかけた結果という事で、中期的には国内市場は年率2%程度の微増傾向が続くと思われる。

前述の協会会員130社(2018年6月時点)の内メーカーは約80社で、売上100億円以上の企業は15社程度となっており、大多数は中堅・中小企業という構造。臨床検査は検査項目が多岐にわたっているため企業ごとに得意とする分野が異なり、企業間での棲み分けが出来ている。そのため、他社から原料・製品を仕入れて製造・販売するといった業務提携が多く見られる。また、そうした棲み分けが出来ている中、市場は小幅ながらも拡大しているため、明確な淘汰は現在のところ起きていないということだ。

<海外市場>

2015年の世界の検体検査薬・機器市場は約623億USDといわれており、地域別構成比は米国44%、欧州29%、アジア17%などとなっている。

市場規模自体が国内市場の10倍超と巨大であると同時に、先進国では高齢化の進展に伴う検査数の増加、また新興国においては経済成長、所得増加に伴う医療ニーズの拡大などにより、年率5%以上と国内市場を大きく上回る成長が見込まれるため、国内企業は積極的にグローバル化を進めている。 ただ、グローバル市場においては、ロシュ、アボット、シーメンス、ベックマンなど売上高が30~110億USDにも上る世界的大企業がメインプレーヤーとなっており、日本企業が競争に勝ち抜くためには独自性のある製品・システムの開発など競争力強化が不可欠である。

【事業内容】

1.臨床検査とは

臨床検査には、レントゲン、CT、MRI、心電図、超音波など、医療機器を使用して体を直接調べる「生体検査」と、患者から採取した血液、尿・便、細胞などの生体試料(検体)を調べる「検体検査」がある。

同社が取り扱う臨床検査薬とは、検体検査に使用する試薬の事で、例えば感染症の検査や便に含まれる微量の血液の測定など、病気の診断をサポートするもの。これら試薬の大部分は体外診断用医薬品と呼ばれ、医薬品医療機器等法の規制を受け、試薬メーカーなどがPMDA(医薬品医療機器総合機構)に対し申請し、認可を受けたものである。ユーザーは、病院、医院、診療所、受託を受けて検査を行う検査センター、健診センター、保健所、衛生検査所など。

2.主力製品

主として以下の各検査用試薬や測定装置を製造・販売している。 同社は幅広い検査薬を取り扱うために、自社製品に加え他社製品の仕入販売も行っている。 主要な自社製品は、便潜血検査用試薬、微生物検査用試薬、免疫血清検査用試薬、尿検査用試薬、遺伝子検査用試薬など。自社製品と他社製品の売上比率は約60:40。粗利率は自社製品が約55%、他社製品が約35%。

主力製品
(画像=インベストメントブリッジ)

製品名 / 売上高 / 売上構成比
便潜血検査用試薬 / 9,085 / 26.0%
免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)/ 10,027 / 28.7%
尿検査用試薬 / 2,905 / 8.3%
微生物検査用試薬 / 5,096 / 14.6%
生化学検査用試薬 / 608 / 1.7%
器具・食品環境関連培地 / 2,182 / 6.2%
遺伝子(LAMP法)関連(機器含む)/ 1,192 / 3.4%
医療機器関連(遺伝子関連機器を除く)/ 3,894 / 11.1%
売上高合計 / 34,991 / 100.0%
*2018年3月期実績。単位:百万円

便潜血検査用試薬
大腸がんのスクリーニング検査として糞便中ヒトヘモグロビンを特異的に検出・測定する便潜血検査用試薬・採便容器を主力製品とし、グローバルに販売している。

免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)
リウマチや炎症性疾患の診断及び胃の健康度評価(ABC分類)に使用する汎用自動分析装置用試薬「LZテスト‘栄研’」を始め、各種検査用試薬の開発、製造、販売を行っている。また東ソー(株)から、全自動エンザイムイムノアッセイ装置用試薬及び自動グリコヘモグロビン分析装置用試薬を導入・販売している。

尿検査用試薬
尿中の潜血、たんぱく質、ブドウ糖など多項目の検査が行える尿検査用試験紙「ウロペーパーⅢ‘栄研’」、全自動尿分析装置用には専用試験紙の「ウロペーパーαⅢ‘栄研’」などを開発・製造・販売している。

微生物検査用試薬
同社は創立以来、感染症及び食中毒の予防を目的とし、生体試料や食品・環境の微生物検査用試薬を開発してきた。現在では、各種細菌検査用培地(増菌用培地、分離用培地、生物学的性状検査用培地、同定検査用培地)、薬剤感受性検査用試薬、迅速検査試薬など、微生物感染症の診断・治療に有用な各種検査用試薬を開発・製造・販売している。

生化学検査用試薬
生活習慣病との関連性が注目されている検査項目を中心に、血清や尿を検体とし生体成分を測定・分析する「エクディアXL ‘栄研’」シリーズなど、生化学検査用自動分析装置に対応する各種検査用試薬を開発・製造・販売している。

器具・食品環境関連培地
食中毒原因微生物の検査などの食品微生物検査用試薬や作業環境の汚染実態などを把握できる環境微生物検査用試薬及び検査用器具・器材の販売を行っている。

遺伝子(LAMP法)関連
同社は1998年、新規遺伝子増幅技術LAMP法を独自開発し特許を取得し、LAMP法を利用した遺伝子検査用試薬を開発・製造・販売している。また、ライセンスも積極的に実施している。このLAMP法は、「簡易、迅速、精確、安価」という特徴を有しており、今後のグローバル展開のための大きな武器となっている。(詳細は後述)

医療機器
各種自動分析装置を販売している。自社試薬を使用する専用装置は製造委託を行っている。便潜血測定装置「OCセンサー」は1989年の発売以来、技術革新と品質向上を重ねている。また、独自技術である画像処理システムを使用した尿自動分析装置「US」、臨床検査分野で世界初となる全自動生物化学発光免疫測定装置「BLEIA-1200」、LAMP法リアルタイム濁度測定装置「LoopampEXIA」など取り揃えている。

3.販売体制

国内の販売体制は11営業所、3営業部。学術部門が販売促進の支援を行っている。

2018年3月期の全従業員704名(連結)中、約300名が営業部門。

ユーザーである病院など医療機関向けチャネルに関する直接の販売先は医療系卸会社で、殆ど全ての卸会社と取引を行っている。

海外販売においては、基本的に1か国・1代理店体制をとっており、販売とメンテナンスを委託しており、本社の海外事業室が管理している。輸出先は39ヵ国(2018年3月期)。米国、イタリア、フランス、スペイン、ドイツ、オーストラリア、韓国、台湾が海外売上の大半を占めている。アムステルダム(オランダ)に欧州支店があるほか、中国に関しては連結子会社「栄研生物科技(中国)有限公司」での生産・販売体制の強化を行う他、中国事業室を設置しビジネス拡大を図っている。今後は規模拡大に伴い現地法人化も検討していく。

2018年3月期の海外売上高は5,405百万円。うち便潜血検査用試薬は3,228百万円で構成比は59.7%。

【ROE分析】

ROE分析
(画像=インベストメントブリッジ)

  / 12/3期 / 13/3期 / 14/3期 / 15/3期 / 16/3期 / 17/3期 / 18/3期
ROE(%) / 7.0 / 10.9 / 8.3 / 8.3 / 8.9 / 10.0 / 8.3
 売上高当期純利益率(%)/ 5.27 / 8.56 / 6.61 / 6.77 / 7.55 / 8.77 / 7.45
 総資産回転率(回)/ 0.84 / 0.84 / 0.84 / 0.83 / 0.83 / 0.80 / 0.78
 レバレッジ(倍)/ 1.58 / 1.52 / 1.50 / 1.47 / 1.42 / 1.43 / 1.43

18/3期のROEは7.0%を見込んでいたが、実績はこれを上回った。ただ、これは売上が想定未達だったことに加え、設備投資の見直し、研究開発費の期ずれなどで利益が計画を上回ったため。

中期経営計画において2019年3月期のROE9.2%達成を目標として掲げている。

重点施策に挙げている高付加価値製品の開発、新規事業・新規市場の創出及び原価率及び販管費率の低減による利益率及び生産性向上を一段と強化する。

現在、約6割の自社製品比率を7割から8割程度に引き上げることが必要なため、特に海外においてはスタッフ増強も含めた営業力の強化が必要と考えている。

【特徴と強み】

(1)高シェアの製品群

便潜血検査用試薬の国内シェアは60%以上でトップであるほか、尿検査用試薬で約26%(2位)、微生物検査用試薬で約16%(4位)等と他社にはない独自技術・ノウハウを利用した多くの自社製品において高いシェアを有している。同社が便潜血検査用試薬で高いシェアを獲得することができた背景としては、1987年に発売した目視判定法用の便潜血検査用試薬「OC-ヘモディア」が、競合品に比べユーザーニーズに合致した製品であったこと、1989年には測定原理に免疫法(ラテックス凝集法)を採用し世界初の全自動分析装置「OC-センサー」を発売したことである。

また、便潜血検査は1992年に老人保健法の改正が行われ、大腸がん検診のスクリーニング検査法として公費で受診が可能(受診者負担が無料)になったのをきっかけに、普及が加速し競争が激しくなったが、同社は、機能を一新した「OC-センサーneo」を2001年に発売し、シェアを拡大してきた。

便潜血検査
(画像=同社資料より)

便潜血検査に関してはこの特徴を活かして海外展開を進めている。

日本で実施されている免疫法は、ヒトの血液のみ反応する試薬となっており、また、自動化装置による大量処理が可能である。

一方海外では化学法による古いタイプの試薬が使用されており、精度面に課題がある。2011年になりようやく欧州の検診ガイドラインで免疫法による自動装置測定が推奨され、大きな市場の変化が現れ始めた。

また、市場が最も大きいアメリカでも化学法が主流であるが、徐々に免疫法へのシフトが始まっており、USPSTF(米国予防医療特別委員会)の大腸がんスクリーニングに関する新ガイドラインが2016年6月に発行されたが、その中で従来の化学法ではなく免疫法が優れていると指摘されたことに加え、当社の便潜血検査製品『the OC FIT-CHEK family of FITs』が、高い感受性と特定性で最高の検査パフォーマンスを有していると評価された。さらにアジア、南米の先進国・新興国には未開拓な大きな市場が控えている。

便潜血検査市場は、ニッチな市場であるため、いち早く免疫法を開始した日本企業の技術が最も進んでおり、同社の試薬・装置がグローバルスタンダードとなっている。

(2)研究開発に注力

研究開発型企業として独自性のある技術の研究開発と、それをベースとした顧客ニーズに対応したオリジナル製品の開発に注力している。研究開発要員は約100名。

顧客の要望は医療のクオリティ向上。具体的には、高感度・高品質による疾患の鑑別精度の向上、検出率の改善といった点が挙げられる。加えて、使用法が簡便であれば医療従事者の負荷軽減につながるため、そうしたニーズへの対応も重要なポイントとなっている。

同社は、1939年の創業以来培ってきた試薬製造の独自技術が蓄積されており、またその試薬の性能を有効に活用するための装置に関しても、便潜血検査用装置や尿自動分析装置、生物化学発光免疫測定装置(BLEIA法)、遺伝子検査などで他社にはない独自技術が用いられている。

(3)アライアンス戦略による多品種・多分野展開

臨床検査薬はその対象、項目は多岐にわたり、すべてを自社で開発・製造・販売を手掛けることは困難である。同業他社の多くは自社の得意な技術・製品に絞っているが、同社は臨床検査薬の総合メーカーとして、収益構造の安定化をめざし、アライアンス戦略を通じて自社の有する強みの拡大、機能の補完、新技術の取得といったシナジー効果を追求しつつ、広範に取扱製品を揃え、医療機関を始めとした顧客、ユーザーのニーズに対応している。

多品種・多分野に展開しているもう一つの理由としては、経営理念「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」にあるように国民の健康を守るという責務を達成するためには、幅広い臨床検査に対応することが企業としての社会的責任であるとの想いも根底にある。

(4)「LAMP法」の優位性

遺伝子検査の中の過程の一つである遺伝子増幅プロセスにおける現在の主流技術は「PCR法」と呼ばれるもの。これに対し同社は1998年「LAMP法」という独自技術を開発した。

「LAMP法」はPCR法と比較して、以下の様な優れた特徴を持ち、簡易で迅速に特異性の極めて高い遺伝子検査を行うことが出来るものである。

LAMP法
(画像=インベストメントブリッジ)

簡易:一定温度で増幅反応が進む。(PCR法は増幅に温度変化が必要)
迅速:増幅効率が高く30~60分で検出可能。(PCR法は2~3時間)。
精確:特異性が極めて高い。

現在、医療分野では感染症検査である結核やマイコプラズマ(真正細菌の一属で、肺炎の原因となることもある。)、レジオネラ、百日咳等の検査に使われている。

同社はLAMP法の地位確立のため感染症検査に注力すると同時に、LAMP法の普及・認知度向上のために、畜産・水産、食品・環境など医療以外の分野での利用を推進しており、実際にLAMP法に基づく製品は2002年以降次々と実現している。

また同様の目的から、LAMP法陣営構築のために外部に対し積極的なライセンス許諾を行っている。

LAMP法を世界的に普及させるための中心的な取り組みの一つが、「FIND」とのアライアンスである。

「FIND」は「Foundation for Innovative New Diagnostics」のことで、2003年5月に開催された国連の世界保健会議の場で設立されたスイス政府認可の非営利財団。当初5年間、Bill & Melinda Gates Foundationからの助成金を受けて活動を本格化している。途上国における感染症撲滅のために、手頃な価格で、取り扱い易く、先進的な検査・診断方法を開発・導入する事を活動の目的としている。

FINDでは対象とする感染症として、結核、マラリア、アフリカ睡眠病などを挙げているが、このうち結核について途上国で実施されている顕微鏡検査(塗沫検査)よりも精度を向上させることを目的として、LAMP法による結核検査の共同研究が同社とFINDによって2005年7月より開始された。

途上国の現場でも利用できるように、前処理工程の簡略化(PURE法)、試薬保存方法の改良(室温保存)、装置の簡略化など、PCR法では実現できない改良が加えられた(TB-LAMP)。LAMP法を利用したこの製品は2011年に日本で既に販売となっている。その後、WHO(World Health Organization、世界保健機関)の推奨獲得のために、途上国14ヵ国での評価試験を終了し、WHOに資料を提出していたが、2016年8月、顕微鏡検査に代わる、あるいは顕微鏡検査を補強する検査としてWHOからの推奨を取得することができた。

WHOが2017年11月に発表した世界の結核に関する報告書によれば、2016年の世界202カ国における結核の罹患患者数は1,040万人で、2014年の960万人から80万人増加し、死亡者数は170万人で、2014年の150万人から20万人増加したという。そのほとんどが未診断例や未治療例と見られ、「診断や治療へのアクセスが整備されていない国での対策強化が必要」としており、TB-LAMPの普及、浸透はこうした問題解決に大きく貢献するものと同社では考えている。

加えて同社は、結核以外にも前述の疾病のほか、リーシュマニア症及びシャーガス病の検査薬に関して、FINDと共同開発を進めている。

また、同社はLAMP法を利用した次世代の小型全自動遺伝子検査装置および多項目検査チップ「Simprova(シンプローバ)」を開発している。本装置は、検体前処理(核酸抽出・精製)から増幅・検出までを全自動で行え、従来の高純度な核酸抽出・精製を行う装置と増幅・検出装置で合わせて2時間以上を要していた操作時間を、LAMP法の特徴を活かした独自プロトコルの開発により、1時間以内に短縮することが可能となる。まず、複数の呼吸器感染症原因微生物の同時検出を目的とした臨床性能試験を実施するが、その使用用途は広い。

同社では、これらの製品はLAMP法の普及を加速させるとともに、新たな市場を構築した中でグローバルスタンダードとしての地位を確立させるものと期待している。

*遺伝子増幅法
遺伝子検査では、検体に含まれる目的の遺伝子量が極めてわずかなため、遺伝子を検出するためにはまず目的とする遺伝子を増幅させなければならず、遺伝子検査において最も重要なポイントが遺伝子増幅となる。

*アフリカ睡眠病
熱帯アフリカの風土病で、トリパノソーマという原虫がヒトに感染して引き起こす重大な熱帯病。ツェツェバエが媒介する。ヒトの血液中のトリパノソーマがツェツェバエに吸血され、その体内で発育、増殖し2~5週で終末トリパノソーマ型となって次の感染源となる。高熱、頭痛、嘔吐などをきたし、ひたすら眠るようになる。食事が摂れなくなるので痩せ、全身衰弱となり、多くは合併症を引き起こして死亡する。

*リーシュマニア症
リーシュマニアという原虫の感染によって引き起こされ、黒熱病といわれる内臓リーシュマニア症、皮膚と粘膜をおかすブラジルリーシュマニア症、皮膚をおかす熱帯リーシュマニア症があり、いずれも吸血昆虫、とくにサシチョウバエが媒介する。内臓リーシュマニア症は約3か月の潜伏期の後、高熱、発汗や下痢が生じ、1か月ぐらいすると肝臓と脾臓が腫れ、貧血が進み、放置すると衰弱し、半年から2年で死亡することもある。

*シャーガス病
米国南部や中南米において哺乳類吸血性であるオオサシガメ亜科のサシガメを媒介とする感染症。すぐには発病せず、一般的に30年ほどの潜伏期間がある。リンパ節、肝臓、脾臓などの腫脹、筋肉痛、心筋炎、心肥大、脳脊髄炎、心臓障害といった症状をもたらす。

2.2019年3月期第2四半期決算概要

(1)連結業績概要

連結業績概要
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  / 18/3月期2Q / 構成比 / 19/3月期2Q / 構成比 / 前年同期比 / 期初予想比
売上高 / 17,462 / 100.0% / 17,642 / 100.0% / +1.0% / -4.5%
国内 / 14,998 / 85.9% / 14,957 / 84.8% / -0.3% / -
海外 / 2,464 / 14.1% / 2,685 / 15.2% / +9.0% / -
売上総利益 / 7,348 / 42.1% / 7,783 / 44.1% / +5.9% / -
販管費 / 5,132 / 29.4% / 5,238 / 29.7% / +2.1% / -
営業利益 / 2,215 / 12.7% / 2,544 / 14.4% / +14.8% / +6.9%
経常利益 / 2,255 / 12.9% / 2,601 / 14.7% / +15.4% / +8.8%
四半期純利益 / 1,633 / 9.4% / 1,969 / 11.2% / +20.6% / +14.5%

前期比増収・減益

売上高は前年同期比1.0%増の176億円。国内は便潜血検査用及び尿検査用試薬が増加したが、AIAの減少により微減となり、海外は豪州・欧州・米国における便潜血検査用試薬の売上が増加した。

営業利益は同14.8%増の25億円。プロダクトミックスの変化で粗利率が2%改善し、粗利額も同5.9%増加した一方、販管費の伸びは同2.1%にとどまった。

海外向けの便潜血検査用試薬の入札遅延および国内の東ソー導入品AIAの減少により売上は計画未達だったが、利益は計画を上回った。

(2)製品別売上高

製品別売上高
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
製品名 / 18/3期2Q / 19/3期2Q / 前年同期比
便潜血検査用試薬 / 4,716 / 5,298 / +12.4%
免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)/ 5,084 / 4,990 / -1.8%
尿検査用試薬 / 1,372 / 1,422 / +3.6%
微生物検査用試薬 / 2,538 / 2,530 / -0.3%
生化学検査用試薬 / 308 / 309 / +0.5%
器具・食品環境関連培地 / 1,113 / 1,113 / -0.1%
遺伝子(LAMP法)関連(機器含む)/ 546 / 575 / +5.4%
医療機器関連(遺伝子関連機器を除く)/ 1,782 / 1,401 / -21.2%
売上高合計 / 17,462 / 17,642 / +1.0%

○便潜血検査用試薬

国内は前年同期比2.2%増。大型施設での新規採用があったほか、大腸がん検診啓発活動による市場拡大に引き続き注力した。

一方、海外は同37.9%の増収。米国では、新規の大手検査センターへの販促活動を進めた。また、ACS(American Cancer Society)ガイドラインが改訂され、受診対象年齢が50歳から45歳に引き下げられ市場が拡大したことを受け、新規対象者への啓発及び販売促進を行った。

欧州では、ドイツにおいて主要検査センター向けが堅調でシェアが拡大した。前期伸び悩んだフランスでは受診率向上に向けた施策が実を結び受診率が向上した。また数か国での入札への対応を行った。

中東各国で大腸がん国家スクリーニング獲得に向けた活動を継続したほか、前期新たに獲得したオーストラリアでの国家スクリーニングは順調に推移している。

○免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)

AIA試薬の新製品オートタキシン(肝繊維化マーカー)の販売促進を行ったが、他社との競争激化、市場価格の下落により減収となった。LZ試薬は、他社との競争激化により前年同期比微減となった。胃の健康度評価(ABC分類)の普及促進に努めた。

○尿検査用試薬 国内は、全自動尿分析装置「US-3500」の新規採用・切替促進により、ウロペーパーαが伸長した。A/C・P/C試験紙を用いた腎臓病早期スクリーニング・学童検診市場の構築に取り組んだ。

海外では、シスメックス社向け尿試験紙の売上が寄与した。

○微生物検査用試薬

迅速検査試薬は、他社品との競争激化により微減となった。

薬剤感受性検査用試薬は、病院市場での微生物分類同定分析装置「MALDIバイオタイパー」と組み合わせたトータル提案での新規顧客の獲得等によりドライプレートの売上が増加した。

糞便培地検査の遺伝子検査への変更の影響を受け、生培地(ポアメディア)は減収だった。

○遺伝子(LAMP法)関連

国内では、診療報酬改定で「微生物核酸同定・定量検査迅速加算」の新設により、百日咳キット、結核菌群が好調で、増収。

海外では、TB-LAMPについてカメルーンでの採用事例をモデルにした水平展開を推進した。

特許料収入は前年同期比3百万円減少の241百万円。

(3)海外動向

海外動向
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  / 17/3期2Q / 18/3期2Q / 19/3期2Q / 前年同期比
海外売上高 / 1,862 / 2,464 / 2,685 / +9.0%
 北米 / 468 / 531 / 584 / +10.0%
 欧州 / 669 / 748 / 991 / +32.5%
 アジア・他 / 724 / 1,184 / 1,110 / -6.3%
うち、OC / 1,187 / 1,339 / 1,847 / +37.9%
  その他 / 674 / 1,125 / 838 / -25.5%

便潜血検査用試薬は豪州・欧州及び米国で売上が大きく増加した。

一方、機器を含むその他はシスメックス社向け尿検査装置の各国初期展開用在庫の影響により減収となったが、販促活動は計画に沿って進捗している。

(4)設備投資・研究開発・減価償却

設備投資・研究開発・減価償却
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  / 17/3期2Q / 18/3期2Q / 19/3期2Q / 19/3期 計画
研究開発費 / 1,027 / 1,156 / 1,218 / 3,200
設備投資 / 1,585 / 591 / 663 / 2,500
減価償却費 / 732 / 820 / 771 / 1,750

(5)財務状態

◎主要BS

主要BS
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  / 18年3月末 / 18年9月末
流動資産 / 27,197 / 27,350
 現預金 / 9,734 / 9,201
 売上債権 / 11,718 / 11,865
 たな卸資産 / 5,294 / 5,714
固定資産 / 17,968 / 17,941
 有形固定資産 / 11,391 / 11,264
 無形固定資産 / 435 / 461
 投資その他の資産 / 6,140 / 6,216
資産合計 / 45,165 / 45,292

流動負債 / 11,550 / 10,089
 買入債務 / 7,464 / 6,582
 未払法人税等 / 701 / 824
固定負債 / 1,136 / 1,251
負債合計 / 12,687 / 11,340
純資産 / 32,478 / 33,951
 株主資本 / 31,876 / 33,539
負債純資産合計 / 45,165 / 45,292
自己資本比率 / 71.2% / 74.5%
*買入債務には電子記録債務を含む。

たな卸資産の増加などで流動資産は前期末比1億53百万円増加。固定資産はほぼ変わらず。資産合計は同1億27百万円増加の452億92百万円となった。

買入債務の減少等で、負債合計は同13億47百万円減少の113億40百万円となった。

純資産は利益剰余金増などで同14億73百万円増加の339億51百万円となった。

この結果、自己資本比率は前期末の71.2%から74.5%へ3.3%上昇した。

3.2019年3月期業績予想

(1)連結業績予想

連結業績予想
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位: 百万円)
  / 18年3月期 / 構成比 / 19年3月期(予) / 構成比 / 前期比 / 進捗率
売上高 / 34,991 / 100.0% / 36,760 / 100.0% / +5.1% / 48.0%
 国内 / 29,586 / 84.6% / 29,890 / 81.3% / +1.0% / 50.0%
 海外 / 5,405 / 15.4% / 6,870 / 18.7% / +27.1% / 39.1%
営業利益 / 3,478 / 9.9% / 4,200 / 11.4% / +20.7% / 60.6%
経常利益 / 3,549 / 10.1% / 4,230 / 11.5% / +19.2% / 61.5%
当期純利益 / 2,608 / 7.5% / 3,040 / 8.3% / +16.5% / 64.8%
*予想は会社側発表

業績予想に変更無し。増収増益を予想。

業績予想に変更は無い。中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)最終年度の売上高は前期比5.1%増収の367億円の予想。国内は横這いながら、海外は米国、欧州で便潜血検査用試薬が引き続き堅調。

営業利益は同20.7%増の42億円を見込む。増収に加え、設備投資は前期の期ずれ分も含め前期比約14億円増加するが、減価償却費も当初計画より減少する。配当は、年間合計27円/株の予定。株式分割考慮後で2円/株の増配。予想配当性向は32.5%。

(2)重点施策

販売に関しては以下のようなアクションを取る

重点施策
(画像=インベストメントブリッジ)

便潜血検査

(国内)
・大腸がん検診普及活動による市場拡大と新規獲得に取り組む。

(海外)
・米国では、ACS(American Cancer Society)ガイドライン変更(対象年齢引き下げ)による受診者数増への展開推進及び新規検査センター獲得に向けて取り組む。
・欧州では数ヶ国への国家スクリーニング獲得に向けて取り組む。
・中東、ロシア、南米、東欧など新規市場の獲得を目指す。

尿検査

(国内)
・尿沈査メーカーとの連携による全自動尿分析装置「US-3500」の新規獲得、尿自動分析装置「US-1200」の設置促進、A/C・P/C試験紙を用いた腎臓病早期スクリーニング・学童検診市場の構築を進める。

(海外)
・シスメックス社との協業による尿試験紙・装置の売上拡大を図る。

免疫血清学的検査

・国内外における胃の健康度検査(ABC分類)の普及推進を図る。
・「AIA-CL2400」、「AIA-CL1200」の設置促進およびAIA試薬の新製品オートタキシン(肝繊維化マーカー)の販売促進を図る。
・海外では動物診断市場への展開を進める。

遺伝子検査

(海外)
結核、マラリア試薬のグローバル販売に向け、アフリカ・アジアを中心にカメルーン採用事例をモデルにして水平展開を図る。

研究開発 ・2020年3月期上市に向けた小型全自動遺伝子検査システム(Simprova)の開発を一層進める。
・便潜血検査のOTCガイドライン発行を見据えた申請を準備する。
・イムノクロマト製品のラインアップを拡充する。
・新規バイオマーカー(がん、心血管疾患等)を始めとした新技術の探索に取り組む。

拠点整備・その他
・IT中期計画に基づく全社IT化を推進する。
・人事関連制度を整備する。
・野木事業所拡張計画を推進する。

4.今後の注目点

同社の今後の成長を支えていくのが海外市場であることは明らかだ。今上期は海外向けの便潜血検査用試薬の入札遅延が売上未達の要因の一つであったが、対前年同期比では欧州、北米ともに2桁の増加であり、着実に市場開拓は進んでいる。

会社側は通期で約3割弱、下期では4割を超す伸長を見込んでいるが、なかでも北米は前下期比約7割という高成長を計画している。ACS(American Cancer Society)ガイドライン変更(対象年齢引き下げ)を追い風に確実に需要を取り込み、この数値が達成されるかを注目したい。

海外売上高
(画像=インベストメントブリッジ)

<参考1:中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)>

「EIKEN ROAD MAP 2009」の最終年度であり、創立80周年となる2019年3月期までの3年間のグループ中期経営計画を策定した。

【経営目標】

グローバル企業「EIKEN」の実現に向けた取り組みを加速し、ヘルスケアを通じて世界に貢献するとともに持続的な成長と着実な収益性の向上を目指す。

【業績目標】

業績目標
(画像=インベストメントブリッジ)

(単位:百万円)
  / 17/3期実績 / 18/3期実績 / 19/3期(予)
売上高 / 33,274 / 34,991 / 36,760
海外売上高 / 4,086 / 5,405 / 6,870
海外売上高比率 / 12.3% / 15.4% / 18.7%
営業利益 / 3,976 / 3,478 / 4,200
売上高営業利益率 / 12.0% / 9.9% / 11.4%
ROE / 10.0% / 8.3% / 9.2%

海外売上比率の着実な拡大を目指しているが、前述のように17年3月期、18年3月期と海外売上高が見通しを下回ったことをうけ、最終年度の予想数値を引き下げた。

成長戦略としては、①国内市場での自社製品のシェアアップ、②グローバル展開の加速を、次の成長への投資として①研究開発の強化、②経営効率を高めるための基盤整備を掲げている。

<成長戦略>

(1)国内市場での自社製品のシェアアップ

国内市場での自社製品のシェアアップ
(画像=インベストメントブリッジ)

基本方針
 ・自社製品群のラインアップ拡大による着実な成長

重点施策
【便潜血検査】
 ・受診率アップのための啓発活動とOTC試薬の市場投入
【尿検査】
 ・尿沈渣メーカーとの連携と競争力のある尿分析装置の投入
【迅速検査】
 ・イムノキャッチシリーズによる新規採用の獲得
【LZテスト】
 ・胃の健康度評価(ABC分類)の普及推進と関連試薬の重点販売
【薬剤感受性検査】
 ・『DPS192iX』と『MALDIバイオタイパーMF』の組み合わせ販売による新規採用先の拡大と薬剤感受性検査用試薬の販売推進
【LAMP】
 ・LAMP試薬(結核菌群、マイコプラズマ、百日咳)の院内検査化推進による販売拡大
 ・呼吸器感染症チップ・装置の発売(2020年3月期計画)

(2)グローバル展開の加速

グローバル展開の加速
(画像=インベストメントブリッジ)

基本方針
 ・中期的に安定成長できる事業ポートフォリオの構築

重点施策
【便潜血検査】 
 ・大腸がん国家スクリーニングの獲得と新興市場の開拓
 ・国家スクリーニング:イングランドほか
 ・新興市場の開拓:ASEAN、インド、中東、南米
【尿検査】 
 ・シスメックス社との尿定性検査分野での協業
【LZテスト】 
 ・胃の健康度評価(ABC分類)の普及などによるLZテストの展開
【LAMP】
 ・結核、マラリア等の展開

<次の成長のための投資>

(1)研究開発力の強化

研究開発力の強化
(画像=インベストメントブリッジ)

基本方針
・新技術の創生・導入による大型製品群の開発推進
・既存技術のブラッシュアップによる製品の改良、製品ラインアップの拡大

重点施策
・次世代の小型全自動遺伝子検査装置及び多項目検査チップの開発推進
【適応分野】感染症、がん、コンパニオン診断等
・産官学共同研究による新規バイオマーカー、新技術の探索
・LZテスト、迅速検査(イムノキャッチシリーズ)等の改良及びラインアップ拡大

(2)経営効率を高めるための基盤整備

経営効率を高めるための基盤整備
(画像=インベストメントブリッジ)

基本方針
・生産能力の拡大と製造原価の低減
・全社最適化による経営効率の向上

重点施策
・野木工場
  尿検査用試薬の増産体制と製造原価低減の実現
・那須工場
  便潜血検査、LZテストのグローバル展開拡大に向けた増産体制の確立。OCは倍増へ。
・全社ITシステムの見直し

この他に「基本方針」として、「コア技術の洗練」、「市場優位性の確立」、「新規事業・新規市場の創出」、「戦略的提携の実施」などを掲げている。

【株主還元】

配当性向30%以上の安定した配当を目標としている。

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態:指名委員会等設置会社
取締役:8名、うち社外5名
指名委員会:3名、うち社外2名
報酬委員会:3名、うち社外2名
監査委員会:3名、うち社外3名

◎コーポレートガバナンス報告書 最終更新日:2018年11月15日

<基本的な考え方>

当社のコーポレートガバナンスの考え方は、経営理念、経営ビジョン、モットーを基本としております。

*経営理念
ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。

*経営ビジョン
EIKENグループは、人々の健康を守るため、検査のパイオニアとしてお客様に信頼される製品・サービスを提供し、企業価値の向上を図ります。

*モットー
品質で信頼され、技術で発展する“EIKEN”

当社は、経営の健全化、迅速化及び透明性を高め、企業価値の向上を図るためにも、株主の視点を重視したコーポレートガバナンスの充実を経営の重要課題の一つと認識し、その取り組みを行っております。

当社は、指名委員会等設置会社の体制を採用しており、経営の業務執行機能と監督機能を分離しております。経営の基本方針に係わる重要事項については、取締役会の審議を経て決定し、業務執行については、社内規則・規程に基づき、適正な指示命令系統のもと迅速かつ円滑に行っております。

<実施しない主な原則とその理由>

「当社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。」。

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>

【原則1-3 資本政策の基本的な方針】

当社は、株主価値の維持向上を実現するために、資本効率の向上と持続的かつ安定的な株主還元を資本政策の基本方針としております。具体的な指標として、2019年3月期業績予想の見直しを踏まえ、自己資本当期純利益率(ROE)9.2%を目指します。また、株主還元につきましては、財務体質の強化と積極的な事業展開に必要な内部留保の充実を勘案した上で、連結配当性向30%以上の配当の継続を目標としております。

なお、支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策(増資、MBO等を含む)を行う際には、取締役会において、その必要性と合理性について十分検討し、適正な手続きを確保いたします。また、株主・投資家への十分な説明に努めてまいります。

【原則1-4政策保有株式】

1.上場株式の政策保有に関する方針
当社は、営業活動の円滑な推進、取引関係維持、業務及び資本提携のため、合理性があると認める場合に限り、取引先の株式を保有し、これら政策保有株式について、当社事業の発展に資すると判断する限り保有を継続することを基本方針としております。毎年、取締役会にて個別の政策保有株式の保有目的や経済合理性を確認し、保有する意義の乏しい銘柄については、株価動向等を勘案した上で売却することにより、政策保有株式の縮減に努めております。

2.政策保有株式に係る議決権行使基準
当社は、政策保有株式の議決権について、当該企業のコーポレートガバナンスの整備状況、株主価値の向上に資する議案であるか、当社に与える影響等を総合的に判断して行使しております。

【補充原則4-11-3 取締役会の実効性の評価と結果の開示】

当社は、2016年度における取締役会の実効性に関する分析・評価を行いましたので、その結果の概要を開示いたします。

1.実施の目的
取締役会が適切に機能し、実効的に運営されていることを客観的に確認するとともに、指摘された課題については必要に応じて改善を図る。

2.実施対象及び実施方法
全取締役に対して、記名式・自由記述式のアンケートを実施

3.アンケート項目
(1) 取締役会の構成 (2) 取締役会の運営 (3) 取締役会の監視・監督状況等

4.分析・評価の結果概要
以下の点に鑑み、取締役会は適切に機能し、実効性が十分に確保できている。
(1)現在の取締役会の人数、社内・社外の構成比は適切であり、経験・知見・多様性のバランスがとれている。
(2)前年度アンケート結果を受け、資料の提供時期、審議時間、説明資料や説明方法を工夫したことにより、取締役会の運営に改善の効果がみられる。
(3) 前年度アンケート結果を受け、毎月の業務執行状況に加えて、重要事項の進捗状況を定期的に報告したことにより、取締役会の監視・監督がより充実した。

一方で、指摘された課題に対しては、以下のとおり取り組むことを確認した。
(1) ダイバーシティの観点からの取締役候補者の選定については、今後の指名委員会、取締役会で継続して検討する。
(2) 議論の実効性を高めるため、よりポイントを絞った資料作成・説明を行うなど、取締役会運営の更なる改善に努める。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、取締役会で承認されたIRポリシーを制定し、基本方針、開示情報、情報開示方法、沈黙期間等を開示しており、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で株主からの対話に対応しております。

当社は、広報課をIR担当部署とし、広報課を管掌する経営管理統括部長をIR担当執行役としたIR体制を整備し、株主・投資家との対話の場を設けており、理解と信頼を得るよう努めております。

経営管理統括部長は経営企画部、経理部、人事総務部等のIRに関連する部署も同時に管掌しており、情報共有を密にすることで部署間の連携を図っております。

株主との対話といたしましては、決算短信及び第2四半期決算短信発表時の年2回、アナリスト・機関投資家向けに決算説明会を開催し、代表執行役社長による説明及び対話を行っております。また、株主・投資家との個別面談に関しては、広報課が対応しております。株主・投資家本人からの要望や、保有株数によっては、合理的な範囲で経営陣幹部や取締役が面談に対応しております。対話によって把握されました株主・投資家の意見等は、必要に応じてIR担当執行役から取締役会へ報告されます。

なお、当社は、IRポリシーに基づき、株主・投資家との対話を行っており、インサイダー情報が含まれないように十分留意することはもちろん、所定の法令等を踏まえて社内規程を制定し、それに基づき適正に管理しております。

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

(提供:インベストメントブリッジ