この記事では、海外を活用した節税のリスクと今後の対策を紹介します。2015年時点で全国に122万世帯といわれる金融資産1億円の富裕層だけでなく、その予備軍(5,000万円以上の準富裕層や3,000万円以上のアッパーマス層)の方にも一読をおすすめします。近年、経済格差拡大や国の財政悪化もあり、富裕層による海外資産隠しや、タックスヘイブンに設立した法人を経由しての海外取引に対して世間の関心は高まっています。

「パラダイス文書」「パナマ文書」では、富裕層しかとりえない節税対策の実態が明るみに出ました。文書リストには誰もが知っている漫画家やネット企業グループ総帥をはじめ、複数の日本人氏名が記されています。こうした動向に、国税庁も神経を尖らせています。

海外口座は国税庁に握られている

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(写真=William Potter/Shutterstock.com)

近年、世界各国の課税当局は富裕層による課税逃れスキームを根絶やしにしようと、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを取り組んで連携を強めています。その一環として、2018年にはCRS(共通報告基準)が実現、101ヵ国もの金融口座情報の自動的交換が可能になりました。すでに国税庁は残高1億円以上の55万口座に関する情報を入手、さらに2019年9月までに1億円未満の口座情報も入手予定です。

それだけではありません。国内から海外に100万円以上を送金した場合、銀行は国外送金調書(送金者・送金額・相手国など)を提出しなければなりません。つまり、海外に資産フライトしようとしても、その動きはすべて当局に握られているわけです。プライベートバンクも、昔と違って口座秘密を守ってはくれません。

最近では、顧客の脱税を指南したとして数千億円規模の罰金支払いを命じられるケースも出てくるなど、銀行に対するプレッシャーが強まっています。そのため、「秘密を守る」ことで定評のあるスイスの銀行ですら、顧客情報の開示に応じるようになってきました。

ターゲットは富裕層だけではない

グローバルな情報ネットワークの整備と同時に、国税庁は東京・大阪・名古屋の主要国税局に「重点管理富裕層プロジェクト」を設置、所轄税務署と共同で積極的な税務調査を展開しています。例えば、神戸近くの高級住宅地では2017~2018年に大阪国税局による重点調査が実施され、50名以上の資産家に対し、総額30億円以上の申告漏れが指摘されたといわれています。

仮に資産が1億円以下だからとしても安心はできません。国税庁は見せしめのため、少額の金融資産も標的にしているといわれています。最近では、オーストラリアに海外口座を持つ資産家にも税務署からの「お尋ね」文書が届いており、その中には数千万円レベルのケースも含まれているのです。ちなみに、申告漏れの疑いがあるターゲットには、まず税務署から「お尋ね文書」が届きます。

これは調査の第一段階で、その後は文書による回答を求められたり、場合によっては実地調査(自宅や個人事務所)・反面調査(取引銀行等)に入ったりします。税務署が調査に入る場合、事前に口座情報や資産状況を把握しているケースが多いのです。無理に隠し立てしようとすれば、余計に心証が悪くなりかねません。

今後の相続対策

もし、ここ5年内に遺産を相続し、かつ、遺産の中に申告漏れの海外資産が含まれている場合は、修正申告をおすすめします。もし税務調査で申告漏れを指摘され、悪質と判断された場合、相続税だけでなくペナルティーが加算されることもあります。例えば、追加で納付する相続税が1,000万円の場合、調査通知を受けてから慌てて修正申告しても100万円です。

また、更正処分(税務署が納税額を決定し納税者に通知する処分)を受けた場合には、150万円の過少申告加算税が課されます。仮に故意に資産隠ししたと見なされれば、350万円の重加算税が追徴されます。調査通知後に修正申告すれば、こうしたペナルティーの加算は回避できるのです。海外に5,000万円以上の資産をお持ちの方は、調書の提出をおすすめします。

たとえ、期限を過ぎていても今のうちならおとがめはないはずです。ただし、節税対策は、過度にならない程度で積極的に活用しましょう。租税回避行為に抵触しなければ、国税当局も文句は言いません。(提供:WEALTH WINDOW


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