日本の高齢化に伴い、認知症になる確率は年々増加の一途をたどっています。内閣府が発表した、平成29年版高齢社会白書によると、高齢者の新体力テストの結果は、年々向上していますが、それと同じく認知症を発症している人の数も増えています。例えば、2012年は認知症高齢者が462万人、65歳以上の高齢者に占める割合としては、7人に1人(有病率15.0%)でした。

しかし、2025年には730万人(20.0%)、2030年には830万人(22.5%)と増加し、その比率は確実に上がっていく予想となっています。一方、日常生活を不自由なく過ごせる期間を健康寿命といいますが、2013年では、男性が71.19年、女性が74.21年です。しかし、2001~ 2013年の健康寿命の延び(男性1.79年、女性1.56年)は、同じ期間における平均寿命の延び(男性2.14年、女性1.68年)と比べて小さいのが実情です。言い換えると、不健康寿命の期間が延びているといえます。

高齢者を取り巻くそのような状況下で、お金に関することも考えていく必要があります。その方法として、最近徐々に脚光を浴びつつあるのが、「家族信託」です。文字通り、高齢者が子どもや孫に、自分の財産を「家族を信じて託す」ことが家族信託と呼ばれる方法です。では、具体的にその方法を見ていきましょう。

イメージからつかむ家族信託

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(写真=simona pilolla 2/Shutterstock.com)

まず、家族信託とは信託銀行に預けるといった金融商品を思い浮かべるかもしれませんが、まったくそうではありません。次の3つのイメージを持つことで、家族信託の本質がつかみやすくなるでしょう。

・親個人から家族へ
・新しく家族の財布を作る
・財布の中のお金は使う目的が限られる

家族でお金を管理

銀行口座や証券口座を開けた場合を考えてみましょう。そのお金を使える人は、口座名義人です。また、不動産を購入してそれを売却する場合も、所有者本人が行います。ここで2つの言葉が出てきます。委託者と受託者です。委託者とは、今、財産を持っている名義人です。委託者が資産を託し、それを受けた人を受託者といいます。

受託者は、その子どもなどで、名義人以外の人となります。また、受託者は一人とは限らず、複数にすることもでき、そうすることで、お互いに資産の使い道をチェックし合うことが可能です。さらに、そのほかに使い道を監督する機能として、信託監督人を置く場合もあります。もちろん、家族信託を組んだ後でも、委託者が元気で正常な判断ができる場合は、受託者が直接指示を出すことが可能です。

新しい財布を作る

次に行うことが、新しい財布を作ることです。よく銀行に「信託口口座」を作ってそこでお金を管理するという方法を散見しますが、実際に家族信託用口座を作成してくれる金融機関は多くはありません。したがって、より現実的なのは受託者本人のものとは別の口座を作成し、そこでお金の出し入れを行うことです。これを「分別管理」といいます。

そして、信託契約書に口座番号まで明記することで、きちんとした管理が可能となるのです。また、不動産に関しては、今まで所有者名が委託者名義になっていたものを受託者Bに登記変更をすることで、信託したこととなります。登記簿上は、所有者ではなく委託者として登記されることが特徴です。

目的を決める

最後に、信託財産を使う目的を決める必要があります。例えば、もとの資産所有者である父を「委託者兼受益者」とし、その目的を「父の老後の生活を守るために財産を管理し、必要に応じて処分する」といった目的を定めるのです。場合によっては、「父の死後、母のために財産管理する」といったことも可能です。

家族信託を使うシーン

以上が、家族信託のイメージでしたが、実際に家族信託を使うシーンはどのようなケースがあるのでしょうか。例えば、下記のような場面で家族信託を使うことができます。

・認知症に対応するケースとして、認知症発症時のお金や実家の処分
・父の死後、認知症の母の生活を守るために信託する
・父の死後、障害のある子どものために生活費を分けておきたい

家族信託以外で、財産管理や相続で使える方法としては、遺言や任意後見、成年後見人制度があります。しかし、それらと比較しても家族信託は財産管理対策や相続対策にも使えることがメリットです。一度契約をしておけば、「元気なうち」「認知症になったとき」「死後」のすべての段階で活用することができる、とても便利な制度といえます。(提供:アセットONLINE


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