『伝説の営業術』
数字だけが求められる厳しい営業の世界でトップセールスになる人は、どんなことを心がけ、何を実践しているのか。「ノルマの野村」とも言われる野村證券の営業畑で実績を積み、43歳の若さで最年少役員(当時)に抜擢され、当時の社長から「営業の鑑」と言わしめた津田晃氏に営業の極意を聞いた。(編集構成:ZUU online 編集部 菅野陽平)※本インタビューは2018年12月11日に実施されました


――営業に必要な心構えや習慣について伺いたいと思います。著書の『伝説の営業術』(プレジデント社)でも『どんな人にも大切な「売る力」ノート』(かんき出版)でも準備の大切さを説いていますね。
売れない営業ほど事前準備ができていないし、売れる営業はきちんとできています。準備にもいろいろありますが、自分が売っている商品・サービスのことをすべて把握しておくというのも、一つの準備でしょう。
私が営業に配属されてしばらくたって、成績が上がらずに悩んでいる時に、先輩に相談しにいきました。その時にこんなアドバイスをしてもらったことがあります。「お前の売る商品は株式だろう。証券会社の営業なんだから、まず銘柄を全部覚えろ。毎日、会社四季報を読んで、覚えたところを食べてしまえばいい」。冗談半分だったと思いますが、全部覚えろというのは本気でした。
――四季報の掲載企業数は当時もかなり多かったと思いますが、どうやって覚えたのでしょうか。
四季報には1ページに片面2銘柄、裏表で4銘柄が載っています。3ページなら12銘柄です。私は毎日3ページずつ切り取って、通勤途中やスキマ時間に読み込むことにしました。もちろん食べる気にはならないので、3ページ読んで覚えた分はゴミ箱に捨てる。捨てると心に決めると、もったいない気がするからか真剣に覚えるようになります。
これを繰り返すと、だいたい3ヵ月で分厚い四季報を読み終わり、次の号が出る時期になります。そうして1年も経つと、基本情報はだいたい頭に入っていることに気が付きました。お客様が何気なしに口にした銘柄のことも、「ああ、それはこんな事業をやっていて、業績は好調ですね」といったように、だいたいのことは答えられるようになりました。
するとお客様は、「いい銘柄を教えてくれた。じゃあ、それも買ってみようか」と試しに買ってみてくれるのです。その結果、少しずつ成績が上がっていき、自信が付いてきました。
――商品知識がなければお客様との商談も盛り上がりませんからね。
ええ。それまでの私は、銘柄について聞かれると、「○○社ですか? 社に戻って調べてみますね」と答えるのが精一杯でした。そうするとお客様は、「いやいや、ちょっと気になっただけだから」と答え、それで終わりです。商品知識がないとビジネスチャンスを逃すことになるのです。