数字だけが求められる厳しい営業の世界でトップセールスになる人は、どんなことを心がけ、何を実践しているのか。「ノルマの野村」とも言われる野村證券の営業畑で実績を積み、43歳の若さで最年少役員(当時)に抜擢され、当時の社長から「営業の鑑」と言わしめた津田晃氏に営業の極意を聞いた。(編集構成:ZUU online 編集部 菅野陽平)※本インタビューは2018年12月11日に実施されました

「営業の鑑」と呼ばれた元野村證券専務が語る『伝説の営業術』
(画像=ZUU online)
リクルート的場様
津田 晃(つだ・あきら)
1968年野村證券に入社。東京の町田支店を皮切りに福岡支店、名古屋駅前支店と一貫して営業畑を歩んだ後、人事部を経験。86年、第一事業法人部長に就いたその翌年、当時43歳という異例の若さで取締役大阪支店長に抜擢。96年代表取締役専務・事業法人担当を歴任。97年以降は法人業務のキャリアを生かして、ベンチャー企業の成長・育成に尽力。1999年、ジャフコ代表取締役副社長に就任。2002年野村インベスター・リレーションズ取締役会長を経て、2005年に日本ベンチャーキャピタル代表取締役社長、日立キャピタル社外取締役に就任。現在、酉島製作所、宝印刷、MRIなど多くの企業の社外取締役や監査役、顧問を務めている。著書に『元野村證券トップセールスが教える伝説の営業術』(プレジデント社)、『【新版】どんな人にも大切な「売る力」ノート』(かんき出版)など。※画像をクリックするとAmazonへ飛びます

――当インタビューの第2回で「業績=知識×意欲×継続力×運」と説明いただきましたが、意欲を持ち続けることが難しいと考えている人も多いのでは。どうすれば意欲、やる気を継続できますか?

やる気なんて自然と出てくるようなものではありません。やる気を出すには、まず目標を持つことです。目標を設定し、そこに向かってコツコツと進めば、次第に効果が現れます。その小さな成功体験が原動力となって、やる気が出ます。

地道にコツコツとやっていると、目標達成が遠いような気がしてしまうこともあります。でも、目標までの道のりは直線ではありません。むしろ直線で行けることはほとんどない。目標を達成するということは、高い山に登るようなものと考えてください。

高い山に登る時に、直線で行けることはありませんよね。つづら折りになった道を少しずつ登っていくしかありません。仕事の目標達成も、あるいは人生もそれと同じです。回り道をしながらも一歩一歩登っていけば、いずれ高い目標に到達する。そう考えればやる気も継続できるのではないでしょうか。

目標設定する際のポイント

――具体的な目標設定について教えてください。営業でしたら必ず数値目標を設定して日々の営業活動を行います。どのくらいの負荷をかけて目標を設定するべきでしょうか。

100を達成したいなら、100が通過点になるような設定にするのが正しい目標設定です。たとえば会社から100の目標を与えられたら、自分のなかで120を目標にするのです。120に向かって努力すれば、100は通過点になるので達成しやすくなります。

私が勤めていた野村證券は、別名「ノルマ證券」とも言われたほど、ノルマが厳しいことで有名でした。しかし、その厳しいノルマも、ほとんどのメンバーが月初の10日間で達成していました。ノルマはほんの通過点に過ぎないとみんなが考えていたからです。

会社から設定されていたノルマがもともと低かったというわけではありません。当時の野村證券は、働いている社員数が同じくらいの大和証券、山一証券、日興證券の3社を合わせた利益と同等の利益を出していました。ノルマの面では、野村證券もほかの3社と同等の数値が設定されていたはずです。それを月の3分の1で達成し、さらに高い実績を残していたので、野村證券は1社で3社分の利益を出していたのだと思います。

ノルマなど関係なく、営業が自分の実力ギリギリまで高い目標を設定して、それをクリアするのが野村證券の社風でした。与えられた目標を到達点とするか、単なる通過点とするかで、行動に大きな違いが出ます。結果的に、その後の成長にも大きな差が生まれることになります。

――与えられた目標の1、2割増しで自分の目標を設定するということでしょうか。

そうですね。ただし、時には大幅に高い目標を掲げてみるのもいいでしょう。1、2割アップくらいでは、今までの延長で月並みなアイデアしか出てこないからです。