人口減少により需要の鈍化が予想される日本社会を超えて、海外に進出する日本企業はますます増加しています。しかし、海外での人材マネジメントや制度作りがうまくいかず撤退や拠点移動を余儀なくされる事例も少なくありません。

今回は、海外での人材マネジメントにおける課題と現地スタッフにおけるモチベーション管理の重要性や向上策についてご説明します。

現地スタッフの育成が長年の経営課題

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(写真=YAKOBCHUK VIACHESLAV/Shutterstock.com)

グローバル経営を進める上での課題として、多くの日本企業では現地スタッフ(ローカルスタッフまたはナショナルスタッフ)の育成を挙げています。一般社団法人日本在外企業協会が2016年に実施したアンケート調査によると、「グローバル経営を進展させるための本社から見た主要な経営課題」を尋ねたところ、最も多く選択されたのが「ローカル社員の育成」(73%)でした。

国土交通省は、グローバル人材マネジメントのポイントは「統制」と「現地化」にあるとしています。統制とはグローバル人材の処遇を定めたグローバルで共通した人事評価制度を指しており、現地化とは各地域の人材市場や経営環境などの諸事情を踏まえて報酬水準や福利厚生などを定めることを指しています。この統制と現地化を高度に兼ね備えた企業こそが、国境を越えて事業を最適化させた真のグローバル企業であると考えられます。

先のアンケートでも、主要な経営課題として「ローカル社員の育成」の次に挙げられたのが「グローバルな人事・処遇制度の確立」(51%)で、ローカルスタッフの採用・育成および人事評価制度の確立という両面を課題として記述する企業が多く見られました。しかしながら、こうした課題は前回の2014年アンケートでも同じように数多く挙げられていたものです。課題として認識しつつも、ローカルスタッフの処遇を含めたグローバル人材マネジメントの整備が進んでいない現状がうかがえます。

モチベーション向上によって定着率を上げる

現地スタッフの定着率を上げる方法の一つとして、待遇の改善を中心としたモチベーション向上策の実行が急務です。先ほどのアンケート調査では、日本人(本社従業員)との間の待遇差に不満を感じて辞めてしまうケース、主要業務を日本人が押さえていてキャリアアップの余地がほとんどないケースなど、現地スタッフのモチベーション向上がうまくいっていないことをうかがわせる回答が数多くありました。

「現地スタッフは指示されたことをこなしていればよい」という認識を本社や日本人の駐在員が持っていると、現地スタッフが給与やキャリアをアップさせるために何をすればよいのか道筋が分からず、モチベーションを維持できずにすぐ辞めてしまうことにつながります。

人事評価制度の整備とコミュニケーション強化を図る

それでは、現地スタッフのモチベーションを上げるには何が必要なのでしょうか。主に人事評価制度の整備とコミュニケーションの円滑化という両面から、3種類の対策が考えられます。

・明確な方針やビジョンの共有

第一に、本社の経営ビジョンを現地にも共有することです。国土交通省は、人材マネジメントを「『人材』を通じた経営ビジョン達成活動」と定義づけています。経営ビジョン=会社が理想とする姿を達成するのに必要な人材像を検討し、採用・育成することこそがグローバル人材マネジメントの要です。この中には、経営ビジョンや本社の戦略などを英語化・現地語化することも含まれます。

・適切な人事評価

給与向上やキャリアアップの筋道など、現地スタッフが意識する点を踏まえて適切な人事評価を構築することも求められます。明確なキャリアパスと人事評価制度を現地スタッフに提示することが、モチベーションの向上に大きく貢献するはずです。

・コミュニケーション強化

本社と現地拠点、日本人駐在員と現地スタッフのコミュニケーションを強化することも必要です。経営ビジョンや戦略の共有、適切な人事評価制度の構築は本社と現地拠点の関係強化対策と位置づけることができます。加えて、日本人駐在員が現地スタッフを軽視しないように駐在前の研修を行うこと、日本人駐在員の英語力を強化すること、駐在後に日本人と現地スタッフが親睦を深められるようなイベントの設定などが考えられます。

定着率を改善させる人事評価制度の構築を

現地スタッフのマネジメント、特にモチベーションの向上を実現することは容易ではありません。「言うは易く行うは難し」であり、実際多くの日本企業が課題に感じながらも手を付けられていないのが実情です。しかし本稿で触れたように、現地スタッフの定着率を上げるためにさまざまな施策を通じてモチベーションを上げることは急務の課題となっています。人材の育成、定着を図ることが企業の成長にもつながります。

グローバルでの事業展開を成功に導くためには、人事評価制度をはじめとした仕組み作りに着手すべきでしょう。どうしても対策の進め方の糸口を見つけられない場合は、人事コンサルティングなどを外部の企業に依頼し、協力してもらうのも一つの手でしょう。(提供:Global HR Online


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