GDPはなぜ大切か

gdp, 指標
(画像=PIXTA)

世の中にある経済指標の中で、最も総括的に様々な分野の経済データを網羅しているのが、GDPである。このため、GDPを見ておけば、経済全体の流れがわかるようになる。

GDPというのは、“Gross Domestic Product”の頭文字を取ったもので、一国全体の経済活動の水準である。“Product”(生産)という言葉から、日本の生産額を全て足したものという誤解をしがちだが、そうではない。

実は、GDPというのは、国内で生み出された付加価値の合計であって、生産ではない。また、GDPで最も注目されるのは、その変化率である。これを経済成長率というが、一国の経済規模の変化率がその国の経済成長率になるということで、その意味でもGDPは非常に注目度が高い。

それこそこれまでに消費税増税の判断のために最も注目されてきたデータがGDPの変化率である。更に、GDPは国際比較もできる。世界各国がある程度統一された基準でGDPを計算しており、殆どの国で経済成長率を出しているため、国際比較ができる。

日本のGDPは内閣府で計算しているが、実は本当の意味でのGDPというのは年に1回しか発表されない。GDPというのは幅広く網羅しているため、その分、発表されるのが遅くなるという欠点がある。毎年12月に、前年度の日本経済全体の姿を数値化した「国民経済計算」という統計が発表され、その一部として国内総生産がある。GDPが単体で発表されるわけではないが、この12月に発表されるものが本当の意味でのGDPとなる。

しかし、GDPが年に1回しか発表されないとなると、最近の景気がどうなっているのかわからない。そこで多くの国では、正確ではないが、既に発表されている様々なデータを元に、3か月に1回、四半期ごとにGDPの速報値というものを発表しており、内閣府のホームページでもみることができる。このGDP速報値(Quick Estimate=QE)が、マーケットでは非常に注目されることになる。

先程、GDPは「国内で生み出された付加価値の合計」であると述べた。これを詳しく説明すると、GDPとは「全ての財・サービスから、生産に用いられる原材料等の中間投入分を除いた総付加価値額」ということになる。

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要は、国内で生み出された付加価値ということであり、例えば、海外から150万円の原材料を輸入し、加工して50万円の付加価値を付けて200万円で売るとする。生産額は200万円になるが、原材料は海外から輸入しているため、日本では付加価値を生み出していない。このため、原材料の150万円は引かなければならない。このように、原材料等の中間投入分を除いた総付加価値、これがGDPということになる。

注目のGDP速報値

四半期ごとに発表されるGDP速報値、つまり“Quick Estimate”というのは「早く推計する」という意味であり、結局、推測値でしかない。GDP速報値の結果が新聞に出るが、推計値であって正確な数字ではない。

正確な数字は更に細かいデータが出てこないと計算できないため、それに近いデータを使って計算している。推計値ではあるが、四半期毎に発表されるため、最近の経済を出来るだけ早く知りたいという市場関係者が注目するということである。

市場関係者はGDPの成長率等を予測して、それをもとに運用のポジションをとる。このため、実際に出た数字がかなり予測から外れると、マーケットが大きく反応することになる。

このGDP速報値は、その四半期が終わった一月半程度後に1次速報が発表される。更にその1か月後程度に、発表された基礎データをもう1回入れ込んで計算し直した、二次速報が発表される。

新聞等でも「4-6月期のGDP2.6パーセント」等と報道されるが、この数字は「季節調整済前期比年率」というものである。

経済活動というものには季節性がある。季節によって、モノが売れるときと売れないときがある。このため、データをそのまま見てしまうと、毎年、季節的にお金が動くときにだけ景気が良いという判断になってしまう。

日本で最も景気が動くのは、毎年10‐12月期である。ボーナスが出て、クリスマスや正月を迎える準備があったりするからである。そのデータをそのまま見てしまうと、毎年10‐12月期のデータが良くなり、その後は必ず悪くなるということで、季節性を除いた部分の経済の動きというものがわからなくなる。そこで、殆どの経済指標では、季節性を除去した「季節調整値」もはじき出し、前期のデータから何パーセント上がったか下がったかという「前期比」を出している。

更に、これはGDPだけだが、その成長が1年続いた場合の成長率というものも出している。これが「年率」である。つまり、新聞等で報道されるGDPの数字は、この季節調整済前期比年率であるということを、押さえておく必要があるだろう。

永濱利廣(ながはま としひろ)
第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト
1995年早稲田大学理工学部卒、2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年4月第一生命入社、1998年4月より日本経済研究センター出向。2000年4月より第一生命経済研究所経済調査部、2016年4月より現職。経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事兼事務局長、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使。