2019年10月は消費税増税とともに、住宅ローン控除(住宅ローン減税)制度の拡充も予定されている。控除期間が10年から13年に延長される措置だが、増税前にマイホームを購入した場合は適用されるのだろうか。

現行の住宅ローン減税制度をおさらい

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(画像=PIXTA)

住宅ローン減税制度は、住宅をローンで購入した人が支払う金利の負担を減らすための制度だ。住宅ローン減税制度の始まりは、1972年に創設された旧住宅所得促進税制とされており、控除額の限度額や割合の改正を繰り返しながら現在まで続いている。

住宅ローン減税制度では、床面積が50平方メートル以上であることやローンの償還期間が10年以上あることなどの条件を満たした場合に、一定額が所得税額から控除される。具体的には、年末の住宅ローン残高と住宅の取得対価の少ないほうの金額の1%を所得税から10年間控除する仕組みだ。

住宅ローン減税制度の対象となる住宅は、新築住宅に加えて一部の中古住宅も含まれる。詳しくは後述するが、住宅を購入したケースだけではなく、一定条件を満たす増築や省エネ、バリアフリー化のための修繕でも、工事費が100万円以上の場合は対象となる。

住宅ローン減税制度の前回の拡充は2014年4月

住宅ローン減税制度の直近の改正は、消費税が5%から8%に引き上げられた2014年4月に行われた。

10年間という控除期間は変わらなかったが、年間の最大控除額が20万円から40万円に引き上げられたことで、10年間の最大控除額は200万円から400万円に増えた。所得税から控除しきれないケースに適用される住民税控除では、控除額の割合が前年課税所得の5%から7%に増え、限度額も年間9万7,500円から13万6,500円に引き上げられている。

2019年度の税制改正が行われれば、住宅ローン減税制度の拡充はこの2014年4月の拡充に続くものとなる。2019年度の税制改正大綱は、すでに2018年12月に閣議決定されており、2019年1月に始まった通常国会での審議を経て、可決・成立する見込みだ。

ちなみに住宅ローン減税制度の拡充の目的については、税制大綱の中で「消費税率の引き上げに際し、需要変動の平準化等の観点から、住宅に対する税制上の支援策を講ずる」と説明されている。

2019年10月からは、適用年の11年目から13年目も減税対象に

2019年度の税制改正の大綱では、住宅ローン減税制度について、消費税率10%が適用された価格で個人が取得した住宅に、2019年10月1日から2020年12月31日までの期間内で本人が入居した場合について、「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」の「特例」を創設するとしている。

「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」とは、これまでに説明してきた住宅ローン減税制度のことだ。「特例」についてはさらに説明があり、適用年の11年目から13年目までを所得税控除の適用対象とするとしている。つまり、これは住宅ローンの控除期間が現行の10年から13年に延長されることを意味している。

この特例で注目したい点は、消費税10%が課税された住宅の購入に限りこの特例措置が適用されることだ。つまり、消費税8%が課税された住宅購入では、この特例が適用されないことになる。

増税前後に契約・引渡しが行われた住宅に課せられる消費税率

住宅の購入に課せられる消費税は通常、住宅の引渡し時点の税率が適用される。この原則に従えば、2019年10月1日以降に引き渡された住宅については、すべて10%が適用されることになるが、消費税増税前の時期に限っては「経過措置」が設けられており、通常の場合と扱いが異なる。

この特例制度を理解すれば、その時期の住宅購入について8%と10%のどちらが適用されるかがわかる。10%が適用されるケースでは、2019年度の税制改正による特例措置は適用されるが、8%の場合は適用されないので、よく理解しておく必要がある。

●8%が適用されるケース(1)——売買契約:2019年3月31日以前/引渡し:2019年10月1日以降

経過措置では、2019年3月31日までに売買契約を結んだ住宅などについては、消費税が10%に増税される予定の2019年10月1日以降に引渡しが行われても、消費税は増税前の8%が適用される。

●8%が適用されるケース(2)——売買契約:2019年4月1日以降/引渡し:2019年9月31日以前

消費税が増税される予定である2019年10月1日以前に住宅の売買契約と引渡しの両方が終わっていれば、当然ながら消費税率は増税前の8%が適用される。

●10%が適用されるケース(1)——売買契約:2019年4月1日以降/引渡し:2019年10月1日以降

売買契約を2019年4月1日以降に結び、引渡しが2019年10月1日以降となった場合は、消費税率は増税後の10%が適用される。つまり、8%が適用されるためには、あくまでも売買契約を2019年3月31日までに済ませておかなければならない。

●10%が適用されるケース(2) ——売買契約:2019年10月1日以降

ここまでの説明で予想がつくと思うが、売買契約が2019年10月1日以降の場合は当然消費税は増税後の10%が適用される。

11年目から13年目の控除額の算出方法

2019年度の税制改正の大綱では、延長された控除期間である11年目から13年目までの各年の控除限度額についても説明がある。

具体的には「住宅借入金の年末残高(4,000万円を限度)×1%」と「建物購入価格(4,000万円を限度)×2%÷3」の小さい金額が適用される。ここで規定された「4,000万円」は、認定長期優良住宅や低炭素住宅の場合は「5,000万円」に変わる。

仮に「建物購入価格(4000万円を限度)×2%÷3」が適用された場合、例えば3,000万円で住宅を購入した場合、11年目から13年目までの各年の所得税の控除額は「3,000万円×2%÷3」で20万円となり、3年間で合計60万円が控除される。単純計算では増税前よりも所得税の控除額が60万円多くなり、消費税増税の負担が軽減されるというわけだ。

住宅ローン減税が適用されるための4要件

ここまででも少し触れたが、住宅ローン減税の制度を利用するための要件については細かい規定があるので、住宅の取得時期に関わらずしっかり理解しておきたい。

●要件(1) 自らが居住する

住宅ローン減税が適用されるためには、本人がその住宅に住むことが条件だ。期間に関する規定もあり、住宅の引渡し時点または工事完了時点から半年以内に本人が住み始めなければならない。なお、本人がその住宅に住んでいることは、住民票で確認される。

●要件(2) 床面積が50平方メートル以上

床面積の狭い住宅については、住宅ローン減税制度の適用外となる可能性があるため、注意が必要だ。減税制度の適用には、床面積が50平方メートル以上あることが求められる。床面積は、不動産登記簿で確認できる。

●要件(3) (中古住宅の場合)築年数が一定以下もしくは耐震基準に適合

中古住宅も住宅ローン減税の対象になり得るが、一定の条件が設けられている。具体的には、築年数や耐震性などのいずれかの条件に当てはまっていなければならない。

築年数の条件は、木造住宅など耐火建築物以外の場合は20年以内、鉄筋コンクリート住宅など耐火建築物の場合は25年以内だ。耐震性の条件は、「耐震基準適合証明書」「既存住宅性能評価書(耐震等級1級以上)」「既存住宅売買瑕疵保険に加入」のいずれかを満たすことである。

●要件(4) 借入期間や年収要件を満たしている

住宅ローン減税制度が適用されるためには、まず住宅ローンの返済期間が10年以上あることが求められる。ただし、年収が3,000万円以上となる年は、制度を利用することができない。また、増改築工事では工事費が100万円以上でなければ減税制度が適用されない。

住宅ローン減税制度を補完する「すまい給付金」制度も拡充

住宅ローン減税制度の拡充とともに、「すまい給付金」制度の拡充についても覚えておきたい。住宅ローン減税制度では所得税が控除されるため、この制度単独では所得税が少ない世帯ほど恩恵が小さくなる。この点を補完するのが、すまい給付金制度だ。

消費税増税に伴い予定されているすまい給付金制度の拡充では、給付基礎額の上限が最大30万円から最大50万円に、対象となる世帯収入額も最大510万円から775万円に引き上げられる。

給付額は、「給付基礎額」に建物の事項証明書で確認できる「持分割合」を乗じて計算される。国土交通省は「夫婦(妻は収入なし)及び中学生以下の子どもが2人」の世帯における夫の収入額の目安を示し、下記の通り給付基礎額を算出して紹介している。

消費税8%の場合
収入額の目安……給付基礎額
425万円以下……30万円
425万円超475万円以下……20万円
475万円超510万円以下……10万円

消費税10%の場合
450万円以下……50万円
450万円超525万円以下……40万円
525万円超600万円以下……30万円
600万円超675万円以下……20万円
675万円超775万円以下……10万円

住宅取得は増税前か増税後か……判断は総合的に

2019年10月に予定されている消費税増税に合わせて、贈与税の最大非課税限度額を現在の1,200万円から3,000万円に引き上げる措置も行われる見込みだ。

今住宅の購入を考えている人は、今回の増税を機に拡充される住宅ローン減税制度だけではなく、すまい給付金制度と贈与税の非課税枠についても理解し、増税前と増税後、どちらが自分にとってメリットが大きいかを、総合的かつ横断的に検討する必要があるだろう。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)