自分の財産を誰にどのように引き継いでもらいたいのか、その想いを死後に遺せるのが遺言書です。法的に有効な「公正証書遺言」があれば、相続人の間で円満に遺産を分けられると思いがちですが、内容や作成方法によっては反対に問題が発生する場合もあります。今回は、知らぬ間に遺言書が作成されていたために姉弟間の関係が悪化してしまったケースをお伝えします。

代表的な2つの遺言書

遺言書,悲劇
(写真=MThanaphum/Shutterstock.com)

遺言書には、代表的なものとして「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。「自筆証書遺言」は作成する費用がかからない他、記載内容を自分以外に知られることがないなどのメリットがあります。反面、記載内容があいまいだった場合などにはその効力が無効になったり、それが原因で相続人間のトラブルとなってしまうことがあります。

それに対して「公正証書遺言」を作成する場合には費用がかかりますが、公証人が作成するため法的には有効な遺言書を遺すことができます。ただ、遺言書の内容によっては遺産分割を円満に行うことができない場合もあります。

事例:母の死後に遺言書が出てきて姉弟間でトラブルに

Aさん(62歳男性)は今年の初めに母(89歳)を亡くしました。相続人はAさんと姉(64歳)の2人で、49日の法要も無事に終わり、これから母の遺品整理を始めようとしていたところ、姉から一通の書類を渡されました。

「お母さんの遺言書よ」
姉がAさんに手渡したのは、母が生前に作成した公正証書遺言でした。そこには母の財産はすべて姉に相続をさせる旨の内容が記載されていました。母の財産は自宅の不動産の他、預貯金・有価証券など、あわせて8,000万円程ありました。

Aさんはとっさに、「(母が遺言書を作成できたのか?)」と考えました。母は2年前から介護施設に入所していて、認知症は無かったものの、亡くなるまでの半年くらいは1日のほとんどをベッドの上で過ごしていました。誰かが手助けをしなければ遺言書の作成は不可能だと考えたのです。

弟が知らないうちに、姉が母に作成させていた!?

では公正証書遺言は、Aさんの母のように介護施設でほぼ寝たきりの人でも作成できるのでしょうか。通常の作成の流れは、証人2人の立ち会いのもと、遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公証人がその内容を筆記した後に、それを遺言者と証人に読み聞かせるか閲覧させます。その内容を遺言者・証人・公証人が了承したのち、それぞれが公正証書遺言に署名・捺印を行います。

このような作成の作業を介護施設でほぼ寝たきりの人が行う場合、遺言者が遺言の内容を口頭で伝えるのは難しいため、あくまでも遺言者の意向に沿った内容ということが前提ですが、事前に作成された遺言の内容を読み聞かせて了承を得るという方法でも、作成された公正証書遺言は法的に有効となる可能性が高くなります。

遺言書の内容は、姉が財産に目がくらんで、自分に有利な内容で遺言をあらかじめ作成したものを母に読み聞かせ、それに頷くかたちで作成されたのではないかと勘繰ってしまうようなものでした。

またAさんは遺言の存在を知らず、母の死後に姉から遺言の存在を知らされたことや、相続発生前までは親子間・姉弟間に特にトラブルは無かったこともあり、一層不信感が募りました。公証人や証人の立ち合いもあり、正当な手順で作成され法的にも有効な遺言ではありましたが、Aさんにとっては何ともやり切れない、金銭的にはもちろん精神的にもショックが大きい遺言となってしまいました。

49日の法要後、姉は遺言書の内容どおりに財産を相続する旨をAさんに伝え、帰っていきました。

遺言書がきっかけで絶縁状態に

作成までの経緯など、母の真意で作成された遺言かどうかは、今となってはわかりません。ただ、Aさんは財産を奪われたという心情になり、姉弟の関係は修復できないくらい悪化してしまい、49日の法要以来顔を合わせていません。Aさんは姉に対して「遺留分」(法定相続人が取得できる最低限の遺産)を主張することで、姉に奪われるかたちとなった母の財産の一部を取り戻すことも可能です。しかしそれには労力と時間がかかりますし、何より姉とこれ以上は関わりたくないということで、遺留分の減殺請求は行っていません。

トラブル回避のために生前から遺産について話し合う

遺言書は後世に自分の意思を伝える最後の手段となりますが、今回のケースのように一方の相続人が遺言書の存在を知らなかったために親族間が絶縁状態となってしまうこともあります。たとえ親族間であっても金銭が絡むトラブルが発生すると、これまでの関係性が壊れてしまうことにもなり兼ねません。財産を遺す側はできるだけ早い時期から遺産分割の方法について考えを伝え、次世代に争いを遺さないようにすることが必要だと考えます。(提供:プレミアサロン

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