国内の企業数は2009年から2014年にかけて39万社減少しており、なかでも小規模企業の廃業が続いています。その背景には経営者の高齢化や事業承継にかかる資金繰りや税負担などが原因として挙げられています。こうした課題に対応するため、政府は中小企業の事業承継を支援する「経営承継円滑化法」の一部を改正し、2018年4月に施行しました。本稿では、税制支援を中心に承継について大きなメリットをもたらす「経営承継円滑化法」の改正ポイントについて説明します。

事業承継に関して中小企業が直面する3つの課題

経営承継円滑化法,効果
(写真=Potstock/Shutterstock.com)

事業承継における問題として、現経営者が高齢化しているにも関わらず、相続税納税資金の確保や後継者への自社株移転の難しさなどにより、承継がスムーズに進まないといったことがあります。中小企業における事業承継の課題は大きく分けて3つあります。

1、相続時の遺留分

事業を引継ぐにあたり、先代経営者は事業用資産を後継者に残したいと考えます。しかし現実には先代経営者が逝去した場合、財産は法定相続分を目安に親族に分散される可能性があります。また、遺言で「事業用資産は後継者に相続させる」と書いても、事業用資産の評価額が大きい場合には他の相続人の遺留分侵害にあたる可能性があり、遺留分減殺請求をされる恐れがあります。

2、相続対策のための資金繰り

事業承継を行うにあたっては、先代経営者もしくは後継者が分散している自社株式を買い取ったり、多額の相続税を支払ったりする必要があります。この結果、資金繰りに窮してしまい、承継がスムーズに進まないケースがあります。

3、経営存続のための資金確保

たとえば先代経営者が急逝した場合、後継者や企業に突然多額の費用が生じるケースがあります。これには、先に述べた株式や事業用資産の買い取りといった承継対策はもちろん、取引先への支払い、信用状態の回復、役員や従業員への報酬の見直しなど多岐にわたる出費が含まれます。

経営承継円滑化法の改正で中小企業の負担軽減

2018年4月に一部改正・施行された経営承継円滑化法では、これらの課題を解決するための新たな施策が盛り込まれています。

1、遺留分に関する民法の特例

相続が生じた際、遺族の生活と相続人への公平を期するため、法律によって最低限の遺留分が定められています。しかし事業承継においては自社株式の分散などの弊害となることがありました。

経営承継円滑化法によって定められた「遺留分に関する民法の特例」では、後継者を含めた現経営者の推定相続人全員が合意したのであれば、後継者に贈与等された自社株式については、「遺留分算定基礎財産から除外」もしくは「遺留分算定基礎財産に参入する価額を合意時の時価に固定」することができるようになります。なお、両者を組み合わせることもできます。

2、金融支援

経営承継円滑化法では、事業承継を行うにあたり、中小企業の後継者が自社株式や事業用資産の買い取りや多額の相続税の支払いに対処するための金融支援措置を講じています。この制度を利用することで「株式・事業用資産の買い取り資金」や「中小企業者の運転資金」の資金需要に対応することができるようになります。

具体的には、中小企業信用保険法で定められている各種保険(普通保険・無担保保険・特別小口保険)を別枠として扱うことで、債務保証の信用枠を広げることが可能となります。また、認定を受けた中小企業は、日本政策金融公庫および沖縄振興開発金融公庫から代表者が低金利で融資を受けることができるようになります。

3、税制支援(贈与税・相続税の納税猶予および免除制度)

これまで事業承継を行うにあたり、相続税をはじめとする納税への不安と負担は大きなものでした。なかには自社株式の価値が高く、その分の納税に苦慮したというケースも少なくありません。

そこで経営承継円滑化法では、一部業種を除いた中小の非上場企業に限り、自社株式の相続税や贈与税の納税猶予および免除が採り入れられ、より積極的に事業承継が行えるように制度化されました。猶予および免除を行うには要件があります。たとえば贈与税の納税猶予の場合、後継者が⼀⼈の時は「同族関係者の中で最も多くの議決権数を有していること」などが条件になり、後継者が複数の時は「各後継者が10%以上の議決権を有し、かつ、各後継者が同族関係者のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと」などの条件が求められます。

経営承継円滑化法の効果について

経営承継円滑化法の効果は上手に扱えば非常に大きなものとなります。従来の事業承継税制では、対象となる株式が総数の2/3までであり、猶予される相続税の割合も80%までに定められていました。しかし法改正により、贈与税や相続税の猶予割合は100%となり、納税に関して悩むことなく企業を承継することが可能となりました。

本制度における特例措置としての納税猶予の期間は10年です。もしこの期間に、たとえば先代経営者が逝去した場合、猶予されていた贈与税は免除となります。この場合、贈与税は免除となるものの相続税は発生しますが、同時に相続税の納税猶予が行われるようになるため、実質的に大きな効果を得ることができるようになるのです。

承継前に事前の相続税対策を

経営承継円滑化法は特例措置によって長期にわたる納税猶予期間を確保することができます。しかしいずれにしても、事前に相続税対策をすることは何よりも大切です。株価の引き下げや相続時精算課税制度など、承継を行うにあたって大きな効果を得られる方法はいくつもあります。事業承継に際して悩んだ際にはまずは専門家などに相談してみることをおすすめいたします。(提供:プレミアサロン

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