中小企業オーナーの人気を集めていた節税商品、いわゆる「経営者保険」が、2019年2月に国税当局が課税上の取り扱い変更を生保各社に通知、事実上の「強制終了」が下されたようです。

この記事では、経営者保険(正式名称「一定期間災害保障重視型定期保険」)になぜ企業オーナーたちの加入が殺到したのか、なぜ国税当局はダメ出ししたのかについて、一連の経緯を辿っています。あわせて、節税保険商品は今後、どうようになるのかについても検証します。

火付け役は日本生命

節税スキーム,経営者保険
(写真= designer491/Shutterstock.com)

今回の火付け役は、日本生命が2017年4月に発売したプラチナフェニックスです。日生はこの商品を税理士を通じて顧問先企業に拡販します。

「支払い保険料が全額損金で落とせる保険商品で、税金対策で頭の痛い経営者の皆様にも大変好評です」

そんなうたい文句に、多くの中小企業オーナーがこぞって飛びつきました。もう1つの武器は返戻率です。解約返戻金は契約後5~10年で9割に達し、節税効果分も含めれば返戻率は100%を超えます。この返戻率を日生は「参考返戻率」と呼び勧誘を拡げます。

業界トップの日生が節税商品に走ったことで、競合他社も一斉に追随し、2017年には市場規模が8,000億円にまで膨らみました。

販売競争に打ち勝とうと、生保各社は高めの手数料を設定、代理店はこぞって飛び乗りました。保険会社の中には保険料の8割を手数料に割いたところもあるそうです。

国税当局が下した見解とは

過熱気味の販売競争に冷水を浴びせかけたのは課税当局です。

2月13日には生保41社を国税庁が招集し、保険料に関する税務上の取り扱いについて新指針を公表しました。具体的には逓増定期保険等に適用していた損金算入ルールを廃止、返戻率50%を超える保険商品への新ルール適用、返戻率に応じた損金算入割合の設定の3つです。

ここまでの大幅な変更は、さすがに生保各社も予想外だったようです。

保険商品に関する課税上の取り扱いを巡り、国税庁局と生命保険業界はかねてより対立してきました。過去にも逓増定期保険が2008年に、ガン保険はその4年後に損金算入の範囲が制限されました。経営者保険もかねてより問題視してきました。

国税庁の新指針は、長年の対立に終止符を打つ、つまり「節税の抜け穴を塞ぎ、今後一切節税商品の販売を許さない」メッセージでもあるようです。

この新指針を受けて真っ先に販売自粛を打ち出したのは、他ならぬ日生です。ただし日生が手を引いたのは、なにも「お上」を慮ったばかりでもなさそうです。

儲けの薄い経営者保険

「プラチナ」で先行した日生でしたが、他社も指をくわえていたわけではありません。とくに第一生命傘下のネオファースト生命が発売した商品は返戻率ピークの短さが話題を呼びプラチナの顧客を一挙に喰いました。

ここで苦境に立たされた日生に残された道は返戻率アップです。ただし返戻率を上げれば当然差益は薄くなります。販売競争が過熱する中で代理店に割高な手数料を払っていたこともあり、それでなくても儲けが薄くなっていた経営者保険、日生は密かに手を引く機会を窺っていたのかもしれません。

経営者保険に絡んだ一連の顛末に関しては、監督官庁である金融庁も、生保各社を集めた意見交換会で「保険会社の営業姿勢として問題を感ぜざるを得ない」と苦言を呈しています。

金融庁は保険商品開発活性化のため、発売に関する規制緩和を進めてきましたが、「生保各社は規制緩和を悪用し節税商品に走った」というわけです。

国税庁だけでなく金融庁までが厳しい視線を向ける中、「経営者保険は最後の節税保険」と噂する声も少なくありません。

保険はもともと、万が一の事態に備えた相互扶助の仕組みです。私たちも節税メリットばかりに目を奪われるのではなく、あくまで保障機能やライフプランへのマッチングなどを重視して保険商品を選ぶべきなのかもしれません。(提供:WEALTH WINDOW

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