安定した経営のためには後継者に確実にバトンタッチする必要があります。後継者は親族である場合もそうでない場合も考えられます。いずれの場合においても後継者が自社株をスムーズに取得できるようにしておかないと安定した会社経営は望めません。

今回は、先代経営者が意図したとおりに自社株を承継させる手法として、「遺言」と「信託」について解説したいと思います。

事業承継対策をしないとなぜ不都合が生じるのか

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(写真= Flamingo Images/Shutterstock.com)

株式は経済的な価値を持つと同時に、会社に対する支配権が付与された財産でもあります。これは通常の株式には議決権があり、会社に関わる事項は議決権に基づく多数決で決定されるためです。つまり、過半数の議決権を有していれば、一応は会社を支配することができるといえます。

しかし、一定の重要な事項を決定するためには過半数より厳しい要件が必要になります。また、少数株主にもさまざまな権利が認められているため、経営方針などで対立が生じると、安定した会社経営の妨げになる恐れがあります。

事業承継対策を何もしていない場合、自社株式が複数の相続人に分散してしまいます。それらの相続人が第三者に株式を譲渡する可能性もあります。以上のことから、後継者に自社株を確実に集中させるための対策が重要となってくるのです。

事業承継における「遺言」の活用

後継者に自社株を確実に引き継がせるための方法としては、遺言の活用が考えられます。遺言は被相続人の意向を生前に文書で残しておくものです。簡単にいえば、「自社株はすべて後継者となる相続人に引き継がせる」などの宣言をするものです。

ただし、一定の相続人には、最低限相続することができる財産の割合として「遺留分」が認められています。もし、自社株以外に目ぼしい財産がない場合、自社株のすべてを1人の相続人に引き継がせる旨の遺言を作成するとトラブルの原因となります。そのため、他の相続人の遺留分を侵害しないように他の財産を用意したり、相続人間の配分を考慮したりするなどの工夫が必要となります。

遺言には自筆証書遺言や公正証書遺言などの種類があります。自筆証書遺言は簡単に作成できるものの、遺言としての要件が欠けていると効力が認められない可能性もあります。その点では、公証人が作成に介在し、遺言の所在も明確になりやすい公正証書遺言を活用するほうが堅実といえます。

「信託」を活用した柔軟な事業承継対策

信託というのは、財産の管理などを他人に任せる契約を指します。信託は自由に設計ができるため、事業承継対策の手段としても注目されています。信託では「委託者」が「受益者」のために一定の財産の管理などを「受託者」に対して委託するという形をとります。

例えば、先代経営者のAさんが「委託者」かつ当初の「受益者」として、自社株にもとづく議決権の行使を「受託者」となる妻のBさんに委託するという信託契約を締結することが考えられます。

このような信託契約を締結しておけば、仮にAさんが亡くなっても、自社株の管理はBさんが継続して行うことになり、会社の運営が安定します。その一方で、Aさんが亡くなると同時に長男Cさんが受益権を引き継いで「受益者」となるように設計しておけば、遺産分割などの過程で経営権に空白が生じることも防ぐことができます。

遺言も信託も総合的な視点でのプランが大切

遺言を活用する場合でも、信託を活用する場合でも、自社株さえ後継者に承継できればよいというものではありません。他の相続人との間でトラブルが発生しないよう、他の財産の配分も含めた承継方法を考える必要があります。

また、事業承継の方法によって贈与税や相続税などの税負担にも影響が及びます。そのため、事業承継について総合的な視点で助言してくれるアドバイザーに相談することが有用といえるでしょう。(提供:プレミアサロン

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