ZUU主催イベント「FinTech事業創造ミートアップ」にて、ZUU代表の冨田が「これから金融業界で起こる5つの変化」を講演した。講演内容をレポートとしてお届けする。(編集構成:ZUU online副編集長 菅野陽平)※イベントおよび講演は2019年1月に行われました

元野村證券トップセールスが語る「これから金融業界で起こる5つの変化」
(画像=ZUU)
冨田 和成
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野にて起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。新人時代は220件のオーナー社長を開拓し、同期トップになる。2年目以降は優良対象先に特化し、3年半で300件のオーナー社長を開拓。3年目終了時、7年目までの全セールスで営業成績トップに。史上最年少で本社の富裕層向けプライベートバンキングへ異動。シンガポールマネジメント大学でウェルスマネジメント、イエール大学でオルタナティブ投資のビジネススクールに通い、卒業後はASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。2018年6月マザーズ上場。

金融機関の形を変えるデジタルトランスフォーメーション

私は金融経済webメディアの会社を経営していたり、雑誌でFinTechに関する連載を持ったりしていまして、よく金融機関の経営陣の方からもFinTechに関する相談なども受けます。そんなバックグラウンドを持つ私ですが、今日は「金融デジタルトランスフォーメーション」について、なるべくFinTechという言葉を使わずに話したいと思います。

金融デジタルトランスフォーメーションというと、FinTechというキーワードは絶対に欠かせないものですが、今日、お集りのみなさんには「FinTechとは何か」というレベルの話は必要ないと思います。金融デジタルトランスフォーメーションが起こると、金融業界、そして非金融業界にどのような変化がもたらされるのか、それを考える手掛かりとなる話をしたいと思っています。

先に結論から言います。金融デジタルトランスフォーメーションは、5つの大きな変化をもたらすでしょう。

1つ目。非金融業界がDistribution(ディストリビューション)の中心になります。ディストリビューションというのは、のちほど説明します。

2つ目。企業ではなく個人のバランスシートの見える化が加速し、個人のバランスシートのなかの部分部分の取り合いが業界を超えて加速します。

3つ目。FinTech化の中心は、金融機関の外ではなくて、金融機関の内部になります。大きな変革が起きるのは、金融機関内部だということです。

4つ目。金融機関の主要機能というのは、商社のような位置づけになっていくのではないでしょうか。

5つ目。金融機能はバーティカル化、垂直統合型していく。

この5つが、私が考える大きな変化です。その一つひとつをブレークダウンして説明していきましょう。

金融機関の機能は分離していく

まず1つ目です。ユーザーが何かしらの金融商品に接点を持って、発注するまでの一般的なプロセスを考えてみましょう。

まず、ユーザーが何かしらの情報収集をして、「家族のことも考えないといけないから保険が必要かな。保険のことをきちんと知ろう」などと考えます。そこで、保険にはどんな種類があるのだろうと調べると、終身保険や入院保障のついている入院特約付き、三大疾病保障もついているものなどがあることを知ります。そして、それぞれどういった違いがあるのだろうと比較して、「よし、これにしよう」と商品を決めます。それから、実際に申込書を書いたり、ネットであれば発注ボタンを押したりして発注。商品を購入した後は、その商品を運用するなどします。

ここでポイントになるのが、前半戦がディストリビューションで、後半戦がオペレーションという2つに分けられるということです。

オペレーションというのは預金、送金、為替、そして決済とかそういう部分ですね。誤解を恐れずに言うと「金融業界というのはオペレーションから始まった」と私は理解しています。オペレーション部分があって商品を並べて、これらは「多くの方たちにとって、すごく価値のあるものだね」ということで、ディストリビューションが生まれます。ディストリビューションは「届ける」という意味ですけど、全国の人たちに商品を届けるために、全国津々浦々くまなく店舗が設置され、その店舗に営業員が配置されたわけです。

だとすると、そもそもの金融機能というのは、オペレーション機能にディストリビューション機能がくっついたものだという理解ができます。つまり、金融機能というのはディストリビューション機能とオペレーション機能の2つに分けることができる。さらに言うと、オペレーション機能は金融機関の独擅場、むしろ金融機関がないと成り立たないようになっています。

一方のディストリビューションですが、私も社会人のスタートはディストリビューターの1人でした。新卒で野村證券さんの荻窪支店に配属されましたが、ディストリビューターとして、オペレーション部門が用意した商品を顧客に届ける役だったわけです。そのディストリビューション部分ですが、今後、非金融機関が請け負うようになって金融機関からアンバンドリング、つまり切り離されて分離していく可能性が高いのではないかと思っています。

ここまではオペレーションとディストリビューションが真っ二つに分かれた例ですが、別の例を挙げましょう。米金融大手のウェルズ・ファーゴですが、ホームページのトップページを見ると送金、住宅融資といった一つひとつの機能がアンバンドリング(分離)されて、いわゆるFinTechプレーヤー、つまりFinTechサービス提供者になっていっているという形になっています。

金融業務を分野別にまとめなおすと、ペイメント(決済)、パーソナルファイナンス(お金の管理)、レンディング(融資)、リテールインベストメント(投資)、ロボアドバイザー、エクイティファイナンス、送金など色々な分野があります。

分離したオペレーションを担うのが金融機関