中国人観光旅行客が、家電や化粧品などを爆買いする光景がニュースで紹介されて以来、「インバウンド」という言葉が注目されるようになりました。しかし実際には日本への観光客のうち、1人当たりの支出が最も多いのは、欧州の観光客なのです。データから読み解く新しい視点のインバウンド事情とは?

縮小する日本経済と拡大するインバウンド

インバウンド,支出額
(写真=Olena Yakobchuk/Shutterstock.com)

高度経済成長期から、バブル崩壊やリーマンショックを経て現在まで、紆余曲折はあったものの、日本経済は人口増加とともに拡大を続けてきました。それが今、大きなターニングポイントを迎えています。経済拡大の大きな要素であった人口が減少し始めたからです。

もし、人口減少の中で個人消費が今と同じ水準を維持しようと思えば、1人当たりの消費額を増やすしかありません。ところが賃金は思うように伸びないのが現状で、人口の減少分がストレートに日本経済の縮小につながる恐れがあるのです。

そこで政府が打ち出したのが、訪日外国人観光旅行客の誘致拡大政策。日本政府が取り組みを開始した2003年時点の訪日外国人観光旅行客数は521万人でしたが、さまざまな施策が功を奏し、2018年12月18日には3,001万人と、大台を初めて突破しました。当初の目標値を達成した政府は、新たに2020年に4,000万人という目標を掲げています。

では、インバウンド消費の傾向を、中国と欧州を対比して見てみましょう。

買い物消費に偏る中国人

インバウンド消費の代名詞のようにいわれる中国人観光旅行客ですが、実際にはどの程度消費しているのでしょうか。国土交通省観光局の「訪日外国人の消費動向 平成28年10-12月期速報値」によると、中国人観光旅行客の1人当たり費目別支出額と順位は以下のようになっています。

宿泊料金 36,315円……13位
飲食費 34,467円………10位
交通費 17,279円………13位
娯楽サービス費 4,730円…8位
買い物代 121,041円……1位

確かに買い物消費は「爆買い」のイメージ通りにトップですが、その他の消費はそれほど多くはありません。買い物消費に偏っているのが中国人観光旅行客の特徴です。目的が観光ではなく買い物ですので、日帰りで帰国する人も多く、宿泊消費が少ないのは当然のことでしょう。

支出トップは欧州の意外な国

では、1人当たり支出額のトップはどこの国でしょうか。同じデータによると、1位は意外にも情熱の国と呼ばれるスペインです。中国と同じデータを当てはめた場合の数値は以下の通り。

宿泊料金 102,483円……1位
飲食費 55,456円………2位
交通費 60,801円………1位
娯楽サービス費 5,250円…5位
買い物代 41,536円……7位

こちらは買い物や娯楽ではなく、純粋な観光が目的であることが明白です。総合順位では、

スペイン 265,527円
オーストラリア 250,008円
中国 214,136円
イタリア 203,922円
フランス 188,368円

と欧州勢の消費額の多さが目立ちます。統計時期によって若干順位の変動はありますが、アジア勢よりも欧州勢が上位を占める傾向は変わりません。

1人当たり支出額に旅行客数を掛けた消費総額では、中国の首位は揺るがないものの、各費目に万遍なくお金を使ってくれる「滞在型」の欧州勢は、日本の産業界全体にとってはありがたい存在といえます。

旅行・ホテル業界は欧州に注目を

インバウンド消費のデータから見えてきたもの――それは景気に左右されやすい「爆買い」に期待するのは限界があるということ。米中貿易摩擦で中国経済が減速する中、オールラウンドなインバウンド消費が期待できる欧州観光旅行客は、今後ますます存在感を増すでしょう。

特に2020年の東京五輪は期間が長く、より「滞在型」の色彩が濃くなるだけに、欧州観光旅行客誘致のビッグチャンス。旅行・ホテル業界は、これまでのアジア重視から欧州に軸を移した誘致戦略が求められるでしょう。日本経済にとっては、新しい視点でインバウンドビジネスに関わっていく必要がありそうです。(提供:ANA Financial Journal

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