米国をはじめ世界中の市場関係者が恐れているのが、「逆イールド」をシグナルとしたリセッションです。しかし、投資家の中には逆イールドという言葉を聞きなれない人も多いのではないでしょうか。ちなみにイールドは金利、リセッションは景気後退という意味です。

逆イールドがリセッションのシグナルとして注目されていることも、長く投資の世界にいなければご存知ない方もいるかもしれません。そこで本記事では、逆イールドとリセッションの関係と市場全体の今後の動向を読むためのヒントをお伝えします。

  • そもそも逆イールドとは
  • 逆イールドとリセッションの関係とは
  • 投資家はどう動けば良いのか

この3点を中心に解説していきます。2019年3月現在、この「逆イールド」の現象が迫っているため注意が必要です。

逆イールド
(画像=Getty Images)

景気後退の予兆?逆イールドとは

逆イールドとは、償還までの期間が短い国債の金利が、期間が長い国債の金利よりも高くなる現象です。これだけではよく分からないため少し詳しく説明します。金利とは簡単にいえばお金のレンタル料です。お金を借りるとレンタル料が発生するのです。身近な例でいくと銀行預金の金利ですが、通常同じ銀行に預ける場合どちらの金利が高いでしょうか。

  • 1年定期の金利
  • 5年定期の金利

もちろん通常は5年定期の金利の方が1年定期の金利よりも高くなります。長く預けるため不自由な分、レンタル料を高くとれるという理屈です。

通常、定期預金は満期になるまで引き出せないことを条件に金利が優遇されます。預けたお金が1年で自由になるのと5年で自由になるのとでは、普通1年で自由になった方が良い。そうなるとわざわざ5年定期の預金をしなくなるため、1年定期よりも5年定期の方が金利が高くなる訳です。

しかし、この金利が1年定期の方が5年定期の金利よりも高くなるという異常事態が起きたらどうでしょうか。これが逆イールドという現象です。また通常は長期金利の方が短期金利よりも高い現象を「イールドカーブ」と呼びます。このイールドカーブが逆転するため「逆イールド」と呼ぶのです。

そしてこの「逆イールド」という現象が起きた場合、株式市場の歴史をみると景気後退の前触れとなっているのです。今回、「逆イールド」の現象が5年債―2年債のペアで見られたことから、市場関係者が警戒をしているという訳です。

逆イールドで注目される10年債―2年債利回り

逆イールドで注目されているペアが「10年債―2年債利」の利回りです。日本のバブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマンショックなどの大きなリセッションの前には10年債―2年債の逆イールド現象が見られました。そのため10年債―2年債で逆イールドの現象がおきたら、新たな経済危機の予兆なのではないかと市場関係者は警戒しているのです。

2019年3月末の時点で10年債−2年債の金利差は既に限りなく0に近づいています。過去の株式市場の経験則から考えると、10年債―2年債の逆イールドが差し迫っており、逆イールドがリセッションのシグナルになるのではと、多くの市場関係者が怯えているのです。

逆イールドのサインは即、売りなのか?

では、10年債―2年債の逆イールドのシグナルがでたら、S&P500のETFをショート(空売り)すれば儲かるのでしょうか。実はそれも危険です。むしろ踏み上げ(ショートスクイーズ)のリスクがあります。

実は10年債―2年債の逆イールドのシグナルが出ても、株式市場が天井を打ち大きく下げるまでに長いタイムラグが経験則ではあるからです。その期間はかなり長く約1年〜2年ほど。つまり逆イールドのサインが出たからといって、すぐに株式市場が崩れる訳ではないのです。そのため10年債―2年債の逆イールドのサインが出ても、経験則ではすぐに株を売る必要はないということになります。

ただし、中長期的に上昇相場の終焉が近いことを心づもりしておく必要はあるかもしれません。

逆イールドのサインは経験則に過ぎないが無視もできない

逆イールドは確かに株式市場にとって不吉な予兆です。しかし、あくまで経験則であり、必ずしもリセッションの合図になるとは限りません。市場関係者の中には「長年の金融緩和によって、長短金利差が景気の先行きを予測できるのかどうか疑わしい」と考えている人もいます。

逆イールドは多くの市場関係者にとって不吉な予兆として捉えられている反面、現在の市場で必ずしも機能するとは限らないという意見もあります。つまり「逆イールド=即売り、即リセッション」という短絡的な考え方を投資家はするべきではありません。

一方で逆イールドの現象を完全に無視するのも楽観的すぎます。現在の金融相場は、必ずしも企業が新しいイノベーションを生み出し市場を引っ張っているのではなく、FRBのバーナンキ議長がQE(量的緩和)を繰り返した結果だということを、忘れてはいけません。そしてQE相場も2018年には勢いが衰えてきています。

逆イールドが、後から振り返るとQE相場の終焉のシグナルだったというシナリオも決してないわけではないのです。逆イールドだからといって即売りでもリセッション入りでもないのですが、注意深くリセッション入りのシグナルを投資家は読みとらなければいけない時期に入ったと捉えるべきでしょう。経験則でいうなら、10年債―2年債の金利差0は大局的にみてQE相場の終焉の始まりの可能性は高いと言えます。

逆イールドが「炭鉱のカナリア」の役割をしていた歴史を踏まえると、2019年の株式市場は大局的には危ないという姿勢で丁寧に投資をする必要があるのではないでしょうか。

リセッションが近いと考えるならバーベル戦略も有効か?

デリバディブトレーダーとして有名なタレブは、リーマンショックの時に大きく利益をあげたことで注目を集めました。その時に用いた手法がバーベル戦略です。

もしも逆イールドで近い将来大きなリセッションがくる、しかしタイムラグがあり1〜2年程度は何もないかもしれないというシナリオが正しいなら、タレブが過去に用いたバーベル戦略も妙味があります。9割をローリスク・ローリターンのポートフォリオにして、残り1割をプット・オプションの買いにあてる投資法です。

プットオプションは掛け捨ての保険のようなものですが、逆イールドで近いうちにリセッションがくるなら、掛け捨てのプット・オプションの買いが大きな利益をあげる可能性もあります。オプション取引もしている投資家なら、バーベル戦略でリセッションに備えたポジションをとることも有効です。

まとめ

逆イールドとは長短金利差で短期金利が長期金利を上回る現象のこと。特に10年債―2年債の金利差が0になると、経験則ではありますが大きなリセッションの前触れとなっていました。

2019年の春の段階で10年債―2年債の逆イールドが迫っており市場関係者の注目を集めています。逆イールドが起きてもリセッションにはタイムラグが1〜2年ほど過去にあることから、株を即売る必要はありません。

また逆イールドも経験則に過ぎないため、短絡的にリセッションに突入すると考えるべきではありません。しかし逆イールドのシグナルでリセッションの心づもりはしておくべきです。(提供: The Motley Fool Japan


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