少子高齢化が進む中、現役世代でも将来の年金生活に不安がある人もいるのではないでしょうか。日本の年金制度は、現役世代が払った保険料を高齢者に給付する「賦課(ふか)方式」で運営されているため、高齢者の人口と現役世代の人口のバランスがとても重要です。

しかしそのバランスは少子高齢化ですでに崩れ始めており、現役世代が納めている保険料については、2017年9月に料率18.3%で固定されました。反対に高齢者が受け取る年金支給額は、賃金や物価の改定率と給付水準を緩やかに調整していく「マクロ経済スライド」の仕組みが導入されています。さらに、年金の給付開始年齢を現在の65歳から70歳を超えてからの選択制にする議論も始まっています。

このような状況の中で少しでも老後の生活資金を確保できるようにと作られたのが、「個人型確定拠出年金(通称iDeCo:イデコ)」の制度です。

iDeCoの制度とメリット

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(写真=William Potter/Shutterstock.com)

ではiDeCoとは具体的にどのような制度で、どのようなメリットがあるのでしょうか?

iDeCoは、掛金を自分自身で運用しながら積み立てて原則60歳以降に受け取る、いわば「じぶん年金」制度です。運用中および年金受け取り時に税制優遇を受けることができます。iDeCoに加入できるのは、以下の条件のいずれかを満たす、国民年金を支払っている日本在住の方(20歳以上60歳未満)です。拠出できる掛金もその方の職業により上限が決まっています。

(表1) iDeCoに加入できる方と掛金の上限
加入できる方 掛金の上限
自営業者やフリーランスの方(国民年金第1号被保険者) 68,000円/月※1
会社員の方 厚生年金基金等の確定給付型年金の対象の方 12,000円/月
企業型確定拠出年金に加入している方※2 20,000円/月
企業型確定拠出年金や厚生年金基金等の確定給付型年金に加入していない方 23,000円/月
公務員、私学共済制度に加入されている方 12,000円/月
専業主婦(夫)の方 (国民年金第3号被保険者) 23,000円/月

※1 国民年金基金の掛金、国民年金の付加保険料を控除した額が上限となります。
※2 企業型確定拠出年金のマッチング拠出制度がある場合、または、規定で個人型確定拠出年金との併用を許可していない場合は、加入対象外となります。

掛金の拠出タイミングは、毎月の他、年1回、年2回、四半期ごと等、加入者が決めることができます。拠出した掛金は、運営管理機関が提示している投資信託や保険商品、定期預金の中から、加入者自身が商品を選択し、60歳まで運用をしていきます。運用した資産は、運営管理機関によって決められている60歳から70歳までの間の任意のタイミングで、一時金か年金として受け取ることができます。

iDeCoに加入する最大のメリットは、「掛金の拠出時」、「運用時」、「資産受け取り時」のそれぞれのタイミングで税制優遇が受けられる点です。

1) 掛金拠出時の節税メリット
1年間に拠出した掛金は全額所得控除の対象となります。所得控除を行うことで、所得税および住民税の額を下げることができます。

2) 運用中の節税メリット
通常の金融商品で運用をした場合、出た利益に対しては20.134%の税金がかけられます(復興特別所得税は含まず)。しかし、iDeCoでの運用利益はすべて非課税となります。

3) 資産受け取り時の節税メリット
60歳まで積み立て運用した資金は、60歳から70歳までの任意のタイミングで受け取ることができますが、「一時金方式」を選択した場合は「退職所得控除」の対象として、「年金方式」を選択した場合は「公的年金控除」の対象として、それぞれ一定金額まで非課税となります。

iDeCoによる節税シミュレーション

iDeCoによる節税メリットがどのくらいあるのか、年収800万円、35歳会社員(独身)の方を例にシミュレーションしながら説明します。

前提条件
年齢:35歳(独身)
年収:800万円
毎月のiDeCo拠出額:23,000円

60歳定年退職時の勤務年数:37年
会社からの退職金:1500万円
年金額:19万円/月(年額228万円)
25年間の運用実績:10,258,180円(運用利率3%)

iDeCoに加入していない場合

・所得税
年収 8,000,000 -①
基礎控除額 380,000 -②
給与基礎控除額(収入金額×10%+120万円) 2,000,000 -③
本人負担の社会保険料(料率:14.22%) 1,137,600 -④
課税所得(①-②-③-④) 4,482,400 -⑤
支払う所得税(⑤×20%-427,500) 468,980
・住民税
年収 8,000,000 -①
基礎控除額 330,000 -②
給与基礎控除額(収入金額×10%+120万円) 2,000,000 -③
本人負担の社会保険料(料率:14.22%) 1,137,600 -④
課税所得(①-②-③-④) 4,532,400 -⑤
支払う住民税
(⑤×10%+均等割5000円-調整控除2500円)
455,740

所得税と住民税の合計: 468,980+455,740=924,720-⑥
60歳までに支払う所得税と住民税の総額:⑥×25年間= 23,118,000円-(A)

25年間運用した金融商品から受け取る運用益とかかる税金
運用益:3,358,180円
運用に対する所得税(20.134%):3,358,180×20.134%=676,135円-(B)

退職金に対してかかる所得税
会社からの退職金 15,000,000 -①
退職所得控除額 18,500,000 -②
課税退職所得((①-②)×1/2) 0 -③
退職金に対する所得税(③×5%×102.1%) 0 -(C)

35歳から60歳までに払う税金の総額
23,118,000円(A)+676,135円(B)+0円(C)=23,794,135円

iDeCoに加入し、月23,000円拠出している場合

・所得税
年収 8,000,000 -①
基礎控除額 380,000 -②
給与基礎控除額(収入金額×10%+120万円) 2,000,000 -③
本人負担の社会保険料(料率:14.22%) 1,137,600 -④
iDeCo拠出による控除額 276,000 -④
課税所得(①-②-③-④-⑤) 4,206,400 -⑥
支払う所得税(⑥×20%-427,500) 413,780
・住民税
年収 8,000,000 -①
基礎控除額 330,000 -②
給与基礎控除額(収入金額×10%+120万円) 2,000,000 -③
本人負担の社会保険料(料率:14.22%) 1,137,600 -④
iDeCo拠出による控除額 276,000 -⑤
課税所得(①-②-③-④-⑤) 4,256,400 -⑥
支払う住民税
(⑥×10%+均等割5000円-調整控除2500円)
428,140

所得税と住民税の合計:413,780+428,140=841,920円-⑦
60歳までに支払う所得税と住民税の総額:⑦×25年間=21,048,000円-(D)

25年間iDeCoで運用した金融商品から受け取る運用益とかかる税金
運用益:3,358,180円
運用に対する所得税(非課税):3,358,180×0%=0円-(E)

退職金に対してかかる所得税
会社からの退職金 15,000,000 -①
iDeCoの運用実績 10,258,180 -②
退職所得控除額 18,500,000 -③
課税退職所得((①+②-③)×1/2) 3,379,090 -④
退職金に対する所得税(④×20%-427,500) 248,318 -(F)

35歳から60歳までに払う税金の総額
21,048,000円(D)+0円(E)+248,318円(F)=21,296,318円

23,794,135円(iDeCo加入なし)-21,296,318円(iDeCo加入23,000円拠出)=2,497,817円

このように、iDeCoに加入していない場合に比べ、iDeCoに加入している場合は約250万円程度支払う税金が少なくなります。会社員の方は、自営業やフリーランスのように経費等で課税所得金額を軽減できないため非常に大きな節税メリットとなるのではないでしょうか。

iDeCoのデメリット

お得な制度といえるiDeCoにも、いくつかのデメリットが存在します。

まず1つ目のデメリットは、原則60歳まで掛金も運用益も引き出すことができないことです。60歳までに収入源がなくなったり、急に大きなお金が必要になったりしても、iDeCoの口座からお金を引き出して充当する、ということができません。なお、掛金の減額や拠出の一時的な停止は可能です。

2つ目のデメリットは、運営管理機関や国民年金基金連合会に支払う手数料がかかることです。最近では運用管理手数料を0円とする運営管理機関もありますが、国民年金基金連合会に支払う「事務手数料」と信託銀行に支払う「資産管理手数料」合計年間2,004円(税込:2019年4月現在)は必ずかかります。

3つ目のデメリットは、運用する金融商品として投資信託を選択した場合は特に、損失が出る場合があることです。保険や定期預金などの元本保証型の商品を選択する事で回避することができますが、その場合得られる運用益も少なくなる可能性があります。

デメリットを上回るメリットに注目、検討の余地あり

iDeCoは原則60歳まで資金を引き出すことができない、運用の際に損失が出る可能性があるなどデメリットもあります。しかし拠出する掛金や運用益、受け取る資産に対して多くの節税メリットがあり、特に経費等による節税が難しい会社員の方にとっては活用価値のある制度といえるのではないでしょうか。(提供:ANA Financial Journal

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