目次

  1. 上場会社オーナー向けの資産管理会社設立による相続・贈与対策
  2. そもそも株式保有特定会社とは
  3. 株式保有特定会社に該当するとどうなる?
  4. 純資産価額方式で評価することになると何がまずいのか
  5. 株特外しの難しさはどこにあるか
  6. 株特外し規定に該当しないようにするためには
  7. 金融セールスにおいては
元野村證券PBの税理士が語る税制講座(10)上場企業オーナーの資産管理会社で活用される「株特外し」とは
(画像=PIXTA、ZUU)
佐野 比呂之
佐野 比呂之(さの・ひろゆき)
佐野比呂之税理士事務所、合同会社パープル・リングス代表。1998年、立教大学経済学部卒業。複数の中小税理士事務所に勤務。2006年、中央大学国際会計研究科修了MBA取得。税理士登録。2007年、税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)入社(一時期、野村證券へ派遣)、主にオーナー企業向け税務顧問及び事業承継業務、国際相続案件に従事。2011年、野村證券株式会社にて上場・未上場企業オーナー向けプライベートバンキング業務に従事。2014年、佐野比呂之税理士事務所を開所。2015年、合同会社パープル・リングスを設立。税理士、行政書士、1級FP(CFP)、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、証券外務員一種(内部管理責任者)。

上場会社の創業オーナー向けの相続・贈与対策に関与したことのある金融セールスならば一度は耳にしたことがあるであろう通称「株特外し」。未上場会社株式の評価方法のうち、株式等保有特定会社(以下、「株特会社」とします。)に該当している銘柄につき、特定の評価方法ではなく、通常の事業会社において用いられる評価方法を適用することができるようにする施策のことを言います。なぜ株特外しが必要なのか、また株特外しをするに際して気を付けなければならないことを本稿でお伝えしたいと思います。

上場会社オーナー向けの資産管理会社設立による相続・贈与対策

上場会社の創業オーナーは、その保有財産の多くが先代もしくは自らが設立した上場会社株式であることが多く、いわゆる生株の状態(個人名義での保有)で上場会社株式を保有していると、その株価上昇がそのまま相続税・贈与税の納税額の上昇リスクにつながるため、一般的には当該上場株式の保有を目的とした資産管理会社を設立します。

上場会社株式を保有する資産管理会社そのものは未上場会社であることから、相続評価上は「取引相場のない株式」として評価されることとなり、結果としてオーナーの保有財産が上場会社株式から未上場株式に転換されることになります。現在の相続評価では原則として「上場会社株式評価額≧未上場会社株式評価額」であることから、資産管理会社の設立そのものが相続・贈与対策になります。

上場会社の創業オーナーは通常上位株主であることから、その保有株式を大量に移動(異動)した場合には、その市場価格への影響や四季報上の株主順位変動によるレピュテーションリスクへの考慮が必要となるところ、その保有財産が資産管理会社株式に転換されていれば、直接的に移動させるのは当該資産管理会社株式ということになるため、四季報上の株主順位変動もなく、比較的生前贈与等で株式を移動させやすくなるという副次的なメリットも見込めます。

そもそも株式保有特定会社とは