日本に生活の拠点がある人(日本の居住者)は海外に5000万円相当以上の資産をもっている場合、所轄の税務署長に資産の内訳を記載した調書を提出する義務があります。この制度は2014年度からはじまっています。日本では書籍やテレビ番組でもキャピタルフライトに関する話題が2000年代から多く取り上げられていました。タックスヘイブン(租税回避地)をテーマにした小説もあるほどです。NHKでも国税専門官が租税回避を企む人を追いかける『チェイス〜国税査察官』が2010年に放映されました。

そのような背景もあったせいか年々、国の海外資産に対する監視の目は強まっていきました。海外に資産をもつ人も珍しくありません。日本や海外のネット証券経由で外国株を買う人もいれば、現地の不動産をもっている人もいます。

本記事では海外投資をする人が知っておくべき申告義務についてご紹介します。

海外 資産
(画像=Getty Images)

国外財産調書制度で5000万円以上の海外資産に調書提出義務

5000万円以上の海外資産を保有している人は、所轄の税務署に国外財産調書を提出する義務があります。しかし自分がその対象になるのかどうか、なるとしたらその期限はいつなのか、という疑問も出てくるでしょう。日本のネット証券で米国株を5000万円以上保有していたら国外財産調書を提出しなければならないのでしょうか。

国外財産調書制度の対象者

国税庁によると、国外財産調書制度の対象者は以下の通りです。

「居住者(「非永住者」の方を除きます)の方で、その年の12月31日において、その価額の合計額が5000万円以上を超える国外財産を有する方は、その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、その年の翌年の3月15日までに、所轄の税務署長に提出しなければなりません。」

引用元:国税庁

もしも留学や就職、仕事などで海外にいても生活の拠点が日本にあると言われると、海外に住んでいても日本居住者の扱いになるため注意が必要です。自分が日本居住者にあたるのかどうか不安ならば、国税局の電話相談センターで確認してみると良いでしょう。

国外財産調書制度の罰則はあるのか

国外財産調書制度を提出しなかったら罰則があります。

「国外財産調書に偽りの記載をして提出した場合又は国外財産調書を正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることがあります。ただし、提出期限内に提出しなかった場合については、情状により、その刑を免除することができることとされています。」

引用元:国税庁

調書を提出すれば、申告漏れがあったとしても国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等が5%軽減されます。

一方、提出しなかった場合や記載が不十分だった場合は5%加重されます。自主的に調書は提出するため、このような提出へのインセンティブが設けられています。

日本の金融機関の口座で管理している資産は国外財産に含まれない

日本でも大手ネット証券で米国株、中国株を中心に取扱いをしているところも少なくありません。

例えばSBI証券や楽天証券、マネックス証券で米国株を5000万円相当以上、保有している場合は国外財産に含むのでしょうか。

海外に5000万円以上の資産がある人は申告義務に注意
(画像=引用元:国外財産調書の提出制度(FAQ))

国外財産調書制度のFAQによると、国内金融機関の口座で管理されている外国有価証券等は調書の対象外とあります。

一方で国内有価証券でも国外金融機関の口座で管理する場合は、調書の対象になるとされています。具体的に言えば、日本の証券会社でGoogleやAmazonの株を5000万円相当以上保有していても、その部分については調書の対象外の資産ということになります。

一方で注意したいのは、日本株であっても海外の金融機関の口座で取引しているケースです。例えば香港のBOOM証券で日本株を保有している場合は、その分は調書に記載しなければいけない資産に含まれるというわけです。

アメリカの証券会社であるInteractive Brokers(インタラクティブブローカーズ )は、国内口座と海外口座に分かれていますが、米国法人の運営する国外口座で保有する有価証券は調書の対象に含まれます。

キャピタルフライトが国外財産調書制度の背景

キャピタルフライトとは国外に資産が逃避していくことです。日本の財政的な不安や海外移住などの理由から資産隠しまで、様々な理由でキャピタルフライトが話題になりました。キャピタルフライトに関する監視強化が国外財産調書制度の背景であると考えるのが自然です。

キャピタルフライトが起これば金融システムの混乱や外貨準備の減少、国債の信用の低下、違法な租税回避を企てる人も出てくる恐れがあります。そのような状況から日本の当局も海外資産に対する監視が厳しくなりました。

地域別の提出者は都市圏に集中

国外財産調書の提出者(2017年度分)は1位が東京局(6154件)2位が大阪局(1331件)3位が名古屋局(699件)という結果になりました。地域別で見ると日本の3大都市圏に5000万円を超える国外財産を保有している人が多いことになります。

このデータを見る限りですと、やはり海外に資産を保有している人は都市圏に集中しています。

国外財産調書を提出している人数は?

国外財産調書を提出している人数は、平成29年分で9551人が提出したと国税庁が発表しました。日本には5000万円以上の資産を海外に保有している人が1万人近くいるということになります。

日本の人口が1億2000万人以上いることを考えると、割合的には日本に調書の対象となる人は1万人にひとりもいませんが、かなりの人数です。

海外送金も把握されている

海外送金の監視も強化されています。100万円以上、国境をまたいだ送金をすると国外送金調書が郵送されてきます。私自身もタイに住んでいた頃の生活資金を国内に戻したときに調書を作成し提出しました。

日本の金融機関は100万円以上の国外送金をする場合は税務署に報告する義務があります。100万円以上の海外送金をする場合は、何故、送金をしたのか説明できるように心づもりしておくと良いでしょう。

ハンドキャリーも100万円を超えると税関に申告義務

海外にハンドキャリーで100万円を超える有価証券や現金を持っていく場合も持ってくる場合も、税関に申告義務があります。送金だけではなくハンドキャリーでも国内外での大きな現金、有価証券の移動には申告義務が生じることもと併せて覚えておくと良いでしょう。

参考:税関

税務署と税理士に相談するのが正しい

国外財産調書や国外送金調書などは何となく資本の移動が制限される気がして面倒だと感じたり、不安に思ったりする人もいるかもしれません。

しかし海外に資産をもつこと自体も送金すること自体も、正当な理由があれば何の問題もないはずです。もしも調書などのことで不安があれば、堂々と最寄の税務署や税理士に相談して正しい手続きをとれば良いのです。税務署の方も適切な手続きを丁寧に教えてくれるでしょう。

まとめ

海外に5000万円以上の資産がある人は申告義務に注意してください。国外財産調書という制度があるため申告しなければいけない義務があります。

海外投資も身近になったため現在5000万円以上の資産を海外にもっていかなかったとしても、いずれ対象になる可能性もあります。

このような制度があることを知り、もしも自分が対象なのではと思ったら税務署・税理士に相談しに行くと良いでしょう。(提供: The Motley Fool Japan


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