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(画像=PIXTA)

2020年4月、いわゆる「債権法」が施行される。相続法に続いて民法関連の大きな改正が行われるわけだが、金融機関においては来年4月の施行に向けた準備がいよいよ本格化しつつある。

その中でいま大きなテーマとなっているのが「約款・条項の見直し」だ。預金規定やカードローン規定といった様々な規定のほか、金銭消費貸借契約証書や銀行取引約定書といった融資に関する契約書類について、条項をどのように修正・追加しなければならないのか――いま各金融機関の本部で検討が始まっているのである。

非常に多岐にわたる改正項目の中で、金融機関に特に関係がありそうな改正を挙げると次のとおりである。

①定型約款に関する改正
②連帯保証人に関する改正
③諾成契約に関する改正
④時効に関する改正
⑤債務引受に関する改正

この①~⑤について本稿ではどのように約款・条項を見直す必要があるのか考えていく。

自行庫の規定のうちどれが定型約款か確認

①定型約款に関する改正

約款とは、不特定多数のお客様を相手方として取引を行う際に適用される、形式的な取決めのことをいう。

例えば皆さんが電車の切符を買うとしよう。これも1つの取引であり、あらかじめ鉄道会社のほうで「列車に乗るには、有効な乗車券を購入し、所持しなければならない」といった約款が取り決められている。皆さんは意識したことがないと思うが、この約款に同意して切符を買っていることになる。

実はこれまでの民法では、約款に関して基本的なルールが何も決まっていなかった。そこで改正債権法では、新たに「定型約款」という概念を作り、その要件や定型約款を見直す際のルールが整備された。

定型約款とされた場合、ホームページ等で明示していれば、たとえお客様が条項の内容を把握していなくても契約は有効となるし、見直しを行う場合にも事業者が一方的に変更することができる(不利益となる場合等は除く)。

この点を踏まえて金融機関が検討しなければならないのが、自行庫の「規定」のうちどれが定型約款に該当するのかということ。「預金規定」「インターネットバンキング規定」「カードローン規定」など様々な規定が、それぞれ定型約款に当たるのか・当たらないのかを考えていかなければならない。定型約款となれば、お客様が合意しているかを確認する手続きが不要になるからだ。

定型約款と判断する基準の1つに、「不特定多数のお客様を相手に一律に適用されるものか否か」がある。預金規定はすべてのお客様に一律に適用されるルールとなるので定型約款となるだろう。一方で「住宅ローン規定」はどうか。住宅ローンはお客様の属性で貸出条件が変わり、契約内容が一律ということは考えにくい。そのため住宅ローン規定は定型約款とは考えにくいといえる。

悩ましいのは、カードローン規定だ。自行庫が一律の商品パッケージとしてカードローンを提供しているならその規定も定型約款となるが、お客様の個別属性に合わせて貸出条件等を変えているなら定型約款には該当しないという判断もあり得る。

このように金融機関は各規定を確認して、来年4月には定型約款か否か明確にしておかなければならないのである。

連帯保証人に請求しても主債務者の時効進行は…

②連帯保証人に関する改正

改正債権法の中で、最も金融実務に影響があるのが、連帯保証人にかかわる改正だ。金銭消費貸借契約証書や保証約定書の条項に影響を与える改正としては次の㋐~㋒がある。

㋐連帯保証人についての相対効

連帯保証人は主債務者と同様の債務を負っている。そのため金融機関が主債務者に「お金を返してほしい」と請求したり(履行の請求)、主債務者が債務の承認(お金を返すなど借金があることを認めること)を行ったりすると、連帯保証人の保証債務についても消滅時効の進行が止まる。同様に連帯保証人に対して履行の請求を行ったり、連帯保証人が債務の一部を返済したりしたときも、主債務の消滅時効の進行は止まる――これまではこのような取扱いだった(これを「絶対効」という)。

改正債権法では、連帯保証人が請求を受けたり、債務の承認をしたりしても主債務者の主債務は影響を受けず、時効が進むとされた(これを「相対効」という)。

例えば主債務者が実質破たん状態で、連帯保証人がコツコツ弁済していた場合、連帯保証人は債務の承認を行っていることになり消滅時効は進まないが、主債務者に関しては進む。場合によっては、連帯保証人のみが保証債務を抱えるという状況にもなり得るのだ。

この改正を受けて、金融機関は条項を追加する必要があるだろう。金銭消費貸借契約証書や保証約定書に「保証人に対する履行の請求は、主債務者に対してもその効力を生じる」といった文言を加えることが必要となる。改正債権法の取扱いは「相対効」だが、条項によってこれまでどおり「絶対効」による取扱いとするのである。