融資契約の成立時期に十分な注意が必要

③諾成契約に関する改正

これまで金融機関における融資は「要物契約」であった。これは融資金が実際に債務者に渡ったときに契約が成立するという考え方だ。

要物契約としているのは、金融機関と債務者の間で融資契約を結び、融資金を振り込むまでの間に債務者が差押えを受けたり、その他融資ができない事由が発生したりした場合に、契約が成立していないことから融資実行を拒否できるからだ。

この点、改正債権法では、金銭消費貸借契約の文面上、貸し手の意思が明確であれば契約が有効とされた(諾成契約)。つまり、融資の契約を結んだ時点で契約が成立するとされたのである。これでは、もし債務者に何らかのトラブルが発生しても、金融機関は契約にのっとり融資を行わざるを得なくなってしまうだろう。

金融機関としては、契約書類に条項を追加し、この改正に対応することが求められるが、具体的には2つの考え方がある。

1つは「本契約は、貸主が借主に対して現実に金銭を交付したときに成立するものとし、そのとき以降に本契約各条項の定めに貸主・借主双方は従うものとする」という形で、要物契約であることを明記する方法だ。

もう1つは、諾成契約であることを明記しながらも「融資実行前に、債務者あるいは保証人において、次のいずれかの事由が発生した場合には、融資実行は行わないものとし、さらに本契約を解除することができる」という形で担保しておく方法である。

文言を修正するなどの対応も必要に

④時効に関する改正

改正債権法では消滅時効に関する文言が修正された。時効の中断は「時効の更新」に、時効の停止は「時効の完成猶予」に変わったのだ。自行庫の融資契約書類の条項に時効の「中断」「停止」という文言がある場合、当該箇所をそれぞれ「更新」「完成猶予」に修正する必要がある。

その他、時効の更新事由・完成猶予事由の見直しなども行われており、確認が必要になると思われる。

⑤債務引受に関する改正

債務引受とは、友人の借金を自分が返済するなど、ある債務者の債務を別の者が引き受けることをいう。

今回の改正では、これまでの重畳的債務引受(引受者が当初の債務者と一緒に債務を負担すること)が「併存的債務引受」に変わったので、金融機関も文言を修正する必要がある。

また、免責的債務引受(引受者がすべて債務の責任を負い、当初の債務者は一切返済責任がなくなること)については「債権者(金融機関など)と引受人の2者合意で成立する」とされたので、内部要領等にもその旨を記載することが必要となる。


以上、重要となる項目に絞って見直しの例を紹介してきた。今後、金融機関は①~⑤で取り上げた改正を受け、条項をどのような形で契約書類等に追加していくか検討するとともに、それを踏まえて研修等を行っていかなければならない。

最後に、今後、条項を追加するにあたっては隣接する金融機関とも話合いを進めていくことが大切だろう。極端な例だが、ある規定についてA銀行では定型約款なのに、同じ地域にあるB銀行では定型約款には当たらないとしている――これでは、金融機関ごとに手続きに違いが出ることが予想され、消費者にも不利益が生じる。

まず自行庫で定型約款・条項を決めたうえで、近隣の金融機関と話合いを行い、ルールを統一させるという対応も求められるだろう。

本文監修・契約書類の条項修正案提供
木内清章(産業能率大学講師)