2017年度の税制改正において、新認定医療法人制度が始まりました。認定制度実施中に「持分なし」の医療法人に移行することで、相続税や贈与税の納税猶予などの特例措置を受けることができます。クリニックや病院などを経営する医療法人の将来のために知っておきたい、新認定医療法人制度について解説します。

新認定医療法人制度の概要

医師,終活,承継,新認定医療法人制度
(写真=Fedorova Ekaterina-84/Shutterstock.com)

2017年度にスタートした新認定医療法人制度は、2014年度の税制改正時に新設された認定医療法人制度をベースに施行されました。新制度では、医業継続のための相続税および贈与税の納税猶予など、特例措置の延長が制定されています。

2006年の第5次医療法改正以前は持分ありの医療法人のみが、改正以降は持分なしの医療法人のみが設立可能でした。持分とは、医療法人への出資者が、資産に対しての出資額の割合に応じて持つ財産権のことです。持分ありの医療法人は出資者が死亡した場合、持分に応じて相続税が課せられ、さらに持分を相続した人から払い戻し請求を受ける可能性もありました。

今回の新制度では、持分ありから持分なしの医療法人へ移行する際のさまざまな要件が除外されたため、比較的容易に移行しやすくなったといえます。

新認定医療法人制度を利用するメリット

新認定医療法人制度を使って持分なしの医療法人に移行すると、相続税や贈与税が猶予または免除されます。また出資者から払い戻し請求を受けることがありません。

持分ありの医療法人の場合、医療法人が成長した後に出資者が払い戻しを請求すると、出資割合に応じて医療法人の総資産から払い戻す必要があります。多額の納税や払い戻しのためには、現金では足りず建物や設備を手放す事態になることも十分に考えられます。持分なしの医療法人に移行することは、これらのリスクを回避し、次の代に安定して引き継ぐことにつながるのです。

新制度によって特例措置が延長されましたが、持分なしの医療法人に移行するためには、出資者の理解などを得る必要があります。また、移行すると再び持分ありの医療法人に戻ることはできません。理事長以外に親族など出資者がいる場合は、今後の病院のビジョンについて話し合うことが大切です。

移行制度認定の要件

持分なし医療法人への移行は、2017年10月1日から2020年9月30日までの、3年間限定の認定制度です。移行を希望する場合、この期間内に厚生労働省に移行計画を申請します。計画の認定から3年以内に移行することで完了します。その後6年間は、持分なし医療法人の運営状況を報告する必要があります。

移行認定のためには、いくつかの要件があり、主に以下を満たすことが重要です。

・移行計画が社員総会において議決されたものであること
・出資者などの十分な理解と検討のもとに移行計画が作成され、持分の放棄の見込みが確実と判断されることなど、移行計画の有効性及び適切性に疑義がないこと
・移行計画に記載された移行期限が3年を超えないものであること
・運営に関する要件(役員報酬などが不当に高額にならないような支給基準を定めていること、法人関係者に対して特別の利益を与えないこと、社会保険診療報酬にかかる収入金額が全収入金額の80%を超えることなど)を満たすこと
※運営に関する要件は、持分なし医療法人に移行後6年間満たす必要があります。

移行期間中に相続・贈与が発生した場合は、税務署で納税猶予の手続きを行うことができます。また移行期限までに出資持分を放棄することで、猶予税額の免除が可能となります。

移行するかどうかは慎重に判断を

以前は、贈与税を非課税にするためには、役員数などさまざまな要件をクリアする必要がありました。今回の新制度では、持分なし医療法人への移行のハードルが低くなったため、医療法人の事業継承を円滑に行いやすくなったといえます。医療機関の将来を見据えて移行を検討する場合には、早めに専門家に相談して、認定要件とその後6年間の継続のための対策を行いましょう。(提供:ANA Financial Journal

【おすすめ記事 ANA Financial Journal】
「お金持ちは長財布」はもう時代遅れ?
日本は借金大国?世界の債務残高はどのくらいのか
ビジネスセンスが現れる!差がつく「手土産」3選
サービスで選ぶエグゼクティブのカード
プラチナカードの審査の仕組みとは