米国預託証券(=American Depositary Receipt 省略してADR。以下ADRと表記する)とは、米国外の企業等が発行する株式に対する所有権を示す預託証券のことです。

預託機関である銀行や信託銀行が発行し、通常の米国株と同様に米国市場で取引できます。

ほぼ米国株同様に取引できるADRですが、ADR特有のメリットやデメリットがあります。

特に税金の仕組みは一般的な米国株式とは異なるため、配当源泉税率などを把握しておく必要があります。

解説
(画像=Getty Images)

ADRのメリット

ADRは、正確には株式ではありませんが、預託証券を保有者が実質上の株主と同じ権利を持ちます。

それゆえ、ADRを購入できる投資家であれば、通常取引できないローカルな株式を実質的に保有することができます。

特にADRは米国株式市場の上場審査を経ているので、売買については通常の米国株式同様に行えます。

日本にいながらインドやイスラエルなど、新興国への投資ができるのが大きなメリットです。

各国の配当源泉税率について

ほぼ米国株式同様のADRですが、税金面で米国株式と異なる部分があります。

通常、米国株式で得た配当益に対しては、米国配当税がかかります。現在、米国配当税は10%です。

しかし、日本の証券口座で米国株式を取引している場合、米国配当税が引かれた利益に対して、日本配当税がかかります。日本の配当税は20.315%と日本株の場合と同様です。

NISA口座枠内であれば、日本配当税は非課税になりますが、取引に限りがあります。

また、確定申告をすることで、日本配当税分のいくらかを取り戻すことは可能ですが、米国の配当源泉税率の10%を避けることはできません。

その点、ADRは米国ではなく、そのADRがどこの国の株式であるかによって配当源泉税率が変わります。

国によっては、配当源泉税率が0%の国があるため、日本配当税のみに税金を抑えることができます。

現在、配当源泉税率が、0%なのはイギリス・オーストラリア・ブラジル・シンガポール・香港などです。

インドもDDTと呼ばれる制度を活用しており、配当を支払うインド企業に対して15%の配当税を支払うようになっています。配当金を受け取る側の税率は0%です。

配当源泉税率については、ジェトロのホームページにて検索可能です。

二国間租税条約の中の配当の事項から確認できます。

例えば、2016年に日本とベルギー間で新たな租税条約が締結されました。

現在、配当にかかる源泉徴収税率は15%ですが、2020年1月1日から源泉徴収税率は10%となります。

参考:ジェトロ

かつてイギリス領だった国などが主に配当源泉税率が0%です。

特にイギリスには、5%以上の高配当で有名なBTI(ブリティッシュアメリカンタバコ)やNGG(ナショナルグリッド)などがあります。

仮に、NISA口座枠内で英国株を購入すれば、日本配当税をゼロにすることができ、英国からの配当源泉税率は0%となり、国内外の税金がかかりません。

ADRのデメリット

ADRは、米国株式等よりも配当税の面で恵まれているようにみえます。

しかしながら、ADRにもデメリットがいくつかあります。

そもそも、確定申告をして払いすぎた税金を取り戻すことはできますが、所得税の控除という形で還付されます。

したがって、所得税が発生しないと、還付されることがありません。

また、所得税の控除は年収に応じて控除額に上限が存在します。

年収によるため、年収が少ない人は米国株式の配当金の受け取りが多すぎると還付されない税金も増えるので注意が必要です。

配当源泉税率が0%の国や地域のADRであれば、こうした配当金の受け取り金額を気にすることはありませんが、ADRには配当源泉税率が米国の10%より高いものもあります。

オランダやベルギーは15%、スイスに至っては35%です。

もちろん、各国の事情によって配当源泉税率は引きあがる可能性もあります。

しかも、配当源泉税率は0%でもADRには管理手数料がかかります。

管理手数料は、一般的に四半期~1年毎に1株あたり0.25~5セント程度の管理費用がかかりますが、外国手数料の名目で徴収されます。

実際の管理費用はそのADRごとに異なり、詳細を知りたい場合は、各ADR銘柄ごとに保有する証券会社に問い合わせが必要となります。

日本の証券会社で問い合わせをすることもできますが、ADRは米国預託証券ですので必ず預託されている金融機関(=Depositary Bank)が存在します。

それぞれのADRがどの金融機関に預託されているかを調べ、その金融機関のHP等でADRの管理手数料(=Fee rateもしくはDividend Fee)を調べることができます。

また、本国での上場を継続しながら、ADRとしての上場だけが廃止となるリスクが伴います。

ADR特有のリスクともいえるでしょう。

まとめ

ADRは、日本にいながらにして世界各国の企業に投資する選択肢の一つです。

米国市場に上場を果たすのとほぼ同義であるため、有名な企業が多いのが特徴です。

上場審査に通過する規模の企業が多いので、割高感がありますが、税制面での優遇からも注目されています。

現在は、日本の証券会社から購入できるADRも増加しています。

購入方法も米国株式と同様なので、日本の投資家にとっても購入しやすい銘柄です。

長期的な投資を考えた場合、国際的な視点で各地域への分散投資をするのが定石です。

その点でもADRを保有することは、リスクヘッジの一つとなりえるといえるでしょう。(提供: The Motley Fool Japan


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記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。