人生の終末を迎える前に、家族や病院に伝えたい医療的な処置などがあるとしたら、健康なうちに知らせておきたいものです。病気や大けがのせいで、いざというときに自分の意思を伝えられないとしたら、家族も困ってしまうかもしれません。

ここでは、人生のラストを自分らしく送るために役立つ「リビング・ウィル」の概要と作成の方法をお伝えします。

リビング・ウィルとは生前の意思を周囲に伝えるツール

人生の幕引き,リビング・ウィル
(写真=Cloudi/Shutterstock.com)

リビング・ウィルとは、病気やけがなどによって終末期を迎えた際、自分の意思を伝えられない状況でどのような治療を希望するかを、健康なうちにまとめておくことです。一般的には、終末期の医療に対する自分の希望を書類で作成しておくことを指します。その内容は延命治療から臓器提供の可否までさまざまです。具体的には次のようなものがあります。

・人工呼吸器の装着をするか
・胃ろうによる経管栄養を受けるか
・高カロリーの点滴や、栄養・水分補給を受けるか
・心臓マッサージなど心肺蘇生法を受けるか

これらの治療法は、意識がない、病気による脳死状態、重度の認知症などで症状の回復の見込みがない患者に対して、「治療をどこまで引き延ばすのか」がポイントです。

リビング・ウィルは延命治療を断るために必要

現代医療は発展が著しく、延命治療を続けることで、本人が意思表示をできなくても、状況によっては生命を長く保つことができます。したがって、本人が延命治療を望むかどうかにかかわらず、家族が本人の希望に思いを馳せながら治療方針を判断するケースが、これまでは大半でした。

そのため病気やけがで突然意識をなくしてしまうと、それ以降、本人は周囲に希望する治療内容を伝えられないまま人生を終えるほかなかったのです。

そうした中で、終活がブームとなり、自分自身で人生の幕引きをしたいというニーズが高まるにつれ、リビング・ウィルという方法で「医療的な遺言」を残そうと考える人たちが増えています。

事前指示書の書式を利用すると手軽

リビング・ウィルは、元気なうちに家族と話し合って、終末期の希望を伝えておくことが基本です。ただ、それだけでは時間が経つにつれて家族の記憶が曖昧になったり、誤って覚えていたりといった心配があります。さらに、口頭だけで書面に残していないと、せっかくの本人の意思を客観的に病院や医師に証明できず、延命治療の取り扱いで余計なやりとりをすることにもなりかねません。

リビング・ウィルを確実に書類として残す方法としては、日本尊厳死協会への入会などがあります。同協会では、入会後に「リビング・ウイル(終末期医療における事前指示書)」が送付されてきます。その内容を見ると、リビング・ウィルで最も基本となる「不治の状態における延命措置」「麻薬などによる苦痛の緩和医療」「回復不能な植物状態における生命維持措置」の3つの処置を受けるかどうかの項目とともに、日付や署名、連絡先の記入欄が用意されています。

事前指示書作成のポイント

事前指示書を作成するにあたって重要なことは、次の2つです。

・自筆での署名であること
・自分の考えが変わればいつでも破棄や撤回が可能なこと

事前指示書には、書類を作成・署名した事実を証明する人や、万一の時に、代わりに意思の確認ができる人の連絡先の記入欄があることも、スムーズな意思確認に役立ちます。

より詳細な希望を伝えたいなら日本尊厳死協会の「私の希望表明書」が役立ちます。種類別の延命治療や、最期を過ごしたい場所・暮らし方など、終末期をどのように過ごすのかをチェック方式で意思表示することが可能です。

書式は病院や医師会などのホームページからもDL可能

日本尊厳死協会の書式はあくまでも一つの見本です。例えば聖路加病院のように、独自にリビング・ウィルの冊子を作成している医療機関もあります。なぜリビング・ウィルが必要なのかといった説明に始まって、患者が順を追って記入すれば延命治療の可否を種類別に意思表示できるよう工夫されていて、医療機関と二人三脚で終末期を考えられる構成です。

リビング・ウィルの書式は、病院や医師会、自治体のホームページなどからも入手できます。また、自分で一から作成することも可能です。その際は、信頼するかかりつけ医などのアドバイスを受けながら、家族や親戚、親しい人と相談して内容を決めるとよいでしょう。

人生の幕引きは専門家や家族に相談しよう

リビング・ウィルでは、それぞれの分野の専門家に相談しながら、治療方針に対する意思をどのように伝えていくのかが大切です。

遺産相続なら弁護士に、健康や治療に関することなら医師に、そして自分自身の生き方やあり方については家族や親しい人と時々話し合いながら、自分の思い描く人生の幕引きを準備していきましょう。(提供:ANA Financial Journal

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