モトリーフール米国本社、2019年8月13日投稿記事より
アップル(NASDAQ:AAPL)とIBM(NYSE:IBM)は、代表的なハイテク優良株です。
しかし最近、両社の業績が伸び悩んでおり、投資家は両社に対して慎重になっています。
両社のPER(株価収益率)は市場平均を大きく下回っています。
アップルとIBMを比較してみましょう。

アップルの場合:iPhone売上の逆風
アップルは、フォーブス誌の「2019年の世界で最も価値あるブランド」で9年連続トップに輝きました。
さらに、2018年の世界のスマートフォン市場で15.8%のみのシェア(数量)でありながら、同市場で73%の利益を享受しています。
これらは、高価格スマートフォン市場でのアップルの支配を示唆しています。
それでは、なぜアップルのPER(株価収益率)は、S&P500銘柄平均PERの21.7倍を下回って17.1倍程度なのでしょうか?
一つの理由は、過去の成功に起因します。
アップル最大のヒット商品であるiPhoneは成熟化し、iPhoneユーザーは長期にわたって機種を保有するようになっています。
市場シェアは引き続き目覚ましいですが、数量および利益のシェアは2017年から減少しており、今後のiPhoneの成長は限定的との見方が出てきています。
さらに米中貿易戦争のあおりを受けて、アップルのiPhone製造のサプライチェーンへの懸念が高まっており、さらに中国でのiPhone不買運動も広がっています。
しかし、著名投資家のウォーレン・バフェットなど、アップルに対して強気の投資家の見方は異なります。
中国関連では、直近の第3四半期(4月~6月)決算発表によれば、ドル高の逆風にもかかわらず、中国本土の売上は前年同期比で増加に転じました。
アップルは、数四半期にわたる中国市場での減収を経て、販売促進策や下取りなど展開し、中国企業との各種提携を進めました。
iPhone問題もやや大げさに取り上げられている面があります。
確かに販売数量は低下していますが、ユーザーが他のブランドに向かったわけではありません。
iPhoneの実際の使用台数は、世界の主要20市場全てで過去最高となっています。
これは、アップルがサービス部門を伸ばしていく上で極めて重要です。
なお、第3四半期にサービス部門の売上は為替中立ベースで前年同期比18%増と伸びており、サブスクリプション数も4億2000万に達しています。
さらに、次世代5Gワイヤレスネットワーク導入に伴い、iPhoneの大規模な買い替え需要が2020年後半にも予想されています。
IBMの場合:レッドハットの押し上げに期待
アップルと同様、IBMも事業が伸び悩んでいます。全売上高は、2017年第4四半期まで22四半期連続で減少しました。
一時持ち直しましたが、結局その後も低迷が続き、IBM株は予想PERの10倍程度で取引されています。
しかし、IBM株の場合も、状況が変わりつつあります。
直近四半期でも減収でしたが、これは前年同期にはメインフレームの大規模な更新があったためです。
戦略的に重要な次世代クラウド関連売上は5%増、サービスとしての経常売上は7%増でした。
IBMはまた、340億ドルで買収したクラウド向けソフトウェア大手レッドハットの押し上げも期待できます。
レッドハットの海外市場における増収に加え、レッドハットの先進的なオープンソースソフトを、IBMのハイブリッドクラウドやミドルウエアサービスと組み合わせて販売できます。
IBMは、レッドハットにより、2020年から2021年にかけて全売上高が5%前後押し上げられると予想しています。
さらに、マージンも改善するため、営業利益は7%前後上昇し、フリーキャッシュフロー創出の改善も見込んでいます。
アップルか、IBMか?
アップルの配当利回り1.5%、予想PERが15.7倍なのに対して、IBMの配当利回りが4.8%、予想PERが10.1倍なので、投資家はIBMに魅力を感じるかもしれません。
しかし、アップルの潤沢なキャッシュおよび大規模な自社株買いとIBMの巨額負債を考慮すると、両社のバリュエーションは実際には大きく異なっていないと考えられます。
配当と自社株買いを合計した場合、アップルの総還元性向は現時点では約9%で、IBMの8%を上回ります。
アップル(青)とIBM(オレンジ)の総還元性向の推移(過去12カ月間、単位:%)

そして、現金および負債を考慮すると、IBMのEV/EBITDA倍率8.6倍に対してアップルは10.5倍で、かなり近づきます。
以上を考えると、アップルの方が優れているとの見方があります。
IBMでは大幅な業績改善の可能性はありますが、アップルと比較した場合、将来に幾分不確実性があります。
アップルの大きな株主還元、優れたバランスシート、5G移行のカタリストなどを踏まえると、アップルに分があるとみられます。(提供: The Motley Fool Japan)
元記事の筆者Billy Dubersteinは、アップル株とIBM株を保有しています。Dubersteinの顧客は、記事で言及されている株式を保有している可能性があります。モトリーフール社は、アップル株を保有し、そして推奨しています。モトリーフール社は、IBM株をショートしており、さらにIBM株に関するオプションを保有しています(2020年1月の200ドルのショート・プット、2019年9月の145ドルのショート・コール、2020年1月の200ドルのロング・コール)。モトリーフール社は、アップル株に関するオプションを保有しています(2020年1月の150ドルのロング・コールと2020年1月の155ドルのショート・コール)。