2019年現在、EUはブレグジットの問題で経済が揺れ、5Gを巡る米中貿易摩擦によって世界同時多発的な不況が押し寄せる中、唯一、経済が好調なのが米国です。

もちろん景気にはサイクルがあるので、今後、景気後退する時期も必ず訪れます。

しかし、長期で見ていくと米国経済の見通しは極めて明るいと言えるでしょう。

なぜならアメリカは先進国の中でも人口が増加している国であり、とりわけ20代〜30代の人口が多く、年齢層が若い国でもあるのです。

人口はそのまま国の労働力へと繋がっており、高齢化社会を迎える日本とは対照的で、経済成長の核となる好材料が揃っているのです。

現在の米国は首都ワシントンやニューヨークを中心とした「東部経済圏」とロサンゼルスやシリコンバレーを中心とした「西部経済圏」、この2つの地域が米国経済をリードしてきました。

ところが、最新の米国経済には新たな潮流が生まれています。

それも日本人にはあまり馴染みのなさそうな、米国南部のテキサス州に世界中の企業が注目しているのです。

今回はテキサス州を中心とした米国南部経済圏について、さまざまな要因からその魅力を考察していきます。

テキサス州
(画像=Getty Images)

テキサス州でビジネスをするメリット

テキサス州の経済と聞いて日本人でピンとくる方は少ないと思いますが、その経済規模は隣国のカナダよりも大きく、テキサス州を一国と見なすと、GDP世界10位に入るほどの経済規模を誇ります。

そのなかでもダラスを中心とした、ダラス経済圏の経済成長は顕著です。

現在、米国内で3番目の経済規模がある場所はシカゴ経済圏ですが、実はシカゴは年々都市圏人口が減少しています。

その一方でダラス経済圏は年々人口が増加しているのです。

2017年度の時点でシカゴ経済圏の人口は約953万人、ダラス経済圏の人口は約740万人ですが、現在のペースで行くと2030年ごろには両者の都市圏人口は同じになると言われるほどの活況がダラス経済圏にはあるのです。

事実、テキサス州は過去30年間に渡り人口増加を続けており、州内の高速道路や鉄道などのインフラ投資も盛んに行われています。

地政学的に見てもテキサス州には面白い特徴があります。

まずメキシコ湾に面した土地であり、距離にして591キロの長い海岸線があります。

そこには外国貿易高が米国最大のヒューストン港や11の巨大貨物船が入ることが可能な港があります。

それからテキサスは陸路の車移動で24時間以内にアメリカ全土の37%、48時間以内に93%の地域をカバーしており、高速道路の長さは世界一です。

東にも西にも移動がしやすい恵まれた立地条件が整っています。

また空路をみてもテキサスは米国の他の州よりも空港の数が多く、ダラス・フォートワース国際空港に至ってはマンハッタンよりも敷地面積が大きいのです。

アメリカン航空の拠点であり世界第2位のハブ空港でもあります。

陸・海・空が三位一体となった場所を選ぶなら、テキサスほど恵まれた条件は全米にはないのです。

法人企業にとって重要な条件である税金もテキサス州は有利です。

トランプ政権誕生後、米国の連邦法人税率は35%から21%まで引き下げられました。

それだけでなくテキサス州は法人企業にとって魅力的な税優遇があります。

基本的に米国では法人所得に対して連邦税と州税の2つが課せられますが、テキサスは州法人所得税がありません。

また個人に対しても他の州のほとんどが法人と同じように2つの税金を課せられますが、テキサスでは州レベルの個人所得税がかかりません。

税金を合法的に抑えられるので、多くの企業にとって移転したくなる魅力を戦略的に打ち出せている事もテキサス州の強みでしょう。

また政治的な側面で言えばテキサス州は出来る限り「小さな政府」を目指しており、経済や社会政策には意図的に関与しないオープンな姿勢は、トランプ政権と共和党が進める民間企業の自由競争とも相性が良いのです。

政府の思惑とテキサス州が目指す方向は似ており、それに伴い発展のスピードも加速度的に成長していくはずです。

大注目の新興都市「プレイノ」

テキサス州プレイノ市は全米で最も安全な都市と呼ばれるだけでなく、全米4番目に優秀な学校区があるなど、商業と教育において優れた街です。

またパークシステムと呼ばれる町づくりをしており、どの家からも徒歩15分以内で公園に着きます。

それに加えて、ビジネス・フレンドリーの街としても有名で、とても働きやすい環境が整っています。

事実、FBIの犯罪統計データを元に8項目(犯罪率、死亡率、拳銃保有率、交通事故発生率、人工的環境破壊、自然災害、経済や金融に関するリスク、健康危険性)の審査をすると、人口25万人以上の都市でプレイノ市が1番優れた街であり、その事も要因となり、同市には多くの企業本部やビジネスハブを置いているのです。

そのおかげでテキサス州の平均世帯年収は5万ドルですが、プレイノ市は8万ドルと裕福な暮らしをしているエリアでもあります。

市内にはレガシーウエスト地区と言って企業やショップが連なる、開発が進んだ場所もあります。

日本企業ではトヨタ自動車北米本社が移転先としてプレイノを選んだ事でも有名です。

テキサス州とカリフォルニア州の違い

テキサス州には「Right-to-work法」という法律があります。これは労働者に労働組合への加入を強制しない法律です。

アメリカは訴訟大国でもあるので、企業側の訴訟のデメリットが他の州よりも少ない事も、起業する上では安心材料となるはずです。

そもそもテキサス州には合衆国憲法を遵守する考え方の判事が多く、一方のカリフォルニア州は合衆国憲法の解釈は時代によって変化していくと考えるリベラルな判事が多い、という違いもあります。

つまり、企業にとって優しいテキサス州の対極にあるのがカリフォルニア州とも言えるのです。

カリフォルニア州では従業員に対する雇用保護基準が高く、従業員に優しい州ともいえます。

例えば消化できなかった有給休暇は次年度へと繰り越すことが義務化され、退職時には未消化分を給与として支払わなければなりません。

また30時間労働につき1時間の有給病気休暇を従業員に与える必要もあります。

ではテキサス州はどうかというと、州による規定はなく会社別の雇用規定が遵守されます。つまり裁量権が企業側にあります。

もちろん違法なブラック労働は論外ですが、スタートアップ企業や法令遵守が徹底されているホワイト企業の場合、様々なリスクが少なく企業がより動きやすいメリットがテキサス州にはあるのです。

両州の不動産価格を見てみると、テキサス州はカリフォルニア州の約半分で住宅を購入できます。

カリフォルニア州の住宅価格の中央値は49万9900ドル、テキサス州の住宅価格の中央値は26万9900ドルです。

全米の中央値が24万7800ドルなので、テキサス州はほぼ中央値であり、経済的にもお得である事がわかります。ちなみにシリコンバレーの中央値は127万ドルです。

最近は日本人が税金対策としてテキサスに不動産を持つ事も流行しています。

例えば日本人や日本法人の場合、アメリカの不動産も日本で確定申告する際は日本の減価償却のルールが適用されます。

築22年以上の場合、法定耐用年数の20%に相当する年数となる4年で建築部分の全額を減価償却費として計上できる事になります。

テキサス州の場合、中古住宅の建築比率は80%にもなり、仮に30万ドルの住宅を購入した場合、24万ドル分を4年で割ると、年間6万ドル分も費用を計上する事ができ、所得を減らし合法的に税金を減らす事が可能です。

トランプ政権による恩恵を受けるテキサス州のメリット

トランプ大統領が政策上、最も大事にしているのは「アメリカ・ファースト」です。

自国の利益を最優先にした考え方が全ての決定の根幹にあるといって間違いないでしょう。

そして国内産業を守る為に以下のような公約を掲げています。

  • 実質経済成長率4%
  • 10年間に2500万人の雇用を生む
  • 規制による負担の軽減
  • NAFTA(北米自由協定)再交渉
  • 不法移民の入国規制
  • メキシコとの間に国境の壁を建設

実際、就任早々にTPPからの離脱を表明し、あらゆる規制を緩和する事で国内産業の成長を後押ししています。

そして最も大きな効果を発揮しているのが2018年に行われた減税です。

法人税を35%から21%に下げたことで、自国から海外へ移転した企業を国内に呼び戻し、海外移転を検討している企業が国内に残りたくなる政策を打ち出し、結果的に米国の国際競争力を高めています。

また米国内で見ていくと、州税や法人税がない州があり、テキサス州は州法人税が無い特別な州です。

企業誘致という側面でも国際競争力を高める条件が揃っています。

世界の主要国と比較すると、最も税率が高いフランスに次いで、2番目に高い国が日本とドイツで法人税率30%です。

比較するといかに大胆な政策であるのか分かるはずです。

世界的に法人税は減税の方向であり、日本が今後どのような舵取りをするのかも大きなポイントでしょう。

今後、米国は政府と民間が協力して1兆5000億ドル規模のインフラ投資を進めていく予定です。

全米の老朽化した道路や下水道が新しくなるだけでなく、テキサスではダラス〜ヒューストン間(約385キロ)を約90分で結ぶ日本の技術を導入した新幹線が開通予定です。

その他にも、イーロン・マスクが構想する「ハイパーループ」というカプセル内を飛行機並のスピードで移動する技術や、「スマートシティ」というITと空を飛ぶ自動車が結びついた都市など、新しい都市の在り方が近い将来に見えてくるはずです。

テキサス州にはそういった新たな技術と人材を呼び込む土壌と近未来への期待に包まれているのです。

州都オースティンが次世代のシリコンバレーとなる可能性

テキサス州は「フォーチュン500」に入る企業の本社も数多く、合計で54社あります。

これは全米で2番目の多さです。エクソンモービル、AT&T、アメリカン航空など錚々たる企業が拠点にしているのです。

その他にもデジタルメディア産業、環境エネルギー産業、宇宙産業など幅広い企業が拠点を置いています。

また州都オースティンを中心に何百ものIT企業が集まっており、別名「シリコンヒルズ」とも呼ばれています。

既にテキサス州は自動運転の実証実験車が走り、2020年にはウーバーが「空飛ぶタクシー」を試験飛行している予定です。

また2023年には実際にこの「空飛ぶタクシー」を使った「ウーバーエア」を米国内で運用していくことを明確に打ち出しています。

もし実現すれば道路渋滞を気にすることなく移動ができるので、人々のライフスタイルにも大きな変化が生まれるはずです。

そしてウーバーが導入された都市は、都市機能そのものが劇的にイノベーションされ、未来都市「スーパーシティ」として1歩先を行く可能性が高いでしょう。

また成長企業になる条件のひとつは100万都市に拠点があることと言われています。

これは「Inc5000」というデータを元に分析されたもので、高成長企業の80%以上が100万都市以上に拠点があります。

またこれらの都市の共通項としては以下の理由が挙げられます。

  • 大卒者の割合が高いこと
  • ハイテク業界で働く人の割合が高いこと
  • 起業する年齢層は35歳~44歳の占める割合が高いこと
  • 創業する比率が高いこと

つまり、以上のような人材がいかに住みやすいと感じる都市であるかが、とても重要なのです。

インフラが整い、人々が混雑し過ぎず、生活コストが抑えられ、都市のカルチャーがあること。

それらを網羅しているのがテキサス州なのです。

また、次世代のシリコンバレーと言われているのが州都オースティンです。

例えばテキサス大学オースティン校はインキュベーション施設などの企業支援や育成施設が充実し、そのレベルはマサチューセッツ工科大学(MIT)を超えたとも言われています。

多くの優秀な人材にとっては、いつでも扉が開かれたチャンスの多いオープンな都市として、今後も目覚ましい発展を続けていくはずです。

再生可能エネルギーの分野においてもテキサス州は恵まれた土地です。特に中央部北西に位置するスカリー群は豊かな風力に恵まれています。

2017年10月にはアマゾンが大規模風力発電所「Amazon Wind Farm Texas」を設立しています。

またCOP21で採択された「パリ協定」の影響もあり、各国が二酸化炭素排出削減のミッションを抱えています。

民間のアマゾンと行政が手を組んだこのプロジェクトは、今後の未来を提示しているビジネスモデルのひとつとなりそうです。

また「RE100」という国際イニシアチブがあり、これは事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目指す企業が加入していますが、テキサス州はエネルギー事業も充実しており、広大な土地もあります。

こうした背景もあり、RE100とCSR(企業の社会的責任)を追求する最先端のIT企業などもテキサス州に集まっているのです。

日本企業(日系企業含む)が進出するメリット

近年、日系企業の多くがテキサス州に集まり始めています。

例えばNTTコミュニケーションズが世界最大級のデータセンターを提供したり、ダイキン工業が米国の中核拠点となる工場を新設したり、2015年にはトヨタ自動車の北米本社がカリフォルニアから移転発表しました。

トヨタが大きなインパクトとなった側面もあり、それ以降、多くの日系企業がテキサス州へと進出しています。

この背景には少なからず日本市場の現状が要因となっており、日本は人口減少社会に突入しています。

今後あらゆる産業が飽和、縮小していくことが確実です。

そのなかでも、積水ハウスや大和ハウスなどの住宅関連企業は企業存続への危機意識も高く、新たな市場開拓のために進出したはずです。

税金や土地代が安く、東西にも移動しやすく、人口が増加しているテキサス州はとても魅力的だと判断したのでしょう。

このようにテキサス州は日系企業が全米展開していく上で欠かせない場所のひとつとなっているのです。

それに伴い現地日本人の割合も増加しており、日本人向けの飲食店や小売店なども次々と進出しています。

細かなところでは現地日本人の子ども向け学習塾なども進出しており、教育面も整っています。

家族が移住しやすい環境が揃っているのも安心材料ではないでしょうか。

おわりに

テキサス州の魅力をさまざま取り上げてきましたが、その根底にはテキサス独自のスピリッツともいえる、産業がなければ作れば良い、というものがあります。

今後日本企業は生き残りを賭けて海外進出する企業が増えてくるはずです。

またグローバル企業になっていく過程で、海外売上比率が30%を超えると、その地域を統括する会社、RHQ(Regional Headquarters)が必須条件になるとも言われています。

今後、海外企業の米国本社がテキサス州にあるのが当たり前となるケースが増えていくはずです。

現在、米国で最も勢いのあるテキサス州を中心とした南部経済圏は新たな潮流を感じる最先端の場所です。

ここから次世代のグローバル企業が生まれてくるのも時間の問題でしょう。

それほどの活況がテキサス州にはあるのです。(提供: The Motley Fool Japan

記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。