2018年、約40年ぶりに相続法が大幅に改正されました。自分の手で遺産相続の意思を客観的に残すことができる自筆証書遺言の一部がパソコンなどで作成可能になったことで、遺言書の作成に伴う負担が大幅に軽減されました。

ここでは、いつでも手書きで簡単に遺志を託せる自筆証書遺言の概要やメリット・デメリット、法改正のポイントをご紹介します。

自筆証書遺言とは本人が手書きで作成する遺言書

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(写真=Freedomz/Shutterstock.com)

自筆証書遺言は、亡くなった本人が生前に自筆で紙に書いた遺言書のことです。書式や用紙などは自由に選べます。

しかし、単なる手紙と違って自分の思うように何でも書けば認められるというわけではありません。民法で定められたルールに沿って作成していなければ、せっかくの遺言書が無駄になってしまう可能性もあります。自筆証書遺言を作成するときの大切な要件は次の2つです。

1 民法が定める4つの項目が自書されていること

法的に有効な自筆証書遺言であるためには、

・遺言内容
・日付
・氏名
・押印(実印によるものでなくても可)

の4つがそろっていなければなりません。

4項目の記入はすべて自書、つまり遺言者本人が手書きしたものでなければなりません。もし、全部または一部の代筆や、パソコンによるものだった場合、たとえ本人の自署や押印があったとしても無効になります。

2 変更したい箇所には押印と変更内容、署名が必要

誤字・脱字の訂正や内容の変更をしたいときは、一定のルールにしたがって修正します。変更内容の指示文を書いて、署名押印を添えるのが基本ルールです。

相続法改正で財産目録のみパソコン作成が可能に

自筆証書遺言はすべて自書であることが条件だったため、遺産相続の鍵を握る「財産目録」の作成もすべて、一つひとつ手書きで行っていました。しかし、財産の種類が多く、まとまった資産を持つ人ほど大変な作業のため、もっと簡素化できないかと法改正が待たれていました。

そこで、2018年に相続法が改正され、2019年1月13日から遺言書に添付する財産目録の作成のみ、パソコンなどを使って自筆以外の方法でも作成できるようになりました。

財産目録の書式は、とくに決まったものはありません。パソコンで作成する場合なら、ExcelやWordなどで財産を羅列するだけでも構いませんし、表計算ソフトで見やすく表作成してまとめることも可能です。また、本人の代わりに家族や他人がパソコンを使って作成しても問題ありません。もっと簡単に作成するには、不動産の登記事項証明書や預貯金の通帳の写しを財産目録に代えることもできます。ただし、財産目録の各ページに必ず署名押印しなければ無効になってしまうので注意が必要です。

また、今回の法改正に伴って、2020年7月10日から自筆証書遺言を法務局で保管する制度が運用開始されます。自宅で遺言書を保管する場合、「死後発見してもらえない」「本人も分からないうちに紛失していた」「第三者が破棄したり書き換えたりする」などのおそれがありました。

新制度がスタートすると、法務局の遺言書保管所で原本が保管され、配偶者など相続人の中心になる遺族以外の相続人にも、画像データ化された遺言書の通知が届けられるようになります。

自筆証書遺言のメリットとデメリット

今回の法改正を含めた自筆証書遺言のメリットとデメリットは次の通りです。

メリット

・紙とペンさえあればいつでも遺言を書き残すことができる
・内容を変更したいとき、いつでも遺言書を破棄して作成し直せる
・公正証書遺言など他の遺言形式と違って公的機関や弁護士などの費用がかからない
(以下、新制度の保管制度を利用した場合)
・自筆証書遺言を見つけた際に必要だった家庭裁判所による検認が不要になるので、遺産相続の時短化につながる
・保管を申請するときに書式に誤りがないか窓口で確認されるので安心できる
・自宅保管のような紛失や破棄、改ざんのリスクがなくなる
・相続人の一人が法務局に遺言書の証明書の交付や閲覧を請求すると、その他の相続人にも通知が届くので、遺言書の存在を相続人全体が知ることができる

デメリット

・財産目録はパソコン作成が可能になったが、遺言内容の本文は自書でなければならない
・パソコンで作成した財産目録はすべてのページに自署押印が必要になる
(以下、新制度の保管制度を利用した場合)
・遺言書の閲覧は保管している法務局のみ
・遺言者の死後でなければ内容を確認できない

このように、2018年の相続法改正によって、自筆証書遺言にまつわるデメリットが大きく改善されることが期待されています。

プロや家族と相談して遺言書を作成しておこう

誰でも簡単に手書きで遺志を残せる自筆証書遺言は、法改正によってより簡単に利用できるようになりました。一方で、遺言書には自筆証書遺言の他にも「公正証書遺言」のように、専門家が遺言書作成のすべてに携わり、原本を公証役場に保管する、より安全かつ確実な方法もあります。

遺言をまとめる際には、法律の専門家のアドバイスを仰いだうえで、どのように遺言書を遺すか、家族としっかり話し合っておくことが大切です。(提供:ANA Financial Journal

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