マイホーム購入の際、住宅ローンの頭金はどれぐらい用意すればいいだろうか。頭金が少なくても組める住宅ローンも出てきているが、頭金あり・なしそれぞれにメリットとデメリットがある。今回は、住宅ローンの頭金について、何のために必要なのか、頭金の相場はいくらぐらいなのか、そして頭金あり・なしの違いについても解説する。

住宅ローンの頭金ってなんのため?

住宅ローン,頭金,違い,解説
(画像=PIXTA)

昨今では住宅ローンを組む際、頭金がなくても大丈夫なローンが増えている。それゆえ何のために住宅ローンが必要なのかがイメージしにくいのではないだろうか。頭金の最も大きな役割は、住宅ローンが残った状態で売却する際のリスク軽減だ。住宅ローンの頭金が少なければ、住宅購入後何らかの事情で住宅ローンが残ったまま売却する場合に、売却価格よりも住宅ローン残高のほうが高く借金が残る可能性がある。

住宅ローンの頭金があると、その分借入額が少なく売却時のリスクを減らせる。また、借入額が少ないとその分利息を含めた支払総額に大きな違いが出る点も見逃せない。住宅ローンは、多くの場合長期間借りるため、利息が非常に大きく響いてくる。その差は、数百万円になることも少なくない。ただ住宅購入の際は、物件価格だけでなく仲介手数料や登記費用など「諸費用」が物件価格の5~10%ほど必要だ。

その分も考慮して頭金を用意する必要があることは注意しよう。

住宅ローンの頭金の相場は?

一般的に住宅ローンとして用意したほうが良い頭金の相場は物件価格の20%程度といわれている。例えば、3,500万円の住宅の購入を検討する場合は700万円の頭金が必要になる計算だ。住宅金融支援機構が毎年行っている「フラット35利用者調査」の2018年度版によると、資金調達内訳は、利用者の属性により平均値が以下の通りとなっている。

<2018年度のフラット35利用者の手持金と物件価格に対する割合>
・注文住宅融資利用者:636万5,000円(18.7%)
・土地付き注文住宅融資利用入者:447万円(10.9%)
・建売住宅融資利用者:293万2,000円(8.5%)
・マンション融資利用者:714万1,000円(16.1%)
・中古戸建融資利用者:203万円(8.2%)
・中古マンション融資利用者:310万5,000円(10.4%)

フラット35は、こうして見ると頭金の平均額は8~19%近辺に集中しており、「頭金は2割」という一般的な表現はおおむね近いということがいえる。

頭金は、ありとなしでどう違う?

頭金がある場合とない場合では、具体的にどのような違いがあるかということを以下の5点にまとめた。

  1. 総返済額に違いが出る
  2. 万が一のときのリスクヘッジ
  3. 頭金があるほうが審査に通りやすい
  4. 住宅ローンの金利が優遇される
  5. 頭金なしの場合は入居してから10年間は住宅ローン控除制度を受けられる

それぞれの内容について詳しく説明する。

1. 総返済額に違いが出る

頭金があるのとないのとでは、総返済額に大きな違いが出る。例えば、3,500万円のマンションを35年ローン・固定金利1.5%(元利均等方式)で借り入れたとすると総返済額は約4,501万円、約1,001万円分利息を払う。同じ条件で20%の700万円頭金を用意すると借入金は2,800万円だ。総返済額は約3,601万円で利息分は約801万円となり、頭金なしの場合に比べて約200万円違ってくる。

さらに「フラット35」など一部の住宅ローンは、頭金を一定金額以上入れるかどうかで借入金利自体に差をつけている。上記と同じ受託ローンを利用して頭金を20%入れると借入金利が0.5%優遇される場合、総返済額は3,320万円で利息分は約520万円となり頭金を入れず1.5%だったときと481万円も差が出るのだ。

このように頭金のあり・なしでは、総返済額に大きな違いが出てくる。毎月の支払額にも差が出るため、負担感はかなり違うだろう。

2. 万が一のときのリスクヘッジ

冒頭でも少し説明したが、現在購入する住宅を、住宅ローンを払い終わらないうちに売却するケースが出てこないとも限らない。子どもの成長などライフステージの変化や転勤など仕事の都合でやむをえない場合もあるだろう。住宅ローン残高が多いまま売却する場合、頭金を支払っていないと借金だけが残る可能性がある。

単に売却するだけなら残債を支払っていけばいいのだが、家の買い替えとなると旧宅の住宅ローンが残る状態で新しい住宅ローンを組むことは難しい。しかし、頭金をいくらか入れていると売却リスクを軽減できる。

3. 頭金があるほうが審査に通りやすい

住宅ローンには審査があり、「年収に対する住宅ローンの割合が適切かどうか」「安定した収入が見込めるか」といったことが入念に調査される。このとき、ある程度まとまった頭金を用意できている人のほうが、審査に通りやすいといわれている。なぜなら借入申込金額自体が減るため返済負担率が下がるからだ。

4. 住宅ローンの金利が優遇される

住宅ローンを検討する際、多くの人が利用する住宅金融支援機構の「フラット35」は、融資率が9割以下か9割超えかで金利が0.5%程度違う。楽天銀行の「フラット35」も頭金を10%以上用意する場合とそうでない場合で、固定金利の金利差が0.4~0.5%も違ってくる。

少しでも有利な金利で住宅ローンを組みたい場合は、頭金を物件価格の10%以上は核としておきたい。ただし貯金をすべて頭金に充てると急な出費で対応できなかったり、諸費用の分も足りなくなったりするため、バランスを考えることが必要だ。頭金は10%以上確保しておきたい。

5. 頭金なしの場合は入居してから10年間は住宅ローン控除制度を受けられる

頭金なしの場合は、借入額が大きい分、住宅ローン控除制度で還付される税金の金額が大きくなる点はメリットの一つだ。住宅ローン控除制度では、10年間にわたり、年末時点での住宅ローン残高の1%が所得税から還付される。所得税で引ききれない分については住民税から還付されるのが特徴だ。さらに2019年10月に消費税が10%になった後は、控除期間は10年から13年に延長される点も見逃せない。

具体例を挙げれば、住宅購入代金3,500万円を頭金なしで全額借り入れて年末残高が3,450万円だった場合、1%の34万5,000円を所得税・住民税から控除できる。一方、同じ3,500万円のうち頭金を20%入れて2,800万円を借り入れて年末残高が2,750万円だった場合、控除できる金額は27万5,000円となり、控除額が7万円程度少なくなる。

また、独身で年収が約600万円ある場合、所得税+住民税は約50万円なので控除額は全額戻ってくるだろう。ただし年収が少ない場合は、所得税+住民税でも引ききれず、全額が戻ってこないケースもあるため要注意だ。年収が約500万円になると所得税+住民税は約38万円、年収400万円なら所得税+住民税は約26万円である。

もし年収400万円程度で上記のような3,500万円程度の住宅ローンを組んでしまうと、34万5,000円の控除が受けられても税額が約26万円のため、約8万5,000円は戻ってこないのだ。住宅ローン減税のことも考えて頭金をなしにするかどうか迷っている人は、自分の年収と毎年の住宅ローン控除額を比較して検討してほしい。

頭金なしでも住宅ローンを本当に組めるの?

頭金なしでも住宅ローンを組むことは可能だ。「フラット35」を始め金融機関の用意している住宅ローンでも、購入価格の全額を住宅ローンとして組めるようになっている。毎年の住宅ローン返済額が年収の20%程度に収まっており、安定して収入が見込める給与所得者なら住宅ローンの審査にも通過する可能性は高い。

さらに住宅の購入価格だけでなく購入時に必要となる諸費用まで借りることのできる住宅ローンも登場し「オーバーローン」などと呼ばれている。ただしオーバーローンは住宅ローンと別で借りる形になり、金利も住宅ローンに比べて高めになっているため注意が必要だ。頭金なしで住宅ローンを組む場合は、支払いが続けられるかどうかについて慎重なシミュレーションを繰り返して問題ないかどうかを確認しよう。

支払いが続けられるかどうかについて検討する際は、現状だけでなく将来のライフステージも考慮したい。夫婦共働きを前提にしている場合は、子どもができてしばらく仕事を休まざるをえない状況もありえる。特に育児休業を取得するとボーナスの査定に響き、年収が大幅に下がるかもしれないので、そこまで検討が必要だ。

無理なく返済できる方法をとりましょう

住宅ローンを組む際、頭金をどの程度用意するかという問題は非常に悩ましい。しかし、基本は「無理なく長期にわたって住宅ローンを返済できるかどうか」という点が重要だ。頭金の金額によって、これから長期間払っていく住宅ローンの支払額も変わってくる。住宅ローンを組む際、少しでも頭金が多ければ毎月の支払額は減り、将来的なリスクも少ない。

しかし、手元に現金が全く残らない状態では、万が一に備えた生活資金がなくなる。さらに住宅の購入価格だけでなく住宅を購入する際は、購入価格の10%程度の現金が必要だ。自分にとって一番バランスの良い頭金の金額は、自身でじっくり検討しよう。計算があまりに難しい場合や検討している時間がない場合は、ファイナンシャルプランナーなど専門家へ相談してみることも方法の一つだろう。

文・藤森みすず