住宅を購入する際にほとんどの人が資金調達の手段として利用するのが住宅ローンである。ローン契約時に必要とされる住民票は新住所が必要とされているが現住所での申請も問題ない。

だが金融機関側は新しい住所へ引っ越さずに低金利の融資を別の用途で使われる懸念があるため、現住所での住宅ローン契約を嫌う傾向がある。金融機関には嫌われている現住所を使用した住宅ローン契約ではあるが新住所を使用しなくても実際は黙認のところが多い。

今回は住宅ローン契約の際に必要となる住民票で、新住所を使うべきではない理由を詳しく解説する。

そもそも引っ越し前の新住所を提出するのは犯罪行為

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(画像=Standret / Shutterstock.com)

引っ越しする前に新住所を役所へ提出するということは、虚偽の転入届ということになってしまうため行政の罰則規定に引っ掛かってしまう。住民基本台帳法では虚偽の転入届を提出すると5万円以下の過料に処されるため、刑罰ではないにしても注意が必要だ。

住民基本台帳法の転出虚偽届の部分をみてみよう。
”第五十二条 第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による転出に関し虚偽の届出(第二十八条から第三十条までの規定による付記を含む。)をした者は、他の法令の規定により刑を科すべき場合を除き、五万円以下の過料に処する。”

引用:電子政府の総合窓口e-Gov

上記の様に罰則規定があるため普通ならば新住所をもちいて住宅ローンを通そうと考える。しかし一般的には新住所を使用した住宅ローンを組むのが黙認されている形だ。また住宅ローンを組む側だけでなく、公務員へ虚偽の申告という面でも罰則規定があり刑法によって規定されている。

公正証書に不実の記載をさせ(第百五十七条)、不実の公正証書を行使・供した(第百五十八条)ことで以下の刑罰に処される。
”第百五十七条 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。 (偽造公文書行使等)”

”第百五十八条 第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
(私文書偽造等)”

引用:電子政府の総合窓口e-Gov

上記をみてみたら分かるが公務員の方が罰則規定は厳しく設定されており住宅ローン契約者よりも公務員の方がデメリットが大きい。このように、行政罰だけでなく「刑罰に処される」ケースもあるため新住所で転入届を出すのは非常に危険な行為であることが伺える。

では何故公務員側が現住所を使用した住宅ローンの申請を簡単に通してしまっているのかというと「自分は知らなかった」というなんともお粗末な知らぬ存ぜぬで通している。そのため公務員側は基本的に介入しない形なので現住所で住宅ローンの申請をだしても大丈夫なのだ。

また刑法は刑事事件発展してしまうと懲役刑になる可能性も考えられるため安易な考えでやぶるのは非常にリスキーな行為だと自覚しよう。また後述するが現住所を申告することによって得られるメリットもあるが、新住所を申告することで得られるメリットも存在する。しかし現住所を申告するやり方は上記の法に違反した上でのメリットであることを忘れないようにしよう。

引っ越し前の新住所を提出する3つのメリット

引っ越し前の新住所を提出するのが犯罪行為だと分かったところで引っ越し前の新住所を提出するメリットを解説する。

引っ越し前の新住所を提出することで得られるメリットは以下の3つだ。

・債権者側が有利な取引をするため
・住所変更登記の手間や費用の削減ができる
・登録免許税が安くなる

自身ではなく住宅ローンの債権者である金融機関が有利となる部分もあるが自身へのメリットとなる場合もある。そのため一概に金融機関有の高金利ローンを組まなければいけないから損だと考えるのではなく、総合的に判断をするよう心がけよう。

債権者側が有利な取引をするため

債権者は金融機関となるが金融機関は契約者が購入した家に住宅ローンを組むことを前提としている。そのため現住所でローンを組んで住宅ローン締結後に引っ越ししないというケースだと、現住所を使って低金利なローンを組む事が可能となってしまうことから、金融機関側からすると「騙されて低いローンを組まれた」と考えてしまう。

本来だったら高金利の住宅ローンがあてはまるのにもかかわらず低金利の周大クローンを使用されるわけですから金融機関にとっては損失だ。従って住宅ローンを提供する金融機関からすれば、新住所に住民票をうつしたものを元にして住宅ローンを組みたいと考えている訳だ。また現住所で最初に住宅ローンを組み、後で新住所を申告するというやり方もあるのだが金融機関側での事務作業が増えるため嫌煙される傾向にある。総じて金融機関からすると現住所で住宅ローンを組むメリットは何一つなくあまり良い話ではないのだ。

住所変更登記の手間や費用の削減ができる

ローン契約を結び物件の決済が終わると、所有者から物件購入者へ権利を移す「所有権移転登記」をする必要がある。その際、既に住民票が購入した物件の新住所である場合はその住所で登記を行い「登記識別情報通達書」の内容を確認すれば完了である。

だが、住民票が旧住所のまま「所有権移転登記」を行なった場合、以下4つのステップを行う必要がある。

・旧住所の住民票の提出
・旧住所での「所有権移転登記」
・新住所へ住民票を異動
・住宅の登記情報の新住所へ「登記名義人表示変更登記」

「所有権移転登記」と「登記名義人表示変更登記」の2回登記を行う必要があるので2倍の費用がかかってしまう。上記のメリットは現住所で住宅ローンの申請を行ったが新しく新住所に所有を移した場合なので、現住所のまま運用を行っている場合はその限りではない。現住所で住宅ローンの申請をすると新住所で住宅ローンを申請するよりも手間がかかってしまうことが分かるだろう。

登録免許税が安くなる

不動産を投資用で購入した場合は2%発生するが、購入する不動産が居住用だった場合は0.3%となるため約1/7の減税できる。この不動産が居住用であることを証明するものを「住宅家屋証明書」とよび新住所が必要となる。

新住所ではなく現住所で申請する場合は約7倍登録免許税が高くなることと同じ意味なので、現住所を使用する人からしたらデメリットだ。また現住所を用意できなかったとしても「賃貸借契約書の写し」でも登録免許税を安くできる。

引っ越し前の新住所よりも現住所を使うべき4つの理由

住宅ローンを契約する際、住民票が必要になるため新住所でないといけないと勘違いしている方も多いと思うが、実際は現住所でもローン契約が可能だ。これまで紹介したように、新住所で住民票を取得することにより各種登記の手間や費用が削減できるメリットがある。

しかし、現住所の住民票を取得しローン契約をしたほうが新住所を申請するよりも得られるメリットは大きく魅力的だ。また慣習として行っているところも多く厳しくとりしまられていないのが現状となっている。ここでは新住所よりも現住所で住民票を取得するべき4つの理由を紹介する。

そもそも犯罪行為

冒頭でも述べた通り、まだ引っ越ししていない新住所で転入届を申請することは公務員に虚偽の申し立てをしたとされる犯罪行為にあたり、5万円以下の刑罰に処されるケースもある。役所は住宅ローン関連で新住所の転入届を扱うことも多く、公務員も暗黙の了解として深く触れてこないところがほとんどだが、虚偽の申請と知りながら手続きをすると以下の刑法に当たるため公務員側にもリスクのある行為だ。

”第百五十六条 公務員が、その職務に関し、講師の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印象又は署名の有無により区別して、前二条の例による。
(公正証書原本不実記載等)”

引用:電子政府の総合窓口e-Gov

公正証書の作成義務のある公務員が虚偽と知りつつ手続きを進めた場合の罪なので、一般的には考えづらいケースだが必ず大丈夫とも言い切れない。しかし住宅ローンの申請の際に現住所を使用することは慣習として残っており必ずダメといった具合でもない。今後も同じ状況が続くとは言い難いが、現状とれる最善の施策なのであれば積極的に使用していこう。

発行してくれるかは市役所次第

公務員は自身が虚偽の書類作成を行うと罰則を受ける規定があるため、自分から虚偽の書類を作成する公務員はいないだろう。しかしおかしなことではあるが公務員が知らなかったという体で申請を通すのは黙認されている。そのため黙認が大丈夫な市役所であれば黙認され、厳しい市役所では黙認されずに突き返される。あくまでも現住所での申請は市役所次第で大きくかわってくることを考慮しておこう。

自分で住所変更登記をしたほうが安い

住所変更登録記は司法書士に頼むと1万円から2万円の費用が発生してしまう。しかし住所変更登録記は素人でも申請は難しくないため自分でやることで費用を抑えることが可能だ。

現住所でも登録免許税の軽減措置がある

新住所の申請だと登録免許税が安くなる措置があったため減税出来た。しかし現住所で住宅ローン申請をいたとしても登録免許税を安くできる。

本則税率 通常住宅 長期優良住宅 低炭素住宅
所有権保存登記(新築) 0.4% 0.15% 0.1% 0.1%
所有権移転登記 2.0% 0.3% 集合0.1%、戸建0.2% 0.1%
抵当権設定登記 0.4% 0.1% 0.1% 0.1%

所有権移転登記で本則税率であれば2%と大きな減税できる。また他の0.1%といった減税でも現住所を使用することでそもそも住宅ローンを低金利で使用できているため合計すると非常に大きな金額がお得となっている。登録免許税の軽減の際に必要な書類は住宅用家屋証明書となるのでしっかり保管しておこう。

住宅ローンの住民票は必ず現住所を使おう!

今回は住宅ローン契約の際に必要となる住民票で、新住所を使うべきではない理由を詳しく解説してきた。

新住所を使用した場合 債権者側が有利な取引をするため
住所変更登記の手間や費用の削減ができる
登録免許税が安くなる
現住所を使用した場合 低金利の住宅ローンを使用できる
住所変更登記にかかる費用が安くなる
登録免許税の軽減措置

確かに現住所で申請を行うリスクはあるがそれを補ってもなお現住所を使用した住宅ローンの申請にメリットがある。特に現住所を使用した場合は低金利の住宅ローンを使用できるため支払い額を非常に大きく減らすことが可能だ。

また登録免許税の減税は「新住所」と「現住所」どちらでも恩恵をうけることができ、住所変更登記に関しても同じだ。現住所で提出して住宅ローンを通す際に一番懸念されるのは法をおかしているという感覚だ。

今回はいわゆる慣習法のような形で現住所で通してもみんながおなじことをやっているのだから問題ないという形だが、今後どのようになるかは分からない。また公務員側の罰則規定もあることからお堅い市役所での申請は通ることがないだろう。

そのため市役所役員の方には現住所の住宅ローンんには知らぬ存ぜぬのタイプをねらっていこう。総合的にみて現住所での申請をおこなったほうが費用を安く抑えることができるが申請が通るかどうかは市役所次第の部分があるため、もし申請が通らなかったらおとなしく新住所で申請を行おうのが無難だ。公務員が認知した時点でアウトなのでその点だけ気を付けよう。