住宅ローンには、約定通りに返済するだけではなく、手元資金を残高の返済に回して、一部繰り上げ返済することも可能だ。繰り上げ返済により、返済期間を短くできる、本来支払わなければならない利息を大幅にカットできる、あるいは当面の毎月返済額を少なくできる――といったメリットがある。ここでは繰り上げ返済に当たって気をつけるべきポイント、繰り上げ返済の種類などについて解説する。

住宅ローンの繰り上げ返済とは

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(画像=PIXTA)

住宅ローンの繰り上げ返済というのは、毎月の返済額とは別に、住宅ローンの一部または全額を返済すること。繰り上げ返済を行うことで、当初の予定より返済期間が短くなったり、総返済額が少なくなったり、毎月の返済額を減らしたりできる効果がある。 住宅ローンの返済が始まってからも、しっかりと家計管理して貯蓄を進め、ある程度まとまったところで繰り上げ返済し、できるだけ早く返済を終え、総返済額を少なくしたいものだ。 最近は多くの金融機関で、繰り上げ返済の手数料は無料になっているが、一部手数料がかかることもあるので、事前に確認しておく必要がある。

住宅の繰り上げ返済は2つのタイプに分けられる

この繰り上げ返済には、返済期間短縮型と返済額軽減型の2つのタイプがある。ほとんどの金融機関では、どちらかを自由に選択できるようになっている。

返済期間短縮型とは?

返済期間短縮型というのは、毎回の返済額は変えずに、残りの期間を短縮するタイプの繰り上げ返済である。

繰り上げ返済する資金をすべて元金に充当し、それに相当する期間だけ残りの返済期間を短縮するため、その分の利息支払いをカットできることになる。たとえば、繰り上げ返済額が10回分の返済額の元金に相当する場合、その10回分だけ返済期間は短くなり、さらにその期間に支払うはずだった利息もカットできることになる。

返済額軽減型とは?

返済額軽減型は、残りの返済期間は変えず、毎回の返済額を少なくするタイプの繰り上げ返済だ。

たとえば、その時点のローン残高が2700万円で、100万円を繰り上げ返済するとすれば、そこから100万円を差し引いた2600万円を残高として、残りの返済期間や金利をあてはめて返済額を再計算することになる。

繰り上げ返済する金額にもよるが、毎月の返済額を数千円から数万円分も軽くすることが可能で、その上、本来支払うべき利息も一定額軽減できる効果がある。

住宅ローンを繰り上げ返済するメリット・デメリット

実際には、返済期間短縮型のほうが、カットできる支払額が大きく、残り返済期間が短くなるという効果もあるため、こちらを利用する人が多い。 そのため、何らかの事情で、毎月の返済額を抑制したいといった事情のある人以外は、返済期間短縮型を利用する人のほうが多いといわれる。実際、どれくらいの効果があるのか、具体的な例を見てみよう。

返済期間短縮型のメリット・デメリット

返済期間短縮型の繰り上げ返済の例を、借入額3000万円、返済期間35年、元利均等・ボーナス返済なしのケースでシミュレーションしてみよう。 たとえば、金利2%のローンを借りている人が、3年後に100万円を繰り上げ返済すれば、残り返済期間を18カ月短縮できる。毎月返済額は9万9378円だから、その18カ月分は178万8804円になる。それを100万円繰り上げ返済することで支払いをカットできるのだから、単純計算で差額分約79万円(実際にはもう少し増える。図表1参照)を削減できることになる。

万一に備えて手元に一定の資金を残しておく

図表1を見ればわかるように、カットできる利息は、金利が低いほど、そして、繰り上げ返済時期が早いほど効果が大きいことがわかる。最近は1%前後の超低金利が続いているが、すでに住宅ローンの返済を行っている人だと、2%、3%の金利のローンの返済を行っている人もいるだろう。そんな人は、一刻も早く現在の低い金利に借り換えるのが先決だが、その際に、合わせて繰り上げ返済すれば、金利低下と繰り上げ返済のダブル効果が期待できる。

ただ、返済期間短縮型の繰り上げ返済だと、毎月の返済額はそのままなので、手元の余裕資金が残り少ないとやや心もとない。万一に備えて一定の手元資金を残しておいたほうが安心というのが、デメリットといえばデメリットだろうか。

図表1 返済期間短縮型の繰り上げ返済による軽減効果
設定条件:借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし
     100万円を一部繰り上げ返済

1年後 3年後 5年後 10年後
カットできる利息 短縮できる期間 カットできる利息 短縮できる期間 カットできる利息 短縮できる期間 カットできる利息 短縮できる期間
1% 約39万円 16カ月 約36万円 16カ月 約34万円 15カ月 約28万円 15カ月
2% 約94万円 19カ月 約86万円 18カ月 約79万円 18カ月 約62万円 16カ月
3% 約167万円 23カ月 約153万円 21カ月 約139万円 20カ月 約107万円 17カ月

返済額軽減型のメリット・デメリット

同じ条件で、返済額軽減型の繰り上げ返済を行った場合の効果は図表2のようになる。たとえば、金利2%のローンを利用している人の毎月返済額は9万9378円だが、3年後に100万円を返済額軽減型で繰り上げ返済すると、毎月の返済額は9万5844円になる。それまでに比べると月々3534円の軽減だから、家計負担を若干軽くする効果が期待できる。

もっと大幅に返済額を減らしたいという場合には、繰り上げ返済額を多くする必要がある。上と同じ条件で、繰り上げ返済額を200万円にすれば、次回からの返済額は9万2309円に、300万円にすれば8万8775円に、500万円にすれば8万1706円に減少する。ここまで軽減できれば、かなり返済もラクになるだろう。

この返済額軽減型の繰り上げ返済においても、金利が高いローンほど、繰り上げ返済時が早いほど効果は大きくなる。

図表2 返済額軽減型の繰り上げ返済でカットできる利息
設定条件:借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし
     100万円を一部繰り上げ返済  
   

金利 1年後 3年後 5年後 10年後
カットできる利息 月々の返済減少額 カットできる利息 月々の返済減少額 カットできる利息 月々の返済減少額 カットできる利息 月々の返済減少額
1% 約18万円 2898円 約17万円 3051円 約16万円 3224円 約13万円 3780円
2% 約38万円 3385円 約35万円 3534円 約33万円 3703円 約27万円 4249円
3% 約59万円 3919円 約56万円 4061円 約52万円 4224円 約42万円 4754円

住宅ローンの繰り上げ返済を行う上で気をつけるポイント

以上のことを整理すると、繰り上げ返済の効果を最大化するためのポイントとして、次のような点を挙げることができる。

繰り上げ返済は実行時期が早いほど効果が大きい

以上のシミュレーションでも見てきたように、繰り上げ返済は、できるだけ早く実行するほうが効果は大きい。期間短縮型の場合、金利2%、借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なしのローンだと、100万円の繰り上げ返済による支払利息のカット効果は、1年後だと94万円だが、3年後だと86万円、5年後だと79万円と、段階的に減少していく。

金額はやや小さくなるが、これは返済額軽減型の繰り上げ返済でも同じ。カットできる利息は1年後だと38万円であるが、3年後には35万円に、5年後には33万円に減少する。

繰り上げ返済は金利高い時期ほど効果が大きい

繰り上げ返済の効果は住宅ローンの金利によっても異なってくる。結論からいえば、金利が高いほど繰り上げ返済の効果が大きく、金利が低いほど効果は小さくなっていく。だから、さまざまな事情で複数のローンを抱えていると、金利の高いローンから繰り上げ返済を実施していくのが得策だ。

たとえば、図表1を見るとわかるように、返済開始3年後に期間短縮型で100万円繰り上げ返済する場合、金利1%だとカットできる利息は36万円だが、これが金利2%だと86万円に、さらに3%だと153万円に増える。金利が高いと効果が幾何級数的に高まっていくので、金利動向には注目しておきたい。

ローンが1本であっても、変動金利型など市中の金利動向によって適用金利が変わるローンだと、金利が高くなったときには、積極的に繰り上げ返済を実行して、金利上昇による返済額増加の影響を少しでも小さくするようにするのがいいだろう。

残高の多いローンほど効果は大きくなる

もうひとつ、先に述べた実行時期を早めることともつながるが、ローンの残高が多いほど繰り上げ返済の効果が大きくなる点にも注目しておきたい。複数のローンがある人なら、残高の多いほうから繰り上げ返済するほうが、効果が大きくなる可能性が高いし、1本のローンであれば、先述したようにできるだけ早い、ローン残高が多い時期のほうが、軽減できる金額が大きくなる。

たとえば、同様の条件で金利は2%のとき、3年後に200万円を期間短縮型で繰り上げ返済するときの支払利息カット効果は167万円だが、これが借入額5000万円なら172万円に増える。

繰り上げ返済のタイミングを見極める

このように、住宅ローンの繰り上げ返済には大きなメリットがあるものの、あまり無理しすぎて手元資金の余裕がなくなり、ローンの延滞が発生といった事態になっては元も子もない。どんな場合でも、常に一定の手元資金は残しておく必要がある。万一の場合、リストラや病気、ケガなどで収入が減ったり無くなったりしても、半年程度は生活していけるだけの資金は手元に残しておくのが安心だ。

逆にいえば、当初からしっかりと計画を立てて、住宅ローンの返済をしながらも着実に貯蓄を増やして、1年に1度など、一定額に達したら繰り上げ返済していくなどの計画性がほしいところだ。

以前は、繰り上げ返済には一定の手数料が必要で、繰り上げ返済を繰り返すと手数料でかえって損するといったことがあった。また、繰り上げ返済の最低単位を100万円からとする金融機関もあって、何かと使い勝手が悪かったものだが、最近ではネット上で手続きできるところも多く、手数料無料かつ少額からOKな金融機関が増えている。

返済シミュレーションを明確に立てる

この繰り上げ返済、ネット上には各種のシミュレーターが増えている。

なかでもお勧めは日本銀行情報サービス局が運営する、暮らしに役立つ身近なお金の知恵、知識情報サイトの『知るぽると』のシミュレーター。誰でも無料で利用でき、半ば公的機関なので安心して利用できる。

所定の欄に、借入額、金利、返済期間、繰り上げ返済額などを入力していくと、返済期間短縮型、返済額軽減型の繰り上げ効果が出てくる。繰り上げ返済の2つの方法の効果の違いも一目瞭然なので何かと便利だ。

こうしたシミュレーターを利用すれば、何年後にいくら繰り上げ返済すれば、どれくらいの効果があるのか、その後の返済はどうなるのかなどをイメージしやすくなる。これから住宅ローンの利用を考えている人なら、あらかじめ繰り上げ返済の効果をハッキリ意識しておけば、できるだけ早く預貯金を増やして繰り上げ返済を実行しようというモチベーションを高める効果も期待できる。

もちろん、すでに住宅ローンの返済を行っている人なら、いまの手持ちの資金を繰り上げ返済に回せば、いくら得できるのか、どれくらい返済期間を短縮できるのかということをズバリ判断できるはずだ。

住宅ローンの完済までの期間は平均15.2年

住宅ローンを組むときには、当初は最長の35年返済で組んだとしても、返済期間短縮型の繰り上げ返済を定期的に実行し、最終的には25年以内に終えよう――といった目標を立ててみてはどうだろうか。いつごろ、いくら繰り上げ返済すれば何年短縮できるなどといった明確な目標を立てておけば、仕事にも精が出て、節約するやりがいもあるというものだ。

たとえば、30歳で35年返済のローンを組めば、完済時の年齢が65歳に達してしまうが、繰り上げ返済で25年に短縮すれば、55歳で終えることができ、そのあとは老後資金の貯蓄などにつとめることができ、より豊かな生活を実現できるようになるはずだ。

実際、住宅金融支援機構の『2018年度民間住宅ローンの貸出動向調査』によると、2017年度に民間住宅ローンを利用した人の、当初の返済期間の設定は平均26.4年だが、完済された債権の平均経過年数は15.2年になっている。当初は20~30年程度の長い返済期間でローンを組んだとしても、実際には15年ほどで完済している人が多いわけだ。

そのなかには、借換えや買換えによって、それまでの住宅ローンをいったん完済するという人も含まれるだろうが、地道に一部繰り上げ返済を繰り返して、予定よりかなり早く返済を終えたという人もいるだろう。

住宅ローンの繰り上げ返済を上手に使おう

住宅ローンは、無事に返済できているうちは、あまり見直しについて考えないものだが、マンションや一戸建てなどの住宅にメンテナンスが必要なのと同じように、住宅ローンについても、定期的にメンテナンスを考えてみてはどうだろうか。

繰り上げ返済もそうだが、金利が低くなってくれば、借換えという選択肢も出てくるだろうし、繰り上げ返済をするだけのまとまった資金が手元にない場合には、毎月の返済額を増やして完済までの期間を短縮するといった方法もある。

さらに、ボーナス返済を利用している人は、ボーナス返済を止める、ボーナス返済の比重を見直すといったことも可能だ。

そのメンテナンスのベースになるのが、住宅の一部繰り上げ返済。住宅ローン返済のなかでも安定的に預貯金を増やして、繰り上げ返済を実行して期間を短縮し、ほかに住宅ローンの返済で得する方法はないかなどを確認するようにしてみてはどうだろうか。それが、より堅実な住宅ローン返済や、大きな経済効果につながるはずだ。