相続税の節税対策として、土地を生前贈与しておこうと考える方もいるでしょう。確かに生前贈与によって相続財産が減るため相続税は少なくなります。しかし、土地の贈与を受ける場合には贈与税や諸費用がかかり、贈与される土地の金額が大きくなると贈与時に必要となるお金も高額となる場合があります。あとで後悔しないためにも、土地の生前贈与を受けた場合にかかる諸費用や、贈与税の計算方法を知っておきましょう。

<目次>
土地を生前贈与した場合にかかる贈与税の計算方法
土地の贈与を受ける際に必要な諸費用
土地の贈与税を節税するには?4つの方法
土地の生前贈与で節税効果を得るには専門家に相談を!
まとめ

土地を生前贈与した場合にかかる贈与税の計算方法

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(画像=smolaw/Shutterstock.com)

土地を贈与(生前贈与)すると、多くの場合贈与税がかかります。贈与税はどのように算出されるのでしょうか?ここでは贈与税の基本的な計算手順を見ていきましょう。

なお、条件によっては贈与税の支払いを非課税~減らす方法もありますが、ここでは課税される場合の計算方法を紹介します。

1.贈与税の計算式

一般的に贈与税は1年間にもらった財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた金額に税率をかけ、さらに控除額を引いて計算します。

贈与税額 =(1年間※の贈与財産価額の総額 - 基礎控除額110万円)× 税率 - 控除額

※1年間=1月1日~12月31日

贈与税の「税率」と「控除額」は、「基礎控除額110万円を引いた後の金額(課税価格)」により異なります。また、贈与税の計算方法は「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の2つの場合で区分されます。

2.「一般贈与財産」と「特例贈与財産」それぞれの税率

・一般贈与財産
一般贈与財産とは特例贈与財産の要件を満たさない(※後述)贈与財産です。

例えば、「兄弟間の贈与」「夫婦間の贈与」「親から子への贈与で子が未成年の場合などに利用します。一般贈与財産には基礎控除後の課税価格が300万円以下の場合を除き、特例贈与財産よりも高い一般税率が適用されます。

▽課税価格ごとの税率と控除額(一般贈与財産の場合)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
200万円超300万円以下 15% 10万円
300万円超400万円以下 20% 25万円
400万円超600万円以下 30% 65万円
600万円超1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

・特例贈与財産
特例贈与財産は、「贈る人が父母、祖父母、曾祖父母で、贈られる人が贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上の直系卑属である」場合に適用されます。

例えば、「祖父から孫」「母親から子」などの場合です。このように直系卑属とは「血縁関係のある直系の下の世代」が該当しますが、法律上の直系と見なされる(血縁関係が無い)「養子」も該当します。配偶者は該当しないため、例えば「夫の母からの贈与」の場合はこの特例は適用されません。

▽課税価格ごとの税率と控除額(特例贈与財産の場合)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
200万円超400万円以下 15% 10万円
400万円超600万円以下 20% 30万円
600万円超1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

なお、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の両方の計算が必要な場合もあります。例えば、「20歳以上の方が配偶者と自分の両親の両方から贈与を受けた場合」などです。

3.贈与税の計算例

例えば特例贈与財産に当たる、父母から子に土地を贈与する場合を考えてみましょう。

▽条件
・2,000万円の土地を贈与

▽試算
・税率45%、控除額は265万円

(2,000万円-110万円(基礎控除))×0.45-265万円=585万5,000円

2,000万円の土地を受け継ぐために585万5,000円もの税金を納付するのは、かなり大きな負担です。しかし、贈与税は現金による一括納税が原則ですので、分割はできません。

【参考①:土地の贈与税計算には土地の「評価額」が必要。調べ方は?】

土地を贈与された場合の課税価格は「土地の評価額から基礎控除額を引いた金額」になります。この土地の評価額はどうやって調べればよいのでしょうか?

通常の土地の取引で使われる相場価格(「時価」など)と「評価額」は異なります。贈与税計算に使われるのは不動産の相続税評価額(路線価)、または固定資産税評価額になります。

・路線価方式で調べる
国税庁により定められている「路線(道路)に面する標準的な宅地1平方メートル当たりの価額」が路線価です。(画像は国税庁「路線価図の説明」より)

アセットONLINE
(画像=アセットONLINE編集部)

引用:国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表

▽計算式
路線価による土地評価額の計算式=正面路線価 × 奥行価格補正率 × 面積


奥行価格補正率は、国税庁HPの「奥行価格補正率表」でわかります。実際に例を挙げて計算してみましょう。

▽条件
・「250D」の路線に面している、奥行き27メートル・200平米の自用地の土地

▽試算
・25万円 × 0.97 × 200 = 4,850万円(自用地のため借地権は考慮不要)

実際には土地の二面が道路に面していた場合など、ケースごとに計算は変わります。概算価格としてこの計算方法を知っておきましょう。

・倍率方式で調べる
路線価が出されていない地域の評価方法です。土地の固定資産税評価額に一定の税率をかけて求めます。固定資産税評価額は、年に一度送付される固定資産税の納税通知書に記載されています。

土地の贈与を受ける際に必要な諸費用

土地の贈与を受ける場合には、以下のような諸費用も発生します。

1.税金

・不動産取得税(地方税)
相続の場合は非課税ですが、生前贈与された場合は以下の計算式で課税されます。

▽計算式
土地・建物の税額=固定資産税評価額×4.0%

(本則税率、2021年3月31日までは土地および住宅3.0%への特例税率あり。同じく2021年3月31日までは宅地=固定資産評価額の2分の1を課税価格とする特例措置あり)

・登録免許税(国税)
土地の所有権を移転登記するときに国に納める税金で計算式は以下の通りとなります。

▽計算式
登録免許税額=不動産の評価額×2.0%

(本則税率、2021年3月31日までの登記の場合1.5%への特例税率あり)

・その他の費用
専門家に手続きを依頼する場合には、報酬の支払いが発生します。法務局への不動産名義変更手続きは司法書士、税務署への贈与税申告手続きは税理士など、依頼する相手によって異なりますが、5~15万円程度が相場といわれています。

2.諸費用の具体的な計算例

実際にかかる諸費用の目安を簡単にシミュレーションすると以下のようになります。

▽条件
・固定資産税評価額は土地3,000万円、住宅500万円
・特例税率は考慮しない

▽試算

種類 計算式と金額
不動産取得税 (3,000万円+500万円)×0.04 =140万円
登録免許税 (3,000万円+500万円)×0.02 = 70万円
専門家への手続き依頼費用(一例) 司法書士15万円+税理士15万円= 30万円
合計 240万円
【参考②:贈与税の「延納」の条件について】
贈与税の申告と納税は、「贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日まで」に行わなければなりません。

 納税については、贈与税額が10万円を超え、かつ、納期限(納付すべき日)までに金銭で納付することを困難とする事由があるときは、申請により5年以内の年賦で納める延納制度があります。この場合には利子税がかかるほか、原則として担保の提供が必要となります。

このように、どうしても納税額を用意できない、贈与税を払えない事情のある人には「延納」の措置が用意されています。ただし、どのようなケースでも延納できるわけではなく、次のような条件が必要です。

・贈与税の延納ができる条件

(1)贈与税の額が10万円以上であること

(2)現金で納付するのが困難な範囲の金額であること


例えば、上記の計算例の場合、受け継いだ財産が土地のみですので、相続した現金ではなく自己資金から納税することになります。自分の預貯金から200万円用意できる場合に延納できる金額は以下の通りです。
延納額=550万5,000円-200万円=350万5,000円

(3)「延納申請書」「担保提供関係書類」を期限までに提出すること
用紙は国税庁のホームページからダウンロードできます。

(4)延納額に相当する担保を提供すること
延納しても払えない場合もあるため担保は必要です。土地を担保にする方が多いようですが、担保に供した土地には抵当権が設定されるため、売買できなくなります。ただし延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合は担保不要です。また延納は国から借金をすることになるので、当然ですが利息がかかります。

・贈与税の延納期間及び延滞税            
(1)延納期間

贈与税の延納期間は国税庁により定められており「5年の範囲内で適当と認められる期間」となっています。

(2)延滞税
延滞税の税率は、納税までの期間によって異なります。
(例)
・本来の納付期限の翌日から贈与税を納付した日までの期間が2カ月以内:年2.6%
・本来の納付期限の翌日から贈与税を納付した日までの期間が2カ月以降:年8.9%

※上記は令和2年12月31日まで。詳細は国税庁HP「延滞税の割合」で確認してください。

土地の贈与税を節税するには?4つの方法

ここまで見たとおり、土地の贈与を受けた場合は贈与税と諸費用がかかります。土地の評価額が大きいと贈与税も大きくなり、何の対策もしないと支払いに困ってしまうような額になるかもしれません。ここでは、贈与税の節税方法について紹介します。

1.特例を利用して節税する方法

贈与税が軽減される特例にはいくつか種類があります。なお、現金を贈与する場合はここで紹介する以外の方法も使えますが、ここでは「土地のまま」贈与する際に使える特例について説明します。

・夫婦間の居住用財産の贈与特例を利用する
「贈与税の配偶者控除」通称「おしどり贈与」は、婚姻期間が20年を過ぎた夫婦間で居住用の不動産を贈与した際に適用されます。暦年贈与の基礎控除である110万円に追加して2,000万円までの控除が受けられます。

「居住用財産」と見なされるためには、贈与を受けた者が現実に住んでおり、かつ、贈与を受けた後も住み続けることが必要です。

なお、この特例は、事実婚は対象外となっており、同じ配偶者から贈与を受ける場合、控除は一生に1度しか適用されなません。

・相続時精算課税制度の特例を利用する
相続時精算課税制度は、贈与の総額2,500万円までが非課税となります。またそれを超える金額については20%の税率を掛けて贈与税を算出します。贈与税を減額できる可能性が大きいといえます。

ただし、一度相続時精算課税制度を使うと暦年贈与(毎年、年間110万円までの控除がある)へ変更することはできません。また、贈与者が亡くなって相続が発生すると、この制度で贈与された財産も相続財産に加算して相続税を算出する必要があるなど、トータルで見ると節税にならない場合も考えられます。

・暦年贈与を利用する 
年間110万円以内の贈与ならば贈与税がかからないため、何年かに分けて土地などの不動産を暦年贈与することも不可能ではありません。

ただし、土地などの不動産の場合、名義変更などにその都度手数料や登記費用がかかるため、10年以上に分けて土地を暦年贈与した場合、費用対効果はあまり上がらない可能性があります。

また、贈与対象にかかわらず、毎年同じ額を同じ時期に贈与していると、あらかじめ取り決めがあった贈与(定期贈与)と見なされてペナルティ(贈与税課税、場合によっては追徴課税)を受ける場合があります。

そのほか、土地の名義を複数の相続人に分割して贈与していると、贈与者が亡くなった後にトラブルになる可能性もあります。不動産の暦年贈与はあまり現実的とはいえず、おすすめできません。

2.土地の相続税評価額を下げる方法

贈与する予定の土地を「貸し地」「貸家建付地」にすることで相続税評価額を下げる方法があります。土地の評価額自体を下げるので確実に贈与税を下げられます。

ただし、アパートなどを建設する場合は、その後の賃貸経営などについて受贈者に負担を強いる可能性があります。

【参考③:土地を贈与する手続き手順と贈与税申告に必要な書類】

土地を贈与するにはどんな手続き手順を踏み、どのような書類が必要なのでしょうか。実際には司法書士や税理士に依頼することが多いですが、簡単に手順をなぞっておきましょう。

・土地を贈与する手続きの流れ
(1)贈与契約書の作成

不動産贈与契約書を作成します(生前贈与は契約のため口約束でも可能ですが、後々トラブルに発展する可能性があるため、契約書を作っておいたほうが無難です)。

形式はweb上のひな型でも問題ありませんが、「日付」「贈与者」「受贈者」「贈与する不動産」「生前贈与にかかわる費用の負担者と負担割合」「氏名(直筆)」「実印」は最低限記載しましょう。

なお、作成した贈与契約書は、後から取り消すことはできません(平成29年改正前民法第550条:
「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」)。

(2)土地の名義変更(登記申請)
法務局で不動産の名義変更(登記申請)を行います。登記申請には以下の書類(状況によってはそれ以外も)が必要になります。非常に手間がかかるので司法書士など専門家に依頼するほうがよいでしょう。

・登記申請書
・受贈者の住民票
・固定資産評価証明書
・対象不動産の登記識別情報通知(登記済権利書)
・贈与者の印鑑証明書(取得から3カ月以内のもの)
・不動産贈与契約書(登記原因証明情報)←(1)のもの

(3)贈与税の申告
おおむね、申告期間と納期限は以下のようになっています。ただし、毎年日程は変更があるため国税庁HPで確認が必要です。

▽申告期間
・2月1日ごろ~3月15日ごろ

※令和元年分
・令和2年2月3日(月)~同年4月16日(木)まで(新型コロナウイルス感染症の影響により延長)

▽送信方法
・国税庁ホームページで作成しe-Taxで送信
・所轄税務署へ郵送
・所轄税務署へ直接持参

▽必要書類
・申告書 第一表(兼贈与税の額の計算明細書)
・申告書 第一表の二(住宅取得等資金の非課税の計算明細書)
・申告書 第二表(相続時精算課税の計算明細書)

※おしどり贈与(夫婦間贈与)で必要な書類
・受贈者の戸籍の謄本または抄本(居住用不動産等の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
・受贈者の戸籍の附票の写し(同上)
・贈与の対象となった居住用不動産に関する登記事項証明書

※相続時精算課税制度の適用を受ける場合に必要な書類
・贈与税申告書
・相続時精算課税選択届出書
・受贈者や贈与者の戸籍謄本または抄本で、次の内容を証する書類
(イ)受贈者の氏名、生年月日
(ロ)受贈者が贈与者の直系卑属(子または孫)であること
・受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類(受贈者が20歳に達したとき以後の住所又は居所を証する)
・贈与者の住民票の写しその他の書類(贈与者の氏名、生年月日を証する)
・贈与者の戸籍の附票の写しその他の書類(贈与者が60歳に達したとき以後の住所又は居所を証する)

【参考】:国税庁「贈与税の申告等

土地の生前贈与で節税効果を得るには専門家に相談を!

相続税対策のために生前贈与を考えることは節税に効果が期待できますが、一方でやり方を間違えると、かえって税金が高くなってしまう場合があります。また自分で全部手続きをするのはとても手間がかかるため素人には難しいといえるでしょう。

また、土地の正確な課税価格を知るためには路線価から土地の評価額を求めなければなりません。さらに、土地は現金と違って簡単に分割できないため、通常の贈与税節税手法として知られている暦年課税は、効果的とは言えない可能性があります。

土地の生前贈与について考えるなら、まずは専門家の意見を求めてみましょう。その際、税理士や司法書士だけでなく、地域の不動産会社や不動産管理会社に相談することで、土地の相続や贈与で発生する税金だけでなく、節税方法、その際の土地活用の方法や名義の問題について詳しく教えてくれるかもしれません。先祖代々の土地ならなおさら、土地についてよく知るプロに相談してみましょう。

まとめ

いかがでしたか。この記事では、土地の贈与税に関わる知識を解説しました。
土地を生前贈与する場合、直系卑属かそうでないかで税率が変わります。土地の評価額の調べ方は路線価方式と倍率方式があります。また節税するためにいくつかの方法があります。

親や祖父母の大切な土地を受け継ぐのは子や孫の責任でもありますが、贈与税の大きさという現実を考えると、やはりできる限り節税して負担の少ない贈与を実現したいものですね。贈与税対策は、早いうちから準備をしておきましょう。(提供:オーナーズ倶楽部

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