政府が掲げる「貯蓄から投資へ」を実現させるため、政府の肝いりでスタートしたNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)。制度は2014年1月から始まり、2019年で6年目を迎える。

アベノミクスによって株高が続いていたこともあって、NISAの口座数は制度開始直後の時点ですでに492万口座を記録するなど人気を集めた。その後も順調に口座数を伸ばし、2019年3月末時点で1,280万口座を突破している(つみたてNISAを含む)。実際にNISAの対象となる株式や投資信託を購入しているかは別にして、読者の中にもNISA口座を開いている人は少なくないはずだ。

実はこのNISA、制度開始5年目となった2018年から重要な「節目」を迎えていることをご存じだろうか。

そもそもNISAってどんな制度?

2018年,NISA,ロールオーバー
(写真=Number1411/Shutterstock.com)

その節目の話に入る前に、NISAについて簡単に説明しておこう。NISAは株式や投資信託の値上がり益や配当金にかかる税金が非課税となる制度だ。非課税の対象となるのは年間120万円、利用可能な期間は5年間なので、最大で600万円まで非課税の恩恵を受けることができる。制度が始まった当初の非課税枠は100万円だったが、2016年から120万円に増額された。

仮に、NISA口座である株式の銘柄を100万円で購入し、その後株価が2倍に上昇したところで売却したとしよう。通常は値上がり益100万円に約20%の税金がかかるため、手元に残るのは約80万円。しかし、NISA口座で購入した場合はその税金がかからないので、100万円が丸々手元に残ることになる。120万円以下で株式や投資信託の銘柄を購入する場合には活用を検討したい。(NISA最終取引期限2023年12月31日)

最大10年間の非課税メリットが受けられる「ロールオーバー」

冒頭で触れた“重要な節目”とは、実はこの5年という期間が大きく関係している。というのは、制度がスタートした2014年時に始めたNISA口座が、昨年の2018年にその5年の非課税期間を満了したからだ。ここで登場するのが、「ロールオーバー」という制度である。

ロールオーバーとは、5年の非課税期間が満了した銘柄を新たなNISA口座に移すこと。NISA口座を開設している証券会社でロールオーバーの手続きをすれば、5年前に始めたNISA口座で保有する銘柄をそのまま新しいNISA口座枠に移管できる。そうすれば、再び5年間、新たなNISA口座で非課税の恩恵を受けることが可能となるわけだ。つまり、最大で10年間、非課税の恩恵を受けることができる。もし、当初のNISA口座で購入した株式や投資信託が値上がりして評価額が120万円を超えていても、ロールオーバーをすることによって全額が非課税の対象となる。

移管された時点の価格が取得価格に

では、ロールオーバーの手続きをしなかったらどうなるか。答えは、「“自動的に”同じ証券会社の一般口座(特定口座を開設している場合は特定口座)に移される」。一般口座や特定口座に移された後は、課税の対象となるわけだが、ポイントはどの時点での簿価(取得価格)が採用されるかだろう。

NISAでは、5年の期間を終えて一般口座に移管した場合、移管した時点の株価(投資信託だと基準価額)が簿価(購入時の価格)と見なされる。たとえば、1銘柄50万円の銘柄をNISA口座で購入したとしよう。5年後、その銘柄の株価が2倍の100万円まで値上がりし、ロールオーバーの手続きをしないで一般口座に移されれば、一般口座での取得価格は100万円になる。その後、評価額が150万円になれば、プラス分の50万円が課税の対象だ。要は、100万円でその銘柄を新たに購入したのと同じ扱いになる。

同様に、評価額50万円の銘柄が30万円まで下落し、その後一般口座に移されたケースを考えてみよう。取得価格は30万円と見なされるので、仮にその後40万円まで上昇したとすると、プラス分の10万円が課税されることになる。この場合、NISA口座で購入した時の50万円より低い価格での売却にも関わらず税金が発生するので、NISA口座内の銘柄の評価額が下がっているケースでは、ロールオーバーを考えたほうがいいかもしれない。

早めの判断を心がけよう

ロールオーバーすべきかそうでないかについては判断が難しいところだ。ロールオーバーすれば値上がり分も全額が非課税の対象になることを考えると、前述の評価額が下がっているケースや、将来的に値上がりが期待できる銘柄ならロールオーバーするメリットがあるだろう。特に、ロールオーバー後に大きく評価額が上昇した場合のメリットは非常に大きいと言える。

ただし、株式や投資信託は将来の値上がりが保証されているわけではない。値上がりするだろうと思っていても、当然、下がる可能性だってあるわけだ。そういう意味では、ロールオーバーをせずに売却して利益を確定し、新たにNISA口座で120万円の非課税枠を使って別の銘柄を購入するのも一手である。同じ非課税の制度である「つみたてNISA(NISAとの併用は不可)」の利用を考えてみるのもいいだろう。

2019年は、2015年分のNISA口座がロールオーバーの対象となるので、2015年にNISA口座を開設して株式や投資信託を購入している人は、年内にロールオーバーするかしないかの判断をする必要がある。もっとも、2019年以降に始めたNISAの口座についてはロールオーバーするしないの判断は必要ない。2019年分のNISA口座は2023年が最終年となるわけだが、NISAで投資可能なのは2023年までだからだ。

ロールオーバーの申し込みはホームページからできる金融機関も少なくないが、手続き自体は書面でのやり取りになるので、少なくとも1ヵ月程度の猶予は見ておきたい。すでに手続きを開始している金融機関もあれば、秋口頃から手続き開始となる金融機関もあるようなので、ロールオーバーの対象となるNISA口座を持っている場合は早めにその金融機関に問い合わせをしておくべきだろう。(提供:確定拠出年金スタートクラブ

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